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月界に飽きた月の姫は人間界に遊びに行く〜魔法学園に入学したら隣の公爵子息にだけ勝てない件〜  作者: おもち
第一章

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第1話 《月の姫》は遊びに行く

勢いのまま、書いてしまいました。



「あーあ、つまんない。なにか楽しいことないのかなぁ」


私は今日も変わらない日々に飽きていた。ここは《月界》と呼ばれる月の世界。様々な魔法が存在し、人々が生活を送る世界を見守る場所だ。


見守るといっても、私自身することはない。争いが起きたって、魔物と呼ばれる人々を襲う存在がいたって、私は介入することはない。


私は生まれたときから《月の姫》として、世界を見ていた。争いが起きる度に人は傷つき、数を減らし、文明を発展させていく。それは《月界》から見ていると面白く、不思議だった。


なぜなら《月界》では《月の姫》こそが至上の存在であり、私を起点として《月界》は発展していく。争いも起きないし、私を脅かすような存在もいない。


平和と呼ぶに相応しいほど、《月界》では何も起きないまま時が過ぎていく。しかし、いい加減私はそんな生活に飽き飽きしていた。


元より私の性格的に《月界》の悠久の時は性に合わないのだ。もっと、楽しいことがしたい。生まれたときから《月の姫》としての役割は認識しているし、それ相応の振る舞いも身につけて、《月の姫》らしく世界を見守ってきた。


けれど、《月界》では何も起きない。これでは飽きてしまう。だから私は外に遊びに行きたくなってしまった。


だって、《月の姫》らしい不思議な力が使えても、使う場面がそもそもないし、あってもちょっと力を振るうだけで終わってしまう。


何より、私には対等な話し相手もいない。つまらないじゃないか。別に《月界》が嫌いなわけじゃない。でも、刺激がなければ、いくら《月の姫》と言えど、《月界》には飽きてしまう。


ここ数百年、世界を見守ってきて別に私がいなくとも何とかなるんじゃないかとずっと思っていた。だって見守るだけなのだ。


人々は《月の姫》の存在を知っていて、私を崇め奉る。けれど、私はそれに対して何かしてあげられることは何もない。見ているだけしかできない。


これなら、私が少しだけその世界に遊びに行ってもいいと思うのだ。別に、何百年も遊びに行くわけじゃない。ほんの少し、人としての一生分だけ、世界に舞い降りて遊ぶだけ。


何かあればすぐに《月界》に戻れるようにしておくし、《月の姫》としての力もそのままあるから、何も問題なんて無いはずだ。


―――だから、私はそうと決めればと、《月界》の民たちに告げたのだ。


「遊びに行ってくる! 《月界》ちょっと飽きたから!!」

「ひ、姫さま!?」

「何もないと思うけど、《月界》に何かあったら嫌だから、何かあったら遠慮なく連絡してきてね! 私も《月の姫》としての力は持ってるから、帰ろうと思えば《月界》にいつでも帰れるしさ」

「お、お待ちくださいっ!」


呼び止めてくる民たちに私は笑顔で手を振る。


「だいじょーぶ! 人の一生分だけだよ? 《月界》からしたらほんのちょっとの時間に過ぎないよ」


事実、悠久の時を生きる《月界》の民からすれば、人の一生など短いものだ。けれど、彼らからすればそんなこと関係ない。


《月界》の愛する最も高貴な存在である《月の姫》が争いの多い世界に舞い降りようとしているのだ。不安でいっぱいいっぱいである。


「ひ、姫さま、我々は姫さまが害される可能性がある世界に姫さまを送り出すなどできません!!」

「害されるって、ちょっとの怪我をしてこそ人間みたいじゃん! ここじゃ、何も起きなくて逆に飽きたんだよ」

「そ、それはそうかもしれませんが。……っ、ですが、姫さまの影響は凄まじいものですよ!」

「そんなことないって。じゃあ、ちょっと人間として遊びに行ってくるー!」


私は民たちを背中に《月の姫》の力を使った。発動させてしまえばこちらのものだ。私は実に楽しみだという表情を隠さずに自分の体が光に包まれていくのを見守る。


そして、だんだんと眠気に襲われ、私は抵抗することなく、その眠りに従った。


《月界》から見ていた世界は、一体どんな世界なのかと私は楽しみで仕方がなかった。


そんな私の楽しみとは反対で、月の民たちは騒ぎどころではなかった。


「ひ、姫さまが行ってしまわれた……!!」

「どうするんですか!? 絶対に姫さまのことです。こちらが連絡してもよほどの事がない限りは戻ってきてくださりませんよ!」

「ううむ、一体どうしたら……」


それぞれが愛する《月の姫》が行ってしまったことで阿鼻叫喚の《月界》。そこに一人の月の民が言葉を発した。


「まあ、姫さまにもいい経験となるでしょう。確かにここでは姫さまの成長はもうない。それならば、一度《月界》から出て、世界を知ってもらうのも良い手ではありませんか」

「そうかもしれないが、姫さまは大人しく人の生を過ごされるだろうか?」

「それはなんとも言えませんな。姫さまはあらゆるものを引き付ける。まさしく《月の姫》なのですから」


その一言に誰もが口を閉ざした。行ってしまった《月の姫》は民のひとりが言う通り、あまねく全てを魅了してしまう不思議な力がある。いや、《月の姫》が生まれ持った天性と言うべきか。


そんな《月の姫》が人として生きるとしても、必ず《月の姫》を中心として何かが起こると民たちは確信していた。だって、《月界》が誇る《月の姫》なのだから。


「まあ、人の一生などあっという間です。姫さまが笑顔で帰ってこられるのを見守っていましょう」

「我々は姫さまのように世界を視る力は持っていないのだがな」

「そうだとしてもですよ。《月の姫》が帰ってこられる《月界》を守り、維持するのが今の私たちの役目です」


その言葉に民たちは気を取り直し、思い思いを抱きながらも、《月の姫》のためにと足を動かし始めた。


《月の姫》が楽しく過ごしていることを祈りながら。



* * *



《月の姫》として生まれた私は《月界》に少し飽きてしまって、そこから勢いで人間界へと遊びに来て10年が経った。


生まれたばかりの頃は流石に《月の姫》としての記憶も力もなかったが、5歳の誕生日を迎えた頃、私は自分で封じていた記憶と力が戻り、人間界へと遊びに来ていたことを思い出した。


その頃にはすっかりと今の家族との生活に慣れており、お父さん、お母さんと呼んで家族が大好きになっていたため、記憶が戻っても何も変わらなかった。


ただ、記憶が戻った私は《月の姫》としての力も取り戻したため、元は茶髪茶目だったのに、《月の姫》だけが有する白銀の髪と月を思わせる黄金の瞳へと変化していた。


5歳の誕生日おめでとうと誕生日を祝ってもらっていた時に急に記憶やら力やら髪色などが戻ったのだ。私もお父さんたちも驚きでいっぱいだった。


でも、そんな私もお父さんとお母さんは大好きな娘として変わらなく愛を注いでくれた。お母さんは私を《月の姫》だと気づいたみたいで、お父さんがいないところで、これからどうしたいのか聞いてきたことがあった。


けれど私は迷うことなく、こう答えた。


「《月界》に少し飽きたから遊びに来たんだけど、お母さんとお父さんのこと大好き。暖かくて、ずっとここに居たいって思うほどに。だから、このままがいい」


するとお母さんは私をぎゅっと抱きしめた。


「もちろんよ、《月の姫》だろうとなんだろうと、あなたは私たちの大切な娘なんだから」


そう言ってくれた。とても嬉しかった。


だから私はお父さんにもこのことを話してもいいと思って、《月の姫》だということを話してみた。


すると、お父さんもお母さんと同じく、私がなんであろうと愛する娘だからと抱きしめてくれた。だから嬉しくして、《月の姫》としての祝福をこっそりと二人にかけてしまったのは内緒だ。


「今の時代は昔と違って、《月界》に関しての情報は多いわ。セレナの髪色と瞳を見て《月の姫》だと気づく人も少なくないと思うの」

「そうなの?」


ちなみに、セレナとは人間界の私の名前だ。


「お父さんは気づかなかったみたいだけど、高貴な血筋の人ほど気づく可能性が高いの。《月の姫》はどの国でも王族以上に敬われる存在だから」

「でも、私は人間界に何かしたことないよ? それなのに?」

「《月の姫》がいたからこそ、世界はここまで発展してきたのだから。セレナが何かをした記憶がなくとも、それは変わらないわ」


事実、本人は気づいていないが、《月の姫》は存在だけで世界に何かしらの影響を与える。


《月の姫》が世界を見守っているとき、人々もまた《月の姫》に願う。何でもかんでもでは無いが、それを《月の姫》は叶えてあげたいなぁーと思うだけで、祝福を与えてきた。


だからこそ、《月の姫》とは《月界》だけでなく、人間界でも尊ばれる存在である。


「そうなんだ……。なら、私はどうしたらいいの、お母さん」

「髪色と瞳の色を変えることはできる? 別の色に変われば、気づかれないと思うのだけれど……」


そう言われたのだが、私は髪色や瞳を変えることは自分ではできないと首を横に振った。


「これは《月の姫》の証みたいなものだから、私個人ではどうにかするのはできないんだ。……そういえばお母さん、人間界には魔導具っていう魔法を閉じ込めた道具があるんでしょ? それに髪色とか変えるものないかな。それだったら、多分大丈夫だと思うから」


髪を持ち上げながら、私は首を傾げる。その言葉にお母さんはちょっと待ってて、と言い部屋の奥に行った。


その場に残ったは私とお父さん。


「せっかく綺麗なのにな。でも、セレナの安全のためなら勿体ないと感じても仕方がないか。俺にはお母さんと違って、そういうの分からんから」

「なんでお母さんは分かるの? 5年間、《月の姫》としての記憶がなくとも、過ごしてきた分の記憶はあるよ。そこから考えて、お父さんとお母さんは貴族の生まれじゃないと思ったんだけど」

「まあ、合ってはいるかな。詳しいことはお母さんに聞けば、もしかしたら答えてくれる。俺はそっちの事情を話していいものか分からないからな」


結局よく分からず、首を傾げていた所にお母さんは首飾りを持って戻ってきた。


「そんなに首を傾げてどうしたの?」

「ううん、なんでもない。お母さんが持っているの、魔導具っていうもの?」

「そう、髪と瞳の色を変化させる魔導具。お母さんの故郷から持ってきたものだから、《月の姫》であるセレナにも使えると思うんだけれど……」


そう不安そうにしながら、お母さんは私に首飾りをかけた。私の瞳の色みたいな小ぶりの宝石がはめられていて、なんだか愛着が湧く。


その次の瞬間、私は自分に変化が起きたことを感じた。視界に映る髪色が茶髪へと変化していたのだ。瞳の色はどうなのだろう。


「……やっぱり瞳の色までは茶色に戻らなかったわね」


お母さんは私に鏡を向けてくれた。そこに映る自分を見て、私は目をぱちくりとさせる。なんだか不思議な感じがした。


髪色は茶髪になったが、瞳はなぜか水色というか青というかそんな色になっていたのだ。私としては髪色を魔導具で変化させるなら、お父さんとお母さんと同じく茶色が良かったのだが、瞳の色だけはダメだったようだ。


「髪色が茶髪になったのは良かったけれど、瞳の色までは難しかったみたい」

「なんでこの色なんだろう? 不思議な感じ」


私はそう疑問を口にするも、お母さんは困ったように笑うだけだった。それにまたしても首を傾げるも、私は色が変化したのだし、まあいいかと思った。


「セレナがこれからどう過ごしたいか、それはあなたが決めることよ。もちろん、セレナが愛する娘ということには変わりはないけれど、まだ時間はたくさんあるのだから。安全のためにも魔導具はつけておいたほうがいいわ」

「わかった。ありがとう、お母さん」


その5歳の誕生日の日に私は記憶を取り戻して、力も髪色も《月の姫》として覚醒したけど、お母さんの魔導具によって髪色と瞳の色は変化した。


そこから5年、私は人間界で多くのことを学び、自由に伸び伸びと成長した。



そして10歳となり、私は生まれた国・ハスフェル王国の名門魔法学園に入学することにした。



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