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【コミカライズ決定】売られた令嬢は最後の夜にヤリ逃げしました〜平和に子育てしていると、迎えに来たのは激重王子様でした〜  作者: やきいもほくほく
三章 波乱の予感

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19/37

①⑨


──それから三年後。


シルヴィーは平民となり、シルヴィアとして新しい人生を歩んでいた。



「まま、だいすきっ」


「わたしも大好きよ、ホレス」


「ぎゅ……っ」


「ぎゅ~~! ホレスは天使ね」



一番の驚きはというと、子どもが生まれたということ。


シルヴィーは三年前のことを思い出す。

夜会の後、現実逃避するように宿で朝まで過ごしてから店に戻った。


着崩れたドレスや乱れた髪を見て、皆が心配してくれたが、あの日の晩のことは誰にも言えるわけがない。

『襲われそうになったが何とか逃げられた』

そう言って誤魔化すのに精一杯だった。


しかし何も言わなくても、シルヴィーが痛い目にあったことは察してくれたのだろう。

母やリーズは何も言わずにシルヴィーを抱きしめてくれた。


それから一週間ほど経った頃だろうか。

シルヴィーはある噂を聞くことになる。

なんとアデラールがラディング侯爵の悪事を暴くために調査に潜入していたそうだ。

そして夜会に関わった貴族たちは次々と罰を受けている。

その中にはレンログ伯爵家も含まれていた。

貴族たちは大混乱だそうだが、アデラールは国の英雄として街では大盛り上がりだった。だらだらと流れる冷や汗。

夜会に彼が関わっていたことを考えて、あの部屋に入ってきたのはアデラールだとしたのなら……。


(ま、まさかね……)


シルヴィーは震えが止まらなくなった。

そんなシルヴィーの気持ちを見透かすように、アデラールがイエローゴールドの髪とラベンダー色の令嬢を探しているという情報を耳にした。


(つまりアデラール殿下はわたしを捕まえて罰するために探しているということ!?)


シルヴィーはしばらく髪を隠しながら過ごしていた。

しかし異変に気づくのはすぐだった。

月のものがこない。体調もどんどんと悪化していく。

ついに悪阻を隠すことができずに母に相談。


二人はシルヴィーのことを案じて心配してくれたが、シルヴィーは未知の恐怖と具合が悪すぎてメンタルをやられていた。

シルヴィーはまさか自分が妊娠しているとは思わなかったからだ。


母たちはシルヴィーの妊娠がわかると、夜会の日にあったことを察したはずだ。

恐らく騙さられて関係を迫られたに違いないと思っている。


だが、実際は逆。シルヴィーが名も知らない青年を襲ったのだ。

無理やりシャツを引きちぎり、馬乗りになった時のことを思い出そうとすると恐ろしくてたまらない。


(でも抵抗できたはずなのに……。そういえば彼の様子も少しおかしかったから、もしかしたらお酒で酔っていたのかしら)


今さらながら気づくことができた微かな違和感。

シルヴィーを跳ね除けることなどたやすいはずなのに。

挙げ句の果てに動けない彼にシルヴィーは好き放題して逃げしてしまったのだ。


(もしかして、わたしとアデラール殿下の子が……?)


ホレスを妊娠中に社交界は随分と長い間、混乱していたそうだ。

あの夜会はラディング侯爵によって開かれたもので、大金と引き換えに娘をもらっていたそうだ。

やはりシルヴィーもそうだったのだろう。

それに関わった貴族たちは降爵や領地の剥奪など処罰を受けた。

その中にはレンログ伯爵家も含まれているそうだ。


元ラディング侯爵は処刑。無理やり妻にされた女性も解放されたそうだ。

シルヴィーも酒癖が悪くなければ、今までの女性たちのようになっていたのかもしれないと思うとゾッとする。

今だけは自分の酒癖の悪さに感謝するばかりだ。

それにあの時から、どんなに誘われても一滴とお酒は飲んでいない。


レンログ伯爵家含め、貴族たちの悪事を止めて一気に膿みを出したのが、この国の王太子であるアデラール・デ・シュマイディトだ。

彼の評価は元々高かったのだが、この件でさらに国内外からの評価をあげた。

レンログ伯爵もシルヴィーが手元にいれば言い訳もできただろうが、逃げ出した後、娘を売ったという醜聞はつきまとう。

それといつのまにかシルヴィーが義母とミリアムに虐げられていた事実も露呈していた。


基本的に屋敷から出てパーティーやお茶会に参加することを許されなかったため、友人と呼べる令嬢もいなかった。

そんな話をしても、誰も信じないかと思いきや窮地に陥った隙を狙ったからのように今までの父や義母、ミリアムに恨みを持っていたであろう貴族たちが彼らを追い詰めていったそう。


今、王都では元ラディング伯爵に関わっていく貴族たちが落ちぶれていく様をおもしろおかしく書いている情報が常に回っている。

それと同時に彼らの肩身は狭くなり、つけを払うことになっているそうだ。


元レンログ伯爵家……今は子爵家になってしまったそうだが、領地も半分ほどは王家の管轄へ。

大量の借金は少しずつ返しているそうだが、これからどうなっていくのかはまだわからない。


(……あの人たちがどうなろうと、もうわたしには関係ないわ)


シルヴィーは新しい人生を歩んでいる。二度とあの場所に戻ることはない。


初めてのことばかりで混乱する中、店の仲間たちや母が何もかも初めてなシルヴィーを支えてくれた。

子どもがいる女性たちも多く、妊娠中から出産まで困ることはなかった。

今では母と共に協力しながらホレスを育てながら働いている。


シルヴィーが休みの日は店で働いている女性たちの子どもの面倒を見たりと支え合いながら生きていた。

貴族の令嬢として生きていた時よりもずっと伸び伸びと暮らせている。

それにホレスのかわいらしさにメロメロだった。


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