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かみさま

薄暗い山奥の宿。窓の外では風が木々を揺らし、遠くでフクロウの鳴き声が響く。10歳の荒木ミタは、家族旅行の最終日、幸せな余韻に浸っていた。母の優しい笑顔、妹の無邪気な笑い声、父のくだらない冗談。それが、永遠に続くと思っていた。

だが、その夜、すべてが変わった。

ミタはふと目覚めた。妹のミナが隣で小さく寝息を立てている。普段よりも異様な静けさになんとなく胸騒ぎを覚え、ミタは布団を抜け出した。宿の廊下を進み、母の寝室のドアに手をかけた瞬間――血の匂いが鼻をついた。


「母ちゃん…?」


ドアの隙間から見えたのは、仮面の男だった。黒いマスクに赤い模様が浮かび、まるで笑っているかのような不気味な顔。男の手にはナイフが握られ、床には母が倒れていた。血だまりが広がり、母の瞳はすでに光を失っていた。

「ひっ…!」

ミタは声を押し殺し、震える手でドアを閉めた。心臓が破裂しそうだった。逃げなきゃ。ミナを連れて、すぐに。ミタは妹を起こし、宿の裏口から夜の森へ飛び出した。背後で仮面の男――ミタが後に「ジョーカー」と呼ぶその男の冷たい目が彼の脳裏に焼きついた。


幸運にも、ミタとミナは逃げ切った。父が警察に通報し、その後家族は再び合流したが、ジョーカーは闇に消え、手がかりは一切残らなかった。ミタの心には、燃えるような復讐心と憎悪が刻まれた。


7年後――名古屋、栄の街

17歳になった荒木ミタは、女子高生と間違われることが多い。母に似た顔立ち、両サイドに高くお団子にまとめられてるが、下ろすと長い髪、華奢な体つき。話すまでは誰もが女だと勘違いする。今日も、教室で同級生にからかわれた。


高橋「ミタ、一発ヤらしてくれよー。俺童貞なんだって」

ミタ「きめぇよ!てか、オレ相手だと童貞卒業したことにならんだろ」

高橋「いやーそこをなんとか、幼なじみだしな?俺ら」

ミタ「アホか」

ミタは笑って誤魔化した。だが、心の中では苛立ちが渦巻く。母の髪型を真似するのは、彼女を忘れないためだ。父には「母さんの真似はもうやめろ」と言われるが、ミタにはどうでもよかった。


家に帰れば、中3の妹・ミナが受験勉強に追われている。ミタの軽薄な態度が気に入らないらしく、いつも冷たい視線を向けてくる。高校での出来事を横で話していると「お兄ちゃん、邪魔しないでよ。静かにして」と吐き捨てられるのが日常だ。それでもミタは、ミナを守るためなら何でもするつもりだった。


だが、ミタの心には深い闇があった。母を殺した「悪人」への憎しみが、彼を歪ませていた。ホームレスを見れば「汚ねえ」と唾を吐き、不良を見れば「社会のゴミ」と見下す。時には石を投げたり、わざと後ろから踵を踏んで、すぐ申し訳なさそうにペコペコ謝るフリをして切り抜けたりしている。自分は正義の側だと信じて疑わない。どんな報復を受けても、「オレは被害者だ」と自分を正当化する。そんな歪んだ正義感が、ついに彼を窮地に追い込む。


放課後、栄の繁華街。ミタは不良グループに囲まれていた。同じ高校の連中で、以前ミタが絡んで馬鹿にしていた相手だ。リーダー格の男がニヤリと笑う。

ボス不良「調子に乗ってんじゃねえぞ、ミタ。女みてぇな顔しやがって生意気なんだよ」

ミタ「あい?てめえらみたいなクズが悪いんだろ!」

ミタは強がって叫んだが、内心は焦っていた。

しばらくの間、街中を逃げ回るもついに路地裏に追い詰められ、逃げ場がない。

ボス不良「はぁ…はぁ……やっとへばったか。石投げながら逃げやがって、卑怯な野郎め」

ミタ「複数で追いかけてきて卑怯なのはどっ…」

拳が飛んできて、ミタは地面に叩きつけられた。


「くそっ…! やめろよ!」ミタは這いながら叫んだ。だが、不良たちの笑い声が響くだけだ。その時、買い物袋を抱えたミナが通りかかった。

「え、何!? やめて、うちの兄貴に何するの!?」

ミナが叫び、不良たちの前に立ちはだかった。ミタは目を丸くした。いつも冷たいミナが、自分を庇うなんて。

「うっせえ、ガキ! てめえもぶっ飛ばすぞ!」不良がミナに手を上げようとした瞬間、ミタの心が爆発した。

「あー! 神さま! 助けてくださぁあああい!!」


叫び声が栄の路地裏に響いた。すると、空気が歪み、空間が裂けたような感覚が周囲を包んだ。不良たちもミナも、呆然と空を見上げる。

そこに、少女が現れた。


「呼んだ??? 私のかわいい人間ちゃんたち! あっ、私のことはぼんちゃんって呼んでね!!」


ピンクの髪に、星のような瞳。ふわふわのドレスをまとい、まるでアニメのキャラのような少女が上空に浮かんでいた。彼女は自らを「梵天ブラフマー」と名乗り、全ての創造主だと宣言した。ミタは目を疑った。冗談で叫んだだけなのに、本物の神が現れるなんて。


「え、な、何!? 何!?」ミタが叫ぶ中、梵ちゃんは不良たちを見下ろして、つまらなそうに言った。

「うっわ、しょーもない理由で呼ばれた。人間って、ほんと変わらないねぇ。まぁ、いいや。もう見かねたから、私、動いちゃおうかな!」

彼女が指を鳴らすと、空間が震えた。次の瞬間、不良たちの首が一瞬で爆散した。血と肉が飛び散り、栄の街は悲鳴に包まれた。人々が逃げ惑う中、梵ちゃんは不機嫌そうに叫んだ。


「あ! こら! 逃げないでちゃんと話を最後まで聞いてよ!! 」


彼女の手が振られると、逃げようとした人々が次々と消滅した。まるでゴミを掃除するように、彼女は無慈悲に命を奪っていく。ミタとミナは恐怖で動けなかった。

ミタ「ミ…ミナ……絶対逃げるなよ」

ミナ「………うん…」

生き残ったのは、逃げなかった彼らだけだった。

梵ちゃんはニコリと笑い、ミタとミナに近づいた。


「君たちは偉い子ちゃんだから、特別に優秀な子をあげる♪」


彼女の手から光が放たれ、ミタの前に人型の存在が現れた。白いローブをまとい、静かな瞳を持つ青年。名前は「アダム」。梵ちゃんは説明した。

「これは梵使ぼんし。君たちを導くパートナーだよ!ちっちゃいけど、 自由に服を着せたり、話したり、調べ物したりできるし、君たちに生き方を教えてくれるの! まぁ、ちょっと欠陥あるけど、それは私があえて作った愛嬌だから気にしないでね!」


アダム「俺の能力は『起源の共鳴オリジン・レゾナンス』。過去、現在、未来の人間の記憶にアクセスできる。お前と俺の信頼が深まれば、もっとすごいことができる。

例えば…悟空のかめはめ波とか」


ミタの目が輝いた。

「こ、この能力があれば…母ちゃんを殺したやつの手がかりを見つけて、ぶっ殺せるかもしれねえ…!」


梵ちゃんは満足そうに笑い、こう言った。

「あれだけの人がいなくなったのに今、目を輝かせてるなんて、イカれてるねぇ〜。そーゆうの嫌いじゃないよ♪」


突然、彼女は手のひらから取り出したペンダントを舐め回して謎の空間に消えた。


ミナ「『もう、失敗しないからね。』って彼女が帰ってく前にそう、聞こえた気がする……」

ミタ「あれが……あんなのが創造主なのか…?」


その場に残されたのは、ミタとミナ、そして梵使アダムとミナの梵使だけだった。

栄の街は賑やかさを失い、静寂が支配していた。

この話は、昔から頭の中でぐるぐるしてた「神様ってほんとに人間のこと見てんのかな?」「どんな見た目でどんな性格なのかな?」「なんでなんの罪もない人が理不尽に殺されるの?神様がいるなら、なんでそんなことが起きるの?」って疑問から生まれました。

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