男子校に通う好きな人にチョコを渡す話
涼しいと言うにはちょっと寒すぎる風、白い吐息。
2月14日の今日はバレンタイン日和だ。
とちょっとよくわからないことを考えながら私は電車に乗っている。
今から好きな人にサプライズでチョコを渡そうとしているのだ。
私の好きな人は小学校の同級生、彼が男子校に進学したあとも連絡を取り合いたまに会う関係だった。
歳を重ねる中で彼の魅力に気づき好きになってしまったというわけだ。
彼は男子校に通っているので私も含めてあまり女性慣れしていない。なのでサプライズを実行して反応を楽しみたかったのだ。
車内アナウンスが聞こえる、降りなきゃ。
チョコを落とさないようにと大事に抱えながら電車を降りる。彼がこの駅に着くまであと30分、楽しみだな。
電車が停まる音がする、これに乗っているはず。
高鳴る胸を抑えながら待つ。
見えた――
誰よりも愛しいその人に抱きつくように走っていく。
「これ、君のために作ってきたの! 受け取ってくれるよね?」
自分史上1番可愛い声で問いかける。
「もちろん、めっちゃ嬉しいよ」
大好きな人が言われて嬉しい言葉を言っている、好きの2乗だ。
彼が包装を開けると私が一生懸命書いた手紙が出てくる。
「これ、読んでもいい?」
「うん!」
彼が手紙を読み始めた、だんだん表情が明るくなってくる、これは……どうだ?
「俺もずっと好きだったんだ、付き合ってください」
え、いいの? そんな唐突に付き合えていいんですか??
脳がショートしそうな快感を覚えながら当然お願いしますと返事をする。
「彼女、彼女ができたんだ……」
彼の方を見ると男子校らしさ全開の喜び方をしている、かわいいなあ。
その時、何かが落ちる音がした。
「えっ……あっ……」
見ると私が渡したチョコが地面に落ちてしまっていた、素で。
「本当にごめん、拾って食べるから……」
「ううん、食べなくていいよ」
「でも……」
大きく息を吸い込んで君に問いかける
「チョコ作ってあげるから今からうち来ない?」