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クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。  作者: 桜庭かなめ
続編

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第33話『そうめんゆでました』

 7月8日、月曜日。

 週が明けたけど、気怠さは全くない。千弦達と一緒に学校生活を送るのはもちろんのこと、期末試験が終わったり、今日から終業式の前日までは授業が午前中だけとなる半日期間になったりするからだ。それに、週末の土曜日は千弦の誕生日でお泊まりもするっていう楽しみがあるし。あと、昨日はみんなで七夕祭りを楽しんで、途中1時間ほどは千弦とお祭りデートも楽しめたのもある。


「いってきます、母さん」


 午前7時50分。

 学校へ行く準備をして、キッチンにいる母さんに声を開ける。


「いってらっしゃい。……洋平、鍵持った? 今日はお昼前から夕方の5時くらいまでいないから」

「持ったよ」

「うん。あと、お昼ご飯にそうめんを茹でて食べてもいいからね。お中元で届いたのがまだたくさんあるし」

「了解」


 母さんとそんなやり取りをして、もし今日の放課後に千弦の予定がなかったら、うちでそうめんを食べて、その後はお家デートをするのを提案しようと考えた。暑い時期だからそうめんは良さそうだし、家で2人きりの中でお家デートをしたいし。


「じゃあ、いってきます」

「いってらっしゃい」


 今日も洲中高校に向けて出発する。

 七夕祭りがあった昨日から続いて、雨は降っていない。雲が広がっているので日差しもなく、蒸し暑さもそこまでではない。朝食後に見た天気予報によると、日中いっぱいは雨が降る心配はないとのことだ。

 数分ほど歩くと、千弦との待ち合わせ場所である交差点が見えてきた。


「洋平君!」


 交差点には千弦がおり、千弦はこちらに向かって笑顔で手を振ってきてくれた。今日も俺の恋人はとても可愛い。好きだ。

 千弦、と名前を呼び、手を振りながら千弦のところへ向かった。


「おはよう、洋平君」

「おはよう、千弦」


 朝の挨拶を交わし、その流れでおはようのキスをする。毎回、おはようのキスをすると今日も学校を頑張ろうって思える。

 俺から唇を離すと、千弦は目の前でニコッと笑いかけてくれる。本当に可愛いな。


「洋平君、学校へ行こうか」

「ああ、そうだな」


 俺達は手を繋ぎ、学校方面の信号が青になったのを確認して、学校へと向かい始める。


「月曜日だけど、半日期間になったから気が楽だね。期末も終わったし」

「そうだな。それに、今週はテストが返却されて解説する授業が多いだろうし」

「そうだね。あとは……土曜日は私の誕生日だし。パーティーもするし、洋平君がお泊まりもしてくれるっていう楽しみもあるから」

「そうだな。今週も頑張ろうな」

「うんっ、頑張ろうね!」


 千弦はニコッとした笑顔でそう言った。千弦と話していたら、今週はあっという間に終わりそうな気がしてきた。

 ……そうだ。千弦に今日の放課後は予定があるのかどうか訊いてみよう。


「千弦。今日の放課後って予定はあるか?」

「ううん、特にないよ」

「そうか。俺もバイトとか入ってなくて特に予定ないから……放課後は一緒にお昼を食べて、その後はデートしないか?」

「うんっ! そうしよう!」


 千弦は嬉しそうな笑顔でそう言ってくれる。

 一緒にお昼を食べてデートをすることになったから、お昼はうちでそうめんを食べることと、お家デートすることを提案してみるか。


「ありがとう。提案なんだけど、俺の家でお家デートをするのはどうだろう? お家デートは好きだし。あとは母さんが5時まで帰ってくるまでは家には誰にもいないから、家全体で2人きりになれるし」

「そうなんだ。5時まではいつも以上に2人きりの時間を過ごせるんだ。いいね! じゃあ、洋平君の家でお家デートしよう」

「決まりだな。……うちでお家デートをするし、お昼はうちでそうめんを食べるのはどうだろう? 千弦ってそうめんは好きか?」

「そうめん好きだよ。夏を中心に食べるよ」

「そうなんだ。良かった。実はうち……お中元でそうめんがたくさん送られてきてさ。今日から半日期間が始まるから、学校へ行くときに母さんが『お昼ご飯にそうめんを茹でて食べてもいいからね』って言ってくれてさ。千弦と一緒にそうめんを食べるのもいいかなって思って」

「なるほどね。それで、そうめんはどうかって訊いたんだね。洋平君の家でそうめん食べたいな」

「そう言ってくれて嬉しいよ、ありがとう。じゃあ、お昼は俺がそうめんを作るよ」

「うん、楽しみだな!」


 千弦はちょっとワクワクとした様子でそう言ってくれる。千弦に美味しいと思ってもらえるお昼を作ろう。

 今日の放課後は俺の家で千弦と一緒にそうめんを食べて、その流れでお家デート。凄く楽しみだ。

 その後は昨日の七夕祭りでのことを中心に話しながら、千弦と一緒に登校した。




 今日は期末が明けてから最初の登校日なのもあり、どの授業も期末試験の答案の返却と解説の時間となった。

 全科目90点以上で、現代文と英語表現Ⅱは100点満点だった。試験のときにどの教科も手応えがあったけど、その通りの結果になって安心だ。他の教科も高得点で、中間試験に続いて学年上位者一覧に載れるといいな。

 千弦と星野さんも今日返された教科はどれも良かった。

 琢磨と吉岡さんと神崎さんもまずまずとのこと。あと、3人にとって苦手な数学Bの試験も返却され、3人とも赤点を回避していた。また、琢磨は数学Bの試験後に「平均点取れるかもしれねえ!」と言っていたけど、その言葉が現実となり、平均点よりも3点上の点数を取っていた。このことに琢磨は大喜びしていた。

 この調子で、みんな赤点なく全教科の答案が返却されるといいな。




 放課後。

 週が変わり、掃除当番は俺のいる班ではなくなった。なので、放課後になってすぐに千弦と一緒に下校する。

 お昼の時間帯なので、朝よりも蒸し暑い。ただ、千弦と繋いでいる手から伝わる温もりは心地いい。


「お昼のそうめんとお家デート楽しみだな」

「俺も楽しみだ」


 千弦にお昼ご飯を作るのは初めてだからちょっと緊張するけど。

 今日返却された科目の期末試験のことを中心に学校について話しながら、千弦と一緒に帰宅した。千弦と話すのは楽しいし、高校から自宅までは10分くらいなので、家に着くまではあっという間だった。


「さあ、どうぞ」

「お邪魔します」


 千弦を自宅に招き入れる。

 これまで千弦と俺の家でお家デートを何回もしたけど、家全体で2人きりになるのはこれが初めてだ。だから、ちょっとドキドキする。

 千弦と一緒に2階にある俺の部屋に荷物を置いて、1階のキッチンへ向かう。

 エアコンのスイッチを入れて、俺は冷蔵庫や棚に入っている食材を見ていく。

 棚の中から、お昼の主役であるそうめんの箱を見つける。

 あと、うちでそうめんを食べるとき、麺汁によく入れる具材はきゅうりにわかめにカニカマだ。薬味にネギとゴマも。冷蔵庫や棚を確認すると……どれも結構あるな。


「千弦。うちではそうめんのときに、麺汁に入れる具材にきゅうりやわかめやカニカマを用意するんだ。千弦の家ではどう?」

「その3つはうちも入れることがあるよ。わかめとカニカマは特に。どれも好きだよ」

「じゃあ、その3つを用意するよ。あとは薬味にネギとごまも」

「うんっ」


 千弦から了承を得たので、2人分のそうめん、麺汁に入れる具材と薬味を取り出した。

 これから調理を始めるので、キッチンにある俺の黒いエプロンを身につける。


「エプロン姿似合ってる!」


 千弦はちょっと興奮気味にそう言った。エプロン姿を褒めてもらえて嬉しいな。


「ありがとう」

「写真撮ってもいい?」

「ああ、いいぞ」

「ありがとう!」


 千弦は自分のスマホで俺のエプロン姿を撮影していく。千弦のリクエストでピースサインをしたり、菜箸を持ったりする写真も。


「いい写真を撮れたよ。ありがとう」


 千弦はニコッとしたスマホの画面を見ながらそう言った。もう今の時点で、お昼はうちでそうめんを食べようと提案してみて良かったなって思うよ。


「いえいえ。じゃあ、お昼ご飯を作っていくよ」

「うんっ。……近くで見ていていい? 洋平君が料理をするのを見るのは初めてだし」

「ああ、いいぞ」

「ありがとう」


 俺は昼食のそうめん作りに取りかかる。

 そうめんを茹でるため、鍋に水を入れ、IHで温め始める。

 鍋の水が温まるまでの間に、俺は麺汁の具材のわかめ、きゅうり、カニカマと薬味であるネギとごまを用意していく。それぞれの具材や薬味をお皿に乗せる。

 また、きゅうりやネギ、わかめを包丁で切ったとき、


「上手だね、洋平君」


 と、千弦は俺の包丁捌きを褒めてくれた。千弦に褒められて凄く嬉しい。

 茹で終わったときにそうめんをしめるための氷水や、盛り付けるための大きめのガラス皿を用意した。

 鍋の水が沸騰したので、俺は2人分のそうめんを茹でていく。送られてきたそうめんに同封されていた説明のしおりによると、茹で時間は1分半とのこと。

 しおり通りにきちんと1分半茹でた後、そうめんをざるに移して、水道水でさっと洗った後、用意していた氷水でしめた。こうすることで麺にコシが出ると両親から教わった。あと、外は蒸し暑かったから、氷水の冷たさがたまらない。

 そうめんをしめた後、ガラス皿にそうめんをよそった。


「よし、そうめん完成だ!」

「美味しそうだね! お疲れ様!」

「ありがとう」


 食事を作り終わって、労いの言葉を言ってもらえるのは嬉しいものだ。

 そうめんを乗せたガラス皿を食卓に置いた。

 麦茶や麺汁入れを用意し、俺と千弦は向かい合う形で椅子に座った。その際に俺はエプロンを脱いだ。

 千弦と俺はそれぞれ、自分の好きな濃さの麺汁を作る。


「よし、これで麺汁もOK」

「じゃあ、そうめんを食べようか」

「うんっ、いただきます!」

「どうぞ召し上がれ。いただきます」


 そうは言うけど、俺はそうめんには手を伸ばさず、千弦がそうめんを食べるのを見ることに。千弦に初めて食事を作ったのもあり、美味しく食べてもらえるかどうか緊張しているからだ。

 千弦はガラス皿からそうめんを一口分取り、麺の半分ほどを麺汁につける。そして、ズズッと音を立ててそうめんを食べる。……美味しくできているだろうか。そう思いながら千弦を見ていると、


「冷たくて美味しい! コシもあるし!」


 千弦はニッコリとした笑顔でそう言ってくれた。そのことに嬉しい気持ちになると同時に、ほっとする。思わず胸を撫で下ろした。


「そう言ってくれて嬉しいよ。美味しく作れて良かった。あと、千弦に食事を初めて作ったから緊張してさ。ほっとしてる」

「そうだったんだ。その気持ち分かるなぁ。私も、洋平君と付き合う直前に、洋平君に初めて玉子焼きを作って、一つ目を食べてもらうとき、美味しく食べてもらえるかなって緊張したから」

「そうだったんだ。……思い返すと、あのときの千弦はちょっと緊張した様子だったな」


 それで、俺が美味しいって言うと、千弦はとても嬉しそうな様子で「嬉しい」って言っていたっけ。あのときの千弦はこういう気持ちだったんだな。


「俺も食べよう」


 まずは千弦のように、具材や薬味を入れずに食べるか。

 ガラス皿からそうめん一口分を箸で掴み、麺半分ほどを麺汁に入れる。そして、ズズッと一口食べる。

 千弦の言う通り、コシがあって美味しいなぁ。しおり通りの時間で茹でて、氷水でしめたからだろう。


「冷たくて美味しい」

「美味しいよね。洋平君、麺を茹でたり、しめたりするのも上手だね」

「嬉しいな。さあ、どんどん食べて」

「うんっ」


 その後は各々自由に具材や薬味を麺汁に入れて、そうめんを食べていく。

 麺汁に入れる具材の種類や量で様々な味わいが楽しめるのがいいな。

 千弦は美味しそうにそうめんを食べている。前に千弦に言ったけど、美味しそうに食べる姿は好きだなぁ。


「そうめん美味しいな。あと、家には洋平君と私しかいないし、洋平君の作ったお昼を食べているから、まるで同棲しているような感じがするよ」


 えへへっ、と千弦は幸せそうな笑顔で言ってくる。笑顔が可愛いし、同棲っていう言葉もあって結構キュンとなる。

 家族が誰もいない今日に、うちでそうめんを食べようって言ってみて本当に良かった。


「千弦の言うこと分かるよ。あと……いつかは同棲したいな」

「そうだねっ」


 ニコッとした可愛い笑顔で同意してくれる千弦。そのことに胸が温かくなった。

 大好きな千弦と一緒にいたいから、いつかは同棲したい。千弦と同棲するのはいつになるだろうか。学生のうちか。それとも、社会人になってからか。いつからにせよ、同棲することになったら、千弦が同棲して良かったって思えるように一緒に生活していきたい。


「ねえ、洋平君。そうめんを食べさせ合いたいな。洋平君が初めて作ってくれたご飯だし」

「千弦らしいな。もちろんいいぞ」

「ありがとう!」


 千弦は麺汁入れと箸を持って、俺の隣の椅子まで移動する。


「麺汁は相手のものを使おうか。麺汁の濃さとかも違うだろうし」

「そうだな」

「了解。何か入れてほしい具や薬味はある?」

「きゅうりとごまとネギをお願いします」

「きゅうりとごまとネギだね。分かった」


 千弦は俺の麺汁入れにきゅうりとごまとネギを入れ、その後にガラス皿からそうめんを一口分とり、麺汁につける。


「はい、洋平君。あ~ん」

「あーん」


 俺は千弦にそうめんを食べさせてもらう。

 きゅうりと一緒に食べるそうめんは、ごまとネギの入った麺汁の味とよく合っていて美味しいな。これまでに、自分でも同じものを入れて食べたけど、千弦に食べさせてもらう方が美味しい。


「凄く美味しいよ、千弦。ありがとう」

「いえいえ」

「じゃあ、今度は俺が食べさせるよ。千弦は何か入れてほしい具や薬味はある?」

「わかめとカニカマとゴマをお願いします」

「わかめとカニカマとゴマだな。分かった」


 千弦の麺汁入れにわかめとカニカマとゴマを入れ、俺はガラス皿からそうめんを一口分取り、麺汁につける。


「はい、千弦。あーん」

「あ~ん」


 千弦にそうめんを食べさせる。

 千弦はそうめんをすすり、モグモグと食べていく。美味しいのかモグモグしながらニコッとした笑顔になって。その一連の流れ全てが可愛くて。


「凄く美味しいよ、洋平君! ありがとう!」

「いえいえ。あと、食べる姿が可愛かったよ」

「ふふっ、そっか。あと、食べさせ合えて良かったよ。ありがとう!」

「いえいえ。こちらこそありがとう」


 お互いにお礼を言い、千弦は俺の正面の椅子に戻った。

 その後も千弦と一緒にそうめんを食べていく。

 具材も薬味も俺にとっては定番だし、これまでに何度も食べてきたけど、今日が一番美味しく感じられた。なので、そうめんも具材も2人で難なく完食できた。ごちそうさまでした。

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