第27話『期末試験』
翌日からは、バイトのある日を除いて、千弦と星野さんと神崎さんと琢磨と吉岡さんと一緒に期末試験対策の勉強をしていく。
中間試験のときと同じで、俺はみんなの分からないところを教える役目になることが多い。ただ、教えると理解が深まるのでいい勉強になっている。
たまに、古典や英語科目などで分からないところは千弦と星野さんに訊くことも。2人が分かりやすく教えてくれるのもあり、分からないことを解消できている。
また、結菜も同じ時期に中学の期末試験があるので、結菜も一緒に勉強する日もある。結菜の分からないところは、俺と千弦と星野さんを中心にみんなで教える。
期末試験明けにみんなで七夕祭りに行くからだろうか。みんな、やる気になって試験勉強に取り組んでいる。俺も七夕祭りに行ったり、千弦とお祭りデートをしたりするのが楽しみだから、いつも以上に集中して取り組めている。
また、七夕祭りが開催される7月7日の天気予報を確認できるようになってからは、毎日確認している。確認できるようになった直後は曇り時々雨の予報だったけど、何日か経ってからは曇りの予報が続くように。どうか、雨が降らない予報が当たりますように。
そして、7月2日から期末試験が始まった。
千弦や琢磨達と一緒に勉強したおかげで、どの科目も手応えがある。この調子でいけば、中間試験と同じくらいの点数や順位を取れそうだ。
千弦と星野さんも結構手応えがあり、中間試験に続いて学年上位者一覧に載れるかもしれないと言っていた。
苦手科目があり、中間試験では平均点以下の科目があった琢磨と吉岡さんと神崎さんも手応えは悪くないようで「赤点を取ってしまいそうな科目はない」とのこと。
また、翌日の3日からは妹の結菜が通う中学の期末試験が始まった。結菜曰く「なかなかいい!」そうだ。
みんな調子がいいようで良かった。この調子で最後まで駆け抜けたい。
――キーンコーンカーンコーン。
7月5日、金曜日。
期末試験最終日。
本日の最終科目であり、期末試験の最終科目でもある数学Bの試験時間の終了を知らせるチャイムが鳴った。
期末試験が終わったのもあり、教室の中の雰囲気は一気に明るくなる。中には「終わった!」などと喜びの声を上げるクラスメイトが何人もいた。また、
「よっしゃあっ! 期末終わったぜー!」
俺の一つ前の席に座っている琢磨は拳にした両手を突き上げて、喜びの声を上げた。後ろ姿だけど、琢磨の姿を見ると何だか清々しい気持ちになる。
試験監督の先生の指示により、列の一番後ろに座っている俺は同じ列のクラスメイト達の答案用紙を回収していく。
教卓のところにいる試験監督の先生に答案用紙を渡して、自分の席に戻る際、
「みんなのおかげで数Bも赤点は免れられそうだわ」
と、神崎さんはほっとした様子で言っていた。赤点回避できそうか。神崎さんは数学Bを含め、苦手科目を勉強するときは分からないところを積極的に質問していたからな。
「そうか。そう思える手応えがあって良かった。期末試験お疲れ様」
「白石もお疲れ様。白石は数Bどうだった?」
「結構手応えあったよ」
「さすが」
神崎さんはニコリと笑いながらそう言った。
俺は自分の席に向かって歩いていく。その中で千弦や星野さん、琢磨、吉岡さんの方を見ると……みんないい笑顔だ。期末試験が終わったことの解放感からだろう。あとは、今日から部活動が再開したり、みんなで行くと約束した七夕祭りが明後日に迫っていたり、夏休みまであと2週間ほどだったりするのもありそうか。
千弦と星野さんと目が合うと、2人は笑顔で俺に小さく手を振ってくれる。そんな2人に俺も小さく手を振った。
「洋平、期末試験終わったな! 洋平、おつかれー!」
琢磨の前まで来たとき、琢磨はとっても明るい笑顔でそう言ってきた。定期試験が終わると毎度のこと嬉しそうに言うから、試験が終わったのだと実感できる。
「ありがとう。期末終わったな。お疲れ様、琢磨」
「おう! 中間よりも手応えがあったぜ。赤点はないと思う。もしかしたら、平均点狙えるかもしれねえ!」
「おぉ、調子良かったんだな。中間よりも手応えがあって良かった」
「おう! みんなのおかげだぜ。特に洋平の。数Bも結構質問したから。ありがとな!」
琢磨は白い歯を見せながらお礼を言い、俺の背中をパシッと叩いてきた。こうしてお礼を言われて琢磨に背中を叩かれるのも、試験が終わったときの恒例のことだ。
いえいえ、と琢磨に言って、俺は自分の席に戻った。
その後、担任の山本先生が来るまでは、琢磨と期末試験のことや最近お互いに読んでいる漫画について雑談した。
琢磨と雑談して数分ほど経って、担任の山本先生が教室にやってきて終礼が始まる。
「みなさん、期末試験お疲れ様でした。試験の答案は来週の各教科の授業で返却となります。ちなみに、私が担当する現代文と古典の答案は次の授業で返却しますよ」
山本先生は微笑みながらそう言った。
現代文と古典の答案は次の授業で返却か。どちらの科目も手応えがあったので、中間試験に続いて高得点だといいな。
「また、試験が終わったので、この後の放課後から部活動が解禁になります」
山本先生がそう言うと、一部の生徒達から「よしっ」という声が。そのうちの一人は俺の前に座っている琢磨である。先週の火曜日から部活動が禁止になっていたからな。琢磨はバスケが大好きだし、早く部活動をしたいのかも。
「それと、来週の月曜からは半日期間となり、1学期最終日の前日までは午前中のみの授業となります」
山本先生がそう言うと、再び一部の生徒達から「よしっ」といった声が。そのうちの一人は琢磨である。お昼までで学校が終わるから、その分、放課後の部活動の時間がいつもより長くなるからなぁ。
「では、来週の月曜日にまた会いましょう。委員長、号令をお願いします」
その後、クラス委員長の女子生徒の号令により、今日の日程はこれにて終わった。まあ、俺は琢磨と神崎さんなどと一緒に掃除当番があるけど。そういえば、中間試験があった週も掃除当番だったな。何だか運命のようなものを感じる。
千弦、星野さん、神崎さん、吉岡さんが俺と琢磨のところにやってくる。俺達6人で「期末試験お疲れ様」とお互いに労った。
「洋平君や彩葉ちゃん達と一緒に勉強したおかげで、期末試験も結構手応えあったよ。みんなありがとう」
「私も結構手応えあったよ。中間に続いて成績上位者に載れたらいいな。そう思えるほどにできたのはみんなのおかげだよ。ありがとう」
「俺もみんなと一緒に勉強したおかげで何とか乗り越えられたぜ! ありがとな!」
「あたしも何とかなったよ! 赤点はないと思う。みんなありがとね」
「あたしも赤点はないと思える手応えだったわ。本当にありがとう。特に色々教えてくれた千弦と彩葉と白石は」
「俺も中間試験に続いて結構手応えがあったよ。みんなと勉強会をして、みんなの分からないところを教えたり、千弦や星野さんに分からないところを教えてもらったりしたおかげだ。今回もありがとう」
俺達はそれぞれ、みんなに対してお礼を言った。それもあり、千弦達はみんないい笑顔になっている。
中間に続いて期末も手応えがあったし、今後の定期試験でもこの6人で一緒に試験勉強をすることになりそうだ。
「期末試験も終わったし、明後日の七夕祭りが一気に近づいた気がするぜ!」
「琢磨君の言うこと分かる!」
「七夕祭りを楽しみに試験勉強を頑張ったものね。みんなで行くの楽しみだわ」
「そうだね、玲央ちゃん。七夕祭りは毎年行くし、千弦ちゃん以外とは一緒に行くのが初めてだから」
「私も楽しみだよ。みんなと行くのはもちろん、途中で洋平君とデートするし」
「そうだな。俺も七夕祭り楽しみだ。千弦とのデートもあるから、今までで一番楽しみだよ」
だから、期末試験が終わった今……琢磨の言う通り、七夕祭りが一気に近づいた気がする。
「先生も楽しみよ。調津の七夕祭りに行くのは初めてだから」
気付けば、山本先生が俺達のところに来ていた。七夕祭りのことが話題だからか、先生の顔には柔らかい笑みが浮かんでいる。
「楽しいですよ! 屋台がいっぱいありますし、短冊に願い事を書いて笹に飾れますから。当日は一緒に楽しみましょう!」
吉岡さんが持ち前の明るい笑顔でそう言うと、山本先生はニコッと笑って、
「ええ。楽しみましょう!」
と言った。この様子からして、先生もお祭りを楽しめると思う。
――プルルッ。プルルッ。
机に置いてあるスマホが鳴ったので確認すると……遊園地に行った人がメンバーになっているグループトークに、結菜から新着メッセージが届いたと通知が。
グループトークにメッセージが届いたからか、千弦達もスマホを確認している。
通知をタップすると、
『中学の期末試験終わりました! 最後まで調子良くできました! お兄ちゃん達と一緒に勉強したり、飛鳥さんが『期末頑張ってね』って応援したりしてくれたおかげです。ありがとうございます!』
『高校の方も今日で期末が終わったんですよね。お疲れ様でした! 日曜日の七夕祭りが楽しみです!』
という結菜からのメッセージが表示された。結菜の方も試験が終わったか。そして、七夕祭りを楽しみにしていると。俺達と考えることは一緒だな。
俺達7人は結菜に向けて、「試験お疲れ様。七夕祭り楽しみだね」という旨のメッセージを送った。
その後、俺と琢磨と神崎さんは、同じ班の生徒達と山本先生と一緒に教室の掃除をした。琢磨と神崎さんと山本先生中心に雑談しながらだし、期末試験が終わったのもあって楽しく掃除できた。
掃除が終わり、廊下で待ってくれていた千弦と星野さんと吉岡さんと一緒に教室を後にする。
今日は金曜日なので、琢磨と吉岡さんと神崎さんはもちろん、手芸部に所属している千弦と星野さんも活動がある。また、俺はお昼過ぎからバイトのシフトが入っている。なので、被服室がある特別棟に繋がる渡り廊下のある2階で千弦と星野さんと別れるとき、
「洋平君、バイト頑張ってね」
「千弦も部活頑張って」
と、千弦と俺は言葉を交わしてキスした。これで、この後のバイトも頑張れそうだ。
昇降口で琢磨と吉岡さんと神崎さんと別れ、俺は学校を後にする。
バイトのシフトまで少し時間があるので、駅前でラーメンを食べてからバイト先へ向かった。
千弦とキスしたし、ラーメンを食べてお腹を満たせたし、明後日に七夕祭りへ行き、途中で千弦とお祭りデートをするという楽しみもあるので、夜までのバイトを頑張れた。




