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第8話『千弦の部屋』

「白石君に会って、千弦のことでお礼を言えて良かった」

「私もよ。今日は来てくれてありがとう」

「いえいえ。俺も孝史さんと果穂さんとお話しできて良かったです」


 藤原さんは御両親からとても大切にされていることが分かったし。そんな藤原さんをナンパから助けることができて良かったと思えたから。あとは、藤原さんの家に初めて来られたし。


「白石君、彩葉。お母さんとお父さんの件も終わったし、そろそろ私の部屋に行こうか」

「そうだね、千弦ちゃん」

「分かった」


 藤原さんの部屋か。どんな感じなのか楽しみだな。落ち着いた雰囲気なのか。それとも、ぬいぐるみ好きなのもあるし可愛らしい雰囲気なのか。

 藤原さんと星野さんと一緒にリビングを後にして、藤原さんの部屋がある2階に上がっていく。初めて来るので、廊下や階段でもつい周りを見てしまう。

 2階に上がり、少し廊下を歩いて、ある扉の前に立ち止まる。その扉には木製の丸いネームプレートがかけられている。ドアプレートにはピンクの柔らかいフォントで『ちづる』という文字が。文字も木製のパーツでできている。この扉の先が藤原さんの部屋かな。


「ここが私の部屋だよ。さあ、どうぞ」


 藤原さんは『ちづる』というドアプレートがかけられた扉を開け、星野さんと俺を自分の部屋に通してくれた。


「失礼します」


 必要ないかもしれないけど、初めてなので、藤原さんの部屋に入るときにそう言った。


「おぉ……」


 パッと見た感じ、部屋の広さは俺の部屋と同じくらいか。

 部屋の中を見渡すと、温かみがあって落ち着いた雰囲気だ。カーペットやクッションカバー、ベッドのシーツや布団のカバーなどの色が暖色系やベージュ、水色といった色だからだろうか。ベッドの上や勉強机の上には動物のぬいぐるみが置かれており、枕の隣にはこの前俺がクレーンゲームでゲットしたハチワレ猫のぬいぐるみがあって。だから、可愛らしい雰囲気もあって。ゴミとかが落ちていなくて綺麗な部屋だ。

 また、ベッドやテレビ、ローテーブルの配置とか、窓のある位置など俺の部屋と似ている部分がいくつかある。

 本棚には本がたくさん入っており、勉強机やテレビ台には好きなキャラクターなのかミニフィギュアも置かれている。アイスを奢ってもらった後にアニメイクに行ったとき、漫画やラノベやアニメが大好きだって言っていたもんな。

 あと、藤原さんの部屋だからなのか。それとも、藤原さんと星野さんが近くにいるからなのか。ほんのりと甘い匂いが香ってくる。


「素敵な部屋だな。落ち着いた雰囲気で、可愛らしさもあって」

「ありがとう。白石君にそう言ってもらえて良かったよ。今日は白石君が来るから部屋の掃除もしたんだ」

「そうだったんだ。綺麗な部屋だとも思ったよ」

「良かった」


 藤原さんはほっとした様子に。きっと、初めて俺が来るから、自分の部屋がどう思われるか気になって、緊張していたのだろう。普段の王子様な藤原さんからして、そういうことは気にしないイメージがあった。


「あと、ベッドにこの前ゲットしたハチワレ猫のぬいぐるみがあるな」

「ああ。抱き心地が良くて、抱きながら寝ることが多いよ。気持ちいいから、これまでよりも早く眠りにつけるよ」

「さっき、ここに来たときに抱かせてもらったけど、柔らかいから凄く抱き心地がいいよね」

「いいよね。白石君にはとてもいいものをゲットしてもらったよ」

「そう言ってもらえて何よりだ。抱いて寝たり、枕の側に置いてもらえたりしていてくれて嬉しいよ」

「いえいえ。あのときは本当にありがとね」


 藤原さんは穏やかな笑顔でお礼を言った。クレーンゲームで遊んだとき、俺が猫のぬいぐるみを取ろうかと言ってみて本当に良かった。


「猫のぬいぐるみ以外にも色々なぬいぐるみがあるけど、この中には藤原さんの手作りのものってあるのか? 藤原さんは手芸部だし」

「勉強机に置いてある熊のぬいぐるみと三毛猫のぬいぐるみは自分で作ったよ。ぬいぐるみを作るのが好きで」

「そうなんだ」


 手作りだと知ったので、勉強机の近くまで行き、熊のぬいぐるみと三毛猫のぬいぐるみを見る。


「どっちも可愛いし、どこかで買ったんじゃないかって思えるくらいに上手だな」

「可愛いよね」

「ありがとう」


 藤原さんはとても嬉しそうな笑顔で言った。

 どっちのぬいぐるみも本当に上手にできている。きっと、『好きこそものの上手なれ』って言葉はこういうことを言うのだろう。


「白石君、彩葉、冷たいものを持ってくるよ。何がいい?」

「そうだな……コーヒーをお願いしていいかな?」

「私も」

「2人ともコーヒーだね。了解。ガムシロップとかミルクは入れる?」

「俺は何も入れずにブラックで」

「私は……ガムシロップを一つ入れてくれるかな」

「白石君はブラックで、彩葉はガムシロップ一つだね。了解。2人は適当にくつろいでて」

「藤原さん。本棚を見てもいいかな? 本がたくさん入っているし。どんな本があるのか見たくてさ」

「うん、いいよ」

「ありがとう」

「じゃあ、行ってくるよ」


 藤原さんは一旦、部屋を後にした。

 藤原さんに許可をもらったので、俺は本棚の前まで向かう。星野さんもついてくる。


「漫画やラノベ中心にいっぱいあるな。水曜日にアニメイクに行ったとき、藤原さんはそういったものが好きだと聞いていたけど」

「小学校の頃から千弦ちゃんは漫画やアニメが大好きだよ。ラノベも読み始めていたよ。私も好きだから、千弦ちゃんと仲良くなった一つのきっかけになったの」

「そうなんだ」


 共通して好きなものがあると、そこから話が弾んで、仲良くなりやすいよな。

 本棚を見てみると……恋愛系やラブコメ系の漫画やラノベが多い。女性主人公のファンタジーものも。あとは日常系の漫画や少女漫画も結構ある。あと、現代文の教科書に載る作家の作品やメディア化された作品中心に一般の小説も。どうやら、藤原さんは恋愛要素のある作品を中心に幅広く読むようだ。

 あと、本棚の一番下の段には、イラスト集や設定資料集など、サイズの大きい書籍も入っているな。背表紙に何も書かれていないけど、赤いハードカバーの立派なものもある。


「ラブコメや日常系中心に、俺も持っている作品が結構あるな」

「そうなんだね。じゃあ、千弦ちゃんとはもちろんだけど、私とも話が合いそうだね。私もラブコメや日常系の漫画やラノベを持っているし、アニメも見るから」

「星野さんもラブコメとか日常系が好きなんだ」

「うん」


 星野さんはニコッと笑いながら頷く。自分の同じものが好きだと分かって親近感が湧くなぁ。


「お待たせ」


 藤原さんが戻ってきた。藤原さんはトレーを持っており、トレーにはマグカップ3つと、クッキーの入ったお皿が乗っていた。


「おかえり、千弦ちゃん」

「おかえり」

「ただいま。……彩葉も本棚を見ていたんだ」

「うん。白石君と一緒にね。白石君、ラブコメや日常系の本を中心に結構持っているんだって」

「へえ、そうなんだ。じゃあ、一緒に楽しめる作品が結構あるね。彩葉とも」


 藤原さんは落ち着いた笑顔でそう言った。星野さんとも楽しめると言うところが、2人の友情が深いんだなぁと思わせてくれる。


「アイスコーヒーを淹れてきたよ。あと……白石君が来るから、実は午前中にクッキーを焼いたんだ。だから、クッキーも持ってきた」

「ありがとう」


 まさか、今回のためにクッキーを作ってくれたとは。全然予想していなかったのでかなり嬉しい。

 俺と星野さんはローテーブルの方に行き、俺は本棚に一番近いクッションに、星野さんは俺の左斜め前のクッションに座った。

 藤原さんは俺と星野さんの前にそれぞれコーヒーが入ったマグカップを置く。その後に、残りのマグカップとクッキーが入ったお皿を置いた。トレーを勉強机に置くと、俺の右斜め前にあるクッションに腰を下ろした。


「じゃあ、さっそくクッキーをいただこうかな」

「どうぞ召し上がれ」


 お皿には丸いクッキーが何枚もある。ほんのりと焼き色が付いていて美味しそうだ。


「いただきます」


 お皿からクッキーを1枚取り、藤原さんと星野さんにじっと見られる中でいただく。

 サクッ、サクッ、と歯ごたえが良く、香ばしい香りとともにクッキーの甘さが口の中に広がっていく。


「凄く美味しいよ、このクッキー」


 藤原さんの顔を見て素直に感想を伝えると、藤原さんは嬉しそうな笑顔になる。


「そう言ってもらえて良かったよ」

「良かったね、千弦ちゃん」

「ああ」

「藤原さんってお菓子を作るのも上手いんだな」

「ありがとう。お菓子作りや料理が好きで。ただ、彩葉の方がもっと上手だよ。彩葉から教わることもあるくらいだし」

「そうなんだ」


 こんなに美味しく作れる藤原さんに教えるほどだ。きっと、星野さんが作ったお菓子や料理は物凄く美味しいのだろう。


「小学生の頃から、たまに、放課後や休日に千弦ちゃんと一緒にお菓子作りや料理をしたりするの」

「そうだね」


 藤原さんと星野さんは楽しそうに笑い合っている。きっと、料理をしたり、お菓子を作ったりするのは、2人にとって楽しい一緒の過ごし方の一つなのだろう。

 アイスコーヒーを一口飲む。

 苦みがしっかりとしていて美味しい。クッキーがあるから苦めに作ったのだろうか。あと、結構冷たいのもいいな。コーヒーの冷たさが体に染み渡っていく感覚が気持ちいい。


「アイスコーヒーも美味しいな」

「良かった。白石君の味の好みは分からなかったんだけど、クッキーもあるから苦めに作ったんだ。ブラックでいいって言っていたから、苦くても大丈夫かなって」

「そうだったんだ。苦みの強いコーヒーは好きだから凄くいいよ。あと、今日は暖かいから、冷たいのがまたいいな」

「そっか。コーヒーも口に合って嬉しいよ」

「良かったね、千弦ちゃん」


 星野さんの言葉に、藤原さんは笑顔で「うんっ」と頷く。その姿が可愛くて。

 さっきまで本棚を見ていて、俺も持っている本が結構あると話したのもあり、コーヒーやクッキーを楽しみながら、3人で漫画やラノベやアニメの話に花を咲かせた。

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