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クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。  作者: 桜庭かなめ
続編

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第24話『また助けてくれたね。』

 流れるプールを楽しんだ俺達は、遊具のレンタルコーナーに浮き輪を返却した。


「流れるプール楽しかったね!」

「ああ、そうだな。水の流れが気持ち良かった」

「気持ち良かったよね。……次はどこのプールに行く? それとも休憩する?」

「そうだな……一旦休憩したいな。喉渇いてきた」


 屋内だけどプールで遊んだし、ウォータースライダーで叫んだり、流れるプールで千弦と喋ったりしたからかな。


「分かった。じゃあ、入口の前にある自販機で飲み物を買って、それを飲みながらサマーベッドで休憩しない?」

「いいな。そうしよう」


 千弦からの提案を快諾する。それもあってか、千弦はニコッとした笑顔を見せる。


「決まりだね。更衣室にお財布を取りに行かないと」

「ああ。その前に、俺……お手洗いに行ってくるよ」

「うん、分かった」


 俺達は屋内プール内にあるお手洗いの近くまで向かう。

 千弦にはお手洗いの近くで待ってもらい、俺は男性用のお手洗いに入った。

 小便器も個室も全て埋まっている。ただ、幸いにも小便器の方はすぐに空いた。良かった。

 用を済ませ、手を洗って男性用のお手洗いを出ると――。


「彼氏とデートで来ているので」


 千弦のそんな声が聞こえた。普段よりもやや低いトーンの声で。

 千弦のいる方に視線を向けると、千弦の前には茶髪の男と赤髪の男がいた。どちらの男も若そうで、大学生くらいに見える。

 千弦は真面目な表情で男達を見ている。さっきの千弦の言葉からして、男達からのナンパを断ったのだろう。


「本当かぁ?」

「嘘ついているんじゃないのぉ?」


 男達はヘラヘラと笑いながら千弦に言う。「彼氏と来ている」という言葉はナンパを断る常套句の一つだもんな。


「本当です。お手洗いに行っている彼氏を待っているんです」


 千弦は依然として真面目な表情で答えている。

 千弦の言っていることは本当だ。それを分からせるためにも早く行かないと。


「千弦!」


 千弦の方へ歩きながら、いつもよりも大きな声で千弦の名前を呼ぶ。

 千弦はこちらに視線を向けると、ぱあっと明るい笑顔になり、


「洋平君!」


 と、可愛らしい声色で俺の名前を呼んでくれた。

 俺は千弦のすぐ側まで行き、男達と対峙する。男達はさっきまで顔に浮かべていた笑みが消えており、気まずそうな様子に。


「彼女の言う『彼氏』とは俺のことです」


 俺は千弦の肩に手を回し、


「この人は俺の彼女なんで、ナンパしないでください」


 男達の目を見ながら、俺はそう言った。

 洋平君……と、千弦は俺の名前を呟きながら、うっとりとした様子で見つめている。


「ほ、本当だったんすね!」

「嘘つき呼ばわりしてすみませんでした! デートを楽しんでください!」


 苦笑いをして、それまでとは違って敬語でそう言うと、男達は俺達の元から立ち去っていった。どうやら、千弦の表情の変化や俺の言葉で、千弦が彼氏とデートに来ているのだと分かってくれたようだ。すぐに立ち去ってくれて良かった。


「千弦、大丈夫か?」

「うん。洋平君がお手洗いに入って少ししたときに、さっきの人達に『一緒に遊ばないか?』ってナンパされて」

「そうだったのか。水着姿の千弦は凄く魅力的だし、一人でいたから、あの男達にナンパされたんだろうな」

「ふふっ。一人だから声を掛けたんだろうなって思ったよ。4月にナンパされたときよりは怖くなかったけど、洋平君が助けに来てくれて凄く嬉しかった。ナンパから私のことをまた助けてくれたね。ありがとう」

「いえいえ。彼氏として当然だし、屋内プールに来たときに何かあったときは助けるって言ったからな」

「うん。あと、助けに来て、俺の彼女だからナンパしないでって言ったのが凄くかっこよかったよ! 洋平君、大好き!」


 千弦は頬を中心に赤くなっている顔にニッコリとした笑みを浮かべてお礼を言うと、俺を抱きしめてキスしてきた。その瞬間に「きゃっ」という女性の声や、「おおっ」という男性の声が聞こえてきて。

 流れるプールを出てからあまり時間が経っていないので、千弦の唇はいつもと違って冷たさを感じて。ただ、特別感があっていいなって思える。そう思いながら、両手を千弦の背中へと回した。

 あと、お互いに水着姿で抱きしめ合っているから、千弦の体の柔らかさがダイレクトに感じられる。豊満な胸の柔らかさは特に。水着姿で抱きしめ合うのは初めてだから、千弦の体を今までで一番感じていて。そのことにドキドキして、ムラムラもして。プールで遊んで冷えていた体が段々温かくなってきた。千弦からも温もりが伝わってくるように。ドキドキするけど、千弦の体の温もりや柔らかさが心地いい。

 少しして、千弦の方から唇を離した。すると、至近距離から恍惚とした笑顔で見つめる千弦がいて。


「俺も大好きだよ、千弦。千弦を助けられて良かった」

「うんっ。ありがとう」


 千弦は嬉しそうな笑顔でお礼を言ってくれた。千弦が笑顔でいられるように、彼氏としてこれからも頑張っていかないとな。


「じゃあ、自販機で飲み物を買って、サマーベッドで休憩しようか」

「ああ、そうだな」


 その後、俺達は屋内プールを一旦出て、それぞれ更衣室に小銭入れを取りに行った。

 屋内プールの入口前にあるカップ式の自動販売機で、俺はコーラ、千弦はサイダーを購入した。

 屋内プールに戻り、端の方にあるサマーベッドが並んでいるエリアに。自動販売機で買った飲み物を飲みながら休憩する人も多いのか、サマーベッドの横にはローテーブルも設けられている。

 サマーベッドで休んでいる人もいるけど、たくさん並べられているので2つ以上並んで空いている場所はいくつもあった。千弦と俺は隣同士でサマーベッドに座ることに。

 サマーベッドに座り、仰向けの状態に。脚を伸ばせるのもあってかなり快適だ。千弦も同じなのか、まったりとした様子でサマーベッドに仰向けになっている。その姿は艶めかしさを感じられる。


「気持ちいいね、洋平君」

「気持ちいいよな。……じゃあ、飲むか」

「そうだね。サイダーいただきます」

「コーラいただきます」


 俺はコーラを一口飲む。

 口に入った瞬間、冷たさと一緒に炭酸の刺激が口いっぱいに広がって。その後にコーラの甘味が感じられて。美味しい。


「コーラ美味い!」

「サイダーも美味しい!」


 千弦は爽やかな笑顔でそう言うと、サイダーをもう一口。美味しいのか、千弦は「う~んっ」と声を漏らして。可愛いな。

 千弦を見ながら、コーラをもう一口飲む。さっきよりも甘味が増した気がする。


「洋平君が炭酸飲料を飲むのは珍しいね。カラオケ以来かな」

「確かに……カラオケ以来かも。プールで遊んで体を動かしたし。この前のカラオケで飲んだ甘い炭酸飲料が良かったから飲みたくなったんだ」

「そうだったんだ。私も体を動かしたし、カラオケで飲んだ炭酸が美味しかったからサイダーにしたんだ。それに、これまでもスイムブルーの自販機で飲み物を買うときは甘いものにしていたから」

「そうなんだ。俺も……ここで買う飲み物は甘いものが多かったな」


 今みたいにコーラやサイダーといった炭酸飲料やリンゴジュースやオレンジジュースといった果実系ジュース、あとはスポーツドリンクを買ったときもあったか。家族で行ったときは父さんと母さんに買ってもらったな。


「洋平君。一口交換しない? コーラも一口飲みたいな」

「もちろんいいぞ。俺もサイダー飲みたい」

「ありがとう!」


 千弦は嬉しそうにお礼を言った。一口交換をすることは多いし、違う飲み物を買ったから交換するかもしれないと思っていたよ。

 俺達はドリンクが入っているカップを交換する。


「コーラ一口いただくね、洋平君」

「ああ。サイダー一口いただきます」


 俺は千弦のサイダーを一口飲む。

 コーラとは違った爽やかな甘さがいいな。ただ、千弦が飲んだ後だからだろうか。これまでで飲んだサイダーの中で一番甘い気がする。


「サイダーも美味しいな」

「コーラも美味しいね!」


 千弦はニコッとした笑顔でそう言ってくれる。俺が作ったわけではないけど、自分の買ったものを美味しいと言ってもらえるのは嬉しいな。


「洋平君、ありがとう」

「こちらこそありがとう」


 俺達はお互いにコップを返した。

 コーラを再び飲むと……さっきまで以上に甘く感じられて。もしかしたら、千弦との間接キスは飲み物を甘く感じさせる効果があるのかもしれない。

 それからも、千弦と談笑して、コーラを飲みながら、サマーベッドでゆっくりとくつろぐのであった。

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