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クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。  作者: 桜庭かなめ
続編

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第20話『プールデートに行こう』

 6月23日、日曜日。

 プールデート当日になった。プールデートに行こうと決めた火曜日からはあっという間だった気がする。特に、新しい水着を買った後の木曜日以降の時間の進みは早かったな。

 午後1時10分過ぎ。

 俺は洲中駅に向けて家を出発する。この後、午後1時半に洲中駅の改札前で千弦と待ち合わせをすることになっている。


「蒸し暑いな……」


 梅雨らしく、雨がシトシトと降っていて蒸し暑い。今日は夜までずっと雨予報だ。ただ、これから行くのは屋内プールなので、雨が降っていても全く問題はない。あと、蒸し暑いから千、弦と一緒にプールに入るのがとても楽しみだ。

 数分ほど歩くと、洲中駅が見えてきた。

 雨が降っているから、晴れや曇りの日ほど人は多くないけど、それでも日曜日のお昼なのでそれなりに人が行き交っている。バイト先の喫茶店のゾソールに入っていく人の姿も見えた。

 ゾソールの前を通って、俺は南口から洲中駅に入る。

 待ち合わせの時間まで10分くらいあるけど、千弦はもう改札の前にいるだろうか。そう思いながら改札口の方を見ると、


「洋平君!」


 改札口の近くに、スラックスにノースリーブのブラウス姿の千弦がいた。首に掛けているシルバーのネックレスがキラリと光っていて。千弦は俺の名前を呼び、可愛らしい笑顔で手を振ってくる。今日も千弦は本当に可愛いな。あと、水着などが入っているのか、大きめのトートバッグを肩に掛けている。


「千弦」


 と、千弦の名前を呼び、手を振りながら、千弦のところまで行った。


「お待たせ、千弦。待ったかな」

「ううん、そんなことないよ。さっき来たから」

「そうか。あと、今日の服もよく似合っているよ。可愛い。ネックレスも似合ってる」

「ありがとう! 嬉しいな。洋平君もVネックのTシャツがよく似合ってるよ。かっこいいよ!」

「ありがとう」

「うんっ。……待ち合わせして会えたから、学校へ行くときみたいにキスしたいな」

「いいぞ。分かった」


 俺がそう言うと、千弦はそっと目を瞑る。俺からキスしてってことか。

 俺は千弦にキスをする。

 千弦の唇の温もりと柔らかさがとてもいい。千弦の甘い匂いも。ドキドキするけど、心地良さも感じられる。

 数秒ほどして、俺から唇を離す。すると、目の前には俺にニッコリとした千弦の可愛い笑顔があって。千弦の笑顔を見た瞬間、今日のプールデートはとても楽しい時間になりそうだと思えた。


「ありがとう。キスできて嬉しい」

「俺もだ。……じゃあ、さっそく行くか」

「うんっ」


 俺達は改札を通り、スイムブルー八神の最寄り駅・清王八神(せいおうやがみ)駅のある方面に向かう電車が到着するホームに行く。ちなみに、清王八神駅は清王線の終点の駅である。

 電光掲示板を見ると、次は5分後に急行の清王八神行きが到着するのか。千弦と話して、この電車に乗ることに決めた。

 座る確率を上げるために、先頭車両に乗ることに。なので、先頭車両が止まる場所まで移動した。


「座れるといいね」

「そうだな」


 急行電車だけど、洲中駅は利用客が多いので降りる人は結構いるんじゃないかと思う。

 千弦と雑談しながら電車が来るのを待った。

 定刻通りに、清王八神行きの急行電車が調津駅に到着した。

 扉が開くと、何人もの人が降車してくる。これは千弦と隣同士で座れそうだ。そんな期待を胸に抱き、俺達は乗車した。

 降車した人が何人もいたのもあり、空席となっている場所がいくつもある。その中には端から2つ連続で空いている場所もあった。


「あそこにある端から連続で空いている席に座るか」

「そうだね」


 俺達は端から2つ連続で空いている席に座る。端には千弦が座り、千弦の左隣に俺が座る。

 雨が降っていて蒸し暑い中歩いたし、ホームも蒸し暑かった。だから、涼しい場所で座れて快適だ。千弦と隣同士だから嬉しい気持ちにもなる。


「隣同士で座れて良かった」

「そうだね、嬉しいよ。あと、涼しいから快適だね」

「そうだな。先頭車両に乗って正解だったな」

「うんっ」


 千弦はニコッと笑って頷いた。

 それから程なくして、俺達の乗る電車は洲中駅を出発する。

 扉の上にはモニターが2つあり、1つは行き先やこの先停車する駅と所要時間、もう1つはニュースが表示されている。行き先などが表示されているモニターを見てみると……目的地の清王八神駅までは18分か。


「清王八神駅までは18分だってさ」

「18分なんだ。座っているし、洋平君と話していたらあっという間だろうね」

「そうだな」


 普段は電車に乗らないので、18分はなかなかの乗車時間だ。ただ、千弦の言うように、千弦と話していればあっという間に過ぎるだろう。


「スイムブルーには何度も遊びに行ったことがあるけど、洋平君とは初めてだから凄く楽しみだよ」

「俺も凄く楽しみだ」

「ふふっ、そっか。最後に行ったのは去年の夏休みだけど、あのときは次に行くのは恋人と一緒だなんて想像もしなかったよ。去年は彩葉ちゃんとか女の子の友達数人で行っていたから、次も彩葉ちゃん達と一緒かなって」

「そうか。俺が最後にスイムブルーへ行ったのは……2年前だな。俺も最後に行ったときには次は恋人と一緒に来るとは想像できなかったな」

「そっか」


 最後に行った日の俺に、高校2年の夏にクラスメイトの恋人と一緒に遊びに行くって教えたらどんな反応をされるだろう。何を言っているんだと信じてもらえないかもしれないな。


「ちなみに、去年はどこへ遊びに行ったの? 去年買ったっていう水着の写真を送ってくれたってことは、どこかプールや海に遊びに行ったんでしょ?」

「去年は夏休みに神奈川県の湘南へ海水浴に行ったよ。琢磨を含めて、1年のときのクラスメイトの男子数人と」

「そうだったんだね。海水浴もいいよね」

「ああ。楽しかったよ」


 海で泳いだり、ビーチボールや水鉄砲を使って遊んだり、海の家でラムネを買って飲んだりするなどしたな。楽しかったな。


「今日は一緒にプールデートを楽しもうね!」

「ああ、一緒に楽しもうな」

「うんっ」


 千弦は笑顔で首肯する。

 その直後、千弦は俺にそっと寄りかかってきて。そのことで千弦の温もりや重みが感じられて。それがとても心地良い。


「駅に着くまでの間、こうしていてもいい?」

「ああ、いいぞ」

「ありがとう」


 千弦は嬉しそうな笑顔でお礼を言った。すぐ近くから笑いかけてくれるからドキッとして。

 それからは現在放送しているアニメのことや、最近の学校のことなどについて千弦と話しながら電車の中での時間を過ごしていく。

 千弦と話すのが楽しくて、清王八神駅に到着するまではあっという間だった。


「千弦の言う通り、清王八神まであっという間だったな」

「そうだったね」

「八神市に来るのは2年前にスイムブルーで遊んだとき以来だから、何だか懐かしいな」

「そうなんだね。私は1年ぶりだけど、懐かしさはあまりないかな。スイムブルーに遊びに来る年が多いのもあるかも」

「そうか」


 千弦にとっては「今年も八神に来た」という感覚なのかもしれない。

 あと、俺の場合は最後に来たのは中3で、高校生になってからは初めてだ。それも、懐かしいと思える理由の一つかもしれない。

 清王八神駅の西口を出て、スイムブルー八神に向かって歩き始める。雨が降っているので、俺の傘で千弦と相合い傘をして。


「八神市には何度も来たことあるけど、洋平君と一緒に来るのは初めてだからちょっと新鮮に感じるよ」

「その気持ち分かるなぁ。あとは、2年前にはなかった建物ができていたり、2年前にはあった建物がなくなっていたりして景色が所々違うのも新鮮に思える」

「洋平君の言うこと分かるよ。あそこの建物は去年なかったし」

「そうなんだ」


 千弦に共感してもらえて嬉しいな。

 それから、千弦と八神の景色を楽しみながら歩いて数分。


「着いたね、洋平君!」

「着いたな!」


 本日のデートの目的地であるスイムブルー八神に到着した。大きな外観は変わっていないので懐かしい。無事に来られたのだという安心感と、もうすぐ千弦とプールに入れるワクワクとした気持ちを抱く。

 俺達はスイムブルー八神の中に入る。

 ロビーには俺達のようなカップルや家族連れ、学生と思われる若い数人のグループなどのお客さんがいる。今日は蒸し暑いし、雨が降っているから、屋内で遊べるこのプールに来た人が多いのかも。

 受付で利用料金を支払って、俺達は更衣室の前まで向かう。


「千弦。着替え終わったら、ここで待ち合わせをしようか」

「うん、それがいいね」

「じゃあ、また後で」

「うんっ」


 千弦と小さく手を振って、俺は男子更衣室の中に入る。

 更衣室の中には私服から水着に着替える人の姿がちらほらと。中には友達同士なのか数人で喋りながら着替えている人達も。今までは家族や男友達と来ていたから、彼らのように喋りながら水着に着替えていたっけ。

 人のあまりいないところまで移動し、俺は千弦がこの前選んでくれた黒い水着へと着替えていく。こうして一人で着替えるのは初めてだから、ちょっと新鮮に感じた。

 黒い水着を穿いて、紐でウエストのサイズを調整する。


「よし、大丈夫だな」


 ちょうどいいサイズに調整したので、何かの拍子に脱げてしまうことはないだろう。

 あと、この水着を着ると、試着したときのことを思い出す。千弦も星野さんも神崎さんも水着姿を褒めてくれたし、千弦は試着した俺の写真をスマホで撮っていたな。


「……写真か」


 せっかくプールデートに来たんだ。千弦と一緒に水着姿のツーショット写真を撮りたい。千弦にお願いして、プールに入る前に写真を撮らせてもらおう。そう思い、スラックスからスマホを取り出した。

 ロッカーの鍵を閉め、鍵のベルトを左腕に嵌めた。

 更衣室を出ると……千弦の姿はまだなかった。気長に待っていよう。

 周りを見ると……プールの出入口の近くに大きな自動販売機が。あそこにはカップ式の飲み物の自動販売機があった記憶がある。そう思って、自販機を確認しに行くと……記憶通り、カップ式の飲み物の自動販売機だった。

 これまで、ここに来たときはこの自販機で飲み物を買って、屋内プールの中にあるサマーベッドで飲みながら休憩するのが恒例だったな。今日もそういう形で休憩するのもいいかもしれない。

 試着室の前に戻って、スマホを見て千弦のことを待つ。


「お待たせ、洋平君」


 千弦の声が聞こえたので、声がした方に向くと……目の前に、この前俺が選んだ水色のホルターネックビキニを着た千弦が立っていた。千弦の右手にはスマホが。

 試着した姿を見たときにも思ったけど……本当によく似合っているな。水色だから爽やかさと可愛らしさがあって。あと、ビキニで露出度が高いから、千弦のスタイルの良さがよく分かって。ドキドキしてくる。


「待ったかな?」

「ううん。俺もさっき来たところだから。……その水色のビキニ、本当によく似合っているよ。可愛い。水色にして良かったって思うよ」

「ありがとう。嬉しいよ。洋平君も黒い水着が本当によく似合ってる。かっこいいよ! 黒を選んで良かったよ」

「ありがとう」


 試着したときも似合っているとかかっこいいって言われたけど、また言ってくれて凄く嬉しい。こういう言葉は何度言われても嬉しいものだ。とても嬉しいので、俺は千弦にキスをした。


「んっ」


 俺にキスされるとは思わなかったのか、キスした瞬間に千弦は可愛い声を漏らし、体をピクッと震わせた。その反応が可愛くて。

 付き合い始めてから千弦とたくさんキスしてきた。ただ、水着姿でキスをするのは初めてだから、いつも以上にドキッとして。体が熱くなる。

 数秒ほどして、俺から唇を離した。すると、目の前には赤みを帯びた笑顔で俺を見つめる千弦がいて。


「今日も水着を似合っているって言われたのが嬉しくてキスした」

「そうだったんだ。キスされるとは思わなかったから、体がピクってなっちゃったよ」

「可愛かったぞ」


 俺がそう言うと、千弦は「えへへっ」と照れくさそうに笑う。そんな千弦も可愛くて。


「……あのさ、千弦。プールデートに来た記念に、水着姿の写真を一緒に撮らないか? それに、試着したから1人で写っている水着写真はあるけど、一緒に写っている写真がないからさ」

「だからスマホを持っていたんだね。実は私も……デートの記念に洋平君に一緒に撮りたいと思っていたの」

「そうか。千弦も同じ理由でスマホを持っていたんだな」

「うん。洋平君も同じ気持ちで嬉しいよ。一緒に撮ろう!」

「ありがとう」


 その後、俺のスマホで千弦とのツーショット写真を何枚も撮った。スマホの画面に入るように、千弦と体を近づけるので、体が軽く触れて。胸も。素肌で触れる部分もあり、千弦の体の柔らかさや温もりが直に感じられてドキッとした。

 撮影した写真を見ると、どの写真に写っている千弦はいい笑顔で写っていて。ピースサインをする千弦は特に可愛くて。

 撮影した写真はLIMEで千弦に送った。

 さっそく、千弦はスマホを確認する。ちゃんと送られており、千弦は満足そうな笑顔で自分のスマホを見ていた。そんな千弦もまた可愛らしかった。

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