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クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。  作者: 桜庭かなめ
続編

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第12話『カラオケデート-後編-』

 それからも千弦と初めてのカラオケデートを楽しんでいく。

 好きな曲を歌ったり、時には千弦と一緒に歌ったりもして。一緒に歌うと特に盛り上がる。

 カラオケにいるのもあり、好きな音楽のことで話すときもあって。J-POP、アニソン、ロックなど、千弦と共通して好きな曲やアーティストがいっぱいあることが分かった。それをとても嬉しく思った。

 ここに来てから2時間近く経ったとき、


「ねえ、洋平君。ここのカラオケは採点機能があるし、点数対決してみない?」


 と、千弦がそんな提案をしてきた。


「点数対決か」

「うん。彩葉ちゃんとか友達と一緒にカラオケに来たときは、点数で勝負することが多いの。勝負だから盛り上がるし」

「分かるなぁ。俺も友達とか家族で来たときは点数を競うこともするし」

「そうなんだ」

「ああ。そういえば、罰ゲームありで対決したこともあったな。そのときはより盛り上がったな」

「私もそういったことがあったよ! じゃあ、洋平君さえ良ければ、罰ゲームありで点数対決したいな」

「ああ、いいぞ」

「ありがとう!」


 提案を受け入れてもらえたからか、千弦はとても嬉しそうだ。


「罰ゲームはどうする? 私が友達とやったときは、ドリンクバーでいくつか混ぜた特製ドリンクを飲んだり、テンポ最速で歌ったり、フードメニューを一つ奢ったりしたことだったけど」

「こっちもそんな感じだったな。……勝者が作った特製ドリンクを飲むのが一番いいんじゃないか。混ぜるドリンクによっては変なものになるし。その罰ゲームが一番多かった」

「私の方も特製ドリンクが一番多かったな。じゃあ、罰ゲームは特製ドリンクにしようか」

「分かった」


 千弦は歌がかなり上手だと分かったし、本気でやらないとな。そうしないと負けるだろう。

 同じ曲でないと点数対決と言えないので、何の曲で対決をするか千弦と話す。その結果、現在大人気の若手の男性ロックバンドの代表曲で対決することになった。その曲は俺の好きな曲で、千弦も好きな曲とのこと。俺は何度もカラオケで歌ったことがあるし、千弦も歌ったことがあるのだそうだ。

 また、同じ点数が出たときにはジャンケンで勝敗を決することに。

 歌う順番を決めるためにジャンケンをして、俺が勝利。千弦はかなり上手だし、何度も歌ったことがあるならかなりの点数を出すに違いない。後攻だとプレッシャーが掛かりそうなので、先に歌うことにした。


「よし、歌うぞ」


 先攻、俺。

 この曲はアップテンポで、爽やかな雰囲気の曲だ。だから、歌っていく中で気持ちが上がっていく。千弦も楽しげな笑顔で聴いてくれているし。

 ただ、今は点数対決中。音を外してしまわないことや抑揚を付けて歌うことを心がけて歌っていった。

 モニターには音程バーが表示されているけど、特に大きく外すことなく歌いきることができた。


「ふぅ、終わった」

「上手だったよ、洋平君。高得点出そう」


 千弦は拍手をしながらそう言ってくれた。


「ありがとう、千弦。楽しかった」


 俺はマイクをスタンドに置いて、ソファーに座る。20分ほど前に取りに行ったメロンソーダを一口飲む。歌った後だからかなり美味しい。冷たくて炭酸の刺激もいい。普段はコーヒーや紅茶、緑茶を飲むことが多いけど、炭酸飲料もいいな。

 モニターを見ると、採点結果が表示される。


『94点』


「おっ、94点だ」

「予想通り高得点出たね」

「いい点数を出せて良かった」


 高得点を出せた嬉しさと、得点の証拠ということでモニターをスマホで撮影した。


「じゃあ、次は私の番だね。94点以上出せるかなぁ。ドキドキしてきた」


 そう言いながら、千弦は電子リモコンで先ほど俺が歌った曲を入力した。

 千弦はマイクスタンドからマイクを取り、ソファーから立ち上がる。勝負ではあるけど、この曲は好きな曲だから、千弦が歌うのが楽しみだな。

 画面には曲名などが表示され、イントロが流れ始める。

 後攻、千弦。

 ドキドキすると言っていただけあって、ちょっと緊張した様子で歌い始める。ただ、歌っていく中で気持ちが乗ってきたのか笑顔になって。抑揚が付き、勢いがあって盛り上がるサビでは力強く歌っていく。

 千弦……本当に上手いな。これはどっちが勝つのか分からないぞ。あと、俺が先に歌って正解だったな。これを聴いた後だと、プレッシャーや緊張感で94点を出せる歌唱はできなかった気がする。

 好きな曲だからか、千弦はとても楽しそうに最後まで歌いきった。


「終わったぁ。楽しかった! ありがとうございました」

「良かったよ、千弦。どっちが勝つのか分からないな。そう思えるくらいに上手だった」


 俺は拍手をしながら、千弦に称賛の言葉を送った。


「ありがとう、洋平君」


 千弦はニコッと笑いながらそう言い、ソファーに座った。歌って喉が渇いたのか、さっき取りに行ったオレンジジュースをゴクゴクと飲んだ。


「おっ、採点結果が出るぞ」

「何点だろう。ドキドキする」


 モニターに千弦の採点が表示される。千弦の点数は――。


『92点』


 92点。なので、俺の勝利だ! 嬉しくて左手をグッと握りしめた。


「92点だったかぁ。負けたぁ……」


 千弦はがっかりした様子に。はあっ、ため息をついている。負けた悔しさと、あとは特製ドリンクを飲む罰ゲームを受けるのが嫌なのもありそうだ。


「最初にちょっと緊張しちゃったのがダメだったんだと思う」

「まあ……最初はちょっと緊張した様子だったもんな。ただ、俺も後攻だったら、プレッシャーとか緊張感で千弦に負けていたかもしれない。千弦が歌っていたときにそう思ったよ。凄く上手だったから」

「……そっか。……負けたよ、洋平君」


 千弦は微笑みながら敗北宣言をした。


「じゃあ、罰ゲームを受けないとね。ちょっと待っててね。飲んじゃうから」


 そう言い、千弦はグラスの4分の1ほど残っていたオレンジジュースを一気に飲んだ。そして、空になったグラスを俺に渡してきた。


「じゃあ、特製ドリンクをお願いします。私はここで待ってるよ」

「ああ。じゃあ、行ってくる」

「いってらっしゃい」


 千弦から「いってらっしゃい」と言われるのっていいなぁと思いながら、俺は205号室を出てドリンクコーナーへと向かう。

 ドリンクの種類が豊富だから、何をブレンドしようか迷うなぁ。

 罰ゲームの特製ドリンクだから……まずかったり、ヘンテコだったりするドリンクの方がいいだろう。そうするためには味の系統が違うドリンクを混ぜるのがいいかな。3つくらい入れるのがいいか。

 まずは苦味がしっかりしているコーヒーだな。

 甘くて、トマトなどの味も感じられる野菜ジュースも良さそうだ。

 炭酸を感じられたらよりヘンテコなドリンクになるだろう。ショウガの風味が感じられるジンジャーエールにするか。


「おおっ……」


 黒ずんだオレンジ色で、炭酸の泡が出ている美味しそうには見えないビジュアルの特製ドリンクが完成した。量はグラスの3分の1くらいなので、罰ゲームの量としてはちょうどいいんじゃないだろうか。


「よし、これを千弦に飲んでもらおう」


 俺は千弦が待っている205号室に戻る。


「ただいま」

「おかえり」


 俺はソファーに座り、千弦の前に罰ゲームの特製ドリンクの入ったグラスを置いた。


「はい、特製ドリンクだ」

「……わぁっ、何とも言えないビジュアルだね……」


 力のない声でそう言い、千弦は苦笑いでグラスを持つ。


「3種類のドリンクで作りました」

「3種類なんだね。分かった。じゃあ……い、いただきます」


 千弦は特製ドリンクを一口飲む。その瞬間、それまで僅かに浮かんでいた笑みが顔から消え、歪んだ表情に。


「……凄いね、このドリンク。色々な味が押し寄せてくる。苦いし、甘さもあるし。あと、野菜っぽさも感じられるし。それに炭酸もあって。一応飲めるけど、美味しくはないね……」


 元気のない声で千弦は言う。

 千弦の歪んだ表情を見るとちょっと心苦しい気持ちもあるけど、罰ゲームらしい美味しくないドリンクを作れたのはちょっと嬉しい。

 千弦は特製ドリンクをもう一口飲む。


「何のドリンクを混ぜたんだろう? こういうドリンクを飲むと、何を混ぜたのか当てたくなるんだよね」

「そうなんだ」


 俺の友達でも何のドリンクを混ぜたか当てようとする奴がいたな。


「さて、何のドリンクを混ぜたでしょう?」

「う~ん……コーヒーみたいなしっかりとした苦味を感じたから、1つはコーヒーかな。あと、野菜っぽい味わいも感じられたから野菜ジュースも混ぜた?」

「ああ。コーヒーも野菜ジュースも正解。残り1つは何でしょう?」

「炭酸を感じられたから、炭酸飲料なのは間違いないね」


 そう言い、千弦は特製ドリンクを飲む。真剣な表情で味わうその姿は、かつて演じていた王子様モードの千弦のようでかっこいい。


「……コーラとかメロンソーダだともっと甘い気がするんだよね。あと、ショウガのような風味があるから、ジンジャーエールかなぁ」

「正解。ジンジャーエール」

「やった!」


 千弦は嬉しそうな笑顔を見せる。可愛いな。真剣な表情のときのかっこよさとのギャップもあってキュンとなった。

 千弦はグラスに残っていた特製ドリンクを全て飲んだ。そして、再び表情が歪んだ。混ぜたドリンクが何なのかは分かったけど、特製ドリンクの美味しくなさは変わらなかったようだ。


「……うん、全部飲めた」

「お疲れ様。OKだよ」

「うん。……何か飲み物を取ってくるね。口の中に特製ドリンクの味が残っているし」

「ああ、分かった」


 その後、千弦はドリンクコーナーに行き、グラスにミルクティーをなみなみと注いできていた。そのミルクティーをゴクゴクと飲んだ。


「あぁっ、ミルクティー凄く美味しい!」


 千弦は満面の笑みでそう言った。広告で起用したら売り上げが大幅に伸びるんじゃないかと思えるほどのいい笑顔だ。特製ドリンクを飲んだ後だから、ミルクティーが本当に美味しいんだろうな。


「よし、口直しできた」

「じゃあ、また歌っていくか」

「うんっ! ……ただ、もう一回点数勝負したいな。リベンジしたい」

「ああ、いいぞ」


 その後、千弦と相談して、さっきと同じバンドの今年リリースした曲で点数勝負することに。先ほどと同じく、負けた人は特製ドリンクを飲む罰ゲームありで。

 歌う順番を決めるジャンケンをして勝ったので、今回も俺が先攻で、千弦が後攻となった。運がいい。

 前回と同じく、音程を外さないことや抑揚を付けることを心がけて歌った。その結果、93点を出せた。今回も勝てるだろうか。

 ただ、千弦は前回のような緊張を見せることは全然なく、とても上手に歌い、


『95点』

「やった!」


 俺よりも高い点数を出して、見事にリベンジを果たした。そのことに千弦はとても喜んでいた。負けた悔しさはあるけど、千弦の笑顔を見られて嬉しい気持ちもあった。

 罰ゲームで、俺は千弦によるココアとオレンジジュースとウーロン茶の特製ドリンクを飲んだ。甘味と酸味と苦味を一気に感じられるカオスな味わいで美味しくなかった。

 その後はフリータイムの終了時間の午後6時の直前まで、お互いの好きな曲を歌い、時には千弦と一緒に歌ったりした。一緒に歌うときを中心に結構盛り上がって。

 千弦とカラオケに行くのは初めてだったけど、とても楽しいカラオケデートになった。

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