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クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。  作者: 桜庭かなめ
本編

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第60話『千弦の気持ち』

 6月5日、水曜日。

 今日も学校生活を送っていく。

 俺が千弦の昨日の態度を気にしたことを伝え、それについて千弦から謝罪されたのもあり、千弦は昨日よりも俺に笑顔を見せてくれることが多い。それがとても嬉しい。

 ただ、どこか緊張したように見えるときもあって。そうなるのは、放課後に俺と2人きりで話す約束があるからかもしれない。放課後になれば千弦と2人きりで話せるから、千弦の緊張した様子はあまり気にならなかった。




「それでは、これで終礼を終わります。また明日。委員長、号令をお願いします」


 担任の山本先生がそう言い、クラス委員長の女子生徒による号令で、今日の学校生活は終わった。

 千弦と2人きりで話す約束があるから、ついに放課後になった感覚だ。


「洋平君。さっそく行こうか」

「ああ」


 今週はいつもの6人はみんな掃除当番ではないため、6人全員で教室を後にした。

 階段で1階まで下りて、部活のある琢磨と吉岡さんと神崎さんとは昇降口で、星野さんとは教室A棟の玄関で別れた。

 星野さんと別れた後は千弦についていくことに。


「ここで話すね」


 千弦がそう言って立ち止まった場所は、先日、俺が神崎さんと千弦のことで話した場所だった。あのときは千弦と星野さんがこっそりと隠れて聞いていたけど、人が全然来なかった。だから、2人きりで話すにはいい場所だと思ったのだろう。

 目的の場所に辿り着いたのもあり、千弦は俺と向かい合う形で立つ。


「洋平君。今日は私のために時間を取ってくれてありがとう」

「いえいえ」

「……それでね。さっそく本題に入るんだけど……」


 そう言うと、千弦の顔が頬を中心に赤くなっていき、それまで俺に定まっていた視線がチラつき始める。それは昨日の学校での千弦の態度と重なる。俺と2人きりで話すときが訪れたから緊張しているのかもしれない。


「ゆっくりでいいからな」

「……うん」


 と、千弦は首肯した。どんなに時間がかかっても、俺は千弦の言葉を待つよ。

 千弦は何度か深呼吸をした後、俺のことを見つめてくる。そして、ゆっくりと口を開く。


「ここで洋平君に話したいことはね。洋平君に……私の気持ちを伝えたいからなの」


 千弦はさっきよりも顔が赤くなって。でも、さっきとは違って真っ赤な顔に浮かぶ表情は緊張ではなく、可愛らしい笑みで。




「洋平君のことが好きです」




 甘く可愛らしい声に乗せて、千弦は俺に対する気持ちを伝えてきた。

 好きだ、というシンプルな言葉は俺の体の中にすーっと入っていき、胸がとても温かくなっていくのが分かる。その感覚がとてもいいなって。告白されてこんな風になるのは初めてだ。


「俺のことが……好きか」

「うん」


 千弦は俺と見つめながら首肯する。


「ナンパから助けてもらったのをきっかけに洋平君と友達になって、一緒にいる時間が増えて。その中で、洋平君の存在が大きくなっていって。素の自分を明かしてからはより大きくなって。玲央ちゃんとのことが解決したとき、洋平君は『玲央ちゃんとまた笑い合えて嬉しい。私の笑顔を見られて特に嬉しい』って言ってくれたじゃない。あのときに、洋平君のことが好きだって自覚したの」

「そうだったのか」


 そういえば、千弦と神崎さんの一件が解決したとき、千弦の顔がほんのりと赤みを帯びていたっけ。そうなったのは、俺への恋心を自覚したからだったんだな。

 千弦が今までのことを話したので、ナンパから助けてからの千弦とのことを思い出す。あの日から色々なことがあったんだなと実感する。


「ナンパから助けてくれたり、玲央ちゃんのことで力になったりしてくれる優しいところが好き。素を話しても、素も演じる私も受け入れてくれて、変わらずに接してくれる心の広さが好き。友達想いなところが好き。一緒に話したり、バイトで接客したり、楽しいことをしたり、美味しいものを食べたりするときとかに見せる笑顔が好き。他にも、洋平君の好きなところはいっぱいあるよ」


 千弦はとてもいい笑顔で俺の好きなところを話してくれる。

 好きなところをたくさん言ってくれたから、嬉しくなると同時に胸がキュンとなる。胸に抱く温もりがさらに強くなっていく。その温もりで全身を優しく包み込まれた感覚に。


「洋平君が好きだって自覚してからは、洋平君の近くにいるとドキドキして。夏服姿が可愛いって言ってくれたり、玉子焼きを美味しそうに食べてくれたり、頭を撫でてくれたりするから、そのドキドキは大きくなって。もっともっと好きになって。だから、昨日は洋平君と話すと緊張したり、洋平君と目が合うと視線を逸らしちゃったりしちゃったの」

「そういうことだったのか。俺が好きだから……」

「うん。だから、洋平君は悪くないってメッセージを送ったの。好きな気持ちが理由だから、昨日のことと一緒に洋平君に好きだって告白しようと決めたの」

「なるほどな」


 だから、昨日の態度のことを含めて、今日の放課後に俺と2人きりで話したいとメッセージを送ってきたんだな。

 それにしても、いつもとは違った態度の理由が俺への好意だと分かると……物凄く可愛く思えてくる。昨日の千弦はいわゆる「好き避け」の状態だったんだ。


「昨日もメッセージを送ったけど、千弦が嫌だと思うことをしていなくて良かったよ」

「うん。むしろ、キュンってなることばかりだよ」


 千弦はニコッとした笑顔でそう言ってくれる。それがとても嬉しくて。

 昨日は千弦の態度がいつもと違うから、千弦のことをずっと考えていた。頭から離れなかった。ただ、メッセージでも千弦と会話して、今日の放課後に千弦と話す約束ができたことがとても嬉しかった。

 そして、今日。千弦から好きだって告白され、胸がとても温かくなって。千弦から好きなところを言われると嬉しくなって。キュンとなって。

 そうか。俺も――。




「俺も……千弦のことが好きだよ」




 千弦のことを見つめながら、俺は千弦に自分の想いを言葉にした。

 好きなんだ。

 俺は目の前にいる藤原千弦が好きなんだ。

 千弦に好きだって告白したのもあり、体を包む温もりが一気に強くなっていくのが分かる。心臓の鼓動が激しくなっている。千弦も俺に告白したときはこんな感じだったのだろうか。

 洋平君……と、俺の名前を呟く千弦。千弦の笑顔が嬉しそうなものに変わる。その笑顔がとても可愛くてキュンとなる。


「洋平君に好きだって言ってもらえて嬉しいよ」

「俺も千弦から好きだって言われて嬉しいよ。千弦に告白されて、俺も千弦のことが好きなんだって自覚した」

「そうなんだ」

「……俺も、千弦をナンパから助けて、友達になって、学校や放課後や休日に一緒に過ごす中で千弦の存在が大きくなっていったよ。千弦が俺を信頼して素を明かしてくれたときはとても嬉しかった。千弦は大切な存在になったよ。今思えば、神崎さんの一件が解決したときに千弦の笑顔を見られて凄く嬉しかったのは、千弦への好意があったからだと思う」

「うん」

「素のときも演じているときも笑顔が素敵なところとか、友達を大切にする優しさとか、一緒に過ごして楽しいところとか。好きだなって思うところはいっぱいあるよ」


 今までの千弦のことを思い出しながら、千弦の好きなところを言った。言葉にしたのもあって、千弦のことがより好きになっていく。


「好きなところをいくつも言ってもらえて嬉しいな。ちょっと照れるけど」


 えへへっ、と千弦ははにかんだ感じに。そんな千弦の笑顔も可愛くて好きだなぁって思う。


「洋平君。これからは恋人として付き合ってくれませんか?」


 千弦は笑顔で俺のことを見つめながらそう言ってきた。きっと、これも俺と2人きりで話したいことなのだろう。

 千弦の気持ちと俺の気持ちが重なっているんだ。だから、今の千弦のお願いに対する返事はもちろん決まっている。


「はい。これから……恋人としてよろしくお願いします」


 千弦とこれからも一緒にいたいし、千弦と恋人になって、これまで以上に仲を深めていきたいから。


「ありがとう、洋平君!」


 千弦は今までで一番と言っていいほどに可愛い笑顔で、俺にお礼を言った。

 千弦がいつでも笑顔でいられるように。千弦の笑顔を守れるように。これからは千弦の彼氏として一緒に楽しく過ごしていこう。千弦の笑顔を見ながら胸に誓った。


「よっしゃー! 洋平! 藤原! おめでとう!」

「おめでとう、千弦ちゃん! 白石君!」

「2人ともおめでとう! ドキドキしたよ!」

「白石にちゃんと告白できて良かったわね! 千弦、白石、おめでとう!」


 背後からそんな声が聞こえたのでそちらに振り返ると、琢磨と吉岡さんと星野さんと神崎さんが嬉しそうな様子でこちらにやってきた。おめでとうと言われたのは嬉しいけど、どうして4人がここにいるのかという気持ちの方が強い。


「みんな、ありがとう。洋平君に告白して、恋人同士になれたよ」


 千弦は特に驚くこともなく、とても嬉しそうな様子で星野さん達にお礼を言う。それもあってか、星野さんは千弦と抱きしめ合い。神崎さんと吉岡さんも千弦の頭を撫でていて。微笑ましい光景だ。

 琢磨は俺に「おめでとう!」と満面の笑顔で言い、背中を何度もバシバシと叩いてくる。いつも通りちょっと痛いけど、祝う気持ちが理由で叩いているのでこの痛みは特に嫌だとは思わない。


「みんなありがとう。ただ、みんなが見ていたなんて。この前、神崎さんと俺が話したときのように、千弦が事前に教えていたのか?」

「そうだよ。昨日の夜に伝えていたの。それに、洋平君が好きだって自覚した直後に、みんなと結菜ちゃんと飛鳥先生に、洋平君のことで恋愛相談をしてたんだ」

「そうだったのか。全然気付かなかった」


 俺以外のパークランドに一緒に行った人全員に相談していたんだな。

 思い返せば、日曜日にバイト中にみんなが来てくれたとき、神崎さんが見せてくれた写真に写る猫耳千弦を可愛いって褒めたら星野さん達がみんな「良かったね」って言っていたし、一昨日のお昼に千弦から玉子焼きを食べさせてもらうときは神崎さんが提案して星野さんと琢磨と吉岡さんは「いい案だね」と後押ししていた。あれらは、千弦が俺に好意を抱いていることを知っているから、千弦と俺の距離を縮めるためにフォローしていたのだろう。


「誰かを好きになるのは初めてだったし、洋平君は何人もの人に告白されても全員断っているから。だから、どうすれば付き合えるかなって彩葉ちゃん達に相談したの。玲央ちゃんを振った直後だから、最初は彩葉ちゃんと早希ちゃんと結菜ちゃんだけだったんだけどね。彩葉ちゃん達から玲央ちゃんにも相談しようって話になって」

「この手の話は好きだから、千弦の恋愛相談も楽しく受けられたわ」

「坂井君は洋平君の親友だし、飛鳥先生は大人の女性だし恋愛経験があるかなって。それで、最終的には6人に相談したの」

「そうだったのか。……じゃあ、昨日の夜に千弦の様子がいつもと違うって星野さんに相談したけど、星野さんはその理由が好意だろうって思っていたのか?」

「うん。すぐにそう思ったよ。白石君が好きでドキドキしちゃうからだろうって。学校にいたときも、千弦ちゃんはそわそわしてるなぁって思っていたし」


 星野さんは優しい笑顔でそう言う。琢磨と吉岡さんと神崎さんも小さく頷いていて。千弦から恋愛相談を受けていたのもあり、千弦の様子の変化に気付いていたんだな。


「昨日の夜に千弦から、今日の放課後に白石に告白するって言われてね。部長に放課後の練習は遅れて参加するって連絡して、千弦の告白を見届けることにしたの」

「あたしもね」

「俺もな」


 千弦から恋愛相談を受けているし、告白する相手は俺だ。だから、部活に行くのを遅らせてまでも千弦の告白を見届けようと考えた気持ちも分かるかな。


「彩葉ちゃん、玲央ちゃん、早希ちゃん、坂井君。昨日の夜、洋平君に告白するって話したとき、頑張れって応援してくれてありがとう。おかげさまで、洋平君と恋人同士になれました」

「いえいえ。千弦ちゃんならきっと、告白が成功して白石君と付き合えると思っていたよ」

「彩葉と同感よ。これまでの2人を見ていたらね」

「仲がいいもんね」

「楽しそうにしていることが多いもんな。それに、俺が早希に告白して付き合い始めたときに洋平がいてくれたから、洋平と藤原が付き合う瞬間を見届けられて嬉しいぜ! ここは俺が早希に告白した場所だからな!」

「……ありがとう」


 星野さん達4人の温かい言葉を受け、千弦は嬉しそうな笑顔で再びお礼を言った。俺は千弦の意中の相手だけど、今の5人を見ていると嬉しい気持ちになる。

 あと、個人的には琢磨の言葉にグッとくる。琢磨の言うように、ここは琢磨と吉岡さんが告白して付き合い始めた場所だから。


「千弦ちゃん、白石君、仲良く付き合っていってね!」

「白石が羨ましいわ。千弦と仲良く付き合うのよ」

「千弦、白石君、仲良くね!」

「仲良く付き合うんだぞ! もし何かあったら、早希と1年以上付き合っている俺が相談に乗るからよ!」

「あたしも乗るよ! 友達として、恋愛の先輩としてね!」

「ふふっ。みんなありがとう」

「ありがとう、みんな。千弦を大切にして、仲良く付き合っていくよ」


 千弦から好きだと告白されて。千弦と恋人として付き合うことになって。そのことを友人達から祝われて。俺は本当に幸せ者だ。恋人になった千弦の笑顔を見ると、その思いは膨らんだ。

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