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第5話『初めてのお昼ご飯』

 今日も学校生活を送っていく。

 俺の席は窓側から2列目の一番後ろ。なので、板書をノートに写す中でたまに藤原さん達を見ることも。藤原さんと目が合うと、藤原さんは俺に向かって微笑みかけてくれて。そのことに嬉しさを抱きながら、授業を受けていった。




「白石君、早希、坂井君。今日は私達も一緒にお昼を食べてもいいかな?」


 昼休み。

 いつも通りに吉岡さんが来て、琢磨と吉岡さんと一緒にお昼ご飯を食べようとすると、弁当包みと水筒を持った藤原さんが俺達のところに来てそう言ってきたのだ。藤原さんの後ろには、藤原さんのように弁当包みと水筒を持った星野さんと神崎さんがいる。


「早希とは前から話していたし、白石や坂井とも掃除当番が一緒だったけど、千弦の一件で話すことが増えたしね」

「白石君達とはまだ一度も一緒にお昼を食べたことがないから、千弦ちゃんと玲央ちゃんと話して、昼休みになったら白石君達のところに行こうってことになったの」

「そうだったんだ」


 星野さんの言う通り、藤原さん達とは昼休みにお昼ご飯を一緒に食べたことはない。ナンパの一件で藤原さん達と話すことが増えて、友達にもなった。彼女達とも一緒にお昼ご飯を食べるのは楽しいかもしれない。


「俺はいいけど……琢磨と吉岡さんはどうだ?」

「俺はかまわないぜ!」

「あたしもいいよ。一緒に食べよう!」


 琢磨と吉岡さんは快諾してくれた。2人とも明るくて気さくな性格だから、一緒に食べていいと言うと思っていたけど、実際に快諾してくれると嬉しい気持ちになる。


「みんなありがとう」

「ありがとう。良かったよ」

「ありがとね。じゃあ、近くの机や椅子を借りよっか」


 藤原さん達は嬉しそうな様子でそう言った。今日は6人でお昼ご飯を食べることに。

 神崎さんの言うように、俺や琢磨の机の近くの座席の生徒から許可を得て、6人でお昼を食べられるスペースを作る。4つの机に6つの椅子を囲む形に。

 スペースを作った後、俺達は椅子に座る。ちなみに、座っている場所は俺から時計回りに星野さん、琢磨、吉岡さん、神崎さん、藤原さんだ。俺は藤原さんと隣同士に座っており、俺の正面は琢磨が座っている。


「じゃあ、準備できたし、昼飯食うか! いただきまーす!」

『いただきます!』


 琢磨の明るく元気な号令で、俺達はお昼ご飯を食べ始める。

 弁当包みを開き、弁当箱の蓋を開けると……今日のおかずは玉子焼きに唐揚げ、アスパラの肉巻き、きんぴらごぼう、ブロッコリー、ミニトマトか。俺の好きなものがいっぱい入っていて嬉しいな。これを食べれば、午後の授業と放課後のバイトを頑張れそうだ。

 藤原さん達のお弁当も見ると……どのお弁当も美味しそうだ。

 俺は唐揚げを一つ食べる。味付けがちょっと濃いめで、常温でも凄く美味しい。ご飯を一口食べると……よく合うなぁ。


「美味しい」

「ふふっ。白石君って美味しそうに食べるよね。昨日アイスを食べたときも美味しいって言っていたし」

「……言ったな。思い返すと……普段から美味しいって言うことが多いなぁ。美味しいって言ったらより美味しく感じるからかな」

「それは言えてるかも。……美味しそうなお弁当だけど、お弁当は白石君が作るのかい?」

「両親が作ってくれるよ。料理はできるけど、朝はそこまで強くないから。前日に俺が作った夕ご飯の残りを入れることがあるくらいだ」

「そうなんだね」

「藤原さん達はどうだ? 3人ともお弁当だけど」

「私も主に両親だね。ただ、早く起きられた日とか、おかずによっては前日の夜に下ごしらえをして、朝にサッと作ることもあるんだ。ちなみに、この玉子焼きは自分で作ったよ。今日は早めに起きられたから」

「私も千弦ちゃんと同じだね。今日は全部作ってもらったけど、自分で作ろうって決めて全部作ることもたまにあるよ」

「2人とも偉いわ。あたしは親に作ってもらっているわ。主にお母さん」

「なるほどな。神崎さんの言う通り、藤原さんと星野さんは偉いね」


 俺は朝に早起きして料理をすることが全然ないから。琢磨と吉岡さんも同じ気持ちなのか、うんうんと頷いている。

 神崎さんと俺に偉いと言われたからか、藤原さんと星野さんはちょっと嬉しそうだ。


「早希と坂井君はどうだい?」

「あたしは全然作らないな。女バスの朝練があるから、早めに起きるのは大丈夫だけど。両親には感謝だよ」

「俺も早希と一緒だ。まあ、俺の場合は料理が全然できないのもあるけどな」

「そうなんだね」


 そういえば、中学時代や高1のときにあった家庭科の調理実習では……琢磨は主に材料や調理器具を運んだり、後片付けをしたりすることで活躍していたな。課題として必ずやらなきゃいけないこと以外は、調理はあまりやっていなかった記憶がある。


「早希の言う通り、両親には感謝ね」

「そうだね、玲央」

「親にマジ感謝だぜ!」

「ふふっ。……ところで、早希と坂井は付き合っているのよね」

「うん、そうだよ」

「高1の4月からな」

「そっか。ただ、早希と坂井って教室では白石と一緒にいることが多いし、お昼も3人は一緒に食べているわよね。3人でいるのが悪いとかおかしいって言っているんじゃないわよ。ただ、恋人のいる友達は2人きりで食べる子が多いから。何か理由があるのかなって」


 確かに、神崎さんがそう言うのも理解できる。俺も恋人と2人きりで食べる友人は何人も知っているし。


「俺と洋平が中学時代からの親友だからな。元々、一緒に昼飯を食ってたんだ」

「それに、白石君の協力があって、あたし達は付き合い始められたし。あと、付き合い始めたときに琢磨君と2人きりで食べようとしたら、あたしも琢磨君もドキドキしてお弁当があまり喉を通らなくて。白石君と3人だと、楽しく話せてお弁当も美味しく食べられたから。白石君から琢磨君の話をいっぱい聞けるし」

「それで、早希と付き合い始めてからも、変わらず洋平と一緒に飯を食っているんだ」

「へえ、なるほどね。何だか意外だわ」

「早希の言う通りだね。ラブラブな雰囲気だし」

「だよね。それに、早希ちゃんも坂井君も明るくて気さくな感じだし」


 3人とも去年は俺と琢磨とは別々のクラスだったし、意外だと思うのも納得だ。今では教室でも頬にキスし合えるほどにラブラブだし。

 今の話を聞いて、去年、琢磨と吉岡さんが「ドキドキしてあまり弁当を食べられない」と俺に言ってきた2人の様子を思い出す。今のラブラブぶりを見ていると、遠い昔のことのように思える。


「俺も楽しいし、2人も楽しいならいいと思って、3人でお昼を食べるのが恒例になっているんだ。もちろん、今日みたいに他の友達とも一緒に食べることもあるよ」

「そうなんだね」


 きっと、これからもこうして、この6人でお昼ご飯を食べることは何度もあると思う。


「藤原さん達も、3人はいつも一緒に食べているイメージがあるよ」

「そうだね。彩葉は小学校の頃から同じクラスのときは一緒だし、玲央とは今年初めて同じクラスになったけど、すぐに友達になったからね」

「そうだね、千弦ちゃん」

「2年になった直後から千弦と彩葉とは一緒に食べているわね。千弦人気もあって、他の子達も一緒なのが多いけど」

「そっか」


 藤原さんは女子中心にかなり人気だからな。思い返せば、藤原さんと星野さんと神崎さんの3人だけでお昼を食べているところはあまり見たことがない。


「ね、ねえ。千弦」

「うん? どうかした、玲央?」

「……その玉子焼き、千弦が作ったのよね」

「うん、そうだよ」

「……一口でいいから、千弦特製の玉子焼きを食べてみたいなって」


 神崎さんはちょっともじもじとした様子で藤原さんにお願いする。神崎さんはいつも快活で、時には強気な感じもあるから、普段とのギャップがあって可愛い。玉子焼きは藤原さんが作ったものかと確認していたし、「千弦特製」とも言っていたし、藤原さんの作ったものだから食べてみたくなったのかな。あとは、もしかしたら……昨日俺がアイスを奢ってもらった羨ましさも一因かもしれない。


「可愛いお願いをしてくるね、玲央は。いいよ。玉子焼きを一つあげる」


 藤原さんは優しい笑顔で神崎さんからのお願いを快諾した。その言動はまさに王子様って感じだ。


「ありがとう!」


 神崎さんはぱあっと明るい笑みを浮かべてお礼を言った。

 藤原さんは箸で自分のお弁当に入っている玉子焼きを一切れ掴み、


「じゃあ、食べさせてあげるよ。はい、あ~ん」

「あ~ん」


 甘い声でそう言い、神崎さんは藤原さんに玉子焼きを食べさせてもらう。

 神崎さんは「ん~っ」と甘い声を漏らしながらモグモグと食べる。


「甘くてふんわりしていてとても美味しいわっ!」

「そう言ってもらえて嬉しいよ、玲央」

「食べられて良かったね、玲央ちゃん」

「うんっ!」


 神崎さんはとても幸せそうに頷いた。こんなに幸せそうな神崎さんを見るのは初めてだ。藤原さん特製の玉子焼きを食べられたのがよほど嬉しかったのだろう。

 その後もお昼ご飯のことや、昨日の放課後のことなどを話しながら6人で楽しくお昼ご飯を食べるのであった。

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