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クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。  作者: 桜庭かなめ
本編

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第54話『千弦からの相談』

 5月30日、木曜日。

 新しい座席での学校生活がスタートした。

 琢磨とは離れてしまったけど、右隣には千弦、右斜め前には星野さんがいる。だから、授業中に板書をノートに写すときに自然と2人の姿が視界に入って。また、千弦とは隣同士なので、千弦と何度か目が合って、千弦が俺にニコッと笑いかけてくれることも。そのことで授業の疲れが取れていって。午前中の授業の時間があっという間に過ぎていった。

 昼休みになると、琢磨と吉岡さんが弁当包みと水筒を持って、


「一緒に食おうぜ!」

「一緒に食べよう!」


 と、一緒にお昼ご飯を食べようと誘ってきた。俺と千弦と星野さんはそれに快諾して、俺達の席と周辺の席を借りてお昼ご飯を食べるスペースを作ることに。

 この場所は俺と千弦と星野さんの席が固まっているし、窓側なので外の景色も楽しめる。だから、今の座席の間はここで6人で食べるのがお決まりになりそうだ。


「……あれ? 神崎さんは?」

「いないね。……おーい、玲央。こっちで一緒に食べようよー」


 吉岡さんが、自分の席にいる神崎さんに向かって、少し大きめの声で誘う。

 神崎さんはこちらの方を向くと、


「……ご、ごめん。今日は部活の友達と一緒に食べる約束してるから。ごめんね」


 苦笑いを浮かべながらそう言い、弁当包みと水筒を持って教室を後にした。


「珍しいな。玲央が部活の友達と食べるなんて」

「そうだね。これまでは私達と一緒に食べていたのに」

「確かに、神崎さんは教室でお昼を食べてるよな」

「別の友達と食べたい気分だったのかな。あたしも琢磨君と付き合うまでは、クラスの友達メインで食べていたけど、何回かは部活の友達と食べていたし」

「そういうもんか」

「早希ちゃんの言う通り……かもね」


 千弦は口元では笑っているけど、どこか元気がなさそうにしていた。

 今日は神崎さん以外の5人で一緒にお昼ご飯を食べる。

 お弁当は美味しいし、5人でも話は盛り上がる。ただ、ここ最近は神崎さんも一緒に6人で食べることが多かったから、いつもよりもお弁当が少し味気なく感じた。




 ――プルルッ。


 夜。

 今日の授業で出た課題を全て終わった直後、勉強机に置いてあるスマホが鳴った。

 スマホを確認すると、LIMEを通じて千弦からメッセージが送信されていると通知が来ていた。その通知をタップすると、千弦と星野さんと俺がメンバーのグループトークが開き、


『彩葉ちゃんと洋平君に相談したいことがあるの。今、いいかな?』


 というメッセージが表示された。

 ここ最近のことを思い出すと、千弦が相談したいことが何なのかおおよその見当がつく。そう思いながら、俺は『いいぞ』とメッセージを送信した。

 千弦か星野さんがトーク画面を開いているのか、送信してすぐに『既読1』とマークが付いた。

 それから程なくして、『既読2』となり、


『私もいいよ。相談したいことってどんなこと?』


 と、星野さんからメッセージが送信される。


『2人ともありがとう。相談したいのは……玲央ちゃんのことなんだ』


 というメッセージが千弦から送信された。

 やっぱり、千弦が相談したいことは神崎さんのことか。


『神崎さんについてか』

『玲央ちゃんのことね』

『うん。2人も気付いていると思うけど、私が学校で素を明かしてから、玲央ちゃんの様子がそれまでとは違って。今までのような元気で明るい玲央ちゃんじゃなくなって。私が素を明かしたことで、玲央ちゃんとの距離ができちゃった気がするの』


 確かに、千弦が学校で素を明かしてから、神崎さんはそれまでのような元気な振る舞いは見られなくなったからな。千弦と会話をすることはあるし、笑顔を見せることもあるけど、神崎さんはどこかぎこちない様子で。だから、千弦が神崎さんとの距離ができてしまったと考えるのも頷ける。


『確かに、今週になってからの神崎さんの様子は、先週までとは違うな』

『千弦ちゃんの言う通り、笑顔も今までのような元気で明るい笑顔じゃないもんね』

『うん。それに、今日の昼休み……玲央ちゃんが一緒にお昼を食べなかったのは、私と一緒に食べたくなかったからじゃないかなって思って』


 最近の神崎さんの様子を考えれば、千弦と一緒にお昼を食べたくなかった可能性はありそうだ。もしかしたら、それを考えたから、お昼ご飯を食べる前に、


『早希ちゃんの言う通り……かもね』


 と言ったときの千弦の顔は元気がなさそうだったのかもしれない。


『千弦が素を明かしたとき、神崎さんは戸惑っていた感じだった。神崎さんの様子が変わった理由は、千弦が考えているように素を知ったからっていう可能性は高そうだ』

『タイミング的にも……その可能性は高そうだね、白石君』

『……だよね。素を明かしたら、それを受け入れられない人や離れる人はいるかもしれないって覚悟してた。ただ、2年生になってから一番仲良くなった玲央ちゃんとの距離ができちゃって。そのことが辛くて。胸が苦しくなって。前みたいに、玲央ちゃんと楽しい日々を過ごしたいって思ってる。ただ、そうするにはどうすればいいだろうって。だから、2人に相談したの』


 なるほどな。千弦は神崎さんとまた以前のように楽しい時間を過ごしたいと考えているのか。距離ができた理由は、千弦の素である可能性が高いから、みんなに明かす前から知っていた俺達2人に相談したのだろう。


『なるほどね。まずは、玲央ちゃんの様子が変わった理由を知ることかな。玲央ちゃん本人から聞けたら一番いいだろうけど……』

『そう……だね。ただ、距離がある中で私が直接訊くのは逆効果になるかもしれない』

『そうだな』


 仮に神崎さんの様子が変わった理由が、千弦が素を明かしたからだとしても、それを千弦本人には言えない可能性はある。下手したら、今以上に距離ができてしまうかもしれない。


『じゃあ、俺が明日にでも神崎さんと話してみようか? 俺にだったら、神崎さんも話せるかもしれないし。それに……千弦の力になりたいから』


 というメッセージを送った。

 千弦が俺に素を明かしてくれたとき、いつでも千弦の力になると言ったからな。こういうときこそ、友達として千弦の力になって千弦のことを支えないと。中学のとき、琢磨が俺を支えてくれたように。今度は俺が……千弦を。


『いいと思う。私は賛成だよ。千弦ちゃんはどう?』

『……うん。洋平君にお願いするよ』

『分かった。さっそく、神崎さんに明日は大丈夫かどうか訊いてみる』


 俺は神崎さんとの個別トークを開き、


『こんばんは。明日の昼休みか放課後に、神崎さんと2人で話したいことがあるんだ。いいかな?』


 というメッセージを送った。明日、神崎さんと話せたら嬉しいけど……どうだろう。

 メッセージを送ってから少しして、俺のメッセージに『既読』マークが付き、


『分かったわ。いいわよ。放課後は部活があるから、昼休みでもいい?』


 という返信が神崎さんから届いた。明日の昼休みなら大丈夫か。良かった。


『昼休みでもかまわないよ』

『ありがとう』

『こちらこそありがとう。じゃあ、明日の昼休みに』

『分かったわ』


 神崎さんと2人で話す約束ができて良かった。

 その後、千弦と星野さんとのグループトークに、明日の昼休みに神崎さんと2人で話すことになったことを伝えた。そうすると、


『了解だよ、白石君』

『よろしくね、洋平君。もし必要なら、福岡の小学校での話もしていいから。玲央ちゃんになら知られてもいいよ』


 というメッセージが送られてきた。

 千弦にとって、神崎さんは2年生になってから一番仲良くなった友達だ。今は距離ができているけど、また仲良くなりたいと考えている。星野さんと俺に相談するほどに。だから、福岡の小学校でのことを知られてもいいと考えたのだろう。

 明日の昼休みに、神崎さんから今週になって様子が変わった理由を訊いてみよう。千弦と神崎さんの距離が元通りになって、2人がまた楽しく笑い合えるために。

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