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クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。  作者: 桜庭かなめ
本編

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第47話『一緒にしないか?』

 5月14日、火曜日。

 今日もいつも通りの学校生活を送っていく。

 先週は連休が明けてから2日目に過労で体調を崩して学校を休んだのもあり、今週は休みが明けて2日目になっても健康に過ごせることを幸せに思った。




「なあ、洋平。今回も一緒にしないか?」


 放課後になってすぐ。

 琢磨は俺の方に振り返り、とってもいい笑顔でそんなことを言ってきた。


「何を一緒にするんだ?」

「中間試験に向けた勉強だ! 数Ⅱ以外の理系科目全部が結構不安なんだ! まあ、数Ⅱと古典もちょっと不安に思っているけどよ。だから、今回も洋平と一緒に勉強して、赤点なしで試験を乗り越えたいんだ!」


 琢磨は右手で俺の左肩をしっかりと掴みながら熱弁した。

 やっぱり、中間試験対策の勉強か。今日から部活動が禁止になるから、試験勉強を一緒にしないかと言われると思っていた。中1のときに友達になってから、試験前になると琢磨から試験対策の勉強を一緒にやらないかと誘い、一緒に勉強するのが恒例だ。琢磨は理系中心に苦手な科目がいくつもあるからなぁ。

 ちなみに、洲中高校では校則により、定期試験1日目の1週間前から試験が終わるまで、全ての部活動が原則活動禁止と定められている。それもあり、学校が定期試験ムードになっていくのだ。

 また、この校則の影響で、毎週火曜日と金曜日に活動があり、千弦と星野さんが入部している手芸部は月曜日である昨日の放課後に活動があった。


「今回も一緒にしないか?」

「ああ、いいぞ。琢磨と勉強するのが恒例になっているし、琢磨に教えるのはいい勉強になるからな」

「ありがとう! 洋平がいれば何とかなりそうだぜ! 今回もよろしくお願いします!」

「ああ。一緒に頑張ろうな」

「おう!」


 よしっ! と、琢磨は嬉しそうな様子で、両手を拳にしている。

 琢磨は苦手な教科がいくつもあり、俺に分からないところをたくさん質問してくるけど、本人は頑張って勉強しているので赤点を取ったことは一度もない。今回も琢磨が赤点を回避できるように、親友として力になろう。


「おっ、その様子だと、今回も白石君と一緒に勉強することになったんだね、琢磨君」


 気付けば、スクールバッグと体操着入れを持った吉岡さんがこちらにやってきた。


「おう! 早希も一緒に勉強しようぜ!」

「うんっ! 白石君と一緒だと心強いから、あたしもいい?」

「もちろん」

「ありがとう!」


 吉岡さんは嬉しそうにお礼を言った。

 吉岡さんは高校最初の定期試験から、毎回、試験前には俺と琢磨と一緒に試験対策の勉強をしている。吉岡さんも理系科目中心に苦手な科目がいくつかある。そのため、琢磨と一緒に質問することもしばしば。


「どうしたの、早希に坂井。嬉しそうな様子になって」

「何かあったのかい?」

「白石君絡みかな?」


 俺達の様子を見て気になったのか、神崎さんと千弦と星野さんがこちらにやってくる。3人ともスクールバッグと体操着入れを持って。千弦と星野さんはいつも通りだけど、テニス部の神崎さんがバッグと体操着入れだけなのは新鮮に思えた。いつもは部活に必要なものを入れてあるテニスバッグを持っているから。


「今回の試験でも、洋平と一緒に勉強することになったんだ」

「白石君は教えるのが上手だからね。琢磨君と付き合い始めてから毎回一緒に勉強してる」

「俺は中1からずっとだぜ! 洋平は凄く頭がいいから色々教えてもらってるんだ」

「へえ、そうなのね」

「この前、数Bの課題を洋平が分かりやすく教えてくれたから、2人が喜ぶのも納得だね」

「分かりやすく教えてくれる人と一緒なのは心強いよね」

「うん。私もあのときは心強かったよ」


 千弦はニコッと笑いながらそう言ってくれる。それが嬉しくて。お家デートで数Bの課題を教えてお礼を言ってくれたときの千弦の素の笑顔を思い出し、心が温かくなった。


「早希と坂井と千弦の話を聞いたら、あたしも白石達と一緒に試験勉強をしたくなってきたわ。あたし、理系中心に苦手な科目がいくつもあるし。1年のときは数Aと古典が赤点ギリギリで危なかったし……」

「私も洋平達と一緒に勉強したいな」

「私も。中学時代から、試験前は千弦ちゃんと一緒に勉強してるけど。みんなと一緒の方がよりいいなって」


 千弦と星野さんは微笑みながら、神崎さんは真剣な様子で俺達と一緒に勉強したいと申し出てきた。

 千弦のナンパの一件があってから、千弦達と関わることが増えたし、6人で話したり、昼ご飯を食べたりすることもある。この6人なら、充実した勉強会になるんじゃないだろうか。


「俺はいいよ。琢磨と吉岡さんはどう?」

「俺もかまわないぜ!」

「あたしもいいよ!」

「そうか。じゃあ、この6人で一緒に勉強するか」


 俺と琢磨と吉岡さんが快諾したのもあって、千弦達はみんな笑顔になって「ありがとう」とお礼を言った。特に神崎さんは嬉しそうで。苦手な教科がいくつもあると言っていたし、みんなと一緒に勉強できるのが心強いのかも。


「じゃあ、どこで勉強しようか。去年までは一緒に勉強するメンバーの家で勉強していたけど」


 と、俺は問いかける。

 ただ、学校から徒歩圏内にあるので、放課後の勉強会では俺の家で勉強することが多い。琢磨の家でも勉強することもあるけど、俺の家の方が多かったな。また、休日とかお昼に終わる試験期間中は、電車に乗って吉岡さんの家で一緒に勉強することもあった。


「去年は洋平ん家で勉強することが多かったな!」

「放課後の勉強会だと特にね。琢磨君の家だとドキドキしちゃうこともあるし」

「ははっ。俺も洋平ん家の方が勉強しやすいな」


 去年一緒に勉強した琢磨と吉岡さんがそう言う。人によっては自宅だとのんびりしてしまったり、恋人の家だとドキドキして勉強に集中できなかったりするか。俺の家が多かったのは学校から近いだけでなく、2人のそういった事情もあったからだったんだな。


「白石の部屋は落ち着いた雰囲気だし、勉強するのにいいかも」

「この前、洋平のお見舞いに行ったときに、洋平の部屋で彩葉と課題をやったけど、集中できたよね」

「そうだね。だから、私は白石君の家に賛成」


 星野さんはいつもの優しい笑みを浮かべながら最初に賛成した。琢磨と吉岡さんは去年も一緒に勉強していたので、賛成するなら2人が最初だと思っていたけど。意外な展開に思えた。


「私も賛成だよ」

「あたしも」

「俺も賛成だ!」

「あたしも白石君の家に賛成」

「分かった。じゃあ、俺の家で勉強会をやるか」


 こうして、今日の放課後は俺の家で中間試験対策の勉強会をすることが決まった。

 ただ、6人だと俺の部屋にあるローテーブルだけだと狭くて、クッションも足りないな。だから、結菜にLIMEで、勉強会をするからローテーブルとクッションを借りてもいいかという旨のメッセージを送る。

 まだ部活前なのか、結菜はすぐに「いいよ!」と返信してくれた。良かった。

 6人とも今週は掃除当番ではないので、6人で一緒に教室を後にした。

 階段で昇降口のある1階まで下りて、昇降口で上履きからローファーに履き替えた。

 6人で学校を後にして、俺の家へ向かう。この6人で一緒に俺の家に行くのは初めてなので、何だか新鮮に感じた。

 また、途中にあるコンビニで飲み物やお菓子を購入した。試験前の勉強会のときは飲み物やお菓子買い、休憩のときを中心に楽しむことが多い。頭を使うのもあって、これがいい気分転換になるんだよな。クッキーやポテトチップスを買い、俺は飲み物として微糖のボトル缶コーヒーを購入した。

 千弦達と一緒に帰宅して、リビングでみんなが母さんに挨拶した。また、そのときに母さんは俺が母の日にプレゼントしたインスタントのアイスコーヒーを飲み、結菜がプレゼントしたマドレーヌを食べていた。

 千弦達を俺の部屋に通し、俺は千弦と一緒に結菜の部屋からローテーブルとクッションを運んで、勉強会会場のセッティングをする。

 テーブルとクッションをセッティングした後、みんなはクッションに腰を下ろす。座る場所は昼休みに6人でお昼を食べるときと同じく、俺から時計回りに星野さん、琢磨、吉岡さん、千弦だ。千弦とは隣同士で、正面には琢磨がいる。


「さてと。琢磨と吉岡さんと一緒にする放課後の勉強会では、まずはその日の授業で出た課題をやるんだ。千弦達はどうしてた?」

「放課後にやるときは、私達も課題からやってたよ」

「そうだったね。課題も定期試験の範囲になることが多いし。それに、千弦ちゃん達と一緒にやれば、分からないところを教え合えるしね」

「あたしも友達と一緒に勉強するときは最初に課題を片付けたわ。彩葉の言うように、みんなで教え合ってた」

「そっか。じゃあ、まずは課題からやっていこうか」


 俺のその言葉にみんなが頷いてくれた。場所が俺の家なのもあってか、俺が勉強会の司会進行役みたいになってきているな。

 今日の授業で課題が出された教科は数学Ⅱ、物理、現代文、コミュニケーション英語Ⅱの4科目だ。

 みんなで何の教科からやるのか相談し、苦手な人や不安に思っている人が一番多い物理を最初にやることに決まった。その次に、物理ほどではないけど苦手にしている人がいる数学Ⅱ。コミュニケーション英語Ⅱ、現代文の順番でやることも。

 物理の課題と教科書とノート、筆記用具を取り出して、物理の課題から取りかかる。2年生最初の定期試験対策の勉強会を始めるのであった。

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