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クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。  作者: 桜庭かなめ
本編

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第26話『フリーフォール』

「おかえりなさーい。お疲れ様でしたー!」


 数分ほどコースを爆走した後、俺達が乗るマシンはスタート地点に戻ってきた。スタートと言ってくれた方と同じスタッフさんが「おかえりなさい」と言ったので、ここから再び走り出すドッキリが仕掛けられていることはないだろう。

 マシンはスタート地点で停止し、男性のスタッフさんが安全バーを上げてくれた。


「楽しかったね! 白石君!」


 藤原さんはとても爽やかな笑顔でそう言ってくる。さっきまで絶叫しまくっていたのもあってか、今の声もなかなか大きい。今の姿も王子様っぽくてかっこいい。


「そうだな。最初は怖かったけど、藤原さん達と一緒に叫んだら楽しかった」

「ふふっ、そっか。白石君、結構絶叫していたよね。いつもと違った白石君が見られて良かったよ」

「そうか。藤原さんもな。黄色い声でいっぱい叫んでたから」

「絶叫系アトラクションだからね。いっぱい叫んだ方が気持ちいいし。良かったって思ってもらえて良かったよ」


 依然として、藤原さんは爽やかな笑顔でそう言う。絶叫系アトラクションに合わせて思いっきり叫んだのか。


「いやぁ、楽しかったぜ! ジェットコースター最高だー!」

「楽しかったよね! やっぱり、遊園地に来たらこれに乗らないとね!」

「ジェットコースターに乗ると遊園地に来たって実感するわよね!」

「ですね! いっぱい叫んだので楽しかったです!」


 絶叫系が大好きなのもあって、俺達よりも前の席に座っていた琢磨達4人は満足した様子でマシンから降りる。ジェットコースターは遊園地の王道アトラクションの一つだし、遊園地に遊びに来たって実感できるのは納得だな。

 ジェットコースターが終わったので、俺は藤原さんの手を離してマシンから降りる。

 ただ、猛スピードのマシンに数分ほど乗っていたからだろうか。降りた直後、ちょっとだけふらついた。


「だ、大丈夫かい? 白石君」


 藤原さんにそう言われると、背中から支えられる感覚が。ちょっと心配そうに見つめる藤原さんがすぐ近くにいるし、きっと藤原さんが支えてくれているのだろう。


「ああ、大丈夫だ。きっと、猛スピードのマシンに数分乗ったから、その反動でちょっとふらついただけだと思う。あとは、ジェットコースターに乗ったのが中学卒業以来で久しぶりだからなのもあるかも」

「それならいいけど。無理はしないでね。気分が悪くなったら遠慮なく言って」

「ああ、ありがとう」


 藤原さん……優しいな。こういう気遣いも、王子様と言われるほどに人気な理由の一つなのだろう。

 これまでに遊園地で気分が悪くなったことはほとんどない。今日みたいにジェットコースターの後にふらつくことも全然なかったし。よほどのことがなければ気分は悪くならないと思う。そう思いたい。


「白石君の言うこと分かるよ。私も昔はジェットコースターから降りるとフラフラしたから」


 星野さんは優しい笑顔でそう言ってくれる。俺の言うことに共感してくれる人がいるのは嬉しい。


「そうなんだ。……星野さんは大丈夫か? 乗る前はジェットコースターを怖がっている様子だったし」

「大丈夫だよ。飛鳥先生の手を握って、みんなと一緒に叫んだからね」

「叫んでいる星野さん、可愛かったわ。私もいっぱい叫んだから、学生時代に戻った感じがして楽しかった」

「飛鳥先生も可愛かったですよ」


 星野さんがそう言うと、星野さんと山本先生は「ふふっ」と笑い合う。今の2人を見ていると、教師と生徒ではなく友達同士に見える。走行中は後ろから2人の絶叫も聞こえたし、2人もジェットコースターを楽しめたのだろう。

 ジェットコースターに乗った後にフラッとしたのは……俺だけか。それを知ると、ちょっと情けない気持ちになるな。

 俺達はジェットコースター乗り場を後にする。


「次はどこに行こうか?」


 山本先生は俺達にそう問いかける。


「あたし、次も絶叫系がいいです! ジェットコースターに乗ったらもっと乗りたくなってなりました!」


 吉岡さんは右手をピシッと挙げて、ワクワクとした様子でそう言う。その直後、琢磨も嬉しそうに「賛成だ!」と右手をピシッと挙げて。さすがは絶叫系大好きカップルである。


「あたしも賛成ですっ!」

「あたしも! アドレナリン出てきたわ!」


 結菜と神崎さんも吉岡さんの案に賛成。2人も絶叫系が大好きだし、賛成すると思っていた。


「私も賛成。ジェットコースターに乗ったから、次が絶叫系でも大丈夫だよ」

「私も絶叫系でかまわないよ。白石君はどう? さっきはフラッとしていたけど」

「もう大丈夫だ。次は絶叫系でいいぞ」

「じゃあ、みんな賛成ってことで、次も絶叫系に行こうか。何がいい?」

「あれがいいです!」


 次も絶叫系と提案した吉岡さんがある方向を指さす。そちらを見ると、フリーフォールのタワーが見えている。今はお客さん達が乗っているマシンがゆっくりと上っているところだ。


「フリーフォールか! あれも絶叫系の王道だな!」

「いいわよね!」


 琢磨と神崎さんはフリーフォールに好感触だ。

 琢磨の言う通り、フリーフォールは絶叫系アトラクションの王道の一つだ。ジェットコースターの次くらいにいっぱい乗ったことがある。

 俺を含め、みんなフリーフォールに賛同した。なので、次はフリーフォールに乗ることに決まった。

 俺達はフリーフォール乗り場に向かって歩き始める。

 時刻も11時過ぎになり、パークランドに来た直後よりもお客さんの数が多くなっている。これからお昼時になっていくし、この後もお客さんが増え続けるのだろう。

 また、可愛かったり、綺麗だったりする女性ばかりだからか、男性中心にこちらを見てくる人が多い。ただ、俺や琢磨という男もいるから、話しかけたり、絡んできたりする人はいない。

 フリーフォールのタワーがあるので、フリーフォール乗り場の前までは迷わずに行くことができた。

 ジェットコースターと同じく、フリーフォール乗り場に向かって列が伸びている。さっき並んだ列と同じくらい長いな。ここも2列に並ぶので、さっきと同じで俺は藤原さんと隣同士で並ぶ。

 また、近くに女性のスタッフさんがいたので、どのくらいで乗れるか聞いてみると、だいたい20分ほどで乗れるらしい。


「短いですね。ジェットコースターの列と同じくらい長いのに」

「そうね。フリーフォールは一気に落下してすぐに終わるからじゃないかしら」

「なるほどです」

「早く乗れるのは嬉しいわ。あたし、待つのはあまり得意じゃないし。もちろん、今は結菜ちゃん達がいるからいくらでも待てるけどね」

「あたしもお兄ちゃんやお友達がいれば待てるタイプですね」


 俺がいれば、と言ってくれるところが嬉しいな。

 思い返すと、こういう列に並んだときは、結菜は俺や両親、友達と話して楽しそうにしている。


「あたしは玲央と同じタイプかなぁ。待つのはあまり得意じゃないけど、琢磨君や友達がいれば結構待てるかな」

「俺も同じ感じだぜ」

「友達がいれば列に並ぶのも悪くないわよね」


 自分と同じタイプだからか、神崎さんはちょっと嬉しそうだ。


「千弦や彩葉達はどうです?」

「私は元々結構並べるタイプだね。特に飲食店だと。白石君や結菜ちゃんには言ったけど、待てばお腹が空いてより美味しくなるから」

「素敵な考えね!」

「私も元々並べるタイプだよ」

「俺も。今みたいに結菜や友達といれば話すし、一人で待つときはラノベを読んだり、音楽を聴いたりすればあっという間だから」

「先生も白石君と同じだね。あと、漫画や同人イベントではかなりの時間待つことがあるから、その経験で慣れているのもあるかな」

「かなり長い列がありますもんね」


 俺も漫画や同人イベントに参加したことがあるので、山本先生の言うことはよく分かる。ああいうイベントで並ぶ列に比べれば、今並んでいる列は短く感じられる。


「4人は並べるんですね。イメージ通りです」


 と、神崎さんは納得した様子で言った。気長なタイプに思われているのかな。

 それからも、遊園地の話や列で並んだときの話をしながら、待機列での時間を過ごしていく。

 フリーフォールは乗っている時間が短いので、ジェットコースターを待っているときよりも短い間隔で前に進んでいく。それもあり、俺達の番になるまではすぐに感じられた。

 フリーフォールは4方向全てにシートがあり、1方向に8つのシートがある。前に来たときは6シートだった気がするけど。長い待機列ができるほどだし、人気だからシートを増やしたのかな。

 俺達8人で話していたのを見ていたのか、女性のスタッフさんは俺達を同じ方向のシートに案内してくれた。有り難い計らいだ。

 俺達はシートに座る。座り方は山本先生、俺、藤原さん、神崎さん、星野さん、結菜、吉岡さん、琢磨という並びだ。

 シートに座ると、女性のスタッフさんが安全バーを下ろす。


「千弦、彩葉。手を繋いでいいかしら? ジェットコースターで結菜ちゃんと手を繋いだから、今度は2人と手を繋ぎたくて」

「いいよ、玲央」

「私もいいよ、玲央ちゃん」

「ありがとう!」


 神崎さんはとても嬉しそうに藤原さんと星野さんの手を握る。

 3人の様子を見ていたからか。それとも、ジェットコースターでも手を繋いでいたからか。結菜、吉岡さん、琢磨も手を繋いでいく。


「白石君。今回もどうだい?」


 そう言い、藤原さんは微笑みながら俺に右手を差し出してくる。ジェットコースターでは藤原さんの手を握ってちょっと安心できたし、握った感覚も良かったから、


「ああ、いいぞ」


 と、俺は藤原さんの右手をそっと握る。その瞬間、藤原さんはニコッと笑いかけた。

 これで、学生はみんな手を繋いでいるのか。残るは俺と山本先生の間だけか。


「……山本先生。もしよければ、俺と手を繋ぎませんか?」


 さっきの藤原さんのように、俺は右手を山本先生に差し出す。

 せっかく一緒に遊園地に遊びに来たんだ。山本先生とも一緒に手を繋ぎたいと思った。それに、先生も手を繋いだ方が、より楽しい思い出になる気がしたから。

 ジェットコースターでは星野さんと手を繋いでいたけど、星野さんは女子だ。男子の俺と手を繋ぐのはどうなんだろう。

 山本先生は落ち着いた笑顔になり、


「いいよ。白石君から言ってくれて嬉しいよ」


 そう言い、山本先生は俺の右手を握ってきた。握り方も先生の手から伝わってくる温もりも優しくて。これが大人の女性の手なのかな。


「みんな手を繋いでいるから、藤原さんのように手を繋がないかって言おうと思っていたの」

「そうだったんですか。先生に言ってみて良かったです」


 山本先生……みんなの様子を見て、自分も手を繋ぎたかったんだ。可愛いことを考えていたんだな。


「おっ、白石君と飛鳥先生も手を繋いだんですね」

「これで全員手を繋ぎましたね!」


 藤原さんと神崎さんが楽しげな様子でそう言う。結菜達も笑顔でこちらを見ていて。藤原さんとも手を繋いでいるのもあってか、恥ずかしさは感じなかった。山本先生も穏やかな笑顔で「うん」と返事していた。

 ――プーッ。

 それから程なくして、ブザーが鳴る。


「はーい! それでは、フリーフォールスタートです!」


 さっき、バーを下ろしてくれた女性のスタッフさんがそう言い、俺達の乗るマシンはゆっくり上がり始めた。


「始まったね、白石君」

「ああ。ジェットコースターとは違って足が着いていないから、これはこれで緊張感があるな」

「そうだね。脚が宙ぶらりんになっていることって普段はないもんね」

「下に何もないのって緊張するわよね」


 藤原さんや神崎さん達が俺の言葉に共感してくれる。そのことが嬉しいと同時に、緊張感がちょっとほどけた。


「見下ろすと緊張しちゃうかもしれないから、正面の方を見ると広い景色が見られて少しは気が紛れるかも」


 山本先生は穏やかな口調でそう言ってくれる。

 正面を見ると……かなり高いところまで上がってきたから、広い景色を拝むことができる。同じくらいに高いのは観覧車やジェットコースターのコースくらいなので、パークランドはもちろん、パークランド周辺の町並みも一望できて。また、乗った席の方向が良く、遠くには富士山も見えて。


「広くていい景色ですね。方向も良くて、富士山が見られますし」

「そうだね。この景色を男子生徒と手を繋ぎながら見る日が来るとは思わなかったよ」

「ははっ、そうですか。俺もですよ」


 山本先生のおかげで遊園地での思い出が一つ増えたな。

 綺麗で広い景色を見たり、山本先生と話したりしたのもあって、緊張感がだいぶほぐれてきた。

 それから程なくして、俺達の乗るマシンの上昇が止まる。ついに、一番上まで来たか。


「一番上まで来たね!」

「おう! いつ落ちるか楽しみだな!」

「ドキドキしますね。前に友達と遊びに来たときに何度か乗りましたけど、毎回、この頂上で停止する時間が違いますし」

「そうなんだ。それを聞いたらよりドキドキしてきたよ……」

「安心して、彩葉。あたしが手を繋いでいるから」


 毎回、頂上で停止している時間はランダムなのか。それを知ると、いつ落下するのかドキドキするな。きっと、これもフリーフォールでドキドキするための仕掛けなんだろうな。見事にハマっている。


「本当にいつ落下するんだろうね」

「先生もドキドキしてきたよ」

「俺もです。話したり、いい景色を見たりして緊張が解けていたの――にいいいっ!」


 突然落ち始めたぞ!

 マシンが落下し始めた瞬間、脚がフワッと浮いて。それもあって、ジェットコースターとは違ったスリルが。


『きゃあああっ!』


 左右からは両隣に座っている藤原さんと山本先生を中心に女性陣の黄色い絶叫が聞こえてきて。そんな中で、琢磨の「うおおおっ!」という野太い絶叫も聞こえて。俺も、


「うわああっ!」


 と、彼らと一緒に叫ぶ。

 物凄い速度で落下するけど、俺は藤原さんと山本先生の手を決して離さなかった。

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