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クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。  作者: 桜庭かなめ
本編

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第23話『お客として』

 午後2時50分。

 受付をしてから60分が経ったので、俺達は猫カフェ・猫に洲中を後にする。

 もちろん、お店を出るときに猫耳カチューシャを受付に返したので、今はみんなの頭に猫耳はない。40分ほどカチューシャを付けていたし、付けてからの時間も凄く楽しかったので、随分と久しぶりに猫耳を取った感じがする。


「猫カフェ楽しかったですっ!」

「楽しかったね。猫が可愛かったし、猫耳カチューシャを付けた結菜ちゃん達の姿も見られたし」

「猫に触るだけじゃなくて、結菜ちゃんと白石君の頭を撫でられたもんね。とっても楽しかったよ!」

「俺も楽しかったよ。猫に癒やされたし、みんなの猫耳カチューシャ姿も見られたから」

「みんながそう言ってくれて良かったです! 猫カフェに行ってみたいと言ってみて良かったです!」


 結菜は持ち前の明るい笑顔でそう言った。猫カフェに行きたいと提案したのもあり、俺達が楽しめたと分かって嬉しいのだろう。

 良かったな、と結菜の頭を撫でると、結菜は「えへへっ」と嬉しそうに笑った。

 藤原さんと星野さんが猫カフェを楽しんでくれて、時には結菜や俺とも一緒に楽しんでくれたことを嬉しく思う。


「今は……午後3時近くか。まだ色々なお店に行けるな」

「そうだね、お兄ちゃん」

「みんなどこか行きたいところはあるか?」


 3人にそう問いかける。できれば、この後も3人の行きたいお店に行ってみたい。


「……私、ゾソールに行きたいな」


 俺の目を見つめながら、藤原さんがそう言ってきた。


「ゾソールか」

「うん。北口の方にもゾソールがあるけど、行きたいのは白石君がバイトしている南口店だよ。これまで、彩葉達と一緒にゾソールに行って白石君に接客されたことは何度もあるけど、白石君と一緒にお客さんとして行ったことは一度もないから。一緒に行ってみたいなって思って」

「確かに一度もないね。千弦ちゃんの話を聞いたら、私も白石君と一緒にお客さんとして行きたくなってきた。それに、午後3時近いし、ティータイムやコーヒータイムにちょうどいいし」

「おやつの時間にもいいですね!」


 星野さんと彩葉が藤原さんの意見に好反応だ。それもあって、藤原さんはちょっと嬉しそうな様子に。

 藤原さんと星野さんの言う通り、2人とはこれまでゾソールの店内で会ったことが何度もあるけど、それは店員とお客様の関係。お客さんとして一緒にゾソールに入ったことは一度もない。2人と一緒に行ったらどんな感じなのか興味がある。


「俺もいいなって思う。お客さんとして藤原さんと星野さんとは行ったことないし」

「そっか。じゃあ、次に行くのはゾソールでいいかな?」

「ああ、いいぞ」

「私も賛成だよ」

「いいですよ!」

「ありがとう。じゃあ、行こうか」


 藤原さんはニコッと笑ってそう言った。

 俺のバイト先でもあるゾソール洲中駅南口店に向かって歩き始める。ゾソールは南口の方にあるので、猫カフェに行くときの道を戻っていく形だ。

 4連休初日の午後なのもあってか、猫カフェに行くときと同じく。多くの人が行き交っている。こちらを見てくる人が多いことも同じだ。

 北口から洲中駅に入り、構内を抜けていく。

 南口から再び外に出ると、見慣れた景色が広がる。自宅も学校もバイト先もよく行くセントラル洲中という商業施設も駅の南側にあるので、この景色を見ると安心感がある。

 駅の南口を出てすぐに、目的地のゾソール洲中駅南口店がある。

 今日はお客さんとしてなので、結菜達と一緒にお客様用の入口から店内に入る。最近はバイトで来ることが多く、その際は従業員用の出入口から入るから、こちらの入口から入ると新鮮だ。それに、今回は初めての藤原さんと星野さんも一緒だし。

 祝日でティー&コーヒータイムの時間帯なのもあり、店内には結構な数のお客さんがいる。今日も繁盛していて何よりだ。テーブル席の方を見ると……4人席の空席が2、3席ある。これなら、待たずに座れそうかな。


「白石君と結菜ちゃんが一緒だから、お店に入るだけでも新鮮だよ」

「そうだね。カウンターにいる制服姿の白石君は何度も見たことあるけど、隣にいることはないもんね」

「そうだね、彩葉」

「俺も新鮮だよ。藤原さんと星野さんとは初めて一緒に来たから。彩葉とも久しぶりだし。最近はバイトで来ることが多いから、こっちの入口から入るのも久しぶりだし」

「そうなんだ。バイトをしているからこそ抱ける感覚なんだろうね」


 藤原さんはいつもの落ち着いた笑顔でそう言ってくれる。それが何だか嬉しかった。


「じゃあ、並ぼうか」

「そうだな。あと、俺がバイトしているから、社員割引で1割引になるよ」

「おっ、それは嬉しいね」

「バイトをしているとそういうのがあるんだね」

「そういえば、お兄ちゃんと一緒に行ったときはちょっと安かった記憶がある!」


 3人とも、1割引になると知ってちょっと嬉しそうだ。

 これまで、バイトを始めてから、結菜や友達と一緒に行ったときは、俺だけじゃなくて彼らの頼んだメニューも1割引にしてくれた。なので、今回も大丈夫だろう。

 俺達はカウンターの列に並び、何を頼もうか考える。

 昼ご飯はラーメンを大盛りにしたけど、お昼ご飯を食べ終わったから1時間半ほど経ったから、ちょっとお腹が空いてきた。ドリンクだけじゃなくてスイーツも頼もうかな。

 数分ほど並び、俺達の番に。

 俺はアイスコーヒーとかぼちゃのタルト、藤原さんはアイスコーヒーとモンブラン、星野さんはミルクティーとチーズケーキ、結菜はアイスティーとミルクレープを注文。さっき、俺が言った通り、これらの代金は俺の社員割引によって1割引となった。

 ドリンクやスイーツを購入した俺達は、カウンターから一番近くにある4人用のテーブル席を確保。ラーメン屋のときと同じように、結菜と隣同士に座った。

 向かい側には藤原さんと星野さんがいる。カウンターから2人が座っている光景を見たことは何度もあるけど、こうしてお客様用の椅子に座って2人を見るのは初めてだから新鮮と同時にちょっと不思議な気持ちになる。

 結菜達は自分のドリンクとスイーツをスマホで撮影している。俺も撮っておくか。アイスコーヒーはバイトの休憩中によく飲んでいるけど、今はかぼちゃのタルトもあるし。俺もアイスコーヒーとタルトを撮影した。


「じゃあ、いただこうか。いただきます」

『いただきます』


 藤原さんの号令で、俺達はドリンクやスイーツを楽しみ始める。

 俺はアイスコーヒーを一口飲む。……ゾソールのコーヒーは苦みが強くて俺好みだ。美味しいな。今日は晴れて暖かいし、猫カフェから数分ほど歩いてきたから、この冷たさがたまらない。


「う~ん、美味しいですっ!」

「モンブランも美味しい」

「チーズケーキも美味しいよ。ゾソールはスイーツも美味しいよね」


 結菜達はスイーツから楽しんでいる。美味しいからか、笑顔でモグモグと食べていて可愛らしい。こうして目の前でスイーツを美味しそうに食べている姿を見ると、結構嬉しい気持ちになる。


「うちはスイーツも人気だからな。星野さんがそう言ってくれて嬉しいよ」

「いえいえ」

「そう思えるのは、さすがは店員さんだね」

「1年くらいバイトしているからな。うちのメニューを楽しむ姿を見たり、美味しいって言葉を聞いたりすると嬉しくなるんだ。もちろん、今の藤原さんや星野さん、結菜を見てもそう思ったぞ」

「ふふっ、そっか。そう言われると嬉しい気持ちになるね」

「そうだね、千弦ちゃん」

「嬉しいですよね」


 そう言うと、結菜達はスイーツをもう一口食べ、


『美味しいっ』


 と、笑顔で声を揃えて言った。そんな3人を見ながらアイスコーヒーを飲むと、さっきよりも味わい深く感じられた。バイトの休憩中に飲むコーヒーも美味しいけど、妹や友達と来ている中で飲むコーヒーも美味しい。今の方が美味しいかな。

 俺はかぼちゃのタルトを一口。かぼちゃの優しい甘さがとてもいいな。美味しい。


「3人と一緒に、お客さんとして来て良かったってさっそく思ってるよ。一緒に来てみたいって言ってくれてありがとう、藤原さん。星野さんと結菜も賛成してくれて」

「いえいえ。私もテーブル席に白石君がいて、アイスコーヒーを飲んだり、タルトを食べたりする姿が新鮮でいいなって思っているし」

「カウンターで仕事をしている白石君を見るのもいいけどね。お友達だし、こうして一緒に座ってゆっくりするのもいいなって思うよ」

「そうだね、彩葉。それに、白石君のおかげで、このモンブランがいつも以上に美味しく思えるよ」

「チーズケーキもね」

「ミルクレープも最高だよ!」

「そっか。アイスコーヒーはバイトの休憩中によく飲むけど、今の方がもっと美味しいよ。タルトも美味しい」


 最近は、バイト以外では持ち帰りでコーヒーや紅茶をたまに買う程度だったけど、これからは結菜や友達と一緒にお客さんとして来て、お店でゆっくりするのを定番の一つにするのもいいかもしれない。

 それからはドリンクやスイーツを楽しみながら、クリスのアニメのことやさっき行った猫カフェのことを中心に談笑し、ゾソールでの時間を楽しんだ。

 また、4人ともスイーツを頼んでいるので、スイーツを一口交換した。ラーメンのときとは違って、互いに食べさせ合って。星野さんとは食べさせ合うのは初めてだけど、星野さんは楽しそうにしていた。

 1時間ほど滞在した後、俺達はゾソールを後にし、セントラル洲中へ行き、4人がよく行くお店を廻る。アニメイクで漫画を買ったり、ゲームセンターで結菜達がほしがったぬいぐるみを俺がゲットしたり、服や雑貨を見たりするなど盛りだくさんだった。

 楽しかったのもあり、気付けば午後6時近くになっていた。

 今日はこのくらいでお開きにしようということで、今日の待ち合わせ場所だった洲中駅の南口まで藤原さんと星野さんを送る。


「今日は楽しかった」

「私も楽しかったよ。これで明日のバイトは頑張れそうだね、千弦ちゃん」

「そうだね」

「2人ともバイト頑張って。俺も今日はとても楽しかったし、映画もとても面白かったから、明日と明後日のバイトを頑張れそうだ」

「あたしも今日は楽しかったので、明日と明後日の部活を頑張れそうですっ! 千弦さん、彩葉さん、バイト頑張ってくださいね!」

「ああ。ありがとう。白石君はバイト、結菜ちゃんは部活頑張ってね」

「2人とも頑張ってね!」

「はいっ! ありがとうございます!」

「ありがとう」


 明日と明後日は一日中バイトがあるけど、今日たっぷりと遊んだから頑張れそうだ。それに、連休最終日の月曜日はみんなで遊園地へ遊びに行くから。


「白石君、結菜ちゃん、また月曜日にね」

「また月曜日ね」

「はいっ、また月曜日です!」

「また月曜な」


 月曜日にまた会おうと言葉を交わして、藤原さんと星野さんは俺達に手を振りながら駅の構内へ入っていった。俺達は2人に手を振り続ける。

 藤原さんと星野さんの姿が見えなくなったところで、俺達は帰路に就く。今日はたくさん遊んだから、結菜と2人きりになるのは結構久しぶりに感じられた。


「今日は楽しかったね、お兄ちゃん!」

「楽しかったな。映画も面白かったから満足だ」

「良かったね。4人で過ごした今日が楽しかったから、早希さん達とも一緒に行く月曜の遊園地が凄く楽しみだよ!」

「8人で行くからな。楽しみだな」

「うんっ!」


 結菜と琢磨以外とは初めて一緒に遊園地へ行くし、月曜日がとても楽しみだ。それを糧に明日と明後日のバイトを頑張ろう。

 結菜と今日のことやクリスのことを話しながら家に帰る。話が盛り上がったので、家に着くまであっという間だった。

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