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クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。  作者: 桜庭かなめ
本編

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第19話『映画』

 5月3日、金曜日。

 今日からゴールデンウィーク後半の4連休がスタート。今日は映画、明日と明後日はバイト、月曜日は遊園地と毎日予定が入っている。楽しくて充実した4日間にしたい。

 午前9時45分。

 俺と結菜は洲中駅に向かって家を出発する。

 この後、午前10時に洲中駅の南口で藤原さんと星野さんと待ち合わせをする約束になっている。2人と落ち合ったら、駅の南側にあるシネコンに行き、予約してある午前10時半からの上映回で『名探偵クリス』の劇場版を観る予定だ。


「晴れて良かったね、お兄ちゃん!」

「そうだな」


 今日は朝からよく晴れている。この晴天は一日中続き、雨が降る心配はないという。結菜と藤原さんと星野さんと映画を観に行くし、映画を観終わった後はお昼ご飯を食べたり、駅周辺のお店に行ったりする予定なので良かった。


「千弦さんと彩葉さんと一緒に映画を観に行くのは初めてだし、映画館で同じ作品を2回観に行くのも初めてだから新鮮な気分だよ」

「そっか。俺も藤原さんと星野さんとは初めてだから、ちょっと新鮮な気分だな。それを含めて映画が楽しみだ」

「面白いから期待していいよ。お兄ちゃんも好きそうな感じの内容だから」

「そうなのか。それを聞いたらより楽しみになったぞ」


 結菜が面白いとか期待していいと言うのだ。きっと、いい作品に違いない。

 数分ほど歩くと、洲中駅が見えてきた。今日は金曜日だけど、祝日だし、4連休の初日なのもあって、多くの人が行き交って賑わっている。

 バイト先の前を通り過ぎ、洲中駅南口へ向かう。約束の時間までは10分近くあるけど、藤原さんと星野さんはもういるだろうか。


「あっ、いたよ!」


 結菜が楽しげな様子で指さす。その方に視線を向けると……南口を入ったところに藤原さんと星野さんの姿が。藤原さんはチノパンに襟付きブラウス。前開きのベストを着ている。星野さんはロングスカートにTシャツ。カーディガンを羽織っている。2人ともよく似合っていて。だからなのか、歩きながら2人のことを見ている人は男女問わず何人もいる。


「いるな」

「うんっ! 千弦さーん! 彩葉さーん!」


 大きな声で名前を言いながら、彩葉は右手を振る。

 彩葉の声に気付いたようで、藤原さんと星野さんはこちらに振り向き、笑顔で手を振ってくる。それを受けて、俺も2人に手を振った。


「おはようございます! 2人とも素敵ですね!」

「ありがとう。結菜ちゃんもキャミソールワンピース似合ってるよ。可愛い」

「Tシャツとも合ってるよね。凄く可愛いよ、結菜ちゃん」

「ありがとうございますっ!」


 えへへっ、と結菜は嬉しそうに笑っている。2人から結菜を可愛いと言ってもらえて、兄としてとても嬉しく思う。俺も今日の結菜が可愛いと思っているので、2人の言葉に何度も頷いた。


「白石君は今日もジャケットが決まってるね。かっこいいよ」

「そうだね」

「ジャケットが好きだから、そう言ってくれて嬉しいよ。2人も似合ってるよ」

「ありがとう」

「ありがとう、白石君。結菜ちゃんも」


 藤原さんと星野さんは嬉しそうにお礼を言った。笑顔なのもあって、2人の服装がより似合っているように見えた。笑顔っていうのは、ファッションにおいて一番重要な要素かもしれないとふと思った。

 結菜の希望で、結菜のスマホで何枚か4人の自撮り写真を撮る。その写真はLIMEの4人のグループトークに送ってもらった。

 俺達は映画館に向かって歩き始める。南口からだと徒歩3分ほどで着く。


「今日は誘ってくれてありがとう、結菜ちゃん、白石君」

「私からも。ありがとう」

「いえいえ! お二人とは一度も映画を観に行ったことがなかったので、一緒に観たくて。今日は予定が空いていると分かっていましたから。それに、お兄ちゃんが許可してくれたおかげでもありますし」

「藤原さんの家や俺の家で一緒にアニメを観るのが楽しかったからな。それに、結菜からのお願いはできるだけ叶えたいし。こちらこそありがとうだよ」

「そうだね、お兄ちゃん。ありがとうございます、千弦さん、彩葉さん!」


 彩葉はとても嬉しそうにお礼を言った。藤原さんと星野さんが一緒でなければ、映画を観る前から結菜がここまでの笑顔を見せることはなかったと思う。本当に2人には感謝だ。


『いえいえ』


 と、藤原さんと星野さんは声を揃えて言った。それが面白かったのか、2人は声に出して楽しそうに笑う。2人につられて、俺と結菜も声に出して笑った。


「……そういえば、白石君と結菜ちゃんは、よく一緒に映画を観に行くのかい?」

「小さい頃ほどではありませんが、結構行きますね」

「地元に映画館があるし、色々な作品を上映するから、小さい頃は家族全員でたくさん観に行ったよ。大きくなってお互いに友達や一人で行くことも増えたけど、今日みたいに結菜と一緒に行くことも普通にあるよ」

「なるほどね」

「きょうだいで仲がいいんだね」

「ええ!」


 と、結菜は持ち前の可愛い笑顔で反応してくれる。兄としてこの上ない喜びを感じ、幸せだ。結菜が嫌だと言わない限りは、これからも結菜と一緒に映画を観に行きたい。


「千弦さんと彩葉さんは一緒に映画を観に行くことって多いんですか?」

「ああ。2人とも観たかったり、気になっていたりする作品なら一緒に観に行くよ」


「そうなんですね」


 藤原さんと星野さん、一緒に観に行くことが多いんだ。普段から一緒にいることが多いからそれも納得だな。


「クリスは毎年、公開直後の週末に観に行くよね」

「そうだね。クリスは好きだからね。今年は玲央とか部活のある友達も一緒だったから、部活が休みの日曜日に観に行ったんだ」

「そうでしたか! あたしも公開週の日曜日に友達と観に行きました!」


 同じ日に藤原さんと星野さんも観に行っていたことを知ってか、結菜はテンション高めだ。もしかしたら、来年以降は、公開した週の週末にクリスを一緒に観に行くことが恒例になるかもしれないな。


「3人とも、今日まで俺にネタバレしないでいてくれてありがとう」


 クリスは推理ものなのもあり、結菜達には映画の内容はあまり言わないでほしいとお願いしておいたのだ。今日からテニス部の合宿に行っている神崎さんにも。みんなのおかげで、犯人とかトリックとかは全く知らずにいられている。


「いえいえ。お兄ちゃん、推理ものだけは事前のネタバレは嫌うからね」

「白石君の気持ち分かるよ。私も、推理要素がある作品は観る前にネタバレされるのは嫌だなって思うし」

「私も2人と同じタイプだね」

「そうか。……みんなのおかげで、今年もクリスを楽しめそうだ」


 早く映画を観たいな。

 結菜達と映画絡みのことで話していたので、気付けば映画館の前まで来ていた。

 俺達は映画館の中に入る。小さい頃からたくさん来ている映画館だけど、藤原さんと星野さんと来るのは初めてだからちょっと新鮮に感じられる。

 4連休初日だったり、クリスなどのヒット作がいくつも公開されていたりするから、ロビーには多くのお客さんがいる。チケットの券売機の列もかなり長い。


「じゃあ、俺は予約したチケットを発券してくるから、3人はこのあたりで待ってて」

「うん!」

「よろしくね、白石君」

「白石君、お願いします」

「ああ」


 俺は発券機のある方へ向かう。

 発券機の方も列はできているが、券売機の列に比べればかなり短い。数分もあれば自分の番になるんじゃないだろうか。そう推測しつつ、最後尾に並んだ。

 結菜達の方を見ると……3人で何やら楽しそうに話している。3人と仲良くなって良かった。結菜は神崎さんにも気に入られているし。

 予想通り、数分ほどで俺の番がやってきた。

 発券機に予約した時に発行された購入番号を入力。

 画面には、10時半から上映開始の『名探偵クリス』の座席を4席購入した情報が表示される。座席番号も……うん、無事に4席並んでるな。

 チケット発券のボタンを押し、チケットを4枚発行した。ちなみに、チケット代はスマホのキャリア決済で支払う形で、藤原さんと星野さんからはチケット代を事前に現金で受け取っている。

 発行したチケットを持って結菜達のところに戻る。3人は今も楽しそうに話している。


「お待たせ。チケット発券してきた」

「ありがとう、お兄ちゃん!」

「ありがとう。事前に予約していたからすぐだったね」

「そうだね、千弦ちゃん。球技大会のことを話していたし。結菜ちゃんに3位おめでとうって言われたよ」

「昨日、お兄ちゃんから聞いたり、LIMEで話したりはしたんだけどね。直接おめでとうって言いたくて」

「そうだったんだ」


 昨日の夜は結菜に球技大会のこと話した。そのとき、吉岡さんがLIMEで送ってくれた賞状を持つ藤原さん達の写真を見せたら、結菜は「3位凄い!」って言っていたっけ。だから、おめでとうと直接言いたいと結菜が思ったのも納得だ。


「ところで、チケットなんだけど……みんなどの席がいい? 4席で並んで予約したけど。ちなみに、俺はどこでもかまわないぞ」

「……あたし、千弦さんと彩葉さんと隣同士で観てみたいです。初めて一緒に映画を観るので。お兄ちゃんには悪いけど……」


 と、結菜は希望を伝えてくる。右手を挙げながら言うところが可愛い。

 今まで結菜と一緒に映画を観に行ったときは、ほとんど俺と隣同士の席に座っていた。だから、俺には悪いと言ったのだろう。


「気にするな。俺は結菜と一緒に映画館に来て、一緒にクリスを観られるだけで嬉しいからな」


 まあ、結菜と隣同士の席で観られたらより嬉しい気持ちになるのは事実だけど。ただ、結菜の願いを最優先にしたいのが兄というものだ。


「藤原さんと星野さんさえ良ければ、それでいいぞ」

「私はかまわないよ」

「私もだよ、結菜ちゃん。むしろ、隣に座りたいって言ってくれて嬉しいよ」

「はいっ、ありがとうございます!」


 結菜は嬉しそうにお礼を言った。そんな結菜の頭を藤原さんと星野さんは撫でていて。心温まる光景だ。


「他に希望ある人はいる?」

「……私も、初めて一緒に観る結菜ちゃんと白石君と隣同士になりたいかな。結菜ちゃんの話を聞いたら、私もそう思って」

「俺はかまわないぞ。星野さんは?」

「うん、私もいいよ」

「ありがとう」

「結菜と藤原さんの希望通りにするには……星野さん、結菜、藤原さん、俺って並びだな」


 その座席順通りに結菜達に座席のチケットを渡した。自分の希望が通ったのもあってか、結菜と藤原さんは結構嬉しそうにしていた。

 上映開始時刻までは20分ちょっと。劇場への入場開始時刻までは10分ちょっと。なので、俺達はお手洗いを済ませ、フード&ドリンクコーナーでポップコーンとドリンクを購入した。ちなみに、俺はポップコーンは塩味、ドリンクはアイスコーヒーにした。

 ポップコーンとドリンクを購入した直後、10時半上映開始の『名探偵クリス』の入場開始が案内された。

 スタッフの方にチケットを見せ、俺達は指定された劇場へ。

 劇場の中に入ると……結構立派だ。クリスは大ヒット作だし、ゴールデンウィークの定番作でもあるから、立派な劇場を割り当てられているのだろう。

 購入した座席は後ろから3列目の、正面にスクリーンが見える席だ。このあたりの席は人気が高いけど、購入できたのは予約開始日の3日前に予約したからだろう。

 事前に決めた通り、星野さん、結菜、藤原さん、俺の並びで座る。座席のホルダーにドリンクとポップコーンを乗せたトレーをセットする。


「結構後ろだからスクリーンが見やすくていいね、白石君」

「そうだな。スクリーンが大きいから、このくらい後ろで良かった」


 これで、映画をより楽しめそうだ。


「うんっ、キャラメル味のポップコーン美味しい!」


 結菜は幸せそうな様子でポップコーンを食べている。結菜は映画が始まる前からポップコーンを食べるタイプだからな。そんな結菜のことを藤原さんと星野さんは微笑みながら見ている。


「キャラメル味も美味しいよね。私のストロベリーミルク味を一口食べてみる?」

「私のバター醤油味も一口どうぞ」

「ありがとうございますっ、彩葉さん、千弦さん! いただきます!」


 その後は俺も交えて4人でポップコーンを一口交換した。俺の買った塩味も美味しいけど、結菜達からもらったキャラメル味、ストロベリーミルク味、バター醤油味も結構美味しい。

 結菜達は4種類の味のポップコーンを食べられて満足そうな笑顔に。3人の笑顔を見ると、劇場内が暗くなる上映前に交換して良かったと思える。

 ポップコーンを交換してからすぐ、劇場内は暗くなり、近日公開予定の作品の予告編が流れる。クリスがアニメ映画なのもあり、アニメ作品の予告が多い。あとはクリスは女性人気が高いから、若い男性俳優や男性アイドルが主演の邦画作品も。

 予告編はそこまで興味がないので藤原さん達の方を見ると……3人ともスクリーンを見ている。スクリーンの光に照らされた藤原さんの横顔はとても綺麗で、結菜と星野さんの横顔は可愛らしい。そう思っていると、藤原さんがこちらをチラッと見て、目が合う。


「どうしたの? 白石君」

「……まだ予告だし、何となく藤原さん達の方を見てた」

「ふふっ、そっか。始まる前の予告って長く感じるよね」

「そうだな」


 映画が早く始まってほしい気持ちもあるから、こういう予告は長く感じることが多い。


「クリスを観るのは2回目だけど、同じ作品を映画館で2回観たことは全然ないし、白石君と結菜ちゃんと一緒に観るのは初めてだから楽しみだよ」

「そうか。俺も藤原さんと星野さんとは初めてだから、今年のクリスはいつも以上に楽しみだ」

「そう言ってくれて嬉しいよ。一緒に楽しもうね」


 と、藤原さんはささやくようにして言った。その際、俺に見せてくれる王子様スマイルの爽やかな笑顔はとても素敵で。また、今のやり取りもあってか、それまでよりも藤原さんの甘い匂いが強く感じられて。

 それから程なくして予告が終わり、クリス本編が始まる。約2時間のクリスを、結菜と藤原さんと星野さんと一緒に楽しむのであった。

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