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第18話『球技大会の終わり』

 球技大会の全種目の全試合が終わった後、開会式と同じように、校庭に全校生徒が集まって閉会式が行なわれた。

 閉会式の中で、各種目の第3位までのチームと生徒に校長先生から賞状が渡された。

 女子ドッジボールで第3位になったので、藤原さん、星野さん、神崎さん達が生徒達の前に出て、藤原さんが校長先生から賞状を受け取った。その様子を見たらとても嬉しい気持ちになって。嬉しさと3位の称賛を込めて、俺は大きく拍手した。

 また、藤原さんが賞状を受け取ったときが、生徒達からの「おめでとう」の声や拍手の音が一番大きかった気がした。これも藤原さんの人気の賜物だろう。

 閉会式が終わり、一般生徒は校舎に戻っていく。その際、山本先生から、男子は教室で、女子は女子更衣室や本日のために設置された特設の更衣室で着替えるように指示された。

 2年3組の教室に戻り、女子達が全員教室を出て行ってから、男子生徒は体操着から制服へと着替えていく。


「去年よりもいいベスト8まで行けて良かったぜ!」

「そうだな。去年は初戦を勝って、2回戦で敗退だったもんな。今年は2勝できたし」

「おう! 今年も洋平が一緒だったし、早希達の応援があったおかげだろうな!」

「去年よりもいっぱい応援されたよな。応援は大きかった」


 今年は藤原さんや星野さん、神崎さん達もいたし。去年は別のクラスだった吉岡さんが応援してくれたけど、1年経って琢磨との恋仲が深まったのもあり、今年の応援は去年以上に熱が入っていた。実際、1回戦のラストシュートは藤原さんの応援のおかげで決められたと思っているし。彼女達の応援が力になり、今年はベスト8まで行けたのだと思う。


「来年はもっと上に行けたら嬉しいな。できれば、洋平と一緒にな!」

「そうだな」


 そのためにはまず、3年生でも同じクラスにならないといけないけどな。来年も琢磨と同じクラスになって、琢磨と一緒に男子バスケで球技大会に出場したい。


「女子バスケも女子ドッジボールも応援して楽しかったぜ! 早希はいっぱいゴールを決めたし、ドッジボールは3位になったから満足だ!」

「そうだな。去年よりも充実した球技大会だったな」


 女子ドッジボールが3位決定戦まで進んだのもあり、男子バスケの試合のとき以外の多くは、女子バスケやドッジボールの応援をしていた。だから、去年よりも閉会式まであっという間だった気がする。

 藤原さんの机には、女子ドッジボール3位の賞状が置かれている。それを見ると、3位決定戦に勝利し、藤原さんが星野さんや神崎さん達と抱きしめ合いながら喜んでいたときのことを思い出す。そのことで胸がとても温かくなった。

 それから10分近く経って、制服姿に着替えた女子達が教室に戻ってきた。その際、


「みんなー。3位になった記念に、女子ドッジボールに出た子達を撮影したいんだ。だから、黒板の前を使わせてくれるかな」


 と、吉岡さんがお願いした。賞状を持って、女子ドッジボールのみんなで写真を撮りたいのか。記念になっていいんじゃないだろうか。きっと、着替えているときに誰かが提案したのだろう。

 吉岡さんのお願いもあり、黒板の近くにいた生徒達は教室後方へと移動する。

 藤原さん、星野さん、神崎さんをはじめとした女子ドッジボールに出場した女子達が黒板の前に移動する。また、藤原さんが賞状を持って。

 神崎さんは白いチョークで黒板の上の方に『2年3組 女子ドッジボール3位!』と大きく書く。あの文字があると、後に写真を見返したとき、何があったのかすぐに分かっていいんじゃないだろうか。

 賞状を持った藤原さんを中心に、女子ドッジボールに出た女子達が黒板の前に立つ。ちなみに、藤原さんは星野さんと神崎さんに挟まれる形だ。

 吉岡さんは教室の真ん中あたりに立って、スマホを黒板の方に向ける。


「はーい、みんなー! 撮るよー! さん、にー、いち!」


 吉岡さんがカウントダウンをした後、『カシャッ』とシャッター音が鳴った。その際、星野さん達はピースサインなどをした。賞状を持つ藤原さんも爽やかな笑顔で。


「……うん! いい写真撮れたよ! LIMEで送るね。女子ドッジボールのみんな、3位おめでとう!」


 吉岡さんが持ち前の明るい笑顔でそう言った。

 吉岡さんの振る舞いもあり、男女問わずクラスメイトの多くが「おめでとう」と言って、女子ドッジボールに出場した女子達に向けて拍手を送った。

 また、教室前方の扉付近には山本先生がおり、先生も笑顔で拍手を送っていた。先生も着替えており、ロングスカートに半袖のブラウス姿になっている。


「はい、みんな。自分の席に着いてね。終礼を始めるよ」


 山本先生はスーパーにあるようなカゴを持って教室に入り、教卓まで向かう。また、カゴは教卓の上に置いた。あのカゴに何が入っているのかは見当がついている。

 クラスメイト全員が着席したところで、終礼が始まる。


「みんな、今日は球技大会お疲れ様でした。色々な種目を見て回りましたが、みんなよく頑張りましたね。特に女子ドッジボールは3位になって、先生はとても嬉しいです。おめでとう!」


 山本先生は美しい顔に嬉しそうな笑みを浮かべ、拍手をする。それに生徒達が乗っかり、俺達も拍手。こういうことは何度やっても気分がいいものだ。


「去年、私のクラスだった人は予想がついていると思いますが、球技大会を頑張ったみんなに飲み物のご褒美です!」

『おーっ!』


 半分近くの生徒達が喜びの声を上げる。そのうちの3人は琢磨と吉岡さんと神崎さんである。

 やっぱり、山本先生の持ってきたカゴには飲み物が入っていたか。先生は球技大会、体育祭、文化祭といった学校のイベントが終わったとき、ご褒美として飲み物を一つプレゼントしてくれるのだ。それもあって、去年はイベントが終わった後も楽しかったことを覚えている。


「紙パックのドリンクで、全部で4種類あるよ。ストレートティー、レモンティー、ミルクティー、ミルクコーヒーだよ。1人1つずつ好きなものを取ってね。ここでさっそく飲んでもいいし、持って帰って家で飲んでもいいからね。飲んだ後はちゃんとゴミ箱に捨てるように」

『はーい!』


 元気良く返事をすると、3分の2ほどのクラスメイトが席から立ち上がり、教卓にあるカゴへと向かった。

 俺も席から立ち上がり、琢磨と一緒にドリンクを取りに行く。

 紅茶も結構好きだけど、それ以上にコーヒーが好きなので、俺はミルクコーヒーを取った。琢磨はストレートティーを取った。

 自分の席に着いて、藤原さん達を見ると……藤原さんはコーヒー、星野さんと神崎さんはミルクティー、吉岡さんはレモンティーを取ったか。琢磨も含めみんなさっそく飲み始めている。琢磨は「うめーっ!」と喜んでいて。

 俺も飲むか。付属のストローを飲み口に刺して、ミルクコーヒーを一口飲む。


「……美味いな」


 コーヒーの苦みはもちろんのこと、ミルクや砂糖の甘みもしっかりあって。球技大会で体を動かしたり、たくさん応援したりした後だから、この甘さがとてもいい。また、直前まで冷やしていたのか結構冷たくて。それが嬉しかった。


「全員取ったね。じゃあ、飲みながらでいいから連絡事項を聞いてね。今日は普段と違って教室にいる時間は短かったので、掃除はなしとします」


 おっ、今日の掃除はないのか。

 ちなみに、今週の掃除当番は藤原さんと星野さんのいる班だ。藤原さんと星野さんは……嬉しそうにしている。可愛いな。


「明日から月曜日まではゴールデンウィーク後半の4連休です。なので、次の登校は来週の火曜日になります。連休中は遊びに行ったり、部活の合宿に参加したりする人も多いと思いますが、怪我には気をつけて、火曜日にまた会いましょう。では、今日の終礼はこれで終わります。委員長、号令をお願いします」


 その後、女子のクラス委員長の号令により、今日の学校が終わった。

 これで今週の学校生活は終わったか。普段と違って山本先生から差し入れのコーヒーを飲んでいるから、さっそく連休気分になっている。


「洋平、今日はお疲れさん!」

「琢磨もお疲れ。今日はバイトもないし、俺はコーヒーを飲み終わるまでここでゆっくりするけど琢磨はどうする?」

「俺もそうするぜ。今日は部活ないからな」

「そっか」


 教室を見渡すと、3分の2くらいのクラスメイトが残っている。その多くは紙パックの飲み物を飲んでいる。琢磨のように、部活がないからゆっくりする生徒が多いのかも。あとは、教室の掃除がないのも、残っている生徒が結構いる理由の一つかもしれない。


「琢磨君、白石君、お疲れ~」


 吉岡さんが、レモンティーの紙パックを持って俺達のところにやってくる。その後すぐに藤原さん、星野さん、神崎さんも。吉岡さんに倣ってか3人も「お疲れ様」と言って。


「おう! みんなお疲れさん!」

「みんなお疲れ様。藤原さんと星野さんと神崎さんはドッジボール3位おめでとう」

「おめでとうだぜ!」

「ありがとう、白石君、坂井君」

「2人ともありがとう」

「ありがとね! 3位になったし、千弦や彩葉達と一緒にドッジボールできたし、千弦のかっこいい姿もたくさん見られたから凄く満足だわ! 早希達の応援もできたし。去年よりも楽しい球技大会だったわ!」


 ニッコリとした笑顔でそう言うと、神崎さんはミルクティーを飲む。ちゅーっ、と飲む姿がとても可愛らしい。

 そうだね、と藤原さん達は笑顔で神崎さんに同意する。もちろん俺も。自分の出場した男子バスケは去年よりもいい成績だったし、女子バスケと女子ドッジボールをいっぱい応援できたから。そう思いながらコーヒーを一口飲むと、さっきよりも味わい深く感じられた。


「球技大会も楽しかったし、これで明日から3日間のバスケ部の合宿を頑張れそうだぜ! 最終日の月曜はみんなで遊園地だしな!」

「あたしも! 楽しい4連休になりそうだよね!」

「そうね、早希。あたしもみんなとパークランドに行くのを楽しみに、日曜までテニス部の合宿を頑張るわ」

「3人とも合宿頑張って。私と彩葉も土曜日はバイトを頑張ろうね」

「うんっ。月曜はパークランドだし、明日は千尋ちゃんと白石君と結菜ちゃんと一緒に映画を観に行くから頑張れそう」

「そうだね、彩葉」

「みんながそう言ってくれて嬉しいよ。結菜と一緒にパークランドに誘ってみて良かった」


 今のみんなの言葉を結菜にも聞かせてあげたいくらいだ。

 みんながここまで楽しみにしてくれているし、俺も楽しみだから、パークランドに行く月曜日がとても待ち遠しい。

 明日は結菜達と映画を観に行き、月曜日はみんなでパークランド。土日は一日中バイトがあるから、楽しくて充実した4連休になりそうだ。


「みんな、合宿やバイトを頑張って。俺も土日のバイトを頑張るよ」


 俺がそう言うと、みんな「ありがとう」とお礼を言い、「バイト頑張って」と言ってくれた。嬉しいな。バイトを頑張れそうだ。

 6人全員が連休中に合宿とかバイトとかの予定があるので、その後も6人の間で「頑張って」「ありがとう」と言葉が交わされて。それもあり、藤原さん達はみんな明るい笑顔になっていて。心が温まる。


「みんな。月曜日のパークランド……先生も楽しみにしているよ。他にも予定があるし、明日からの4連休が楽しみだよ」


 気付けば、山本先生が俺達のところに来ていた。余ったのか、先生はレモンティーを飲んでいる。放課後になっているし、連休が楽しみだと言っているだけあって、先生の笑顔はとても柔らかい。


「飛鳥先生と一緒にパークランドで遊ぶの楽しみです!」


 吉岡さんは快活な笑顔でそう言う。すると、藤原さん達も楽しみだと言って。そのことで山本先生の笑顔が嬉しそうなものに変わった。この7人と結菜なら、きっと、パークランドを一緒に楽しめるだろう。

 それからはしばらくの間は紙パックの飲み物を飲みながら談笑したり、女子達の間や琢磨と吉岡さんの間で飲み物を一口交換したりしながら、教室でゆっくりと過ごした。

 こうして、高校2年生の球技大会の一日は幕を下ろすのであった。

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