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エピローグ『直接見られて良かった。』

 タピオカドリンクを飲んだ後はセントラル洲中の中にあるゲームコーナーで遊んだ。

 クレーンゲームで千弦のほしがったうさぎのぬいぐるみを俺がゲットしたり、太鼓のリズムゲームやホッケーゲームで2人一緒に遊んだりするなどして楽しい時間を過ごしていった。

 ただ、楽しい時間はあっという間に過ぎていくもので。


「あっ、もうこんな時間なのか」


 太鼓のリズムゲームを遊び終わり、ゲームコーナーの中にあるデジタル時計を見ると、『PM 5:55』と表示されていた。


「5時55分か。色々なゲームを遊んだからあっという間だったね」

「そうだな。……もう少しゲームコーナーで遊んだり、別のお店に行ったりするか? それとも、6時近くになっているからもうそろそろ帰るか?」


 これまでのデートでも午後6時を過ぎると帰ることが多い。なので、帰ることも選択肢の一つとして提示した。

 千弦は右手の人差し指を唇に当てながら、「う~ん」と考えている。


「……6時近いし今日は帰ろうかな」

「分かった。じゃあ、送っていくよ。いつものように駅まで送る?」

「今日は家まで送ってほしいな」

「家までか。もちろんいいぞ」

「ありがとう。それで……私の部屋で今日買った下着を身に付けた姿を見てほしいな。下着を選んでもらったときは写真だったし、試着したのはブラジャーだけだから。ブラジャーとパンツを着た姿を直接見てほしくて。どうかな?」


 千弦は頬をほんのりと赤くしながらそんなことを言ってきた。

 今日、俺が選んで購入した下着を身につけた姿を直接見てほしいのか。だから、今日は家まで送ってほしいって言ったんだな。あと、凄く魅力的な提案だ。


「分かった。家まで送るよ。千弦の下着姿を見られるのが楽しみだ」

「ありがとう! じゃあ、一緒にうちに行こうか」

「ああ」


 こうして、千弦を自宅まで送ることになった。

 セントラル洲中を後にして、千弦の家に向かって歩き始める。

 南口から洲中駅に入り、駅の構内を通って、千弦の家がある北口から駅を出る。普段、デートの帰りで千弦を送るのは洲中駅までが多いので、この時間帯に千弦の家に向かって歩くのは新鮮だ。


「何だか、この時間に洋平君と一緒に家に帰っていくのは新鮮だなぁ」

「俺も同じことを思ったよ。普段は駅まで送ることが多いもんな」

「そうだねっ」


 千弦はニコッと笑いながらそう言った。とても可愛い。あと、千弦も同じことを思っていたのが嬉しい。

 その後は今日のデートについて話しながら、千弦の家に向かって歩いていった。


「ただいま」

「お邪魔します」


 千弦の家にお邪魔してそう言うと、リビングから「おかえり~」と果穂さんの声が聞こえてきた。

 それから程なくして、リビングから、ロングスカートに半袖のブラウス姿の果穂さんが姿を現した。果穂さんは俺達の方を見ると、優しい笑顔になって玄関までやってきた。


「おかえり、千弦。白石君、いらっしゃい」

「ただいま、お母さん」

「お邪魔します」

「2人とも映画は楽しかった?」

「凄く楽しかったよ! とてもいいアニメになっていたし。それに、洋平君と一緒にペアシートに座って観たからね」


 千弦はニコニコとした笑顔で果穂さんに言う。今の千弦を見ていると、俺と一緒に映画を観たことがとても楽しかったのだと分かって嬉しい気持ちになる。


「俺も楽しかったです。内容を知らない状態で観たのですがとても楽しめました。千弦と座ったペアシートも良かったです」

「ふふっ、そうなのね。それは良かったわ。……あと、千弦は白石君にいい下着を選んでもらえた?」


 うふふっ、と果穂さんは楽しげに訊いてくる。千弦は果穂さんに胸の大きさを測ってもらったから、おそらくその際に今日のデートで俺に選んでもらうと言っていたのだろう。あと、心なしか、映画の感想を訊くときよりも楽しそうな気が。


「うんっ! 洋平君にとてもいい下着を選んでもらったよ!」


 千弦は嬉しそうな笑顔で言った。彼氏としてとても嬉しいよ。果穂さんの前だからちょっと気恥ずかしい気持ちもあるけど。


「ふふっ、良かったわね、千弦。白石君、下着を選んでくれてありがとう」

「いえいえ」

「下着を選んでもらったときは、ブラジャーを試着した自撮り写真を洋平君に見せる形だったから、私の部屋で実際に見てもらおうと思って一緒に帰ってきたの」


 俺と一緒に帰ってきた理由を言ってしまうのか。まあ、果穂さんには下着を俺に選んでもらうことも話しているし、キスマークのことも知られているから話していいと思ったのかな。


「ふふっ、そうなの。いいわねぇ。私もお父さんと付き合っている頃、新しい下着を買うと自分の部屋で下着姿をお父さんに見せることがあったわぁ」


 そういったときのことを思い出しているのか、果穂さんの笑顔は頬を中心にほんのりと赤くなっている。高校生の娘がいるとは思えないくらいに可愛い。

 あと、今のやり取りで、果穂さんと千弦は親子で似ているなぁと思った。


「じゃあ、洋平君と私は部屋に行くね」

「ええ。……お母さんは邪魔しないから安心してね。私もお父さんに下着姿を見せるのは2人きりだったしね」

「お気遣いありがとう、お母さん。じゃあ、部屋行こう、洋平君」

「ああ」


 俺は千弦の部屋に向かう。

 午前中から不在だったのもあり、千弦の部屋は暑くなっている。それもあってか、これまで来たときよりも千弦の甘い匂いが濃く感じられる。

 千弦がエアコンのスイッチを入れる。エアコンの吹き出し口の近くに立っているので、エアコンの涼しい風が直接当たって。それがとても気持ちいい。


「じゃあ、さっそく下着姿を見せるね。水色とピンクのどっちから見たい?」

「そうだな……試着した順番と同じで、水色、ピンクの順番でお願いします」

「了解。じゃあ、まずは水色の下着だね。洋平君は適当にくつろいでて。荷物も適当に置いてくれていいから」

「分かった」


 俺はベッドの側にあるクッションに座る。その横に荷物が入ったバッグを置いた。

 千弦は荷物を勉強机に置いて、白い紙の手提げから水色の下着を取り出すと、服を脱ぎ始める。

 これまで、千弦と一緒にお風呂に入ったり、肌を重ねたりするときに千弦が服を脱ぐところは見ている。それでもドキドキさせられるな。

 千弦は衣服を全て脱ぐと、水色のパンツ、ブラジャーの順番で身に付けていった。

 試着した姿の写真を見たときと同じく、水色だから爽やかさと可愛らしさが感じられる。ただ、今は下着しか身につけていないし、直接見ているのもあって、写真よりも艶やかさも感じられて。とてもいい。

 千弦は俺の近くまでやってきて、


「水色の下着、着たよ。どうかな、洋平君」


 俺のことを覗き込みながらそう問いかけてきた。


「……凄くいいよ。爽やかで可愛らしくて。あと、下着だけだから艶っぽさもあって。とても素敵だ。水色を選んで良かったと思うよ」

「えへへっ。ありがとう、洋平君。実際に見せて良かった」


 千弦は嬉しそうな笑顔で言うと、俺のすぐ側で座り、俺にキスしてきた。

 部屋の中が涼しくなってきたから、千弦の温もりがとても心地いい。また、千弦が下着姿なのもあって、普段よりも千弦の甘い匂いが香ってきて。

 数秒ほどして、千弦から唇を離した。すると、目の前には嬉しそうな千弦の笑顔があった。


「嬉しくてキスしました」

「そっか。いいキスだった」

「私も。……もし良ければ、私の下着姿を撮ってもいいよ。褒めてくれたし」

「ありがとう。では、お言葉に甘えて」


 俺はスマホで千弦の水色の下着姿を撮影した。千弦は笑顔でピースサインしてくれたのもあり、とても可愛い写真を撮ることができた。


「いい写真が撮れたよ。ありがとう」

「いえいえ。……じゃあ、次にピンクの下着を着るね」

「ああ。ピンクも楽しみだ」


 千弦は水色の下着を脱ぎ、ピンクの下着を身に付ける。

 ピンクだから、水色の下着を身に付けたとき以上に可愛いな。あと、下着のみなので、水色の下着のときと同じで艶っぽさを感じられて。


「ピンクの下着を着たよ。どうかな?」

「ピンクだから物凄く可愛いよ。下着姿だから、水色のときと同じく艶っぽさがあって。ピンクも選んで良かったな。そして、直接見られて良かった」

「そう言ってくれて嬉しいよ。ありがとう!」


 先ほどと同じく、千弦は嬉しそうな笑顔でお礼を言った。


「こちらこそありがとう。……可愛い下着姿を見せてくれたお礼に、今度は俺からキスしていいか?」

「うんっ」


 千弦はそっと目を瞑る。

 俺は千弦のことを優しく抱きしめて、千弦にキスをした。

 さっき千弦からされたキスも良かったけど、自分からするキスもいいな。千弦が下着姿なのもあって、いつもよりも千弦の体の温もりが感じられるのもいい。

 数秒ほどして、俺から唇を離した。すると、目の前にはニコニコと笑っている千弦がいて。


「とてもいいキスでした」

「俺もだよ。……今の下着姿の写真も撮っていいか?」

「もちろん!」


 その後、俺は千弦への抱擁を解いて、スマホでピンクの下着姿の千弦を撮影した。先ほど同じように千弦は笑顔でピースサインをしてくれて。本当に可愛いな。


「ありがとう。いい写真を撮れたよ」

「いえいえ。……洋平君に選んでもらった下着、大切にしていくね」

「ああ」

「あと、今後も下着を買うときは洋平君に選んでもらっていいかな?」

「もちろんさ。いつでも言ってくれ」

「うんっ」


 千弦はピンクの下着を脱いで、元の服装に着替えた。


「じゃあ、千弦の下着姿を見せてもらったし、俺はそろそろ帰るよ」

「うんっ。今日はとても楽しいデートだったよ。私の好きな作品を洋平君と一緒に観られて嬉しかった。その後も盛りだくさんで楽しかった」

「盛りだくさんだったよな。俺も楽しいデートだった。千弦のおかげで面白い映画を観られたし。夏休みの楽しい思い出の一つになったよ」

「私も思い出の一つになったよ。洋平君を映画デートに誘って良かったよ!」


 千弦はニッコリとした笑顔でそう言った。

 それから程なくして、俺は千弦の家を後にする。千弦を送る形で家まで来たので、千弦とは家の前で別れた。その際、さよならのキスをして。

 今日は朝からずっと千弦と一緒にいたので、一人になるのは何だか寂しい。ただ、今日のデートでの楽しかったことを思い出すと、寂しい気持ちが和らいで、胸がとても温かくなった。




特別編2 おわり

これにて、この特別編は終わりです。最後まで読んでいただきありがとうございました。

感想やレビューなどお待ちしております。

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