第6話『タピオカドリンク』
千弦の下着を買い終わり、俺の希望でアニメイクへ。
アニメイクというのはアニメショップのことで、漫画やラノベ、アニメ関連のものを取り扱っている。アニメイクは今いるセントラル洲中の中にあり、これまでに千弦と一緒に何度も行ったことがある。千弦と行く定番のお店だ。
アニメイクに行きたいと希望したのは千弦と行く定番だからというだけでなく、午前中に観た『王子様とのディスタンス』の原作小説を買いたかったからだ。それを伝えると、千弦は嬉しそうな様子で「行こう!」と言ってくれた。
アニメイクに行くと、今日からアニメ映画が公開されたのもあって、『王子様とのディスタンス』の原作小説は結構な量が平積みされていた。あと、その近くにあるモニターで映画の予告編も流されていた。これを観たのをきっかけに映画を観に行く人もいそうだ。
千弦と一緒にゆっくりと店内を廻り、俺は『王子様とのディスタンス』の原作小説と好きな日常系漫画の最新刊、千弦は好きな漫画家さんの新作ラブコメ漫画を購入した。
アニメイクの後は、雑貨屋さんや音楽ショップに行ったりする。
音楽ショップにいる中で、
――ぐううっ。
と、俺のお腹が鳴った。その音が聞こえたようで、千弦は「ふふっ」と笑う。
「お腹鳴ったね」
「ああ。3時も過ぎているし、ちょっとお腹が空いてきたかな」
「じゃあ、フードコートに行って、何か食べたり飲んだりする?」
「ああ、そうしよう」
俺達は音楽ショップを後にして、1階にあるフードコートへと向かう。
1階までエスカレーターに降りて、フードコートに向かうと、結構多くの人がいる。カウンター席やテーブル席で食べ物や飲み物を楽しんでいる人も多い。午後3時台でおやつ時だからだろうか。
「洋平君、どこか希望があったり、気になっていたりするお店ってある? お昼ご飯は私が提案したうどん屋さんで食べたから、今回は洋平君の希望するお店がいいなって」
「そういうことなら、お言葉に甘えようかな。どこがいいかな……」
フードコート内にある様々な飲食店を見ていき、あるお店に視線が止まった。そこは――。
「タピオカドリンク……」
そう、タピオカドリンク店だ。
「タピオカドリンクが気になる?」
「ああ。涼しいセントラルの中にいるけど、冷たい飲み物だから魅力的でさ。あと、千弦とは一緒にタピオカドリンクを飲んだことがなかったなって」
「確かにそうだね。ここのフードコートではアイスとかクレープとかを食べたことはあったけど、タピオカドリンクを飲んだことは一度もなかったね」
「ああ。タピオカドリンクでいいか?」
「もちろん! タピオカドリンク好きだしね」
「ありがとう。じゃあ、タピオカドリンクを買って、テーブル席で飲もうか」
「うん、そうしよう!」
俺達はタピオカドリンク店に向かう。
タピオカドリンク店には15人ほどの列ができていた。なので、俺達は列の最後尾に並ぶ。1列なので、千弦、俺の順番で。
「ここのドリンクは美味しいし、冷たいものだから列ができてるな」
「そうだね。……今の言い方からして、このお店のタピオカドリンクを買ったことがあるんだね」
「ああ、何度もな。家族や友達と飲んだこともある。琢磨ともあるよ」
「そうなんだね。私も家族や友達と何度も飲んだことあるよ。彩葉ちゃんともね」
「そうなんだな。……何のドリンクにしようかな」
「いっぱいあるから迷うね。美味しいドリンクがいっぱいあるし」
そう言い、千弦はお店にあるメニュー表の方を見る。
メニュー表を見るとコーヒー形や紅茶形、ジュース系など様々な種類のドリンクが記載されている。コーヒー系や紅茶系を中心に飲んだことがあるけど、千弦の言うようにどれも美味しい。千弦が迷うのも納得だ。
俺もどのドリンクを注文しようか迷うけど……コーヒーが好きなので、タピオカカフェオレに決めた。
それから程なくして、千弦、俺の順番になり、千弦はタピオカミルクティー、俺はタピオカカフェオレを購入した。
タピオカドリンク店の近くにある2人用のテーブル席が空いていたので、俺達はそこに座った。
「千弦はタピオカミルクティーを買ったんだな」
「うんっ。迷ったけど、ミルクティーは定番だし美味しいからね」
「なるほどな」
「洋平君はカフェオレにしたんだね。コーヒー好きな洋平君らしい」
「さすがは千弦。千弦の言う通り、コーヒーが好きだからカフェオレにしたよ」
「そうなんだね。当てられて嬉しい」
ふふっ、と千弦は楽しそうに笑った。
その後、俺達は自分の注文したタピオカドリンクをスマホで撮影した。また、千弦の希望で、2つのタピオカドリンクが入ったコップを並べた写真も撮影した。
「これでOK。ありがとう、洋平君」
「いえいえ。じゃあ、飲むか」
「うんっ。いただきます!」
「いただきます」
俺はタピオカカフェオレを一口飲む。
甘さも苦さもしっかりしているカフェオレは美味しいな。タピオカも甘くてカフェオレと合っている。あと、2時間ほど涼しい建物内にいるけど、カフェオレの冷たさがたまらない。
「タピオカカフェオレ美味しいな!」
「良かったね。タピオカミルクティーも甘くて美味しい。ミルクティーにして良かった」
「そうか。良かったな」
「うんっ」
千弦は笑顔で頷くと、タピオカミルクティーをもう一口。ちゅー、っとミルクティーを吸う姿がとても可愛い。
俺もタピオカカフェオレをもう一口。可愛い千弦を見ながら飲んでいるのもあって、一口目よりも美味しく感じられる。
「……カフェオレ美味い。千弦も一口飲んでみるか?」
「うん、飲みたい! 一口いただくね。じゃあ、私のミルクティーも一口どうぞ」
「ありがとう、千弦」
「こちらこそありがとう」
俺達は自分のタピオカドリンクが入ったカップを交換する。
「カフェオレいただきます!」
「ミルクティーいただきます」
俺は千弦のタピオカミルクティーを一口飲む。
タピオカミルクティーもかなり美味しいな。これまでに何度もミルクティーは何度も飲んだことがあるけど、今回が一番美味しいな。千弦がくれたものだからかな。あと、苦味のあるカフェオレを飲んだ後なのもあってか、今回が一番甘く感じられた。
「ミルクティーも美味いな」
「美味しいよねっ。カフェオレも美味しいね」
「美味いよな」
「うんっ。洋平君からもらったものだから、今までで一番美味しいカフェオレだよ」
「嬉しい言葉だな。……俺も同じことを思ったよ」
「そうなんだ」
えへへっ、と千弦は声に出して笑う。凄く可愛いな。あと、今の千弦を見て、口の中に残っているミルクティーの甘味が強くなった気がした。
「洋平君。カフェオレありがとう」
「いえいえ。こちらこそミルクティーありがとう、千弦」
「いえいえ」
俺達はお互いにドリンクの入ったカップを返した。
俺は千弦に返してもらった流れで、カフェオレを一口。……千弦が口を付けたので、これまでよりも甘く感じられた。
「そういえば、これまでに何度か、彩葉ちゃんや友達とここでタピオカドリンクを飲んだときに、みんなでタピオカチャレンジをやったなぁ」
「タピオカチャレンジ……って前に漫画とかイラストで見た気がする。確か、胸の上にカップを乗せられるかどうかだっけ?」
「それだけじゃなくて、手を使わずにタピオカドリンクを飲めるかどうかまでのチャレンジのことだよ」
「ああ、それだ」
千弦が説明してくれたおかげではっきり思い出した。タピオカチャレンジが成功して喜ぶキャラもいれば、失敗して悲しむキャラもいたな。胸の上にカップを乗せるので、成功したキャラは胸が大きくて、失敗したキャラは胸が小さかったな。
千弦はあのタピオカチャレンジを何度かチャレンジしたのか。星野さんも。
「千弦はタピオカチャレンジを成功したことはあるのか? 今の千弦は成功しそうな気がするけど」
「うん、成功したことあるよ。こんな風にね」
千弦は明るい笑顔でそう言うと、胸の上にタピオカミルクティーが入ったカップを乗せる。そして、右手をゆっくり離すと……カップは微動だにしない。千弦はストローを咥えてミルクティーを一口飲んだ。
「おおっ、凄い」
気付けば、俺は拍手していた。さすがはFカップの胸だ。実際にタピオカチャレンジを成功しているところを見たのは初めてなのでちょっと感動している。
俺の反応を見てか、千弦の笑顔がニコニコとした嬉しそうなものになる。
「ありがとう、洋平君」
「とてもいいのを見させてもらっているよ。……写真を撮ってもいいか?」
「もちろんいいよ」
「ありがとう」
俺はタピオカチャレンジを成功させる千弦をスマホで撮影した。笑顔になって両手でピースサインしているので物凄く可愛い。それに、胸に乗っているので艶っぽさも感じられた。あと、俺の恋人の胸はかなり大きいのだと改めて実感した。
「ありがとう、千弦。いい写真を撮れたよ」
「いえいえ。……あと、私も成功したけど、彩葉ちゃんも成功していたよ」
「……そ、そうなんだ」
星野さんは千弦よりも大きな胸の持ち主だから、星野さんもタピオカチャレンジの成功者なのは納得だ。……恋人以外の女性の胸のことなので、これ以上は考えるのを止めておこう。
その後も、タピオカドリンクを楽しむ。恋人の千弦と一緒に飲んでいるし、千弦のタピオカチャレンジ成功を見届けたのもあって、今までで一番美味しいタピオカドリンクだった。
明日公開のエピローグで、この特別編は完結する予定です。
最後までよろしくお願いします。