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第1話『キスマークを付け合いたい』

 千弦と「お姉ちゃん」「お兄ちゃん」と呼び合うのを楽しんだ後は、俺達は再び物理の課題をやっていく。

 応用問題では難しい内容もあるけど、教科書やノートがあるので途中でつまることなく課題を進めることができている。これなら、今日中に終わらせられそうだな。

 千弦は応用問題で何度か俺に質問してくるけど、俺が教えるとすんなりと理解できる。基本問題はできているし、この調子なら千弦も今日中に終わらせられるんじゃないだろうか。

 途中、2人ともキリのいいところまで終わったところで、休憩を兼ねて昨晩放送されたラブコメアニメを観た。


「今週のエピソードも面白かったね!」

「面白かったな! 途中でドキドキしたシーンはあったけど」

「キスしたり、キスマークを付けたりしたシーンだよね。あれは私もドキドキした。さっきの休憩で私達もキスしたしね」


 千弦ははにかみながらそう言った。

 そう、今週のエピソードでは、主人公の男の子が恋人のヒロインとキスをしたり、お互いに首筋にキスマークを付け合ったりしたシーンがあった。このアニメは俺も千弦も好きなので、基本的には楽しく喋りながら観ているけど、キスやキスマークのシーンのときはドキドキしてあまり喋らなかったな。


「ただ、ドキドキしたけど、とてもいいシーンだったよね。2人とも幸せそうにしていたから」

「そうだな」


 キスしたり、キスマークを付け合ったりしたとき、主人公もヒロインもとても幸せそうにしていたのが印象的だった。だから、千弦の言う通りいいシーンだと思う。そういったシーンを観たのもあり……千弦とキスマークを付け合いたい気持ちがある。これまでしたことないし。もちろん千弦さえ良ければだけど。千弦にお願いしてみるか。


「あのさ、千弦」

「うん?」

「……今のアニメを観てさ、2人みたいに……千弦とキスマークを付け合いたいなって思っているんだ。どうかな? もちろん、千弦さえ良ければ」


 千弦のことを見つめながらお願いする。

 アニメでのキスマークを付け合うシーンをいいとは言っていたけど、実際に俺と付け合いたいと千弦は思っているだろうか。

 俺からキスマークを付け合いたいとお願いされたからだろうか。千弦の顔は頬を中心に赤くなっていく。そして、


「……もちろんいいよ。キスマークを付け合うシーンを観たとき、洋平君と一度付け合ってみたいなって思っていたから。だから、洋平君が言ってくれて嬉しい」


 千弦は真っ赤な顔に嬉しそうな笑みを浮かべて快諾してくれた。そのことに俺も嬉しい気持ちになる。


「ありがとう、千弦」

「いえいえ。こちらこそお願いしてくれてありがとう」


 千弦はニッコリとした可愛い笑顔でお礼を言った。


「ねえ、洋平君。今観たアニメみたいに同じところに付け合う?」

「同じがいいな。千弦とお揃いな感じがしそうだ」

「お揃い……いい響きだね! じゃあ、同じ場所に付け合おうね」

「ああ。……どこに付け合おうか」

「アニメでは首筋だったよね。ただ、洋平君は喫茶店で接客のバイトをしているし、首筋にキスマークがあるのはあまり良くなさそうな感じがする。絆創膏で隠す手はあるけど」

「まあ……ないに越したことはないだろうな。あと、絆創膏で隠しても、首筋だとキスマークを隠しているかもって考えるスタッフやお客様がいるかもしれない」

「それは言えてるね。じゃあ、服で隠せる場所がいいかな」

「そうだな」


 服で隠せる場所なら、周りの目を気にしなくていいし。


「洋平君はどこか付けてみたいところはある?」

「そうだな……一番付けてみたいのは胸かな。千弦の胸が大好きだから」


 千弦の体の中でも、俺が好きだと思っている場所にキスマークを付けてみたいと考えたのだ。一番好きなのは胸だ。それに、胸なら普段は服で隠しているからいいかなと思ったのもある、


「胸、いいね。洋平君が大好きだって言ってくれるところにキスマークがあるっていいなって思う。それに、私も洋平君の胸は好きだし、胸に付けてみたいな。胸なら服とか下着で隠しやすいし」


 千弦はニッコリとした笑顔でそう言ってくれた。


「そう言ってくれて嬉しいよ。じゃあ、胸にキスマークを付け合おうか」

「うんっ、そうしよう!」


 可愛い笑顔のままそう言い、千弦はこくりと頷いた。

 胸にキスマークを付け合うことになり、嬉しい気持ちになると同時にドキドキもしてくる。千弦がいいなって思えるようなキスマークを胸に付けたい。


「どっちから付けるか?」

「……まずは洋平君からお願いします。キスマークを付け合うきっかけは洋平君がお願いしてくれたことだし」

「分かった」

「ありがとう。じゃあ、服を脱ぐね」


 千弦は着ているノースリーブのブラウスを脱ぐ。そのことで、上半身は水色の下着姿になる。下着が似合っているし、立派な谷間が見えているし、千弦の甘い匂いがそれまでよりも濃く香ってくるのでかなりドキッとする。あと、俺が先日プレゼントしたシルバーのネックレスは付けたままなので、下着姿にネックレスという組み合わせがいいなって思う。


「その下着、似合ってるな。可愛いよ」

「ありがとう。水色が好きだし嬉しいよ」


 千弦はとても嬉しそうにお礼を言った。


「あと、下着姿にペアネックレスっていうのもいいな」

「ふふっ、嬉しい。このペアネックレスも気に入っているから」


 依然として、千弦は嬉しそうな笑顔でそう言った。ネックレスは俺がプレゼントしたので嬉しい気持ちになる。

 千弦の胸にキスマークを付けるために、俺は千弦と向かい合う体勢になる。


「じゃあ、洋平君。お願いします」

「分かった。……左の胸に付けようかな。心臓に近いし」

「うんっ」

「じゃあ、付けるよ」


 俺は千弦のことをそっと抱きしめ、左の胸に口元を近づけて……千弦の左の胸にそっと唇を当てる。千弦の胸の柔らかさが唇から伝わってきていいな。そう思いながら、

 ――ちゅーっ。

 キスマークを付けるために吸い始める。その瞬間、


「んっ」


 と、千弦は甘い声を漏らして、体が小刻みに震えた。その反応がとても可愛くて。

 千弦の胸にキスマークが付くように、俺は同じ箇所を何度も吸っていく。その中で千弦は「あっ」とか「んっ」といった甘い声を漏らしたり、


「気持ちいい……」


 といったことを言ったりすることもあって。

 吸う回数を重ねる中で、吸った箇所の赤みが増していく。そして、


「……付いたぞ、キスマーク」


 何度か吸い、千弦の左胸にはっきりと赤いキスマークを付けることができた。

 俺が胸から顔を離して千弦への抱擁を解くと、千弦は自分の左胸に付いたキスマークを見る。


「赤いキスマークが付いてるね! 洋平君が付けてくれたんだって思うと本当にいいなって思うよ」


 千弦はニコッとした笑顔でそう言ってくれた。千弦がいいなって思えるキスマークを付けられて何よりだ。

 あと、俺が付けたキスマークが左胸にあることで、上半身が下着姿の千弦がさっきよりも艶やかに見える。なかなかのエロさがあって。あと、俺が付けた痕が千弦の体にあることがいいなって思える。


「千弦がそう言ってくれて良かったよ。キスマークがあると、より艶っぽく見えるよ。それに、千弦の体に俺の付けたものがあるっていうのがいいなって思う」

「ふふっ、そっか」

「……そういえば、俺にキスマークを付けられているときに痛みとかなかった? 気持ちいいとは言っていたけど」

「特に痛くなかったよ。むしろ、気持ちいいから、付けてもらっている間にいっぱい声が漏れちゃった」


 えへへっ、と声に出してはにかむ千弦。その反応に可愛いと思うと同時に、痛みがなかったと分かって安心した。


「そうか。それなら良かったよ」

「うんっ。あと、何度も胸を吸っている洋平君が可愛かった」

「そ、そうか」


 胸を吸う姿を可愛いと言われるとは。ちょっと照れくさいな。まあ、千弦がニコニコしているので嫌だとは思わない。


「じゃあ、今度は私が洋平君の胸にキスマークを付ける番だね」

「そうだな。今、服を脱ぐから」


 俺はワイシャツとインナーシャツを抜いて、上半身裸の状態になる。これまで、プールデートや、俺の親友の坂井琢磨さかいたくまや友人の星野彩葉(ほしのいろは)さん達と一緒に海に行ったときに千弦の前で上半身裸になったことがあるけど、キスマークを付けてもらうのは初めてなのでちょっとドキドキする。


「今日も洋平君の体……素敵だよ」


 千弦はうっとりとした様子で言う。大好きな恋人から体が素敵だと言ってもらえるのは嬉しいものだ。


「ありがとう、千弦」

「いえいえ。あと、上半身裸でペアネックレスを付いているのもいいね」

「ははっ、そっか。ありがとう」

「じゃあ……胸にキスマークを付けるね」

「ああ、お願いするよ」


 千弦は俺のことを優しく抱きしめ、左胸に唇を付ける。そして、

 ――ちゅーっ。

 と、唇を付けた箇所を吸ってきた。

 痛みは特にないな。ただ、皮膚を吸われたことは全然ないので、何だか不思議な感覚になる。

 俺の胸にキスマークを付けるためか、さっきの俺のように千弦は同じところを何度も吸っていく。

 俺の胸を吸う千弦の姿が可愛いし、千弦の口の柔らかさや生温かさが心地いい。だから、何度も吸われているうちに気持ち良く感じてきた。千弦も気持ちいいとか、胸を吸う俺が可愛いとも言っていたけど、きっとこんな感じだったのだろう。

 千弦が俺の胸を何度か吸った後、


「……キスマーク、付いたよ」


 千弦はそう言って、俺の胸から顔を離して、俺への抱擁を解いた。

 自分の胸を見下ろすと……左胸に先ほどまではなかった赤い斑点ができている。これが千弦の付けてくれたキスマークか。凄くいいな。愛おしく感じられる。あと、キスマークのところが湿っていることに艶っぽさが感じられる。


「赤く付いたな。凄くいいよ」

「良かった! あと、キスマーク付けるとき痛くなかった? それなりの強さで吸ったから」

「全然痛くなかったよ。むしろ気持ち良かったし、胸を吸う千弦が可愛かった。さっきの千弦の気持ちが分かった」

「そっか。痛みがなかったなら良かった。……洋平君の体に私が付けたキスマークがあるっていいね。さっき洋平君が言ってたことが分かる」

「共感してくれて嬉しいよ」

「うんっ。……そういえば、胸のキスマークって所有とか独占、深い愛情の意味があるのを思い出した」

「そうなのか。俺は千弦が大好きだし、千弦のものだと思っているから、胸にキスマークを付けてもらって良かったよ」


 意味を知ると、千弦に付けてもらった胸のキスマークがより愛おしく思えてくるよ。


「私も付けてもらって良かったよ。洋平君が大好きだし、洋平君のものだから」


 千弦は持ち前の可愛い笑顔でそう言ってくれる。そのことに嬉しい気持ちになって、胸がポカポカと温かくなっていく。


「ねえ、洋平君。初めてキスマークを付けた記念にスマホで写真撮ろうよ」

「ああ、いいぞ。LIMEで送ってくれ」

「うんっ」


 その後、千弦のスマホで胸のキスマークが入るようにお互いを撮影したり、千弦と俺のツーショット写真を自撮りしたりした。それらの写真はLIMEで送ってもらった。


「写真ありがとう」

「いえいえ」

「いい写真が撮れたな」

「そうだねっ。ツーショットの写真を見ると、お互いに左胸にキスマークがあるからお揃いって感じがするね」

「ああ、そうだな。同じ場所に付けて良かったな」

「うんっ! ……あと、キスマークがあるから、今までで撮影した写真の中で一番えっちな雰囲気の写真だね」

「そうだな。プールデートや海水浴でこのくらいの露出度の写真を撮ったけど、キスマークがあるからエロさを感じる」

「だよね」


 今までで一番えっちな雰囲気の写真なので、キスマークの写真は他の人に見せないようにしよう。もし、見せるとしても、せいぜい結菜とか星野さんとか一緒にいることが多い人くらいで。そう思いながら、俺は送ってもらった写真をスマホに保存した。


「千弦。キスマークを付け合わせてくれてありがとう」

「いえいえ」

「お礼にキスしていいか?」

「もちろんっ」


 そう言うと、千弦はスマホをローテーブルに置いて、笑顔で目を瞑った。キス待ちの笑顔が可愛いな。

 自分のスマホをローテーブルに置き、俺は千弦のことをそっと抱きしめて千弦にキスをする。

 今は俺が上半身裸で、千弦も上半身が下着のみなので、千弦の唇だけじゃなくて体の温もりや柔らかさも感じられて。いつもより千弦の甘い匂いが濃く香ってきて。だから、いつも以上に気持ちいいキスだ。

 キスをしていると、背中からも優しい感触や温もりが感じられて。きっと、千弦も俺のことを抱きしめているのだろう。

 キスマークを付けた後だし、お互いに上半身は裸や下着のみなので、いつものキスよりもドキドキする。

 少し長めにキスをした後、俺から唇を離す。すると、目の前には頬を中心に赤くなった顔に可愛らしい笑みを浮かべている千弦がいて。凄く幸せな気持ちになる。


「いつも以上にドキドキしたよ。洋平君は上半身裸だし、私も下着姿だからかな。あと、キスマークを付けた後なのもあるかも」

「俺も同じことを思ったよ」

「ふふっ、そっか。……アニメ観たし、キスマークを付け合ったし、キスもしたから課題をした疲れが取れた気がするよ」

「ははっ、そっか。俺も休憩前よりも元気になってる」


 とてもいい休憩時間になったな。


「そろそろ課題をやるのを再開しようか」

「ああ、そうしよう。残りも頑張ろう」

「うんっ」


 その後、俺達は服を着て、物理の課題を再び取り組んでいくのであった。

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