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第16話『洋平君を助けられて嬉しい。』

 磯散策を終えてレジャーシートに戻ると、星野さんと神崎さんは楽しそうに談笑していた。ゆっくり休めたので、2人とも疲れが取れたとのこと。

 ビーチボールがあるので、8人全員でビーチボールを使って遊ぶことに。8人でどれだけトスができるか挑戦したり、俺&千弦&結菜&神崎さんvs.琢磨&吉岡さん&星野さん&山本先生というチーム分けでビーチバレー対決したりした。トスは結構続いたし、ビーチバレー対決では拮抗した試合になったので結構盛り上がった。ちなみに、ビーチバレー対決は琢磨達がいるチームが勝利した。

 ビーチバレー対決をし終わった直後、


 ――ぐううっ!

「わははっ! 腹鳴っちまったぜ!」


 と、琢磨は笑いながらそう言った。お昼時になっていたので、お昼ご飯を食べることにした。

 お昼ご飯は俺と結菜、千弦、星野さんが作ったお弁当だ。おにぎりやサンドウィッチといった主食から、玉子焼き、鶏の唐揚げ、ウィンナーといったおかず。リンゴ、オレンジ、カットメロンといったフルーツなど様々。

 お弁当担当4人で何を用意するか決め、俺と結菜はおにぎりとサンドウィッチを担当した。俺は主にサンドウィッチを作った。

 たまごサンドやハムレタスサンドを作り、みんなに美味しく食べてもらえるかドキドキしたけど、


「このたまごサンド美味しいよ、洋平君!」


 千弦が最初にそう言ってくれ、星野さん達もみんな美味しそうに食べてくれた。そのことがとても嬉しかった。

 俺と結菜が作ったおにぎりやサンドウィッチはもちろん、千弦が作った玉子焼きや星野さんが作ってくれた鶏の唐揚げなどのおかず、2人が用意してくれたフルーツも美味しくて満足できた昼食になった。千弦とは何度か食べさせ合ったしな。

 4人でたくさん作ったのもあって、みんなも満足したようだ。


「……俺、お手洗いに行ってくるよ」

「いってらっしゃい、洋平君」


 昼食を食べ終わった直後、急に小の方でお手洗いに行きたくなったので、俺は海水浴場の端に設置されているお手洗いに向かう。

 お手洗いは全て使用中であり3人並んでいた。ただ、小の方だったのもあって順調に列が進んで、並び始めて1、2分ほどで用を足すことができた。

 用を済ませて手を洗い、俺はお手洗いを出た。

 お昼過ぎの時間帯なのもあって、海水浴場の端の方までレジャーシートやビーチパラソルを使って確保されているエリアが多いな。午前中に遊びに来たときよりも人が多くてかなり賑わっている。そんなことを考えながら俺達のレジャーシートに向かって歩いていると、


「わぁっ、物凄いイケメン発見」

「金髪なのも素敵だね。お姉さん達と一緒に遊ばない?」

「海の家で食べたいものや飲みたいものがあれば、お姉さんが買ってあげるよ?」


 気付けば、俺の目の前には青いビキニを着た黒髪の女性と、赤いビキニを着た茶髪の女性が立っていた。黒髪の女性は大人っぽく、黒髪の女性は少し幼い雰囲気が感じられる。見た感じでは大学生くらいだろうか。

 どちらの女性も興味津々な様子で俺のことを見ている。あと、今の2人の言葉からしてナンパだな。これまで千弦達と一緒にいたけど、今は1人。だから、女性達はナンパしようと考えたのだろう。

 水着姿になった女性陣を見た際に、彼女達をナンパから守るぞって考えていたけど、俺がナンパされるとは。

 よし、さっさと断ろう。


「お断りします。俺、彼女がいますし、彼女と友人達と一緒に遊びに来ているんで」


 女性2人を見ながら、俺はしっかりとそう言った。これで諦めてくれるだろうか。あと、「彼女がいる」って言えるのがちょっと嬉しい。


「それ本当なの? 君、金髪の超絶イケメン君でモテそうではあるけど。断りたいからって嘘ついてない?」


 黒髪の女性は不敵な笑顔で俺のことを見てくる。同意しているのか、茶髪の女性はうんうんと頷いているし。

 まあ、恋人がいるとか、恋人と一緒に来ているっていうのはナンパを断る常套句の一つだからな。すぐには信じられないのかもしれない。もしくは、これまでに嘘をつかれた経験でもあるのか。まあ、そんなことはどうでもいい。


「嘘なんてついてません。とても素敵な人と付き合っていて、一緒に海に来ているんです。これ以上しつこくナンパするなら、近くにいる監視員を呼んで、あなた達を海水浴場の事務所に連れて行ってもらって、警察に通報してもらいましょうか」


 語気を強めて女性2人にそう言う。

 これ以上しつこければ、今言ったことは本当にやるつもりだ。以前、バイト先の従業員用の出入口前で待ち伏せしていた女性を交番まで連れて行った経験もあるし。


「その必要はないよ、洋平君。あなたの恋人が来たからね」


 気付けば、俺達のすぐ近くに千弦が来ていた。千弦と目が合うと千弦はニコッと笑いかけてくれて。千弦が来てくれたことに安心するし、心強い気持ちになる。これまで、千弦をナンパから助けたことは2度あるけど、俺が姿を現したときはこういう気持ちだったのだろうか。

 恋人の登場もあってか、女性2人は一気に気まずそうな様子になる。

 千弦は俺のすぐ横までやってきて、俺の右腕をしっかりと抱きしめる。


「この人は私の恋人です。なので、ナンパしないでもらえますか」


 千弦は真剣な様子で女性2人のことを見ながらそう言った。その姿は凛々しさもあってかっこよく感じられた。今の言葉もあって、千弦が王子様のようだ。キュンとなったよ。

 女性2人は顔色が悪い中苦笑いをして、


「ほ、本当に彼女さんと一緒に来ていたんですね。ナンパして、嘘をついているんじゃないかって疑ってごめんなさい」

「ごめんなさい。もうナンパはしません……」


 弱々しい声でそう言い、俺達の元から足早に立ち去っていった。恋人の力は絶大だな。


「千弦、来てくれてありがとう。助かったよ。心強かった」

「いえいえ。洋平君の恋人ですから」


 千弦は俺にニコッと笑いながらそう言ってくれる。ナンパされた直後なのもあり、千弦の可愛い笑顔を見ると安心できる。


「ナンパされていた俺のことが、レジャーシートから見えていたのか?」

「うん、そうだよ。……帰ってくるのが遅いなと思って。洋平君がお手洗いに行くときにお手洗いの方を見たけど、外まで並んでいなかったし。だから、お手洗いのある方に視線を向けたら、水着姿の女性2人の前で立ち止まっている洋平君を見つけて。ナンパされてるってすぐに思って。それで、洋平君のところに行ったの。彩葉ちゃん達も「ナンパされてそう」とか「すぐに行った方がいい」って言ってた」

「そうだったんだな。……恋人と来ているからって断ったけど、嘘ついているんじゃないかって言われていたからさ。千弦が来てくれて良かったよ」


 もし、千弦が来なかったら、あの2人はすぐには諦めない可能性高かっただろうし。


「いえいえ。洋平君を助けられて良かったよ。それに、今までに私は2回洋平君にナンパから助けてもらったからね。だから、洋平君を助けられて嬉しいよ」


 その言葉が本心であると示すかのように、千弦は嬉しそうな笑顔でそう言ってくれた。千弦は俺の恋人だし、今まで2回俺に助けられた経験もあって、俺をナンパから助けたい気持ちが強いのかもしれない。


「それと……洋平君のところに行ったとき、洋平君が私のことを『とても素敵な人』って言ってくれたのが聞こえて。それも嬉しかったです」


 えへへっ、と千弦は声に出して嬉しそうに笑ってくれる。頬がほんのりと赤くなっているのもあってとても可愛らしい。


「そうか。……とても素敵な恋人にお礼のキスをしたいんだけど、いいか?」

「うんっ」


 千弦は俺の腕への抱擁を解いて、俺の目の前に立った。そして、ゆっくりと目を瞑る。

 俺は千弦の両肩にそっと手を置いて、千弦にキスをした。

 俺達のキスを見ているのか、「きゃっ」という女性の黄色い声や「おおっ」という男性の声が聞こえてきて。人前でキスしているけど、気恥ずかしさはあまりない。むしろ、こうしてキスすれば、千弦や俺にナンパする人が減っていいかもしれないと思った。

 数秒ほどして、俺から唇を離す。そこには頬をほんのりと赤くした千弦の笑顔があった。


「素敵なお礼をいただきました。良かったです」

「それは良かった。レジャーシートに戻ろうか」

「うんっ」


 千弦と俺は手を繋いで、俺達のレジャーシートに向かって歩いていく。

 ナンパされたのもあって、こうして千弦と一緒に歩けることに安心感がある。

 一緒に歩いているので、誰からも声を掛けられることなく、無事にレジャーシートに戻ることができた。


「ただいま。洋平君を連れて帰ってきました」

「ただいま。ナンパされて、千弦に助けてもらいました」


 レジャーシートに戻り、琢磨や星野さん達に向けてそう言った。

 琢磨や星野さん達は俺達に「おかえり」と言ってくれた。


「2人が無事に戻ってきて良かったぜ」

「そうだね、琢磨君。千弦が行ったら、すぐにあの2人は離れてったね」

「そのときはみんなで『良かった』って盛り上がったわよね」

「盛り上がりましたね!」


 神崎さんや結菜の言葉に、星野さんや琢磨、神崎さん、山本先生は「そうだね」と言う。

 ナンパした2人が離れたとき、ここでは盛り上がっていたのか。まあ、みんな俺がナンパされていると気付いていたそうだから、あの2人が離れたら『良かった』って盛り上がるのは自然なことなのかも。


「千弦が来てくれたおかげで、あの2人は俺が恋人と一緒に来ているって分かってもらえたからな。改めて、助けてありがとう、千弦」


 俺は千弦の頭をポンポンと優しく叩いた。そのことで、千弦の顔には柔らかい笑みが浮かぶ。


「いえいえ。彼女として助けられて良かったよ」

「良かったね、千弦ちゃん。千弦ちゃん、レジャーシートから出て行くとき『洋平君を連れて帰ってくる!』って意気込んでいたんだよ」

「言っていたわね。その前には『彼女として洋平君を助けないと!』って言っていたよ。あのときの藤原さんはとても素敵だった」

「そうだったんですね」

「洋平君を助けたかったですからね。洋平君を連れて帰ってこられて良かったです」


 千弦はニコッとした笑顔でそう言った。


「それと、ナンパした2人が離れた後に、お兄ちゃんと千弦さんがキスしたところを見てドキッとしました!」

「『キスしましたっ』って言ってちょっと興奮していたわね、結菜ちゃん」

「助けてもらったお礼にキスしたんだ」

「そうだったね。凄くいいキスでした」

「そうだったんですね!」


 結菜はちょっと興奮した様子でそう言った。千弦と俺がキスしたときもこんな感じだったのかもしれない。

 昼ご飯を食べ終わってからあまり時間が経っていないので、それから少しの間はレジャーシートの中でゆっくりと過ごすのであった。

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