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第15話『磯散策』

 それから少しの間、千弦とはもちろん、星野さんや神崎さんや結菜とも水をかけ合って遊んだ。

 ただ、遊ぶ中で、千弦が「喉が渇いてきた」と言ったり、星野さんが「ちょっと疲れてきた」と言ったりした。それを受け、神崎さんがすぐに「一旦、休憩しましょう」と言い、レジャーシートに戻って休憩することにした。

 俺達5人はレジャーシートに戻る。

 レジャーシートには琢磨と吉岡さんと山本先生が水筒を飲みながらゆっくりとしていた。

 俺はバッグから水筒を取り出し、水筒に入っているスポーツドリンクを飲む。冷えていてとても美味しい。喉が潤されていくのが分かる。


「あぁ、スポーツドリンク美味しい!」


 千弦は爽やかな笑顔でそう言う。千弦もスポーツドリンクを持ってきたのか。喉が渇いたと言っていたほどだから、スポーツドリンクがとても美味しく感じられるのだろう。

 星野さんと神崎さんと結菜も水筒に入っている飲み物を飲むと、美味しいのか可愛い笑顔になっていた。


「ずっと日なたにいたから、日陰に入ると涼しく感じるね」

「そうだな、千弦。風も吹いているし快適だな」

「そうだね。疲れが取れていくよ」

「2人の言うこと分かるよ。快適だよね」

「ゆったりとした気分になりますよね」

「日陰だし、風もあるから凄く気持ちいいわね。あたしも部活で休憩するときは、今みたいに日陰に入って水分補給をしているわ。海水浴とはいえ日なたで体を動かしているから、千弦や彩葉みたいに喉の渇きとか疲れを感じたらすぐに休憩しましょう。熱中症になっちゃうかもしれないし」


 神崎さんは落ち着いた笑顔でそう言う。そんな神崎さんに俺達は「そうだね」と言った。

 神崎さんは女子テニス部に入っており、屋外で活動している。だから、休憩することの大切さが分かっているのだろう。あと、さっき、海で遊んでいるときに「休憩しましょう」とすぐに判断したのも同じ理由だと思う。

 それからも、千弦達と談笑したり、スポーツドリンクを飲んだりしながら休憩していく。海で遊ぶのもいいけど、こうしてレジャーシートでゆっくりするのもいいな。

 10分ほど休憩したとき、


「なあ、早希。今年も一緒に岩場に行ってみるか?」

「いいね! 小さい魚とかカニとかいたもんね」


 という琢磨と吉岡さんの言葉が聞こえてきた。


「岩場か。去年、琢磨達と遊びに来たときに磯散策したな。そのときも魚とかイソガニとかがいたな」

「そうだったな、洋平!」

「白石君達も一緒に行く?」

「岩場とか好きだから行きたいかな。千弦はどうだ?」

「私も行ってみたいな。家族で海水浴に来たときは磯を歩くこともあったし。この海水浴場の磯にはどんな生き物がいるか興味ある」

「そうか」

「あたしも行きたいです! 小さい頃から家族で海水浴に行ったときは磯散策していましたし。お兄ちゃんと2人で行ったこともあったよね」

「そうだったな」


 綺麗な色の魚がいると結菜がはしゃいでいたのを思い出す。そのときの結菜はとても可愛かったな。今も可愛いけど。


「先生も行こうかな」

「私はここで休んでるよ。また疲れが残っているし」

「あたしもここにいるわ。ここでゆっくりするのが凄く気持ちいいから」


 山本先生は行って、星野さんと神崎さんはここに残るか。

 疲れが残っているなら、ここで休んでいる方がいいだろう。神崎さんがさっき言ったように、熱中症になるかもしれないし。

 あと、神崎さんは磯散策に行きそうなイメージがあったけど、ここに残るんだな。さっきも「日陰で風があるから気持ちいい」と言っていたし、ゆっくりし続けたい気分なのだろう。あとは星野さんを一人にしたくない気持ちもあるかもしれない。


「じゃあ、6人で行こうか!」


 俺、千弦、琢磨、吉岡さん、結菜、山本先生はビーチサンダルを履いて、海水浴場の端にある岩場に向かって歩いていく。

 俺達が海水浴場に来たときよりも人が多くなっている。端の方にもレジャーシートやビーチサンダルが広げられている箇所があるし。まだ午前中なので、今後も人が増えていくのだろう。

 海水浴場の端まで来ると、砂浜が終わって岩場になる。

 この岩場は広く、平らで歩きやすい部分が多い。それもあってか、俺達のような若いグループはもちろん、親子連れや小学生くらいと思われる子供のみのグループもいる。


「結構広いですね!」

「広いよね!」


 初めてこの岩場に来た結菜と千弦がちょっと興奮気味にそう言う。可愛い。


「広いよな。この岩場には海水が溜まっていたり、海と繋がっていたりするところがいくつかあるんだ。そこに魚や蟹とかがいるよ」

「そうなんだね、洋平君。じゃあ、まずは一番近いあの水たまりに行ってみようよ」

「そうだな」


 俺達は岩場の入口から一番近い水たまりの近くまで向かう。

 この水たまりは結構広く、水たまりの中には小さい魚や貝、ヒトデ、イソガニなど様々な生き物がいる。魚は青い魚や黄色い魚、縞模様の魚、水玉模様の魚などがいるので結構華やかな感じだ。ワクワクしてくる。あと、去年も今みたいに結構な種類の生き物がいたな。


「うわあっ、色々な生き物がいるね!」

「いっぱいいますね!」

「そうだな、千弦、結菜」


 千弦と結菜は目を輝かせて水たまりの中を見ている。本当に可愛いな、俺の恋人と妹。


「今年もいろんな生き物がいるな!」

「そうだね、琢磨君! 去年のデートでここに来たときのことを思い出すよ」

「俺もだ、早希。あのときもいっぱいいたもんなぁ」

「今みたいに綺麗だったよね」


 琢磨と吉岡さんは明るい笑顔でそう言う。今の2人を見るとほっこりするよ。

 あと、以前来た場所に再び来ると、こういう風に思い出話もできるのか。いいなぁ。俺もいつかは2人のように、千弦と一緒に以前来た場所に再び来て、思い出を楽しく語ってみたい。


「あと、洋平達と来たときのことも思い出すぜ」

「あのときも生き物がいっぱいいたからな。俺も思い出した」

「そうか!」


 琢磨はニカッと白い歯を見せて笑った。


「色々な種類の生き物がいるのね。ちょっとした天然の水族館ね。素敵だわ」


 山本先生は優しい笑顔でそう言い、水たまりの中を見ている。水着姿なのもあって、とても大人っぽくて艶っぽさが感じられた。


「あっ、イソガニが水たまりから出てきた」


 結菜がそう言うので足元を見る。すると、1匹のイソガニが水たまりから出てきて、結菜の方に向かって歩く。


「お、お兄ちゃん助けて。イソガニこっちくる」


 そう言い、結菜は俺の後ろに隠れる。

 結菜は小さい頃から「ハサミが怖い」という理由でイソガニは苦手だっけ。自分に向かって歩いてきているのも怖く感じる理由の一つかもしれない。そういえば、今みたいにイソガニが近くにいると、結菜が俺や両親の後ろに隠れることがあったっけ。

 イソガニが俺の目の前を歩いている。俺はイソガニに向けて素早く右手を伸ばすと、難なく捕まえることができた。


「ほら、捕まえた。だから大丈夫だぞ、結菜」


 結菜の方に振り返りながらそう言う。


「ありがとう、お兄ちゃん」


 結菜はニコッと笑いながらお礼を言った。結菜を笑顔にできてお兄ちゃんはとても嬉しいぞ。


「お兄ちゃんは昔からイソガニが平気だし、捕まえるのが得意だよね」

「そうなんだね、結菜ちゃん。私はハサミが怖いから捕まえるのは躊躇うな。だから、イソガニを難なく捕まえられるのが凄いし、かっこいいよ」

「ははっ、そうか。そう言ってもらえて嬉しいよ」


 まさか、イソガニを捕まえることで凄いとかかっこいいと言ってもらえるとは。小さい頃から普通にやっていたことを恋人から褒めてもらえるとかなり嬉しいものがある。


「藤原さんの言うこと分かるわ。私はハサミで挟まれちゃうんじゃないかと思って捕まえられないわ。だから、白石君は凄いわ」

「ありがとうございます」


 担任教師の山本先生からも褒めてもらえるとは。嬉しい気持ちがさらに膨らんだ。


「イソガニ捕まえたか、洋平。俺も捕まえたくなってきたな」

「……あそこにいるよ、琢磨君」

「……おっ、あれか」


 それっ、と琢磨は吉岡さんが指さしたところにいるイソガニを捕まえた。


「へへっ、やったぜ!」

「やったね、琢磨君!」


 ポンッ、と琢磨と吉岡さんは爽やかな笑顔でハイタッチしていた。何だかとてもいい光景だ。

 そういえば、去年海水浴に来たとき、琢磨はイソガニを捕まえて喜んでいたな。

 いつまでも俺が持っていてはかわいそうなので、水たまりの側でイソガニを離した。


「他のところもどんな感じか見てみましょうかね」


 そう言い、結菜は他の水たまりのところに歩き始めた。そのとき、


「きゃっ」


 結菜は足を滑らせてしまい、後ろに転びそうになってしまう。


「結菜!」


 結菜の一番近くにいた俺が素早く動き、転びそうになる結菜のことを後ろから抱き留める。なので、結菜が転ばずに済んだ。あと、結菜が倒れてくる勢いがそこまでではなかったので、難なく踏ん張ることができた。


「結菜、大丈夫か?」


 結菜にそう問いかける。

 結菜はこちらに振り向いて、


「うん、お兄ちゃんが抱き留めてくれたから大丈夫だよ。怪我とか痛みとかはないよ」


 結菜は落ち着いた笑顔でそう言った。そのことにほっとする。


「そうか。良かった……」

「無事で良かったよ、結菜ちゃん」

「怪我とか痛みとかがなくて何よりだぜ」

「本当に良かったよ! 後ろに倒れそうになったときヒヤッとしたもん。ここは岩場だし」

「先生も安心したわ。結菜ちゃんに怪我や体の痛みがなくて良かった」


 千弦達もほっとした様子でそう言った。そんな千弦達に結菜は苦笑いをしながら「ご心配をおかけしました」と言った。


「洋平君は大丈夫? 転びそうになった結菜ちゃんを抱き留めたから。どこか痛むところとかある?」

「大丈夫? お兄ちゃん」

「大丈夫だよ。結菜が倒れてくる勢いもそこまでじゃなかったし」

「それなら良かったよ」

「良かった……」


 千弦と結菜はほっとした様子になる。


「お兄ちゃん、抱き留めてくれてありがとう」

「いえいえ。結菜に怪我とか体の痛みとかを追わずに済んで良かった」


 俺はそう言い、結菜の頭をポンポンと優しく叩く。

 優しく叩かれるのが気持ちいいのか、結菜は柔らかい笑顔になる。とても可愛い。あと、今の笑顔は千弦と重なるものがある。


「イソガニを捕まえたり、転びそうになるところを抱き留めたり。洋平君は頼りになるお兄ちゃんだね、結菜ちゃん」

「はいっ!」


 千弦の言葉に元気良く返事をする結菜。千弦が「頼りになるお兄ちゃんだね」と言ってくれたのもあって、お兄ちゃんはとっても嬉しいよ。


「そういえば、これまでも、岩場で転びそうになったあたしのことをお兄ちゃんやお母さんやお父さんが助けてくれたことが何回かあったっけ」

「そうだったな。……足元には気をつけるんだぞ、結菜」

「うんっ!」


 先ほどと同じく結菜は元気良く返事をする。元気良く返事をしてよろしい。そう思いながら、俺は結菜への抱擁を解いた。


「白石君の言う通りね。私達も足元に気をつけながら磯散策をしましょう」


 山本先生のその言葉に、俺達5人は「はい」と返事した。転んで怪我をしたり、体を痛めたりしたら大変だし、海水浴が楽しめなくなっちゃうからな。

 足元に気をつけながら、俺は千弦達と一緒に磯散策を楽しむのであった。

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