第12話『日焼け止めを塗ってほしい』
午前10時頃だけど、夏休み中の日曜日なのもあり、海の家が並ぶ中心部のエリアはレジャーシートが敷かれたり、ビーチパラソルが広げられたりして既に確保済みとなっている場所が多い。8人一緒にゆっくりできるスペースを確保するのは難しそうだ。
中心部から少し外れた場所に行くと、確保されていない広めのスペースも出てきた。なので、ここに俺達8人の拠点を構えることにした。
白石家と琢磨が持ってきたレジャーシートを敷いたり、ピーチパラソルを立てたりする。レジャーシートもビーチパラソルもそれなりに大きいので、日陰でゆっくりできる広めの空間が完成した。
「完成だね! ……あの、スマホで写真を撮ってもいいですか? せっかくみんなで来ましたので、その記念に」
吉岡さんがそう言い、バッグからスマホを取り出す。
「いいじゃないか! 撮ろうぜ!」
琢磨はいの一番に賛成する。
「賛成ですっ! 七夕祭りのときも撮りましたし」
琢磨のすぐ後に結菜も賛成。2人がすぐに賛成したので、吉岡さんはとても嬉しそうだ。
俺や千弦達もみんな賛成したので、みんなでスマホで写真撮影会となった。
8人全員での写真はもちろんのこと、俺&千弦、琢磨&吉岡さんのカップル、俺と琢磨で男性のみ、千弦や星野さんなど女性のみ、俺と結菜で兄妹などといった様々な組み合わせでの写真を撮影した。それらの写真はこの8人がメンバーのグループトークにアップされた。
俺はアップされた写真を全て保存した。
「ねえ、洋平君。お願いしたいことがあって」
写真を一通り保存したとき、千弦が俺にそう話しかけてくる。
「うん、どんなことだ?」
「背中や脚の背面にも日焼け止めを塗ってほしくて。お願いしてもいいかな?」
千弦は俺の目を見つめながらそう言ってきた。
日焼け止めを塗ってほしいか。背中は塗りにくいから、恋人の俺に日焼け止めを塗るのをお願いしたのだろう。
「ああ、もちろんいいぞ」
「ありがとう!」
千弦はとても嬉しそうだ。もしかしたら、俺に日焼け止めを塗ってもらうのを海水浴での楽しみの一つにしていたのかもしれない。
「その後に、俺の背中に日焼け止めを塗ってもらってもいいかな」
せっかく恋人の千弦とも一緒に海水浴に来たのだから、千弦に日焼け止めを塗ってほしい。ちなみに、家族で海水浴に来たときは結菜に塗ってもらったことが多く、去年、琢磨達と来たときは琢磨に塗ってもらった。
「もちろんだよ、洋平君!」
千弦は明るい笑顔で快諾してくれた。
「ありがとう。じゃあ、さっそく千弦から塗ろうか」
「うんっ、お願いします」
「千弦、白石。2人さえ良ければ、あたしもちょっと千弦に日焼け止めを塗ってみたいわっ」
神崎さんはちょっとワクワクとした様子でそう言う。まあ、神崎さんならそんなことを言うんじゃないかと思っていたよ。
「千弦さえ良ければ俺はいいけど」
「ふふっ。塗っていいよ、玲央ちゃん」
「……じゃあ、神崎さんには両膝から足元まで塗ってもらおうかな」
「分かったわ! 2人ともありがとう!」
神崎さんはとってもいい笑顔でお礼を言った。ここまでいい笑顔はなかなか見ないぞ。
「玲央さん。千弦さんの脚に塗り終わったら、あたしに日焼け止めを塗ってもらえますか?」
「もちろんよ、結菜ちゃん! 合点承知!」
とってもいい笑顔のまま神崎さんは快諾し、結菜に向けてサムズアップした。結菜のことを気に入っているから日焼け止めを塗れるのが嬉しいのだろう。
千弦は日焼け止めのボトルを俺に渡す。塗りやすくするためかビキニの胸の後ろの紐を外して、レジャーシートにうつ伏せの状態になった。水着姿だし、紐を解いているのもあって凄くセクシーだ。
俺は手に日焼け止めの液体を出す。ちょっと冷たいな。
日焼け止めのボトルを神崎さんに渡した。神崎さんも手に日焼け止めを出す。
「じゃあ、塗っていくぞ。肩の方から順番に塗っていくよ」
「あたしは右脚から塗っていくわ」
「お願いしまーす」
そして、俺と神崎さんの2人体制で千弦に日焼け止めを塗っていく。
千弦の肌がスベスベなのもあって、日焼け止めが塗りやすいな。白くて綺麗だから、これが保てるようにしっかりと日焼け止めを塗っていこう。あと、入浴したときや肌を重ねるときに裸身の千弦を抱きしめたり、背面にキスしたりするけど、痕が付かないように気をつけようとも思った。
「えへへっ、千弦に日焼け止め塗れてる」
神崎さん……とても幸せそうだ。
「あぁ……塗ってもらうの気持ちいい。2カ所同時に塗ってもらっているからちょっと贅沢な感じもする」
「そうか。いい気持ちになってくれて良かった」
「そうね。ちょっとでもいいから塗ってみたいって言ってみて良かったわ」
「玲央さんのおかげでしょうね」
俺と神崎さんと結菜がそう言うと、千弦は顔をこちらに向けて「ふふっ」と笑う。気持ちいいからか、千弦の顔に浮かぶ笑みは柔らかくて。それもあって、千弦は可愛いだけでなく艶っぽさも感じられた。
それからも俺と神崎さんで日焼け止めを塗り、
「……よし、両方とも膝から足元まで塗り終わったわ」
腰の近くまで塗ったとき、神崎さんはそう言った。
「ありがとう、玲央ちゃん。気持ち良かった」
「いえいえ。……じゃあ、結菜ちゃん。塗ろっか」
「はいっ」
結菜はそう返事をすると、千弦の横でうつ伏せの状態になった。
また、結菜の奥では山本先生、さらにその奥では吉岡さんがうつ伏せの状態になっている。先生は星野さんに、吉岡さんは琢磨に日焼け止めを塗ってもらっている。女性4人が並んでうつ伏せになっている光景はなかなかのものだ。4人とも美女や美少女なので、男性中心にこちらを見ている人がちらほらと。
引き続き、俺は千弦に日焼け止めを塗っていく。腰、お尻、両脚の裏太ももの順番で。
お尻や太ももは柔らかくてとても触り心地が感じられて、ドキッとした。
「……よし、これで神崎さんが塗り始めた膝まで塗り終わった。終わったよ、千弦」
「ありがとう、洋平君」
千弦はゆっくりと起き上がって、ビキニの紐を結んだ。結び終わった際、俺にお礼のキスをしてきた。
千弦に日焼け止めのボトルを渡すと、千弦は自分で体の前面に日焼け止めを塗っていく。その姿は大人っぽさや艶っぽさがあって魅力的だ。思わず見入り、ドキッとした。
「……よし、これでOKっと。じゃあ、洋平君。背中と脚の裏側に日焼け止めを塗るね」
「ああ。お願いします」
俺は持参した日焼け止めのボトルを千弦に渡して、さっき千弦がうつ伏せになっていた場所にうつ伏せになる。千弦がうつ伏せになっていたときからそこまで時間が経っていないからか、千弦の温もりや甘い残り香が感じられた。
「じゃあ、洋平君。日焼け止めを塗っていくね。肩から足元に向かって塗るね」
「ああ。お願いします」
それから程なくして、肩のあたりに何かが触れてちょっぴり冷たい感覚が。日焼け止めを付けた手で触れているのだろう。
千弦に日焼け止めを塗ってもらい始める。優しい手つきで塗ってくれるのもあってとても気持ちがいい。
「日焼け止めを塗ってもらうの気持ちいいな」
「それは良かった。洋平君の背中が綺麗だから、日焼け止めを塗りやすいよ」
「そうか」
「あと、背が高い男の子だけあって背中が広いね。塗り甲斐がありそう」
「ははっ、そうか。塗る面積が広いけど宜しくお願いします」
そう言って、俺は顔を千弦の方に向ける。すると、
「はいっ! お任せください!」
と、千弦はニコッと笑いかけながら元気良く言ってくれた。それが可愛くてキュンとなる。こんなに可愛くてやる気のある千弦に塗ってもらっていて幸せだ。
引き続き、千弦に日焼け止めを塗ってもらう。背中、腰、両脚という順番で。
塗り方が上手だからとても気持ちいい。だから、マッサージもしてもらっている感覚になった。
「洋平君。塗り終わったよ」
両脚まで塗り終ってもらい、千弦にそう言われた。
「ありがとう、千弦」
俺はゆっくりと起き上がり、千弦にお礼のキスをした。
千弦から日焼け止めのボトルを受け取り、体の前面に日焼け止めを塗り始める。
「あぁ、幸せだわぁ……」
神崎さんのそんな声が聞こえたので声がした方を見ると……俺の隣で、神崎さんが結菜によって背中に日焼け止めを塗ってもらっている。幸せと言うだけあって、神崎さんはとても幸せそうな様子だ。
「ねえ、結菜ちゃん。今は玲央ちゃんの背中に日焼け止めを塗っているけど、脚の方は塗り終わった?」
「いいえ、脚はまだです」
「じゃあ、私が脚に塗ってもいいかな。さっき、私に日焼け止めを塗ってくれたお礼に」
「玲央さんさえ良ければかまいませんよ」
「喜んで!」
「ふふっ。じゃあ、私が脚に塗るね」
「ありがとう!」
千弦は結菜から神崎さんの日焼け止めのボトルを受け取り、神崎さんの脚に日焼け止めを塗り始める。
「あぁっ……結菜ちゃんと千弦に同時に塗ってもらえるなんて。幸せすぎる……」
神崎さんはとても甘い声でそう言う。そんな神崎さんの顔はさっき以上に幸せそうになっていて。神崎さん、良かったね。
今の神崎さんの反応に、千弦と結菜は楽しそうに笑っていた。
その後も幸せそうにしている神崎さんの横で、俺は体の前面に日焼け止めを塗っていくのであった。