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第6話『夏休みの課題を恋人と一緒に』

 午後1時50分。

 千弦が家に来る約束の午後2時が近づいてきている。千弦は学校に行くときなど待ち合わせをする際は早めに来ることが多いので、もうすぐ来るかもしれない。

 ――ピンポーン。

 インターホンが鳴った。時刻からして千弦の可能性は高そうだ。

 部屋の扉の近くにあるモニターのスイッチを入れると、画面には千弦の顔が映った。


「はい」

『千弦です! 来たよ!』


 千弦は笑顔でそう答えてくれる。可愛い。


「すぐに行くよ」

『はーい』


 モニターのスイッチを切って、俺は自分の部屋を出る。

 玄関に行って扉を開けると、そこにはスラックスにノースリーブの襟付きのブラウス姿の千弦が立っていた。今日の服装もよく似合っている。

 そして、首には先日、誕生日プレゼントで千弦にプレゼントしたシルバーのペアネックレス。今日のように休日のデートでは付けると千弦は言っていた。ネックレスもよく似合っているし、付けてくれているのがとても嬉しい。ちなみに、俺もネックレスを付けている。

 また、千弦は少し大きめのトートバッグを持っている。あの中には数学Bの課題や筆記用具、あとは教科書やノートも入っているのだろう。そう思うと、千弦が大学生っぽく見えてきた。


「こんにちは、洋平君!」


 千弦はニッコリとした笑顔で挨拶してくれる。今の時点でデートに誘って良かったと思えるよ。


「こんにちは、千弦。来てくれてありがとう」

「いえいえ。こちらこそ誘ってくれてありがとう」

「いえいえ。……今日の服装もよく似合ってるな。可愛いよ。ペアネックレスも似合ってるし、付けてくれて嬉しいよ」

「ありがとう。洋平君もワイシャツ姿がよく似合ってるよ。かっこいい。ネックレスも似合ってる。同じネックレスを付けているのっていいね」

「そうだな。このペアネックレスをプレゼントして良かったよ」

「素敵なものをプレゼントしてくれてありがとう」


 千弦はとても嬉しそうな笑顔でそう言った。千弦が笑顔になったのはもちろん、俺がプレゼントしたもので千弦を笑顔にできたのだと思うと嬉しくなる。


「あのさ、洋平君」

「うん?」

「キスしていい? 今はお昼過ぎだからこんにちはのキスを」

「ああ、いいぞ」

「ありがとう」


 千弦はニコッと笑ってお礼を言うと、俺にこんにちはのキスをしてきた。

 夏休みの初日から千弦とキスできて嬉しいし、幸せだ。あと、晴れて暑い中を歩いてきたからだろうか。千弦の唇がいつもよりも温かくて。ちょっと汗の匂いが混ざった千弦の甘い匂いも感じられるのもあってドキドキする。

 数秒ほどして千弦の方から唇を離した。すると、目の前には俺を見つめながら笑う千弦が。そんな千弦の頬をほんのりと赤くなっていた。


「こんにちはのキスができて良かったです」

「俺もだよ。夏休み初日から千弦とキスできて嬉しいし、幸せだ」

「私もっ」


 弾んだ声で千弦はそう言った。


「さあ、入って、千弦」

「うん。お邪魔します」


 千弦を家の中に招き入れた。

 千弦がリビングにいる両親に挨拶した後、2階にある俺の部屋に千弦を連れて行く。

 エアコンがかかっていて涼しいからか、部屋に入った瞬間、千弦は「涼しい~」とまったりとした笑顔になる。


「冷たいものを持ってくるよ。何がいい?」

「そうだね……アイスティーがいいな」

「アイスティーだな。ガムシロップとかミルクは入れる?」

「ガムシロップを入れてもらえるかな。これから課題をするから、甘い方がいいかなって」

「分かった。ガムシロップを入れてくるよ。千弦は適当にくつろいでて」

「うんっ、分かった」


 俺は部屋を出て、1階にあるキッチンに向かう。

 キッチンに行き、千弦の分と俺の分のアイスティーを作っていく。千弦のアイスティーだけでなく、俺のアイスティーにもガムシロップを入れた。千弦がさっき言ったように、課題をするから甘い方がいいかなと思ったのだ。

 アイスティーの入ったガムシロップをトレーに乗せて、俺は自室へと戻る。

 自室に入ると、千弦はベッドの側に置いてあるクッションに座ってスマホを弄っていた。


「ただいま、千弦。アイスティー作ってきたよ」

「おかえり、洋平君。ありがとう」


 ローテーブルにアイスティーの入ったマグカップを置く。そのうちの一つは千弦の前に置いた。

 いただきます、と言って千弦はさっそくアイスティーを一口飲む。


「あぁ、甘くて美味しい。暑い中歩いたから、冷たいのもいいね」


 千弦は柔らかい笑顔でそう言ってくれる。そのことに嬉しい気持ちになる。


「それは良かった」


 俺は勉強机にトレーを置き、数学Bの課題プリントや筆記用具、教科書とノートを持ってローテーブルの方へ。千弦とはローテーブルを挟んで向かい合う形でクッションに座った。アニメを観るときは千弦と隣同士で座るけど、隣同士で座ると課題やノートなどを広げて勉強するには狭いから。

 クッションに座った直後に、アイスティーを一口飲む。千弦と美味しいと言ってくれたのもあって物凄く美味しく感じられる。普段、紅茶やコーヒーは何も入れずに飲むことが多いけど、ガムシロップ入れて甘くするのもいいな。


「洋平君と向かい合うのって新鮮だな。お家デートでは隣同士に座ることが多いし。あと、学校の席も中間試験の後の席替えでは隣同士だったし。みんなでお昼を食べるときや勉強会をするときも隣同士だったから」


 千弦は楽しげな様子でそう言う。思い返すと……千弦とは隣同士で座ることが多いな。


「確かに、向かい合うのは新鮮だな」

「だよね。隣に洋平君がいるのはもちろんいいけど、こうして目の前に洋平君がいるのもいいなって思うよ」

「俺もそう思う。……よし、じゃあ、数学Bの課題をやっていこう」

「うんっ! 頑張ろうね!」


 千弦は明るい笑顔でそう言った。今の一言で課題を物凄く頑張れそうな気がする。


「ああ。頑張ろうな」


 俺達は数学Bの課題を始める。

 数学Bの課題プリントは1学期の総復習とも言える内容だ。

 多くの問題は基本的な内容でスラスラと解ける。

 ただ、時々、応用の問題もある。難しさを感じることもあるけど、教科書やノートを確認したり、図を描いたりすればちゃんと解くことができる。うちの学校はそれなりの偏差値の進学校なので、このくらいの難易度の問題もしっかり解けるくらいに身に付けてほしい狙いがあるのだろう。

 たまに、正面で課題をしている千弦を見ると……集中して取り組んでいる。その姿は王子様のようなかっこよさがあって。ただ、俺と目が合うとニコッと笑って。そのときはとても可愛くて。千弦の素敵な姿に癒やされる。

 何度か千弦から、


「ああ……ここの問題分からない。洋平君、2ページにある問6を教えてもらえるかな?」


 と、応用の問題について質問されることがある。

 ただ、基本的な内容の問題についてはちゃんと解けているのもあってか、


「……で、これが答えになるんだ」

「そういうことだったんだね。理解できたよ、ありがとう!」


 俺が教えると千弦はすぐに理解してくれた。

 小休憩を時々挟んだり、2人ともキリのいいところまで終わったときには、昨晩放送された千弦も俺も好きな日常系アニメを観て長めに休憩したりしながら、俺達は数学Bの課題をしていった。

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