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第4話『1学期の終わり』

 1学期最終日なので、朝礼の後に体育館で1学期の終業式が行なわれる。

 終業式では校歌を斉唱したり、校長先生や生徒会長が1学期の振り返りや夏休み中の過ごし方について話したり、大会で優秀な成績を収めた部活や生徒を紹介したりするなどした。

 終業式が終わって教室に戻ると、1学期最後のロングホームルームの時間になる。


「これから通知表を配布します。2年生なので分かっていると思いますが、30点未満の科目が赤点科目となります。分かりやすいように、赤点科目には『*』マークがついています。では、出席番号順に配布していきますね」


 山本先生がそう言い、本日のメインとも言える通知表の配布が始まった。それもあり、教室の中はざわざわと。これは小学校のときから変わらないなぁ。

 成績がいいのか喜んでいる生徒、赤点科目があったのか顔色が悪くなっている生徒など、通知表をもらったクラスメイト達の反応は様々である。


「どんな成績をつけられているかな」

「中間でも期末でも上位者一覧に入れたけど、ちょっと緊張するね、千弦ちゃん」

「そうだね」

「きっといい成績がついているさ」


 俺は右隣の席に座る千弦や、右斜め前に座っている星野さんとそんな雑談をする。


「次、神崎さん」


 神崎さんの名前が呼ばれた。

 はい、と返事をして、神崎さんは教卓にいる山本先生のところに行き、通知表を受け取った。

 神崎さんは教室前方の扉の近くで通知表を見ると、


「やった! 赤点科目なし!」


 と、嬉しそうな笑顔で言っていた。神崎さんは理系中心に苦手な科目がいくつかあるから、赤点科目がないことを嬉しく思っているのだろう。

 あと、成績で赤点を取ってしまうと、特別課題を出されたり、夏休み中に補講に出席したりしないといけない。補講だと特に部活に影響が出る。さらに、成績が酷いと部活動の参加を禁止されることもあるとのこと。きっと、それも神崎さんが赤点なしを喜ぶ理由の一つになっていると思う。

 神崎さんは自分の席に戻る際、席が近い琢磨や吉岡さんなどとグータッチしていた。俺達3人にはニコッとした笑顔でサムズアップしてきて。そんな神崎さんに俺達はサムズアップした。

 その後も通知表配布が続き、


「次、坂井君」

「うっす!」


 琢磨は元気良く返事をして教卓に向かい、山本先生から通知表を受け取った。

 琢磨は教室前方の扉の近くで通知表を見て、


「よっしゃっ! 赤点なしだぜ!」


 と、先ほどの神崎さんのように赤点科目なしに喜んでいた。右手を拳にしていて。琢磨も苦手な科目はいくつかあるから、赤点がなくて嬉しいのだろう。琢磨も赤点がなくて良かった。

 琢磨は吉岡さんとはハイタッチをして、神崎さんとはグータッチした。

 また、俺達3人に、琢磨はニコッと白い歯を見せて右手でサムズアップをしてきた。なので、俺達3人もサムズアップをした。


「次、白石君」

「はい」


 俺は席から立ち上がり、山本先生がいる教卓へと向かう。


「1年生のとき以上にいい成績ね。頑張ったね。この調子で頑張ってね」


 と、笑顔の山本先生からお褒めの言葉をいただき、俺は先生から通知表を受け取った。

 自分の席に戻って、通知表を見ることに。

 通知表には100円満点での各科目の成績とクラス順位、学年順位が記載されている。

 各科目の成績を見てみると……全科目90点以上だ。現代文や古典、数学Ⅱ、英語表現Ⅱなど複数の科目で100点満点が付けられている。

 クラス順位は1位で、学年順位は5位か。学年順位は中間試験や期末試験よりも高い。定期試験がなかった体育が92点だったから、それが順位を上げた理由かもしれない。

 1年のときも成績が良かったけど、これほどの成績は取れていなかった。だからこそ、1年の頃から担任をしている山本先生は、ああいった褒め言葉を言ってくれたのだと思う。


「洋平君、成績どうだった?」

「私も気になるな。飛鳥先生に何か言われていたし」

「言われてたよね」


 千弦と星野さんのそんな声が聞こえてきたので、2人の方を見ると……2人は俺のことをじっと見つめていた。


「勉強頑張ったねとか、いい成績だって褒められた。この調子で頑張ってねって」

「そうだったんだ。さすがは洋平君!」

「さすがだね」

「ありがとう。俺の通知表見ていいよ。かなり良かった」


 そう言い、千弦に通知表を渡した。

 千弦と星野さんは俺の通知表を見ると、


『すごーい!』


 と、声を揃えてそう言った。可愛いユニゾンである。


「洋平君の言う通りかなりいい成績だね! 洋平君凄いよ!」

「それに、クラス1位で学年5位だもんね。凄いよ、白石君」

「ありがとう」


 千弦と星野さんから褒められて嬉しいよ。特に千弦に褒められるのは。

 千弦と星野さんの声が聞こえたのだろうか。琢磨と吉岡さんと神崎さんはこちらを見ていた。


「成績良かったよ」


 と言って、神崎さんや琢磨に倣い、3人に向かってサムズアップすると、3人は笑顔でサムズアップしてくれた。

 その後も通知表配布が続いていく。そして、


「次、藤原さん」

「はい」


 ついに、千弦の番となった。

 千弦は教卓にいる山本先生のところへ向かう。

 千弦は笑顔の山本先生から何やら言葉を掛けられてから、通知表を受け取った。千弦は通知表を見ることなく自分の席に戻った。


「千弦、何か先生に言われてたな」

「うん。洋平君と同じく『勉強頑張ったね。この調子で頑張ってね』って」

「そうだったんだ」

「さすがは千弦ちゃんだね」

「さすがだ」

「ありがとう」


 ニコッと笑ってお礼を言う千弦。可愛い。


「次、星野さん」

「はい」


 星野さんは教卓にいる山本先生のところへ向かう。

 星野さんも山本先生から何やら言葉を掛けられてから、通知表を受け取った。おそらく、星野さんも勉強について褒められたのだろう。俺や千弦と同様に定期試験では成績上位者一覧に載ったし。

 星野さんは通知表を見ることなく自分の席に戻ってきた。


「彩葉ちゃんも飛鳥先生から何か言われてたね。私と同じ感じ?」

「うんっ。勉強頑張ったねって褒められた」

「そっか。さすがは彩葉ちゃん」

「そうだな」

「ふふっ、ありがとう。……通知表見よっと」

「私も」


 千弦と星野さんはそれぞれ自分の通知表を見ていく。

 2人はそれぞれどんな成績が付けられているのかな。まあ、山本先生が「頑張ったね」と褒めたのだから、いい成績であることは間違いないだろうけど。


「うん、文系中心にいい成績だった。クラス2位になれた」

「私も良かった。体育は得意じゃないけど、60点台を取れてて良かったよ。それでもクラス3位になれて嬉しい」

「良かったね! ……洋平君、私の通知表見ていいよ」

「私のもどうぞ」

「ありがとう。見させてもらうよ」


 千弦と星野さんからそれぞれ通知表を受け取る。

 まずは千弦から見よう。

 千弦の言う通り、文系中心にかなりいい成績だ。現代文と古典、日本史、コミュニケーション英語Ⅱ、体育は100点満点だし。普段の課題や定期試験の勉強で質問されることが多い理系科目も70点台から80点台と好成績だ。クラスでは2位、学年では10位か。

 星野さんも千弦のように文系科目中心にかなりいい成績だ。現代文と古典、公共、英語表現は100点満点だ。理系科目も数学Ⅱは90点とかなり高く、他も70点台から80点台。得意じゃないと言っていた体育も62点取れている。クラスでは3位、学年では15位になったか。


「千弦も星野さんもいい成績だな。2人とも凄いよ」

「ありがとう、洋平君」

「白石君、ありがとう」


 千弦と星野さんは嬉しそうにお礼を言った。

 また、2人の背後にはこちらを見ている琢磨達3人の姿が見える。


「琢磨達3人がこっちを見ているよ」


 千弦と星野さんに通知表を返した際にそう教えた。

 千弦と星野さんは琢磨達3人の方を見て、


「良かったよ」

「私も良かったよ」


 千弦と星野さんは琢磨達3人に向けてそう言ってサムズアップした。すると、琢磨達3人は笑顔でサムズアップした。

 その後も通知表配布が進み、


「次、吉岡さん」


 出席番号が最後から2番目である吉岡さんが呼ばれた。

 はいっ、と返事をして、吉岡さんは山本先生のいる教卓に向かい、通知表を受け取った。

 吉岡さんは自分の席に向かって歩きながら通知表を見て、


「赤点なーいっ! やったっー!」


 吉岡さんらしい明るい笑顔でそう言った。琢磨や神崎さんのように、苦手な科目がいくつもあるから、赤点がないことが嬉しいのだろう。吉岡さんも赤点なしで良かった。

 吉岡さんは嬉しそうな様子で琢磨と神崎さんとハイタッチして、俺達3人に向かってサムズアップしてくれた。俺達3人は吉岡さんにサムズアップした。

 吉岡さんの次の出席番号である女子生徒も通知表を受け取り、通知表の配布が終わった。

 その後は、各教科の先生が教室にやってきて、夏休みの課題について説明した。プリントや問題集が課題となっている教科については配布もされて。

 また、中には生徒を呼んで、その生徒に課題を渡す先生もいた。おそらく、それは赤点の成績を取ったことの特別課題だと思われる。

 全ての教科について課題の説明や配布が終わった後、担任の山本先生が教室に来て終礼が行なわれる。先生は夏休み中の過ごし方や諸注意などについて説明した。


「では、これにて1学期の日程を終了です。みなさん、1学期お疲れ様でした。体調や怪我には気をつけて夏休みを過ごしてください。曜日の関係で、2学期は9月2日の月曜日からです。9月2日に学校で会いましょう。委員長、号令をお願いします」


 そして、委員長の号令により、終礼が終わり、1学期が終了した。その瞬間にクラスの雰囲気はぱあっと明るくなり、


「よし、夏休みだ!」


「やったー!」


 などと、男女問わずに1学期が終了したことを喜ぶクラスメイト達は何人もいた。そのうちの3人は琢磨と吉岡さんと神崎さんだ。

 この後部活があるからか、運動系の部活や吹奏楽部に入っているクラスメイト達の何人かはすぐに教室を後にした。

 琢磨と吉岡さんと神崎さんはスクールバッグと、部活のものが入っているバッグを持って俺達のところにやってきた。俺達6人は「1学期お疲れ様」とお互いを労った。


「赤点なしで乗り越えられたぜ! これもみんなのおかぜだぜ! ありがとな! これで部活も思いっきりできるし、海水浴も思いっきり楽しめそうだ!」

「あたしもだよ! 赤点なくて良かった! みんなありがとう」

「みんなのおかげで、赤点なしで1学期を終えられたと思ってるわ。ありがとう!」


 琢磨と吉岡さんと神崎さんは嬉しそうな笑顔でお礼を言った。赤点がなくて本当に嬉しいのが伝わってくる。赤点がなかったので、3人は夏休み中の部活動を思いっきりやることだろう。


「洋平達3人は成績良かったんだよな」

「ああ。俺はクラス1位で学年5位だ。ここまで良かったのは初めてだ。みんなのおかげだと思ってる。ありがとう」

「私はクラス2位で学年10位。私も今までで一番良かったよ。分からないところを訊いたり、みんなで試験勉強をしたおかげだよ。ありがとう」

「私はクラス3位で学年15位だったよ。私も今回が一番良かったよ。みんなありがとう」

「おぉ、3人とも凄いな! さすがだ!」

「さすがだよね。定期試験で上位だったもんね。凄いよ!」

「3人とも頭いいし、教え方が上手だもんね。成績がいいのも納得だわ」


 琢磨と吉岡さんと神崎さんは納得した様子でそう言ってくれた。一緒にいることが多い友人から褒められるのは嬉しいものだ。


「みんなのおかげだって言えるのは素晴らしいね。いい関係ね。ただ、先生はみんながそれぞれ頑張ったのも理由の一つだと思っているよ」


 気付けば、山本先生が俺達のすぐ近くまで来ていた。俺達の今の会話を聞いたからか、先生の顔には優しい笑みが浮かんでいた。


「みんな、1学期お疲れ様。28日にみんなと結菜ちゃんと行く海水浴が楽しみよ」


 そう言うと、山本先生の笑顔は楽しそうなものに変わった。俺達6人も「楽しみです」と言った。

 俺達6人はみんな掃除当番ではないので、それからすぐに教室を後にする。

 この後、俺はバイト、千弦達5人は部活がある。なので、千弦と星野さんとは特別棟に繋がる渡り廊下がある2階で、琢磨と吉岡さんと神崎さんとは昇降口近くでそれぞれ別れた。また、千弦と別れる際は、


「1学期お疲れ様。バイト頑張ってね」

「千弦も1学期お疲れ様。星野さんと一緒に部活頑張って」


 と言葉を交わしてキスをした。

 俺は一人で洲中高校を後にする。

 お昼だし、よく晴れているから朝よりも暑くなっている。

 そういえば、梅雨明けしたと発表されたのだろうか。スマホで調べると……『関東地方梅雨明け』というニュース記事があった。梅雨明けしたか。

 今年もいよいよ夏本番だ。

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