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エピローグ『本当にありがとう!』

 7月16日、火曜日。

 3連休が明けて、今日から再び学校生活が始まる。

 ただ、連休明けの気怠さはない。千弦達と一緒に学校生活が送れるのはもちろんのこと、火曜スタートだし、先週から引き続き半日期間。そして、今週の金曜日で1学期が終わり、夏休みに突入するからだ。


「いってきます」

「いってらっしゃい」


 午前7時50分。

 俺は学校に向けて家を出発する。

 今日も朝から雨が降っており、梅雨空が続いている。ただ、朝食後に観た天気予報での週間予報によると、金曜から曇りや晴れが続く予報になっている。今年の梅雨もあと少しかな。

 家から数分ほど歩いて、千弦との待ち合わせ場所である交差点が見えてきた。千弦は待つのが好きだと言っていたけど、今日もいるだろうか。交差点を注視すると、


「洋平君!」


 既に千弦がおり、千弦は俺の名前を呼んで笑顔で手を振ってくれた。今日も千弦は可愛いな。ただ、17歳最初の制服姿だと思うと、これまでと比べて少し大人っぽく見えた。

 千弦、と名前を呼んで手を振りながら、俺は千弦のところに向かった。


「おはよう、千弦」

「おはよう、洋平君」


 朝の挨拶を交わすと、千弦は自分の傘を閉じて、俺の傘に入ってくる。その際におはようのキスをした。雨が降っているときに待ち合わせをする際のこの流れにもすっかり慣れた。

 数秒ほどして、千弦の方から唇を離す。目の前にはほんのりと頬を赤くした千弦の笑顔があって。その笑顔は少し艶っぽく感じられた。


「何だか、今日の千弦は大人っぽくて艶っぽさも感じるよ。素敵だ。17歳になったからかな。あとはお泊まりのときに……したのもあるかも。そういうときやお風呂に一緒に入ったときに千弦の体を見たり、触れたりしたし」

「そう言ってくれて嬉しいよ。ありがとう。洋平君も……大人っぽくて色気を感じて素敵だよ。理由は洋平君と同じだよ。洋平君は変わらず16歳だけどね」

「そうか。嬉しいよ、千弦」


 嬉しくて、俺から千弦にキスをする。

 2、3秒ほどして唇を離すと、目の前には千弦のいつもの可愛い笑顔があった。


「行こうか、千弦」

「うんっ」


 高校の方に向かう信号が青になっていたので、横断歩道を渡り、学校に向かって歩き始める。


「こうして学校に向かって歩くのが久しぶりに感じるよ。3連休だったのはもちろん、土日はずっと一緒にいたから」

「そうだな。日曜に帰るときにも言ったけど、土日は楽しくて盛りだくさんだったからな」

「そうだねっ。あとは、金曜日が16歳最後の登校だったし、土曜日に17歳になったから」

「そうか」


 千弦にとって、この3連休はとても大きな出来事がいっぱいあったのだと実感する。


「今日は千弦にとって17歳最初の登校か」

「うんっ。何だか新しい学校生活が始まる感じがするよ。洋平君達と一緒にいる中で17歳の学校生活をスタートできると思うと嬉しいな。まあ、今週で1学期が終わっちゃうけどね」

「ははっ。1学期は今週で終わるけど、一緒に楽しい学校生活を送ろうな」

「うんっ」


 その後も、3連休のことについて話しながら洲中高校に登校した。

 校門を通ると、掲示板近くに生徒達が集まっているのを見つける。


「掲示板のところに人が集まってるな」

「そうだね。この時期だと……期末試験の成績上位者一覧が貼り出されたのかも」

「そうかもな。試験が終わって1週間以上経ったし。行ってみるか」

「うんっ」


 生徒達が集まっている掲示板の前に向かう。

 生徒達が傘を差しているので見えにくいけど、掲示板をよーく見てみると……紙が貼られていて、『1学期期末試験成績上位者一覧』の文字が見えた。


「千弦の予想通り、期末の上位者一覧が貼られてる」

「そうなんだ。中間に続いて名前が載っているといいな」

「きっと載っているさ」


 定期試験の上位者一覧には、各学年について上位20名までの生徒の名前と試験の合計点数が記載される。中間試験では俺が7位、千弦が14位、星野さんが18位だった。果たして、期末試験ではどうなっているか。

 少しずつ掲示板に近づき、掲示板の前に着いてから2,3分ほどして成績上位者一番の紙がしっかりと見えるところまで辿り着いた。

 俺達の学年である2年生の一覧を見ていく。

 1位の生徒は中間のときと同じ生徒で、合計点数は1088点か。期末試験は全11科目実施されたので、満点やそれに近い点数ばかりだったのだと分かる。凄いな。

 2位以下を見ていくと、


『6位:白石洋平 (2-3) 1030点』


 6位に俺の名前があった。中間試験は7位だったので1ランクアップか。試験順位の最高記録も更新できた。嬉しいな。


「洋平君6位だ! おめでとう!」


 千弦はとても喜んだ様子でそう言ってくれる。それもあって、6位になれたことの嬉しさが膨らむ。中間試験の上位者一覧は1人で見たけど、こうして誰かと一緒に見るのもいいな。


「ありがとう、千弦。嬉しいよ」


 お礼を言うと、千弦はニッコリとした笑顔を向けてくれた。

 最高順位を更新できたのも、期末試験も千弦達と一緒に期末試験の勉強をしたおかげだろうな。

 7位以下の生徒を見ていくと――。


『10位:藤原千弦 (2-3) 988点』


 10位に千弦の名前があった!


「千弦も一覧に載ったな! 10位おめでとう!」

「ありがとう! 中間に続いて載れるだけじゃなくて、中間の14位から10位に順位を上げられて凄く嬉しいよ!」


 千弦は嬉しそうな笑顔でそう言った。千弦の笑顔を見ていると、自分のとき以上に嬉しい気持ちになれる。

 前に「期末はかなり点数が良かった」と千弦は言っていたっけ。試験対策の勉強を頑張っていたし、その頑張りが学年10位という結果に繋がったのだろう。順位を上げて凄いと思う。

 11位以下の生徒も見てみると、


『13位:星野彩葉 (2-3) 962点』


 13位に星野さんの名前があった。


「彩葉ちゃんの名前もあった。嬉しいなぁ」

「そうだな」


 星野さんも千弦と同じく、期末試験の点数はかなり良かったと言っていた。中間に続いて一覧に載り、5つも順位を上げて凄いな。

 千弦は「一覧に載った記念に」と、スマホで学年上位者一覧を撮影していた。その写真はLIMEで俺のスマホに送ってくれた。

 上位者一覧を見終わったので、俺達は教室A棟に入る。

 昇降口で上履きに履き替えて、階段で2年3組の教室がある4階へと向かう。

 4階に辿り着き、教室後方の扉から2年3組の教室に入った。今日も外は蒸し暑かったので、エアコンで涼しくなっている教室の中がとても心地いい。


「千弦ちゃんと白石君来たね! おはよう!」

「おはよう、千弦、白石!」

「洋平、藤原、おはよう!」

「おはよう、白石君、千弦!」


 俺の近くで談笑していた星野さん達が、俺達に向かって笑顔で挨拶してくれる。


「おはよう、みんな」

「みんなおはよう!」


 俺と千弦は星野さん達に挨拶をして、自分の達の席へと向かう。その際、友人を中心にクラスメイト達に「おはよう」と挨拶して。

 自分の席に荷物を置いて、星野さん達のところに行く。


「千弦ちゃんと白石君、上位者一覧に入ってたね! おめでとう!」

「さっきまでそのことについて話してたの。2人とも凄いわ!」

「さすがは洋平と藤原だぜ!」

「2人ともおめでとう!」


 4人は笑顔で祝福してくれる。一緒に試験対策の勉強をした4人からおめでとうって言われると嬉しいものがある。千弦も同じような気持ちなのか嬉しそうな笑顔になっていて。


「みんなありがとう! 一緒に勉強したおかげで、中間に引き続き入れたよ。しかも10位まで順位を上げられたし」

「ありがとう。6位になったよ。千弦の言う通り、みんなのおかげだと思ってる」

「彩葉ちゃんも13位に入ってたね、おめでとう!」

「おめでとう」

「2人ともありがとう! みんなのおかげだよ」


 星野さんはとても嬉しそうにお礼を言った。

 今後の定期試験でも、この6人で試験対策の勉強会をしたいなと思う。


「日曜日にメッセージを送ったけど、千弦と白石……初めてのお泊まりを楽しく過ごせたみたいで良かったわね」


 神崎さんはいつもの明るい笑顔でそう言ってくれる。星野さんと琢磨と吉岡さんは「そうだね」と頷く。


「ありがとう! 洋平君との初めてのお泊まりはとても楽しくて素敵で幸せな時間を過ごせたよ」


 千弦は幸せそうな笑顔でそう答えた。その様子を見て嬉しい気持ちになる。


「ありがとう。千弦の言う通り、とても楽しくて素敵で幸せな時間を過ごせたよ。凄くいいお泊まりだった」


 それに、お泊まり中に初めて肌を重ねたり、一緒にお風呂に入ったりしたから千弦と恋人としての仲を深められたし。

 肌を重ねたり、お風呂に入ったりしたときのことを思い出したので、顔がちょっと熱い。千弦も同じなのか、千弦の頬がほんのりと赤くなっていた。


「凄くいいお泊まりだったか。それは良かったぜ!」

「2人とも良かったね! 恋人とのお泊まりっていいよね! とても楽しくて素敵で幸せな時間を過ごせたって言うの分かるなぁ。琢磨君とあたしのお泊まりもそんな感じだし」

「そうだな!」


 カップルだけあって、琢磨と吉岡さんは共感してくれる。それがとても嬉しい。

 そういえば、これまでに何度か琢磨と吉岡さんから「お泊まりした」って話を聞いたけど、どのときも「楽しかった!」って言っていたな。


「2人の幸せそうな笑顔を見たら、本当にいいお泊まりだったんだって分かるね」

「そうね、彩葉。あと、2人とも顔が赤いから……イチャイチャもしたんでしょうね」


 星野さんは優しい笑顔で、神崎さんはニヤリとした笑顔でそう言った。

 神崎さんの言う「イチャイチャもしたんでしょうね」という言葉にドキッとする。千弦もドキッとしたようで、頬の赤みが強くなっている。

 さあ、どう答えようか。「イチャイチャもしたんでしょうね」って言われたから、イチャイチャしたと答えるのがいいだろうか。さすがに、俺達6人以外もいるこの教室で肌を重ねたとは言えない。

 千弦に手招きすると、千弦は俺のすぐ側までやってくる。


「どう答えようか」


 と、千弦に耳打ちする。あと、こういうやり取り……千弦と初めて一緒に登校したときにもしたな。

 千弦は「う~ん……」と考えて、


「イチャイチャしたって言おう。玲央ちゃんも『イチャイチャもしたんでしょうね』って言っているんだし」


 と、千弦は俺に耳打ちしてきた。千弦も同じように考えているか。

 分かった、と千弦の目を見ながら頷いた。


「千弦とイチャイチャしたよ」

「イチャイチャしたね、洋平君」

「ふふっ、そうなのね。分かったわ」


 神崎さんは明るい笑顔で言った。ただ、イチャイチャの内容までは訊いてはこなかった。もしかしたら、「イチャイチャもしたんでしょうね」と言われた俺達の反応を見て、千弦と俺が最後までしたかもしれないと考えて、他の生徒達がいるこの場では訊かなかったのかも。


「とても楽しいお泊まりだったよ。その前にやった誕生日パーティーもとても楽しかった。今までで一番楽しいパーティーだったよ。みんなのおかげで、17歳の誕生日は最高の誕生日になったよ。本当にありがとう!」


 千弦は満面の笑顔で俺達にお礼を言った。

 これまでに、千弦から誕生日絡みのことでお礼を何回も言われたけど、毎回とても嬉しい気持ちになるよ。星野さん達も同じなのか、みんな嬉しそうな笑顔になっていて。その様子を見て、胸がとても温かくなる。


「いえいえ。最高の誕生日になって良かった。恋人として嬉しいよ」

「千弦ちゃん、去年まで以上に楽しそうだったもんね。準備から片付けまでずっと。最高の誕生日になって良かったよ!」

「パーティーでの千弦は本当に楽しそうだったものね。最高な17歳の誕生日になって嬉しいわ!」

「最高の誕生日になって嬉しいよ、千弦!」

「良かったぜ!」


 俺達5人がそう言うと、千弦はさらに口角を上げて「ありがとう!」とお礼を言った。

 それから少しして、朝礼が始まるチャイムが鳴り、山本先生がやってきた。

 今週も学校生活が始まる。

 授業中、隣の席に座っている千弦をたまに見ると……千弦は星野さんから誕生日プレゼントでもらったピンクのシャーペンを使って授業を聞いている。プレゼントされたものだからか、千弦はシャーペンを見て微笑むことも。その姿を見て嬉しい気持ちになる。

 また、俺と何度か目が合い、そのときには千弦は可愛い笑顔を見せてくれて。そのときにも嬉しくなって。

 いつも以上に嬉しくなることが多い中で、俺は学校生活を送っていくのであった。




続編 おわり

これにて、2学期編3は終わりです。最後まで読んでいただきありがとうございました。

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