第42話『千弦の家で迎える初めての朝』
「うんっ……」
7月14日、日曜日。
気持ち良く目を覚ますと……薄暗い中、見慣れない天井が視界に入る。
一瞬、ここはどこなのかと思ったけど……千弦の家にお泊まりしているんだった。それを認識した瞬間、千弦の温もりや甘い匂い、肌の柔らかさが感じられるように。
「おはよう、洋平君」
千弦のそんな声が聞こえたので千弦の方を見ると……一糸纏わぬ千弦が優しい笑顔で俺のことを見ている。俺と目が合うと、千弦はニコッと笑いかけてきて。可愛いな。
目覚めた直後から千弦の顔を見られて嬉しいし、幸せだ。
「おはよう、千弦」
「おはよう。……おはようのキスをしていい?」
「ああ、いいぞ」
「ありがとう」
可愛らしい笑顔でそう言うと、千弦は俺におはようのキスをしてきた。
千弦の唇は柔らかくて、温かくて。とても心地いい。目覚めてすぐに千弦とキスまでできるなんて。本当に幸せだ。
少しして、千弦の方から唇を離す。すると、目の前には幸せそうな笑顔で俺を見つめている千弦がいて。そのことで幸せな気持ちがより膨らむ。
「起きてすぐに千弦とおはようのキスができるなんて。幸せだな」
「私も幸せだよ。10分くらい前に起きたんだけど、起きた瞬間から洋平君の姿が見えて。洋平君が目を覚ましたらおはようのキスができて。本当に幸せ。お泊まりっていいね」
「ああ。お泊まりっていいな。……あと、千弦は10分くらい前に起きてたのか」
「うんっ。洋平君の寝顔とか匂いとかを堪能してました。ほっぺにそっとキスもして。キスした少し後に洋平君が起きたんだけど……起こしちゃったかな?」
「ううん、そんなことないぞ。気持ち良く起きられたから」
「良かった」
千弦はほっと胸を撫で下ろした。
千弦は俺が寝ている間に色々なことをしていたんだな。もし、今後、お泊まりをしたときに俺の方が早く起きられたら、千弦が今言ったようなことをしてみたい。
「千弦の方が早く起きたけど、ぐっすり眠れたか?」
「うん、眠れたよ。洋平君の腕の抱き心地が良かったからね。昨日もすぐに寝たし」
「すぐに可愛い寝息を立てていたもんな」
「ふふっ。今後も、洋平君とお泊まりするときは洋平君の腕を抱いて寝たいな」
「いいぞ。それに、俺も千弦に抱かれて気持ち良かったし」
「ありがとう」
千弦はニコッとした可愛い笑顔でお礼を言った。
「あと……洋平君も私も裸だから、昨日の夜にえっちしたんだなって実感するよ」
そのときのことを思い出しているのか、千弦の頬が赤くなっていくのが分かる。触れている部分から伝わる熱が強くなっていって。
裸だと言われたので、千弦の体を見る。特に昨晩肌を重ねたときに初めて見た胸を。千弦の胸は大きくて存在感があり、魅力的だからなのもあるけど。千弦の体を見ているから、昨晩のことが脳裏によぎる。段々と体が熱くなってきた。
「千弦の言うこと……分かるよ。したんだな、俺達」
「そうだねっ。気持ち良かったね」
「そうだな。気持ち良かった」
「うんっ。あと……洋平君は胸が大好きなんだって分かったよ。昨日の夜は私の胸を堪能していたし、今も胸中心に見ているし」
千弦はニコッとした可愛い笑顔でそう言ってくる。
確かに、千弦の言う通り、昨日の夜は……様々な形で千弦の胸を堪能したな。今も千弦の胸に視線が行きがちだし。俺は千弦の胸が――。
「ああ、大好きだよ。大きくて柔らかい千弦の胸が」
千弦の目を見ながら俺はそう言った。
千弦と2人きりだけど、千弦の胸が大好きだって言うとちょっと気恥ずかしいものがある。
「そっか! 私の胸が大好きだって言ってもらえて嬉しいよ! だから、洋平君にお礼をするね」
千弦は嬉しそうに言うと、俺のことをそっと抱き寄せて、俺の顔を自分の胸に埋めさせた。そのことで額から鼻の近くまで千弦の温かくて柔らかい感触に包まれる。これは天然のアイマスクですか。
口ではもちろん、鼻での呼吸もできる。鼻で呼吸をすると……千弦の甘い匂いが濃厚に香ってきて。凄くいいぞ。ここは天国ですか。
「どうかな、私の胸を顔で感じてみて」
「凄くいいよ。柔らかくて、温かくて。あと、呼吸すると千弦のいい匂いがして。千弦の胸がもっと好きになった」
「ふふっ、良かった。ありがとう」
そう言うと、脳天に優しい感触が。きっと、千弦が俺の頭を撫でてくれているのだろう。
それから少しの間、千弦の胸に顔を埋め続けた後、ゆっくりと胸から顔を離した。すると、千弦は優しい笑顔で俺のことを見ていた。
「千弦の胸、本当に良かったよ。素敵なお礼をありがとう」
「いえいえ。あと、洋平君は私の胸以外に、腋とかお尻とか太ももとか首筋が好きかなって思っているんだけど。その4カ所にキスすることが多かったし」
「……確かに、その4カ所も好きだ。特に腋は」
「ふふっ、そっか。嬉しい。覚えておくよ」
千弦はニコッとした笑顔でそう言った。気持ち悪がられなくて良かった。
俺も千弦が俺の体で「ここが好きなんじゃない?」って言ってみたいな。昨日の夜のことを思い出す。
「千弦は……俺の胸元とかお腹とか首筋とか腕とかが好きじゃないか? している最中にその4カ所は特にたくさんキスしてたし」
「……うん。その4カ所は特に好きだね」
依然として、千弦は可愛い笑顔でそう言う。ただ、その笑顔はほんのりと赤くなっていて。俺の体の好きな箇所を指摘されてドキドキしているのかも。
俺の体の中に好きな箇所がいくつもあると分かって嬉しい。千弦もこういう気持ちだったのかもしれない。
「そうか。嬉しいよ」
「ふふっ」
「……そういえば、今って何時なんだろう? 部屋の中がちょっと明るいし、朝にはなっていると思うけど」
「今は6時半近くだね」
「6時半か。ぐっすり寝たから、もっと遅い時間かと」
それに、昨晩は日付を越えてから寝たからな。てっきり8時とか9時くらいかと思ったよ。
「私も起きた直後に時刻を確認したときに同じことを思った。昨日の夜はたくさん体を動かしたから、短い時間でもぐっすり眠れたのかな。それとも、洋平君がお泊まりに来たのは初めてだから、旅先の朝みたいな感じになったとか」
「どっちもありそうだな。後者は特にありそうだ。あと、俺は泊まりに来ている立場だし。旅行に行ったときはいつもより早めに起きることが多かったから」
「そうなんだね。私も旅行に行くと早めに起きるタイプだったな」
「そっか。……今は6時半くらいか。これからどうする? 二度寝する?」
「二度寝も魅力的だけど、お風呂に入りたいな。昨日はえっちしてそのまま寝たから。あと、昨日は別々に入ったから、今日は洋平君と一緒に。どうかな?」
「凄くいいな。一緒にお風呂に入ろう」
「うんっ! ありがとう!」
千弦は嬉しそうにお礼を言い、俺に「ちゅっ」とキスしてきた。俺と一緒にお風呂に入りたい気持ちが強いのが窺える。
お風呂に入ることが決まったので、俺達は上体を起こして体を起こす。その際、千弦は、
「う~んっ!」
と可愛い声を上げながら。体を伸ばすのが気持ちいいのか、千弦は柔らかい笑顔になっていて。あと、薄暗くても体を伸ばす千弦の体が綺麗なことがよく分かる。
「どうしたの、洋平君。私のことをじっと見て」
「薄暗い中でも、体を伸ばす千弦の姿が綺麗だなと思ってさ」
「ふふっ、嬉しい。……うちは夜にお風呂掃除するから、お湯張りが終わったら一緒にお風呂に入ろう」
「ああ、分かった」
初めて千弦と一緒に入るお風呂……とても楽しみだ。