第40話『誕生日の夜は初めての夜-前編-』
10人参加しているのもあってか、千弦の誕生日パーティーはとても盛り上がった。
誕生日パーティーが始まってから1時間半以上が経ち、用意していた料理やスイーツや誕生日ケーキがほとんどなくなったところで、パーティーは終了することに。
「みなさんのおかげで、とても楽しい誕生日パーティーになりました! 美味しいものをたくさん食べて、みなさんとたくさんお話しして、素敵な誕生日プレゼントをたくさんもらえて凄く嬉しかったです。忘れられない素敵な誕生日になりました。今日は本当にありがとうございました! これにて、パーティーを終了します!」
千弦は満面の笑顔で誕生日パーティーの締めの挨拶をした。千弦にとって楽しいパーティーになって良かった。彼氏としてとても嬉しく思うよ。
「俺も楽しかったよ。改めて、17歳の誕生日おめでとう! 千弦!」
俺がそう言って、千弦に向けて拍手を送る。
すると、星野さんや結菜達みんなも「楽しかった!」「誕生日おめでとう!」などと祝福の言葉を言い、千弦に向けて拍手を送った。
「ありがとうございます!」
千弦は改めてお礼を言った。
こうして、千弦の17歳の誕生日パーティーは終了した。
結菜、琢磨、吉岡さん、神崎さん、山本先生はこれで帰ることに。星野さんは片付けも毎年手伝っているとのことで、もう少し残ることになった。
孝史さんはワインなどお酒をいっぱい呑んでウトウトしているので、俺と千弦と星野さんと果穂さんで結菜達5人のことを見送ることに。
「今日はとても楽しい誕生日パーティーでした! お兄ちゃん、千弦さん、ラブラブな夜を過ごしてくださいね!」
「本当に楽しいパーティーでした! これまでに参加した友達の誕生日パーティーでは一番です! 千弦と白石はお泊まりを楽しんでね! またです!」
「今日は楽しかったっす! 美味いものをたくさん食えて幸せっす! 洋平と藤原はお泊まり楽しめよ!」
「とても楽しいパーティーでした! 千弦と白石君はラブラブな夜を過ごしてね! 初めてのお泊まりなんだし」
「今日はとても楽しい時間でした! 藤原さんの笑顔をたくさん見られて嬉しかったよ。藤原さんと白石君……素敵なお泊まりの時間を過ごしてね。失礼します」
玄関で結菜達5人は俺達に向かってそう言った。みんなにとっても誕生日パーティーが楽しかったのが分かって嬉しいよ。お泊まりを楽しんでと言ってくれたことも。
「今日はパーティーに来てくれてありがとうございました! 楽しかったです。この後は洋平君との初めてのお泊まりを楽しみますね。みなさん、気をつけて帰ってください」
「俺もパーティー楽しかったです。お泊まりも楽しみます。また学校やバイト先で。月曜はバイトのシフトに入っているので。気をつけて帰ってください」
「私も楽しかったです。みなさん、またです。お気を付けて」
「今日は娘のために来てくれてありがとうございました。親として嬉しい限りです。主人も同じ気持ちだと思います。夜なので、気をつけて」
俺達がそう言うと、結菜達は笑顔で手を振って家を後にした。
誕生日パーティーが終わり、パーティーを一緒に楽しんだ人達が帰っていくのは寂しい気持ちもある。ただ、この後に千弦との初めてのお泊まりが控えているから楽しみな気持ちもあって。
「さてと。片付けをしましょうか。もう夜だから、今日は食器の後片付けをやりましょう。明日もお休みだから、リビングを元に戻すのは明日やりましょう。あと……白石君。お願いがあるんだけど」
「何でしょう?」
「私と一緒に、お父さんを寝室に運んでくれるのを手伝ってくれるかしら。お父さん、お酒をたくさん呑んで眠そうにしているから」
「ウトウトしていましたもんね。分かりました」
その後、千弦と星野さんは食器類の後片付け、俺と果穂さんは眠そうにしている孝史さんを寝室まで運ぶことに。
孝史さんは眠そうだけど、俺と果穂さんが体を支えれば何とか歩けるので、寝室まで運ぶのを大変に感じることはなかった。ちなみに、果穂さんもそれなりにお酒は呑んだけど、あまり眠くはないらしい。
孝史さんを運び終え、俺と果穂さんも食器類の後片付けに加勢する。
10人が参加したパーティーだったのもあり、洗う食器類はなかなかの多さだ。果穂さんと星野さんが食器を洗い、俺と千弦で食器を拭いて元の場所に戻すと担当を振り分けて行なったのもあってか、終わるまではそこまで時間はかからなかった。4人でパーティーのことを中心に雑談しながらだったので、結構楽しくできた。
食器類の片付けが終わったのもあり、星野さんも帰ることになった。
「今年も楽しい誕生日パーティーでした! 準備から後片付けまでずっと楽しかったです。千弦ちゃんと白石君は楽しいお泊まりの時間を過ごしてね」
「私も楽しかったよ。今年もありがとう、彩葉ちゃん。洋平君とのお泊まりを楽しむね」
「俺も準備から後片付けまで楽しかったよ。千弦とのお泊まりを楽しむよ」
「今年もありがとう、彩葉ちゃん。気をつけて帰ってね」
「はい。では、失礼します。おやすみなさい」
星野さんは可愛らしい笑顔で挨拶をして、家を後にした。
「食器類の片付けも終わったし、みんな帰ったし……お泊まり開始だね」
「そうだな、千弦」
「ラブラブで楽しい時間を過ごしてね。……千弦、白石君、お風呂の準備ができているから、2人が先に入っていいよ。お母さんはその後に入るから」
「分かったよ、お母さん。じゃあ……洋平君が先に入って。お客さんなんだし」
「分かった。じゃあ、お言葉に甘えて」
もしかしたら、千弦と一緒に入るかもしれないと思っていたけど……一人か。俺と一緒にお風呂に入るのは緊張するのかもしれない。俺は千弦と一緒に入るのに興味はあるけど、緊張してしまうだろうし、ドキドキし過ぎてのぼせてしまう可能性もある。今夜は一人で一番風呂をいただこう。
その後、千弦と一緒に、千弦がもらった誕生日プレゼントや、パーティーのために使った千弦の部屋にあるクッションを部屋へ運んだ。
プレゼントやクッションを運び終え、俺はお風呂に入ることに。ボストンバッグから、着替えやタオル、入浴中に必要なものを纏めた袋を取り出した。
「洋平君はうちのお風呂に入るのは初めてだから、浴室の中を簡単に説明するね」
「ありがとう」
その後、荷物を持って、千弦と一緒に浴室まで向かった。
浴室や浴槽はうちと同じくらいの広さだ。ゆったりできそうだ。
千弦に水道やシャワーの使い方を簡単に教えてもらった。
また、ボディーソープやシャンプーを使ってもいいとのこと。ボディーソープは俺の家にあるものと同じブランドで香りが違うだけなので、ここにあるのを使わせてもらおう。
「それじゃ、ごゆっくり」
「ああ」
千弦が洗面所を出て行った後、俺は衣服を全て脱いだ。
タオルやシャンプーなど必要なものを持って浴室の中に入った。俺一人だけど、裸になって恋人の家の浴室に入るのはちょっと緊張する。
普段と同じように、俺は髪、顔、体の順番で洗っていく。洗うのはもちろん、シャワーのお湯も気持ちいいので緊張が解けていく。
シャンプーと洗顔料は俺が持ってきた普段と同じものを使い、ボディーソープはここにあるピーチの香りのものを使う。うちは今、シトラスの香りを使っているため、ピーチの甘い香りを感じながら体を洗うのは新鮮だ。いつもとは違う時間を過ごしているんだなと思えて。
あと、普段、千弦から甘い匂いを感じられる理由の一つは、このボディーソープを使って体を洗っているからなのかなって考えてしまった。
体も洗い終わったので、俺は浴槽に浸かる。
「あぁ、気持ちいい……」
7月も半ばになり、夜になっても暑さを感じる日も出てきた。ただ、温かいお風呂がまだまだ気持ち良く感じられる。
「千弦はいつもこの湯船に浸かっているのか……」
そう考えると、湯船のお湯がより気持ち良く感じられる。あと、千弦がいつも浸かっている湯船に浸かっていることに嬉しくなった。
その後も、千弦の家のお風呂を一人でゆっくりと楽しんだ。