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家の猫  作者: ピタピタ子
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朝目を覚ますと、窓から日差しがさした。するとまたカラスが窓をつついた。エロディーからエサをねだっているのだろうか?そんなことはない。彼女は基本的に野生生物に何かをあげるようなことはしない。だとすると私に用事があるんだろう。私は鳥の言葉など分からないのでまた窓を叩いて追い払った。カラスは空高く飛んで消えていった。私はエロディーのもとに近づいた。彼女にゆっくりキスやスキンシップをして起こした。

「もうこんな時間。」

彼女は急いで準備して、勢いよくドアを閉めた。私は外から聞こえる彼女の足音を聞いた。いつもより急いだ感じだった。

私はキャットフードを食べて、マルセルを叩いて起こした。彼はヴィーガンのことが絡まなければどこにでもいる30代の男性。特に攻撃性はなく、目立ったことはしない。その話題になるとかなりヒートアップして攻撃的になる。マルセルは起きるとすぐに朝ご飯を食べて、ドアを開けた。数人の人が立っていた。彼の知り合いだろうか?

「待ってたよ。」 

彼は仲間と思われる人と出かけた。 

昼頃、エロディーは家に帰って食事をしようとした。

「あれ、マルセル?」

マルセルはとある肉屋で畜産現場の画像を見せて抗議していた。プラカードには動物の虐殺行為はやめろと書いてあった。彼女はそれを見て特になんとも思わなかった。共感も怒りも悲しみも無かった。マルセルがどうしようがエロディーには関係なかった。マルセルはマルセルの人生だから。肉屋の店主や肉派の人と激しくもみ合っていた。人は主義と主義をぶつけ合う生き物だ。同時に違う主張を持つ人とまた違う主張を持った人が共存できる可能性も秘めた生き物でもある。猫の私からすればかなり知性のある生き物だ。知性がありすぎるからこそ残虐な行為に走れるのかもしれない。

「虐殺行為はやめろ!」

「肉は美味しいんだ何が悪い?それなら肉食動物皆悪なんだよな?」

両者の対立は激しくなっていく。声と声がぶつかり合い、まさに不協和音だ。人は正しさと正しさをぶつけ合う生き物でもある。正しさをぶつけるだけじゃ人間社会は成り立たない。時にはお互いの感情を理解することや尊敬した態度で接することだって重要だ。どんなに正論でも相手に伝わらなければ意味がない。正しさの基準は人間ごとで違うから。だからこそ正しさは人を傷つける。でも人間なら他者を尊敬できる可能性の秘めた生き物だ。私はそんな人間が嫌いではないし、どんな猫より人間でいたいと思う。

エロディーは家について何も無かったかのように昼ご飯を食べた。私はネズミのおもちゃを追いかけながら遊んだ。猫らしいふりをした。彼女はまた薬を飲んだ。鏡越しで彼女と目が合う。ずっと見つめ合う。私は鏡に映っているのが自分だと認識できる。自分の姿が人間の姿に変わっているように見えた。彼女はまた出かけた。鍵が施錠される音が聞こえる。エロディーが窓辺に立っていたがすぐに消えた。

次の日、エロディーとマルセルはソファーに座って雑談をした。

「エロディーは動物を救った経験はある?」

「あるよ。自分の優越感を満たすためじゃなくて、助けたいと思ったから助けたわ。カラスを助けたの。」

カラスを助けた話は今まで聞いたことがなかった。

「あれは私が小学生の敵だったわ。家の近くでカラスが怪我をしていたの。それを私は助けたわ。すぐには飛べなかったけど、飛べるまでそのカラスをずっと見守ったわ。」

「そうなんだ。」

「それからそのカラスはよく私の家に来るようになったし、可愛い目で何度も私のことを見ていたわ。あれは今も忘れないわ。」

「素敵な思い出だね。」

「最後は私の見つからない所でいなくなった。もう二度と会うことは出来ないわ。」

私のなりたい人間にも寿命があり、平等に死がやってくる。人間が平等なのは生まれることと死ぬことが約束されていることだ。それ以外は不平等だ。

マルセルとの沈黙の時間が続く。マルセルが近づいても私は寝るだけだった。特に男性は興味がない。

「これをここに置くと風水上良くない!」

「マルセル、何か怪しいものを信じてるわけ?」

「邪気がたまるからだよ。」

「よく分からないけど、根拠のないことで私の行動を制限するのも良い加減にして。自分で考える力がないから何か分かりやすい考えや共通の敵を作ることで何でも知った気になってるんでしょ?違う?」

マルセルはエロディーをビンタした。それを見てとっさにマルセルを引っかいた。

「痛い。」

「今から手当するからじっとしてて。怒ってる場合ではないわ。」

エロディーは応急処置をした。

「ヴィーガンが何も考えないほど馬鹿だとは思わないわ。あんたのやりたいことってヴィーガン食を勉強するんじゃなくて、それ以外の考えの人を無理矢理説得することにしか力入れてないじゃん。だから私は知ったかぶって、自分を正しい立場に立ってるって自惚れたいんでしょ?あんたは動物が好きなんじゃなくて、正義感に支配された自分が好きでしょ。最初からそうだとは思わないけど、今のあんたはそう言う人間よ。肉食派の主張を押し通そうとする人間と変わらないわ。」

エロディーの意見は筋が通ってるものだったが、マルセルには伝わらなかった。

「自惚れてなんていないし、自分のエゴなんかじゃない。全て虐殺される動物達のためだ。」

玄関の監視カメラの履歴をとっさに見た。

「マルセル、この人達とはどんな関係?」

「動物愛護団体の人達だよ。」

「招待もしてないのに家の住所を教えないで。」

彼女はすごい怒っていた。

「何が何でもここの住所は教えちゃ駄目。」

彼女が今まで自宅で特定の人しか呼ばなかったのは隠蔽してる残虐行為を隠すため。彼女は隠すのに必死だった。

「過激なことをするのは一人前なのね。勝手なことしないで。」

マルセルとエロディーはもみ合いの喧嘩になった。彼女は持参してるスタンガンで彼を気絶させた。

「ずっとこの時を待っていたのよ。」

さらにマルセルに数か所スタンガンをあてる。

「やるなら徹底的にやらないとね。」

私はその様子をドアの隙間から見ていた。

「知らないと思うけど、これが本当のわたしなの。」

マルセルは倒れていて何も反応が無かった。

「こうやって気絶してるのはどんな気分、何か答えなよ。」

もちろん意識が無いから答えられるわけがない。彼女はマルセルの手を引っ張って引きずった。地下室にマルセルを連行した。誰も入られないように鍵を閉めた。

「早速はじめるわ。」

彼女は彼の服を全てゴミ箱に全て。それをひたすら踏み潰す。彼を容器に入れてホルマリン漬けにした。

「4体目、完成だね。ありがとう、マルセル。」

グラスに赤ワインをついだ。

「快感ね。」

薄暗い部屋でホルマリン漬けになった人間を見てひたすらワインを飲んでいた。彼女の狂気じみた行動はこれでは終わらない。

地下室を出るとマルセルの私物をまた地下室に集めて、その一部をホルマリン漬けの中に入れた。他の物は粉々にしてゴミ箱に捨てた。何事も無かったかのように、彼女はリビングに戻った。そして手を洗う。そしてコーヒーを飲みながらテレビを見て、私をなでる。

「ムスタシュ。」

私を抱きかかえて、キスをした。私はすごい複雑な気持ちだった。こんなに歪んだ彼女なのに、嫌いになれなかった。好きという気持ちが消えない。禁断な恋をしているようだった。間違ったことをしていても離れたくない気持ちでいっぱいで複雑だった。頭がぐるぐると回るような感覚だった。その夜はとても空気が冷たかった。彼女を見ながら、部屋中をぐるぐると歩いた。

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