発覚
エロディーは銀行に行き、ミシェルの口座にお金を支払いに行った。
「これでミシェルのお母さん、助かるね。」
彼から感謝のメッセージが返ってきた。
「ミシェル。」
エロディーが戻って来ると、どこか悲しそうな表情だった。彼女も本当はこんな恋をしたくないんだろう。彼女を後ろから抱きしめたい。
「ごめん、ちょっと外行って来る。」
あれから、ミシェルは外に移動する回数が増えた。
「病院に行かないとだから今日も夜ご飯一人で食べて。」
またさらに衝撃的な一言で彼女は落ち込む。
「俺、花屋クビになった。」
「何が起きたわけ?相当なことないとクビなんてならないよ。花屋に抗議しよう。こんなの見逃すわけにはいかないわ。」
「良いんだよ。花が好きなだけで、重労働が好きなわけじゃないから。ちょうど違う分野で成長するチャンスなんだよ。退職金もちゃんと貰えるわけだし。」
「本当にそれで良いわけ?私には花屋楽しんでたように見えたけど。」
「もう良いんだよ。あんな所、こっちから願い下げた。」
私は彼女がいない間に壁を引っかきまくった。壁が剥がれるくらい引っかこうとしたがただ傷がつくだけだった。さらに目の前に植物があったのでわざと倒した。土があふれていく。そんなことは私には関係ない。
「戻って来たたわ。」
家中静かだった。
「ミシェルいるの?あ、ムスタシュ。ミシェルまた外出かしら?」
部屋を開けると彼女は驚いた。
「何よこれ!」
彼女は私を勢いよく持ち上げた。
「ムスタシュ。良い加減にして。馬鹿なことするはずじゃないのにどうしてなの?壁の件くらいで私は怒らないけど、植物を倒しちゃ駄目!」
彼女は鋭くにらむ。かなり怒っている様子だった。
「この子もあなたみたいに生きてるの。いじめちゃ駄目よ。」
彼女は倒れた植物を立てて土をもとに戻し、掃き掃除をした。さらに彼女は電話をした。
「もしもし、ミシェル。」
彼は電話に出た。
「ムスタシュの様子が変なの。」
「それで何が起きたの?」
「いつも良い子なのに突然壁を引っかいたり物を倒したりしてるの。それだけならまだ良いけど、私が育ててる植物まで倒したのよ。せっかくの花瓶も割れたし。何かきっとストレスになってるんじゃないかしら?」
「俺に話して何か解決するわけ?病院に連れて行ったら?」
「病院ならこの前連れて行ったの。何も異常なかったわ。」
「ここ最近、キャットフードを変えたとかある?」
「飽きないように色んな食べさせてるし、吐いたりとかもしてないわ。」
「猫が馬鹿なことするなんてよくあることだろ?暴れるって元気な証拠だろ。そんな悲観的になるなよ。」
「そんな簡単なことじゃないの。」
「どうしろと言うんだ?俺は獣医か?もと花屋で適確な判断なんて出来ないだろ。」
「そうだけど。少しは協力してくれても良いんじゃないの?最近、私に冷たいよ。」
「何でそうやって咎めるんだよ。母さんの病気が心配でこっちも仕方ないんだよ。母さんの病気がどうでも良いんだな?」
「そっちこそ、猫のことなんてどうでも良いのね。ムスタシュだって家族なのに。」
電話がきれる。
私はまた病院に連れて行かれたが何も異常はなかった。精神科に行っても何も問題なかった。
最初はダメ男と付き合ったはらいせにエロディーを困らせるつもりだった。そうやって自分に振り向いてもらおうと思った。しかしそれは意味が無かった。逆に彼女を悲しませるような結果になってしまった。駄目押しだった。こんなことはもうしないと思った。
彼は家に返ってくると、またエロディーにお金をせがんだ。
「母さんがこのままだと死んでしまうんだ。」
彼女は何も考えずお金を振り込んだ。彼女はいつの間にか地べたに座るホームレスの男女にお金を渡していた。
「このままいなくなるつもりかしら?」
彼女は部屋に戻って、また違う部屋に行った。また地下の方から少し物音がするようだった。地下の部屋はいったいどこにあるのか?辺りを見回しても見つからなかった。きっと彼女にしか分からない秘密があるのかもしれない。気になって仕方がない。彼女は何も無かったかのように戻った。彼女はベッドで横になる。
「ムスタシュ。」
私は彼女の上に乗る。彼女はゆっくりと私を抱きしめた。
「今度パーティー行こうね。」
気がつくと夜が明けていた。すると彼女は私なしで一人で起きた。すぐに仕事に向かった。
しばらくしてミシェルが入ってきた。そして私を撫でながら声をかける。
「俺さ。もうエロディーを愛せる自信ないんだ。お金があって、良い体してるから付き合ってあげたんだよ。だけどあんなヒステリックなやつだとは思わなかったんだ。こっちは間違ったこと言ってないのに怒ってばかり。近々別れを切り出そうと思う。」
正直腹が立って仕方なかった。
「ムスタシュ。お前はエロディーより素直で良いな。今日は仕事で遅いかもしれないから、夕ご飯俺があげるからな。」
好きな人を悪く言われると自分のことのように辛い。あの男をひっかくつもりだった。だけどそうすれば私の立場は不利になる。私は冷静に物事を考える。仮に人間だっとしても。正当な暴力が存在するのであれば、それは命の危険がある時くらいだ。そうでなければ、暴力は新たな暴力をうむ。感情で全て物事を語れば悲惨な結果が待っているだろう。
パーティーの日になると、ミシェルとエロディーと私でクレアの家に向かった。
「エロディー!待ちくたびれたわ。」
カルラとエロディーはビズをした。
「こっちが私の彼氏、ミシェルよ。」
クレアと彼は握手した。
「こっちが旦那のジョルジュよ。」
ジョルジュとも握手した。
「こっちがムスタシュよ。可愛いでしょ。」
皆、私のことを撫でる。私はエロディー以外無関心なので撫でられても気にしなかった。
「クレア、あんたミモレット好きなの?ちょっとこれ美味しくないから好きじゃないんだよね。」
「そう?旦那が好きだから用意したの。あっ、ゾエ。この白猫がうちの猫よ。」
私はミシェルとエロディーの足元にいた。
「ムスタシュ。新しい友達よ。」
メスの猫には興味ない。同種の女性は好きになれない。人間の女性でもエロディー以上の存在はいない。
「ゾエはムスタシュに興味津々ね。」
白い猫のメスは私に急接近して好意むき出しだった。私は興味がないので無視をした。
「この子シャイだから、打ち解けるのには時間かかるわ。」
シャイではなく、ただただ興味がない。ミシェルはクレアに声をかける。
「エロディーとはどこで知り合ったの?」
イタリアの赤ワインキャンティ・クラシコを飲みながら話した。
「彼女はスーパーでよく来てくれるお客さんなの。とても親切よ。趣味が合うからすぐに打ち解けたわ。」
ミシェルの足はクレアにぶつかっていた。何も言わずそのままの状態が続く。彼の視線は足からお腹まで上がっていく。ジロジロ見ている様子だった。確かにクレアも綺麗な女性だ。しまった。よそ見をする所だった。私にはエロディーという大切な女性がいる。
「俺も花屋で彼女と知り合ったんだよ。とても親切なお客さんで、次第に彼女に惹かれていったんだよね。それにしてもクレアさんみたいな女性を持てて、旦那さんは幸せだね。」
「そうよ。誰よりも私のことが好きなんだから。こんな男性中々いないよね。」
「もしそれ以上の男性が現れたとしたら?」
「今なんて?」
「冗談だよ。真剣に真に受けないで。」
エロディーが笑顔で二人のもとに来た。
「このワイン美味しそう。どこの?」
「イタリアのトスカーナ州よ。」
「ボトルの形はボルドーだけど、味はそんな悪くないわ。ボルドーワインそんなに好きじゃないのよ。何だかトイレ行きたくなったわ。」
またエロディーは席を外す。ミシェルはクレアの手のひらにメモを渡した。何か密会でも開くつもりなのだろうか?
パーティーが終わり、そのまま皆で帰宅した。
「クレア、すごい良い人よね。すぐに打ち解けて良かったわ。」
彼女はミシェルのしようとしていたことを知らない。でも同時に安心した。またエロディーを独り占め出来るから。
彼女はスーパーに行った。その日はクレアはお休みだった。店内を歩いてると彼女が以前会った高齢女性がいた。女性はエロディーに気がつくと声をかけた。
「あんた、よくここに来るのね!」
「まだ会って2回目ですけどね。」
「そうかい?」
「そうですよ。それで息子さんに会えたんですか?」
「記憶にないな。」
「あの、息子さんには会えましたか?」
「まだよ。」
「それは聞いてすみません。どんな息子さんなんですか?」
「ろくな息子じゃないわ。」
彼女はスマートフォンを出して、写真を見せた。
「これって…」
彼女は写真を見て驚いた。彼女は衝撃的な写真を目の当たりにした。