詞煙・弍
会社の屋上。
手すりによりかかって、ずっと思考を巡らせている。
眉間の皺が自然と深くなり、耐えきれずに吐き出す。
「はぁ〜〜」
「大きなため息だな」
「あ、すみません」
階下へ続く扉を開けてやってきたのは、先輩。
いつぞや話をしてから、時々屋上で会うようになった。
「何かあったのかい?」
「同僚ともめたんですよ」
「ほう?」
「聞きます?」
「聞いてもいいならいくつか聞きたい」
「? なんです?」
うつ伏せ気味の自分とは対照的に、先輩は肘をかけて天を仰ぐ。
「相手に落ち度は?」
「ありました」
「逆に君には?」
「あったと思います」
「じゃあ、謝った?」
「いえ」
「なぜ?」
「言葉だけで謝ったところで、意味はないじゃないですか。相手が理解してくれないと」
「そうだね。でも、謝っていることを相手が理解してくれれば、ちゃんと効果はあるよ。大小さまざまだけど」
一息、先輩が吐いた。
「思考は煙だ。だからいくら脳内で言葉にしてても、こうやって誰に見えるでもなく吐き出せる。逆に、他人には何も見えないし伝わらないから、自分以外には効果がない。相手に自分の思考を伝えるには、行動か言動か、伝わる方法を選ばなきゃならない。逆に言えば選べる。ここから先は君がどうしたいかだけだ。せいぜい頑張るんだな」
肘で振りをつけて体を起こし、扉の方へと消えていく。
言われたことを反芻して、一息吐いたあと。
同僚のもとへ足を運んだ。