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幸せな失業
時は218X年
水樹咲為
「ただいま……美和湖、実は話があるんだ」
水樹美和湖
「いきなりね、どうしたの?」
水樹咲為
「十数年前に火災完全防止機器の取り付けが義務化されたろ」
水樹美和湖
「えぇ、そうね」
水樹咲為
「義務化されたとはいえ、念の為として仕事があったわけだけど、遂にこの五年、火災発生件数が0件だったから、今日、解雇となったんだ」
水樹美和湖
「失業のわりに嬉しそうね」
水樹咲為
「だって、そうだろ。この世から火事がなくなったんだぜ」
水樹美和湖
「fire(火)がなくなったからfire(解雇)ってわけね」
水樹咲為
「ホント、非(火)の打ちどころのない世の中になったもんだ」




