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百人一首
藤原顕定
「どれが一番か、悩ましいな。取り敢えず、この《天の原 ふりかけ見れば 春日なる 三笠の山に いでし月かも》は押さえどころだな」
河原行平
「は、はぁ……」
藤原顕定
「そして、《すみの江の 岸に寄る波 よるさへや 夢の通ひ路 人めよくらむ》や《あけぬれば 暮 るるものとは しりながら なほうらめしき 朝ぼらけかな》も捨てがたい」
河原行平
「あのぅ……」
藤原顕定
「でもやっぱ、《瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に あはれとぞ思ふ》だな」
河原行平
「生首たちに変なあだ名つけないでもらえます?」
藤原顕定
「バカいえ、同じ一首だろ」




