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沙羅双樹
ピンポーン
生駒里美
「はい。あ、京野さん。すみません、昨夜のピアノの音うるさかったですよね。娘にはよく言って聞かせますから」
京野都子
「いいぇ、お嬢さんのハイカラなメロディ。毎晩楽しましてもろてます。今日はそのお礼に来たんです」
生駒里美
「お礼? まぁ、綺麗な花」
京野都子
「沙羅双樹っていいます。この時期に白い花咲かすんですけど、日本じゃ中々見る機会がありませんから」
生駒里美
「こんな大層なの、申し訳ないわ」
京野都子
「何いうとるんです。心ばかりのウチの気持ちです。受け取ってくれな、こっちの気持ちが収まらんのです」
生駒里美
「そうですか……では、お言葉に甘えて」
ー六時間後ー
ポロン ポロン ポロン
生駒美希
「ママぁ、おなか空いた。ママぁ、ママ? ママっ」
ポロン
京野都子
「さすが一日花。効き目バツグンですなぁ……今夜からは静かになりそうやわ」




