時販機
時は金なりとはよくいったもんだ。
いつものようにタバコ屋にタバコを買いにきたら、それがあった。
「時販機? 何だそれ」
「そのまんまだよ。それで時が買えるんだ」
ばぁさんはハイライトを俺に手渡しながらいった。
「時を買う? どういう意味だ」
「どんな天才でも、無駄な時間ってのは生まれる。それをやり直すための時を買えるんだ。まぁ、やり直すのは直前の時間だけだが」
なるほど、悪くない商売だ。
「いくらだ」
「5分で5万」
「5万? えらく高いな」
「そりゃ、そうさ。時が買えるんだ。そんなの世界中どこ探してもない。コイツはこれから高騰していく、買うなら今だよ」
ばぁさんの言うとおりだ。俺はハイライトを手に取り、財布を開けた。10万……泡姫に消えるより、よっぽどいい使い道だ。丁度、10分前女に振られたばかりだ。これで何とかしてやる。
俺はすぐに1万たちを時販機に入れようとした。が
「おい、ばぁさん。札が入らないぞ、どうなってやがる」
「そりゃ、そうだ。ソイツは壊れてるんだ」
「は? それなら時間買えねぇじゃねぇか」
「もとより買えんさ。そんな自販機あるわけないだろ。お前も案外、素直だな」
「ババァ、てめぇ。時間返せっ」
「はい、5万」




