288/944
水とミルク
社会科教師
「いいか、このコップに水がある。これを海だとしよう。透明でとても澄んでるね。これは人類もとい文明が生まれる前の海だ。そこから経験を積み、人類は社会を良くしていった。ただ、その代償に汚染物質を垂れ流している。汚染物質、ミルクを注ぐ。はじめはほんの少しの量。微量のミルクが入っても、海は綺麗なままだ。だが、次第に量が多くなってゆく。最初は汚れていく海に躊躇するが、楽で豊かな暮らしに麻痺し、そんな気持ちもどっかにいってしまう。海はこのように不透明になっていく一方だ。どっか遠くの話。君たちはそう思うかもしれない。ただ、君たちも一端を担ってるんだ。ポイ捨てやそれこそ文字通りの垂れ流し。自覚があるだろう。でも、誰一人手を止めることはない。心のどこかでしこりがあり、自分の悪行を見えているのに構わず汚染してゆく。それはなぜか。見えているが見るとバツが悪いから、それを見ないようにするからだ」
社会科教師
「要は見ずと見る苦、だ」




