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見る建物
安堂忠子
「ときは12世紀後半、その時代に花開いたフランスを発祥とするあれ。最も初期はパリ近くのサン=ドニ(聖ドニ)大修道院教会堂の一部に現存。イギリス、北部および中部イタリア、ドイツのライン川流域、ポーランドのバルト海沿岸およびヴィスワ川などの大河川流域にわたる広範囲に伝播した。その伝統は生き続け18世紀になると、主として構造力学的観点から、合理的な構造であるとする再評価が始まった。18世紀から19世紀の際には、ゲーテ、フランソワ=ルネ・ド・シャトーブリアン、フリードリヒ・シュレーゲルらによって、内部空間はヨーロッパの黒い森のイメージに例えられて賞賛され、当時のドイツ、フランス、イギリスでそれぞれが自らの民族的様式とする主張が挙がるなどーー」
紀村覚
「ちょっと、いきなり何の話?」
安堂忠子
「見てわかんない?」
紀村覚
「え?」
安堂忠子
「ゴシック建築よ」




