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恋で焦がれて
白間ちず
「七十年以上も前のことです。私には想いを寄せる者がおりました。名前は田所一平さん。当時ともに十七歳。豆腐屋の彼は毎朝ウチに豆腐を納めていました。綺麗な五厘刈りに昔では珍しく高身長で目も大きい。私も若かった者ですから、ひとめぼれでした。まさに恋で揺れていました。そんな日々が続く中、私は意を決して彼に想いを告げました。すると、彼は明るく微笑み、《明日、公園で待ってて欲しい》と一言。私が住んでいた近くに公園は一つしかありません。ブランコだけが取り柄の空き地です。私は彼の言うとおり、公園で待ちました。しかし、待てど暮らせど彼はやってきませんでした。騙された。私は遊ばれていたんだと思いました。けれど、それは大間違いでした。それを知ったのは随分経ってから……」
白間ちず
「昨日は終戦記念日。彼らを想い、黙祷捧げました。場所はそうあの公園があった場所。紆余曲折あり、奇跡的に今も公園として残っています。昔と違って色んな遊具がありますが、もちろん私はブランコに乗って。今も昔も漕い(恋)で揺れています」
白間ちず
「まさに、鞦韆記念日」




