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16. 公爵令嬢は護衛騎士を味方にする

投稿しようとしたら寝てました…



カラカラカラカラ


エリナは馬車の窓を開けて馬に乗るハロルドを呼んだ。


「エリナ様。どうされました?」


「次の別れ道、左ではなく右に行けないかしら?」


「行き先は左ですが…何かございますか?」


「私は王家の別荘には行かないわ」


発言そのものと、普段と違い毅然としたエリナの態度に、ハロルドは心の底から驚いた。


「エリナ様、不穏な動きでお気持ちを不安にさせてしまって申し訳ございません。しかし、王家の別荘の安全は私が保障いたします」


「安全面は関係ないの。私は隣国に行って確認しなければならないことがあるの」


「はい?!隣国?!」


「学園と王妃教育を正当な理由で休める今しか機会がないの。あなたの協力がある方がいいのは確か。でも協力してくれないなら、勝手に行くだけよ」


「そんな、行かせられません…!」


「あなたは私のお風呂やトイレまでついて来れないでしょ。どんな手を使ってもあなたの目をすり抜けて行くわ」


王宮内のスパイを懸念し、最小限の人数でこっそりと移動したのが仇となった。

ロイドと王妃は、エリナが反抗するなど全く想定していなかったのだ。


ハロルドは唸った。

「なぜそこまでして隣国に行かれたいのですか?」


エリナは真っ直ぐにハロルドを見た。

「私はなぜデヴィッド・チェンバレン様が私を裏切ったのか、なぜ私ではダメだったのか、それを知らないと、私はどこか自分に自信がないままもがき苦しむことになる」


ハロルドは思わず目を逸らした。

『全てロイド様の計画だったとお知りになったら、エリナ様はどう思われるのか…』


「ハロルド様。私はあの婚約破棄を乗り越えて、自信を取り戻して、しっかりと決意を持ってロイド様のお側にいたいのです」


ハロルドは気まずそうにエリナを見た。

エリナの目は澄んでいて、これまでのエリナには絶対に見られなかった強い意志が見られた。


『ロイド様、これはあなたの責任です。今回に限っては、俺はエリナ様の味方をします…』

ハロルドは心のなかで主人に謝った。


「わかりました。ご協力しましょう」


パッとエリナの顔が輝いた。

「ありがとう!ハロルド!」


「しかし問題はタイミングです…」


別荘は常に管理人によって清潔に保たれているため、連絡もしていなかった。

その連絡によって、チェンバレンやエドモンドにエリナの居場所を知られる可能性もある。


別荘に着いてから、無事である旨をフクロウを飛ばしてロイドに伝えることになっていた。


主人の命令にできる限り背きたくないハロルドには、道中でフクロウを飛ばしてロイドを欺くということは選択肢になかった。

あくまでも、別荘から無事である旨を送りたかった。


ハロルドができるのは、別荘への「寄り道」として隣国に寄ることだった。


フクロウの到着の誤差は最大で24時間。

フクロウが着かなければ、ロイドが動いてしまう。

つまり、隣国から別荘まで24時間で到着しなければならない。


「デヴィッド・チェンバレン殿はどちらにお住まいで?」

「デヴィッド様は彼と恋人との頭文字を取ってD&D商会というものを隣国の王都東地区に立ち上げているらしいわ。そちらに住居も構えていると聞いているわ」


王都東地区から別荘は、馬をかえて馬車を走らせ続ければ、何とか20時間で到着できるか、という距離だった。

「やってみましょう…」


ハロルドは注意深くエリナを見た。

「デヴィッド様と今のチェンバレン侯爵の動きは無関係だと俺は思っています。しかしチェンバレン侯爵家出身であることは確かです。デヴィッド様とお会いしたとき、その点を十分に注意していただけますか?」


エリナは目を見開いた。

「なぜあなたはデヴィッド様とチェンバレン侯爵の動きが無関係だとわかるの?」


ハロルドはハッとして目を逸らした。

「あ…いや…その、勘です」


エリナは訝しげにハロルドを見る。

「勘ねぇ。まぁあなたがそう言うならそういうことにしておきましょう。無関係であっても何か情報をもらえるかもしれないし」


こうして、エリナたちは隣国へ向かった。


*******


ロイドはストッケル公爵と向かい合っていた。


「エリナとデヴィッド・チェンバレンとの婚約だが、ストッケル公爵はなぜ彼を選んだのか聞かせてもらえないだろうか」


ストッケル公爵はデヴィッド・チェンバレンと聞いて顔を紅潮させた。

怒りはまだ冷めていなかった。


「あんな婚約… 私が間違っていたのです。しかし当時私は、何組かの貴族と話し、皆がエリナに全く興味がないことが不安でたまらなかったのです。


政略結婚なので、公爵家の内実を知ることが彼らにとってより重要であることは、私も貴族であるのでわかっているつもりです。


それでも、あまりにもエリナに興味がなかったので、私が病気などで体調を崩すと、エリナが蔑ろにされるのではないかと不安に思ったのです」


「なるほど」


「そんななか、チェンバレン侯爵家だけが、エリナの趣味やエリナがどんな生活を好んでいるのか、エリナはどれほど聡明なのか、そういうことを知りたがったんです」


「チェンバレン侯爵家がエリナを…」

ロイドは顎に手をあてて眉を寄せた。


「チェンバレン侯爵家は、デヴィッド殿の妹にあたるクリスティーナ嬢をロイド殿下の妃にと画策していたこともあり、エリナが公爵家に残ることに利点を見い出していたはずです。それもあり、公爵家の財産や事業等にそれほど野心的な興味がなさそうだった点も、私にとっては好印象でした」


「それが、デヴィッドが出奔し、エリナが僕の婚約者に収まった。面白くないのは間違いない」

ロイドが考えながら呟く。


「しかし、面白くないから、疎ましいから、と毒を盛ることを考えるだろうか?うん、考えるかもしれない。しかし実際に毒を探させるほどの実行力を発揮するとなると、よっぽどの動機があるはずだ… なぜチェンバレンはそこまで王太子妃、王妃にこだわるのだろう…?」


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