1. 追いつめられた公爵令嬢
11話まで無計画に書きたいことを書いています。
12話から「そろそろちゃんと仕上げていこう」と内容やハッピーエンドに持っていく方法なんかを考えて書いています。
初投稿なのでやや散文的になりがちですし、ストーリーのツメも甘いところがあると思いますが、読んで下さった方のお時間が無駄にならないように力の及ぶ限り努力します!
エリナ・ストッケル公爵令嬢は、クラスメイトに囲まれて窓際に追い詰められていた。
背景を説明しよう。
エリナはストッケル公爵の一人娘で、優秀な侯爵家次男と彼が婿入りする形で婚約していた。
しかし、彼は先日このセント・ポール学院を卒業したあと、平民の恋人と駆け落ちしてしまった。
卒業式のすぐあと駆け落ちし、そのまま隣国へ旅立った。
さてエリナだが、16歳にして婚約者がいないという状況になった。
本来であれば「傷物令嬢」となるところだが、エリナの夫となる人は将来公爵になる。
そしてエリナは、シルバーブロンドのさらさらの髪にブルーの瞳の整った顔立ちで、美人である。
いきなりの優良物件の登場に、若手男子たちは色めきたった。
一方エリナは、次の婚約者を考える気にもなれず、夜会は全てキャンセル、送られてきた全ての釣書には「今は検討できない」との返事を送っていた。
エリナは一方的に婚約破棄されたことに傷ついていた。
彼のことを恋焦がれていたわけではないが、そこそこ仲良くやっているつもりだったのだ。
たしかに事務的な態度ではあったが、まさか恋人がいたなんて。
父である公爵は、卒業式のあとから新学期までは領地に引きこもることを許してくれた。
しかし、新学期には学園に出てこなければならない。
それが今日だ。
馬車から降りたエリナは、教室に着くまで次々と男子に話しかけられた。
なかには婚約者のいる者もおり、女子は眉をひそめた。
彼女たちからすると、エリナは貴族社会を引っ掻きまわす邪魔者に他ならない。
エリナはまだ失恋の余韻に浸っていたかったが、周り(とくに女子)はそれを許さないらしい。
「エリナ様、曖昧な態度でおモテになる状況を楽しむのはほどほどにして、次の婚約者をお探しになるべきですわ。」
男子に囲まれているエリナにそう提言したのは、取り巻きの女子を引き連れたタマラ・マクイーン侯爵令嬢だ。
タマラの気持ちもわかる。
タマラの婚約者である伯爵家長男が、まさにエリナに話しかけようとしていたからだ。
弟が二人いる彼は、伯爵家をどちらかに譲って公爵家に婿に来ることもできた。
伯爵家長男はタマラに睨まれ、気まずそうにエリナから離れた。
「タマラ様、そのつもりでございます。ただ、私も一方的に婚約破棄されたことに傷ついておりまして、なかなか一歩を踏み出せずにおります。」
「そうおっしゃいますが、エリナ様が決断を引き伸ばせば伸ばすほど、貴族社会は混乱に陥りますわ。」
「そうだ、今お決めになればいいのよ!」
「エリナ様だって、憧れの殿方の一人や二人おりますでしょう?」
「まぁ、エリナ様の憧れの方ですって?!どなたなのかしら!」
タマラとその取り巻き達がはやし立てる。
男子たちは、エリナの視界に入っておいて名前を言ってもらおうとエリナに近づく。
こうして、エリナは窓際に追い詰められていった。
ここで曖昧なことを言うと、タマラ達はさもエリナが悪者であるかのように議論を展開するだろう。
エリナは気弱で、ここで毅然として自分の意見を押し通せる自信がなかった。
まぁ、そんなわけだから優秀な侯爵家次男をあてがわれていたわけだが…
かといって、適当な男子の名前を言うわけにもいかない。
そんな窮地に陥ったエリナの目に飛び込んできたのは、中庭のベンチで本を読むキラキラの金髪だった。