第八話 ヒュドラ討伐:前編 「霧」
僕らは痛む体を休める暇なく
都を動けないガーランドさんの代わりにトクの村のヒュドラ討伐へと足を進めていた
「後少しで村だね」
「確かに異様な雰囲気だ・・・霧に満ちている」
森を進につれ
白く濁ったような霧が辺りに包まれていった
数十メートル先の視界を確保するのが困難なくらいだった
その時だった
目の前の道から小学生くらいの男の子が走ってきていた
その背中には、彼より一回り小さい女の子を背負っていた
「誰かいる?」
「人?冒険者か?・・・お願いです・・・・助けてくれ!」
少年は僕達の姿を見るなりすぐに必死の形相で助けを求めてきた
体にはあちこちぶつけたようた打撲の後や擦り傷が見えた
いきなりのことで分からなず返答に困っていたが
その答えはすぐに分かった
彼等の背後には巨大なトカゲの頭の様なものが霧の中から数十頭迫ってきたのだった
見えるのは長い首と頭部だけで体までは分からないが
その容姿は神話や漫画に出てくるようなドラゴンとよく似た頭部を持っていた
魔族という存在をちゃんと確認したことはないし
こっちの世界に日がたって浅いけど
魔族だろう・・・多分
「あれは・・・魔族か?」
「助けた方がいい」
「相変わらず結は即決だな、俺も同じだけど」
理由は分からないが、この二人は今魔族に襲われて逃げていらしい
相手が誰だろうと、子供を追いかけて怪我を負わせるような動物は危険な動物に変わりはない
「そこの君達、僕達の後ろに隠れて」
「わりぃ!」
少年が飛び込むように、僕らの後ろにいく
僕らは、武器を取り出し
シャルロットさんから買って貰った持久戦用の防具を身に着ける
魔族に向かって走っていき戦闘を始める
ユウさんは弓矢の弦に矢をかけをしならせ伸ばし射撃体勢をとる
「俺が怯ませる、殺れ」
ユウの弓から矢が放たれた
放たれた矢はトカゲ頭の魔族の目に刺さり、矢を刺された魔族は苦しそうに黒板をひっかいたような音を鳴らしながら鳴き叫ぶ
ユウさんは続いて連続で矢射出し、二体三体とトカゲ頭の魔族の目や顔に矢を刺していく
魔族達が怯んだそこへ、僕とゆきむら君が奴らの懐へ入り込み―
「ごめんね・・・」
「焔!」「はぁ!」
その首を切り飛ばしていく
紫色の体液が辺りに飛び散る
魔力を運動エネルギーに変換した防具から魔力の粒子が排出される
一体、二体と
連続でトカゲ頭の魔族の首を刎ねていく
そして、飛び散った体液は酸性の毒液だった
溶けてこそいないものの毒液の飛び散った木々や服の一部が湯気を上げていた
首を刎ねた刀と槍からもシュウっと蒸気が立っていた
細かい魔法のコントロールが必要だけど、肌が露出してる部分に防御魔法をかけるしかない
僕は魔言を詠唱し、肌の露出部分にピンポイントで防御魔法をかける
毒液の飛沫が顔に飛んでくるが、半透明な魔力の壁に阻まれ霧散する
「肌にかからないように気をつけろ!」
「顔だけ防御魔法をかけるのか!」
「難易度高いね」
右からくる個体を切り
左からくる奴をジャンプで回避し切る
後ろから迫りくる敵をゆきむら君が切り飛ばし
切り落としたたトカゲ頭の頭部を蹴って別のトカゲ頭へとぶつける
ぶつけられ怯んだところに、ユウさんの放った矢が脳天を突き刺し無力化する
僕に向かい正面から上下に分かれて攻撃するトカゲ頭
下のトカゲ頭を踏みつけ抑えながら
上から大口を開け噛みつこうとするトカゲ頭
口に差し込むように刀を差し込む、刀を口で受けたトカゲ頭は口と同じ方向に横に裂けて倒れる
刀を回転させるように下へ向け
足で押さえていたトカゲ頭へと刀を突き立てる
毒液の飛沫がブシャっと辺りに広がる
その後を手当たり次第に倒していく
10体くらいは葬ったとこで僕達気づく
倒しても倒してもすぐ次が湧いてくるのだ
霧で良く分からないが、数の力で攻められては僕達の方がもたない
今はまだ僕達が有利だけど
いずれ体力面でも精神面でもこちらが損耗していく
現に、ユウさんの矢がつきかけている
今は倒した敵から回収してなんとかなっているが、折れてしまえば使えない
酸のせいか僕の刀とゆきむら君の槍の切れ味が悪くなっていく感じもした
「数が多すぎる」
倒しても倒しても湧いてくる
気づけば僕らは僕達を中心に円を描くように前後左右に包囲されていた
「こっちだ」
「誰だ?」
そんな時、どこからか声が聞こえた
それは特定のある方向からではなく
コンサートホールのように声が反響しあい
前後左右360度全方向から呼びかけられてるようだった
「死にたくなけばスネコスリについて来るが良い」
言葉はそこで途切れた
声のん主はスネコスリについて来いって
言ったけど
人なのかもの名前なのかそれがどんなものかもわからないのにいきなりついて来いって言われても・・・
僕ら全員困惑の中
僕の足元でキュキュって言う小動物のような生き物っぽい声がした
「君が道案内してくれるの?」
下を見ると、そこには薄茶色の体長10㎝ほどのハムスターのようなものがいた
その小動物は、僕の足元で体を擦り付けていた
もしかしてこの可愛い生き物が声の主が言ってたスネコスリなる者?かもしれない
体を折り曲げてこっちについて来いって言われてるような動作をしていた
なんか可愛いし、信じられる気がした
「迷ってる暇は無さそう・・・だね」
僕はその小動物に従い敵の包囲を突破して向かう
「おい、八尋・・・誰と話してるんだ?」
「結の言う事なら俺は信じるぜ、行こうぜユウ」
「マジかよ・・・」
僕に後ろ皆もついていく
どうやらそのスネコスリと仮定するハムスターは僕にしか見えていない様だった
否・・・ハムスターじゃなくて、妖怪かも?
スネコスリについていってしばらくして
トカゲ頭の敵を追跡をかわした僕らは目的であるトクの村へとやってきた
これもスネコスリが敵が来ない濃霧でも歩ける安全なルートを案内してくれたおかげだった
濃霧の中、例え敵を突破しても霧の中で迷子になる可能性もあったからありがたい
目の前から、数人の男女が駆け足で寄ってきた
戦闘のご老人が助けた少年と少女をみて驚く
「おお、生きておったかグレス!レラ!」
「黙って山を降りおって」
「心配かけてなごめんなさい村長」
少女はご老人に一言謝る
少年はグレスという名前で少女レラという名前らしい
「このお三方は?」
村長と呼ばれたご老人は僕達を存在に気づいて問いかけてきた
グレスさんが説明してくれた
「危ない所だったけど、俺たちを助けてくれたんだ」
「なんと、助けてくださりありがとうございますお茶とお菓子を持ってきましょう」
「山神様にも話を通しておかなくては」
僕達のことをグレスさんの恩人だと分かった村長さんはそそくさとその場を後にする
その後僕達は、グレスさん兄妹と一緒に村の人達に案内され
村の集会所で休憩をとっていた
「グレス、まったく山を降りるなど無茶だと言ったはずだぞ」
「レラも体調がよくないわね、すぐ薬草汁を飲みなさい」
今は、グレスさん達が無事の知らせを受け駆け付けたグレスさんの両親に叱咤と小言を言われてた
「わりぃ・・・でもレラに元気なってほしくて」
「おとーさんグレスお兄ちゃんは私のために・・・だから」
「分かってるさ・・・グレスもレラも俺達の大事な家族だ」
「子供たちが無事なことに神に感謝します」
グレスさんのお父さんは二人を抱き寄せて無事だったことを目をつむり感じ
神さまに感謝の言葉を述べる
グレスさん達は仲が良い家族がお互い大事な存在だと思ってるって
素直に思えた
「そうだお礼がまだだな、ありがとう・・・俺はグレスこっちは妹のレラだ」
しばらくしてグレスさんたちは僕達に向き合い
感謝の言葉と改めて自己紹介をする
「僕達は・・・たいしたことはしてないよ」
「でもグレスさん達はなんであんなとこに?」
僕は、最初から抱いていた疑問をぶつける
どうしてグレスさん達は、あの濃霧の森の中いて魔族に襲われいたのか
「ああそれは、妹の病気を治して貰いたくて山を降りて王都の教会まで向かっていたんだ」
「私・・・あの怪物に噛まれた時からお熱が止まらないの」
そうだったのか、レラちゃんは恐らくヒュドラに噛まれたことが原因の病気で
グレスさんはそんな妹の病気を治す為に危険な山道を降りていたのか
「確かに山奥じゃお薬は作れないですもんね」
「薬草汁を飲めば一時的には良くなるんだけどねぇ」
「この村の畑で栽培してる草なんだけど昔から煎じて飲むと体が良くなるんだ、皆この薬草にはお世話になったさ」
「近くに医術大国カルテでもあれば違うんだけどな」
「それに・・・俺たちはあいつのせいでこの村から出られないんだ」
グレスさんは憎らしげな顔で呟く
あいつとか怪物ってのはやはりトクの村に居座る魔族のヒュドラだろう
まだ何故この村から出られないのかわからないが
トクの村の人達が安心できるにはヒュドラを倒すしかないだろう
「お三方、お待たせいたしまたお茶をお持ちしました・・・さぞお疲れになったでしょう」
そこへ、先ほどの村長さんが入ってきた
手にはお茶とお菓子がおぼんに乗せられて僕達に振舞われる
「実はこの村の守り神である山神様にあって欲しいのです」
そして、山神様に会ってほしいと頼まれた