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第七話 「僕らの足掻き」

今回のお話は「婚約破棄され追放されたので悪魔と契約して世界の覇権国家を目指します」のオーブ王国攻略戦:雨と雷とリンクしてます


作成した順番はこっちが先で、婚約破棄され追放されたので悪魔と契約して世界の覇権国家を目指しますが後です

この日は僕達全員集まっていた

シャルロットさんが復学する時、僕達が護衛するときの打ち合わせだ

そこにシャルロットさんのお父さんガーランドさんはいない

この日、前々から噂されてたトクの村の魔族を軍隊を率いて討伐に向かったからである

割と王都から近隣の村とはいえ、高い山々に囲まれたこの国では戻ってくるのに一日以上はかかる

その時だった扉が勢いよく開かれ一人の兵士が入ってきた

汗だくでかなり焦ってる姿だ

兵士は、衝撃の言葉を言った

「大変です!・・・リンドブルムがっ・・・攻めてきました!」


兵士をいったん落ち着かせて水を飲ませ、話を詳しく聞く

兵士の数は380人、これは騎士団三つ相当にあたる

その内の100あまりが魔族で構成された軍団だ

通常、国や砦を攻め落とすのに必要な人数はその国の兵士の3倍以上の数が必要と言われる

それに対し、こちらの王都守備隊の兵士の数は100僅か

ギリギリ守れるかどうかってところだ

急ぎ周辺の村からかき集めても僅か110程度の数しかしない

その戦力差は倍以上

本来ならば、平時でも150人

国中の領地からかき集めれば300人はいるが・・・

現在、国王ガーランド・ウィステリアがトクの村の怪物の討伐のため

戦力の大半が王都を留守にしている


後120分もすればリンドブルムの軍隊が山を超えてくる

オーブ王国は国の特性状、王都の周辺に外敵の侵入を防ぐ砦の類の数は少ない

肥沃な山々や山から流れる河川が外敵の侵入を防ぐ砦の役割をしていたからだ

そのため国境沿いには最低限の見張り台と駐屯兵かいない

それでも、軍隊のような大人数で動くばすぐ見つかり駐屯兵が連絡する

では、どうやって彼らが見つからずこれだけの軍隊を移動させたのか


彼らは、擬態していたのだ

主に商人の団体へと、貨物の中に紛れ込んでいた

20人ほどの人数なら大規模な行商団と思われても不思議じゃない

オーブ王国は海面にも面して小さな港あるので、船の中にも多数の軍隊を隠しておけるだろう

情報ではリンドブルムの計略に嵌った港街では抵抗する間もなく制圧されてしまったと聞く

「まずいことになったわね・・・」

「まさか、商人のフリして分散したのち合流するなんてな」

「大半の官僚貴族はこの事態に及び腰だし」

シャルロットさんとウィルバートさんが

部屋にどんよりとした重苦しさがズシリと乗せられた気分だ

ウィルバートさんが何かを決意したかのように口を開く

「シャル、お前らは逃げろ・・・数人なら気づかれずに逃げ出せる」

あの顔は・・・

あの人自分が犠牲になるつもりだ

「ウィル、何・・・言ってるの・・・」

ウィルバートさんの言葉にシャルロットさんは目を見開いて驚く

そんなこと微塵も考えていなかったって顔だ

「俺達の騎士団が時間を稼ぐ」

ウィルバートさんはシャルロットさんの肩を掴んで顔を見つめる

「冗談じゃない・・・許可できない!死にに行くようなものだわ!」

シャルロットさんはウィルバートさんの手を振り払い

激昂した様子でウィルバートさんに顔をつめよる

どちらの気持ちも分からなくはない

一緒に生まれ育った彼女に生きて欲しいウィルバートさんと

一緒に生まれ育った彼が死んで自分だけ生きることが嫌なシャルロットさん

どちらが正しいとも言えないし間違ってるとも言えない

「それに私達だけ逃げたってどうするの!?国民は?酒場のマスターは?道具屋のおじさんは?昔二人で行った果物屋のご両親は!?」

「・・・じゃあ他にこの国が存続する何か良い方法があるってのかよ!」

「ウィルの馬鹿!分からずや・・・!」

「お前こそさっさと逃げろ!俺はお前を守るために・・・」

二人の言い合いが苛烈になっていく

そろそろ止めないと二人の絆にまずいことが起こるんじゃないかと思って

僕が動き出すその前に

「まあまあ二人とも熱くならないで」

セーラさんが二人の仲裁に入った

シャルロットさんのお母さんなら、二人の事を良く知ってるし最適だ

「ここでシャルとウィル君が揉めても仕方ないじゃない、お菓子でも食べて落ち着きましょう」

セーラさんは、ポッドから緑茶をティーカップに注いで二人に渡し

ついでに甘いお菓子を二人に食べるよう勧める

「う・・・セーラさん」

「・・・お母様、ごめんさない」

セーラさんに言われて、我にかえり正気な二人は席について

お茶を一気に飲み干す

「・・・」

数秒の沈黙の間

「ごめん、軽々しく言って」

「私こそ・・・ウィルの気持ち考えてなかった」

どうやらセーラさんの目論み通りだったらしい

二人はすっかり熱が冷め、今は冷静に物事を考えている

セーラさんも二人の様子を見て満足気に笑顔を向けていた

僕も、ああいう風にお母さんに兄弟喧嘩をなだめてもらったけ

それにしても・・・

もし戦いになったら、絶対に人が死んで

家族が死んだときのことがフラッシュバックする

「・・・戦争って・・・相手は同じ人間ですよね」

僕は、ふと思たことを口に出してしてしまった

空気読めてなかっただろうか

「魔族の脅威があるのに、同じ人間で戦ってる場合か」

僕の言葉に続いて

ユウさんも思ったことを口にしていた

そうだよね

目の前に魔族という存在があるのに

人同士で戦うなんて

「お前らには悪いと思うが・・・この地方はそういうとこなんだよ特にリンドブルムって国は」

「人間・・・」

ふと人間と呟いたシャルロットさんは何かを思いついたかのように顔をハッとさせた

「そうよ、相手が人間なら交渉よ・・・」

「・・・まずなんとかして、あいつらを交渉のテーブルにつかせましょう」

「白旗を掲げても降伏するフリでもとにかく何でもいいから時間を稼いで」

シャルロットさんは相手に交渉してこの国を諦めてもらうか時間稼ぎをしようと提案した

でもそんなことが可能なのだろうか?

「お父様さえ戻ってくれば勝機はあるわ」

そうか

シャルロットさんのお父さん、ガーランドさんだ

彼は現在でも神がかり的な戦略と戦闘力でこの国から侵略者から守ってきた

その彼が帰ってれば勝機はあるかもしれない

「ガーランドさんは滅茶苦茶強ぇよ、でも」

「交渉って・・・残虐非道で知られるリンドブルムとか?」

問題はそこだろう

どうやって時間を稼ぐのか?

聞いたところによればリンドブルムという国は

略奪や処刑とか何でもありの国だと言う

そんな蛮族みたいな国と交渉できるんだろうか

「お金でも国の財宝でも資源や食料、なんでもいいから差し出して・・・」

シャルロットさんの考えは分かる

お金や物なら後でも取り返せるからだろう、いくらでもやりようはある

「・・・もしそれでもダメそうだったら」

ウィルバートさんは念押しにと聞く

そうだ相手がもし交渉に乗らなかった場合

その時のことを考えて置かななければいけない

「・・・それは」

そこで、シャルロットさんは言葉に詰まる

一か八か、今この国の戦力でリンドブルムと戦って守るしかない

きっと多くの血が流れるだろう

ガーランドさんの不在の今、最後にはその判断をセーラさんとウィルバートさんとシャルロットさんの肩に乗っているんだ

もしそうなった時、僕がシャルロットさんにしてあげれることは・・・

「その時は僕がそのリンドブルムの指揮官を殺します」

きっとこれしかない

リンドブルムの指揮官の暗殺やみうち

大切な友達シャルロットさんの負担を少しでも軽くしてあげたい

「敵の頭を潰す、少しでも犠牲が少なく済む方法ですよね」

「降伏させると思わせてれば調印のため屋敷に少数で来るはずです」

当然と言えばそうそだろうけど

皆僕を驚いた顔で見ていた

「ユイ!?」

「本気で言ってるのか?お前人を殺したこと・・・」

ウィルバートさんは

もちろんないし、できるかと言われると

できないかもしれない

でも、やらなければシャルロットさんもゆきむら君もユウさんも死んでしまうなら

弟と妹に合えないまま死ぬのなら

その咎を受け入れて運命に抗ってやる

「・・・分かった、最後はそれでいくわ・・・私が合図するからその時に」

「おいシャルお前らも・・・」

シャルロットさんは僕の言葉に賛成してくれた

不安そうなウィルバートさんを横目に、僕らは二時間後へ向け準備に取り掛かる

「私はリンドブルムを甘くは見ていない、戦っても死ぬ降伏すれば蹂躙される」

「逃げられないなら・・・少しでも勝てる方法を考えるわ」

シャルロットさんは決意の顔で窓の外に視線を向ける

「そこまでしなければ国も、家族同然に育ってきたこの屋敷の皆も、私の友達も助けられない」

「避難は間に合わない、国民には家から出ないよう指示して」

シャルロットさんは屋敷の兵士に指示を飛ばしていく

僕はそれを凄いと思った

「凄いなシャルロットさん」

「え?」

「まるでシャルロットさんのお父さんみたいに皆の役に立とうとしている」

多分シャルロットさん的には必死にやった結果なのだろうけど

それでもお父さんみたいって言われて嬉しそうにしていた

「・・・お父様だったらもっと上手くやるわ、でもありがとう」


そして、二時間後、運命の時はやってきた

ゴロゴロと音が空が鳴く、破裂したような眩しい光と激しい音が地面に打ち付けられる

天気が変わってきた、雲が空を覆い隠し雷を伴って暗く重くのしかかっていく

王都を守る砦とその城門の先には降伏を意味する白旗が掲げられていた

本来王都の城門を守る兵士達はリンドブルムの兵を受け入れるようにその城門を開いていくのだった

もちろんこれは降伏するフリだ

これから城門の外で、現時点で国王代理にあたる交渉役セーラさんがリンドブルムの指揮官に降伏の意思を伝える

開いた城門の真ん中にはセーラ・ウィステリアさんとウィルバート騎士団長が立っていた

後ろでは僕達が控えている

リンドブルムの軍団の先頭にいた大男が口を開く

「国王が不在と見て来てはいいがなんだこりゃ」

当然だろう戦いに意気勇んできたのに相手がいきなり白旗を掲げているのだから

セーラさんは、リンドブルムの指揮官と思われる先頭の男に話しかける

「始めまして、リンドブルムの国王ダーク・ヴォルグヘル」

先頭の男は、前にシャルロットさんに

風景を動画の様に切り出せる魔法道具の水晶でその姿を見せて貰ったことがある

大男はリンドブルムの国王でダーク・ヴォルグヘルという名前らしい

見て聞いた通りの厳つい鎧と厳つい筋骨隆々な体つきをしている

見ればもう分かる、この人・・・強い

「俺のことが国王って分かるか」

「はい以前から水晶でお姿を拝見させていただきました・・私は、国王ガーランド・ウィステリアの妻セーラ・ウィステリアです」

「リンドブルムの王、我々には貴殿らと事を構えるつもりはありません」

「あぁ?」

突然の敗北宣言ともとれる言葉にリンドブルムの国王は眉を歪ませ生返事を返す

「ですが、リンドブルムに従う気もありません」

「まどろっこしなぁ、何が言いたい」

彼は、不機嫌な様子で言葉を返す

「ですので、私達と交渉の席についてもらえませんか?」

交渉の話を切り出した・・・

上手くいくのだろうか

ここまではなんとかセーラさんのペースで進んでいる

ていうか普段はふわふわしてるのに今は堂々としていて凄いなセーラさん

伊達に国王の妻はやっていないということか

「ほう・・・降伏の調印式の間違いじゃないのか?」

交渉と言われ、リンドブルムの国王はその言葉を鼻で笑い飛ばす

そしてお前らのとる道は一つしかない降伏だろ?と言わんばかりに

高圧的な態度を崩さず言葉を返してきた

「それは、貴方達と私達の話し合いの結果次第の・・・一つの選択肢に過ぎません」

「国王も不在の癖に面白い婦人だ、いいだろうその交渉の席とやらについてやろう」

彼はニヤニヤ笑いながら、セーラさんの意向に沿うことにしたらしい

とりあえず・・・

相手を交渉の席に着かせることは成功した?

「いっておくが、俺が三時間戻らなければ外で待機してる兵が一斉に雪崩れ込んでくと思え」

やっぱり向こうも馬鹿じゃないよね

自分が殺された時のことも織り込み済みだって教えて相手の戦意を削ぐのが目的なのだろう

だけど、実際は殺されば困るだろうな

指揮官を失えば軍団はその機能を十分に力を発揮できないから

あえてそうやって脅しで行っているんだろうな

「二時間だなんてせっかちさんでわね・・・貴方みたいなイイ男は一晩でも相手していいくらいですわ」

セーラさんは目を細め口元を扇子で隠しながら言う

「それは、こっちのモノになってからのお楽しみだ」

彼は口角を釣りあげて笑う

まるでその未来は確定だ、とでも言わんばかりだ

それだけの自信が相手にはあるということだろうな


私達は、セーラさんと一緒にリンドブルムの国王を屋敷まで案内し連れていく

彼ら僅かな兵と付き人の幹部を連れてオーブ王国に我が物顔で入っていく

建物の窓には、国民が不安そうにリンドブルムの国王を見つめる姿が映る

完全にアウェーでもこの余裕、それがこの人が国王たる理由か・・・

リンドブルムの国王は窓から覗いていた男女の子供にニヤリと笑みを返す

凄く悪い人がする笑顔だった

子供達は泣きながら両親に抱き着いていてカーテンを締められた

「・・・ありゃ?」

「でしょうね」

リンドブルムの国王は首を掻いて不思議そうに首を捻った

多分同じリンドブルムの指揮官だろうか

その隣で薄紫色の髪の女性が隣で呆れた顔で溜息をついていた

なんだろう・・・この人は

同じリンドブルムの指揮官であろう人なのに・・・

人間と魔族の魑魅魍魎の寄せ集めのような集団で数少ない女性で

凄く綺麗で、お花のような儚さをもってる

凄く気になる人だ

その彼女がこちらに視線を向ける

「悲しい瞳・・・あなた雨みたい」

小さな声だったから聞こえなかったけど、何か僕に言われた気がする


ダーク・ヴォルグヘル達を通した城門の付近

兵士達は、この国のいくすえを話していた

「戦えもせず、この国の門を通らせるなど・・・これでは我々兵士の」

「言うな・・・セーラ様には何か考えがあるのだ、我々は兵士はいつでも命令に対応できるようするしかあるまい」

早まる部下を制した隊長格の男性は粛々と剣の手入れを欠かさず研いでいた


屋敷にたどり着き、用意された部屋で

私達オーブ王国側とリンドブルム側で向かい合うように座る

テーブルには、客向けにだされた水が入ったコップが並べられていた

僕とゆきむら君は、使用人の格好をして紛れその機会をうかがう

こういう形でメイド服とか着たくはなかった

ユウさんは別の場所でダーク・ヴォルグヘルを狙っている


「この時期に・・・氷の音?」

木に登る前に、ユウは違和感を感じていた

足元で氷を踏んづけて割った音がした


「じゃあ、まずは俺達の要望・・・お願いを言わせてもらおうか」

リンドブルムの国王は、椅子に浅く腰掛けあろうことか

テーブルに足を乗せてふんぞり返る

スラムの出身だから育ちが悪いとか以前に行儀が悪いと思わないと思わないのだろうか

ご飯を家族で食べる場所なのに・・・

彼の隣にいた薄紫の髪の女性は普通に丁寧に座っている

その隣の蝙蝠のような羽が生えた魔族のような男性は椅子に座らず、宙に浮いていた

でもこれも、リンドブルム側が優位な立場にあるということを示すことの計算された行動なのだろう

やっぱりこの人達は侮れないし・・・強いし・・・同時に怖い

剣道の試合で強敵と戦った時の感じとは違う

今にでも足が震え立つことができなくなるくらい恐怖というものを感じている

「聞きましょう・・・」

「お前達は今日からリンドブルム国民だ、じゃなければこの国に血の雨が降るのは避けられないな」

回りくどくぼかして言ってるつもりだろうが要は、属国になれってことだ

「あらあら、困ったわね~」

「そこをなんとか・・・お金や財宝や資源なら沢山ありますので今日のとこはそれでお帰りに・・・」

セーラさんは彼の不当で高圧的なな要求にいつものセーラさんみたいに

ゆるふわな雰囲を纏わせて

要求を突っぱねようとしている

バン!!!

彼はテーブルを拳で叩く

「国王が帰ってくるまでの時間稼ぎだってるの分かってんだよ!スラム生まれの馬鹿の俺でもな」

彼にはこちらの意図はもう見抜かれてるんだ

そして、時間稼ぎなどさせまいと

彼は次の一手を打ってくる

「・・・それともあれか、夜の相手でもしてくれんのかい」

「一晩付き合うって言ったよな、国の王女が嘘なんかつかないよな」

「一晩はこの国が持つかもなぁ・・・くくく」

やられた、王手を指された

最初セーラさんが向こうを焚き付けるために言った言葉が仇となってしまった

王のいない王手なんてなんて皮肉なのだろう

将棋だったら飛車と角を奪われた状態・・・か

「ま、そうなったらそうなったで国王はもうあんたの相手をしてくれなくなるかもな」

「敵国の王と寝て王と国民を裏切り国を売った売国奴って具合か?くくっ笑えるぜ」

「そいつらの顔を拝むのも一興かもなぁ」

リンドブルムの国王・・・いやダーク・ヴォルグヘルは両腕を交差させ口角を釣りげながら楽しそうに笑った

正直・・・僕達の見通しが甘かったと言うべきだ

リンドブルムって国は

リンドブルムの国王ダーク・ヴォルグヘルは

ここまで非道なことができる国で人だということを

いくらなんでも、こんなことセーラさんだって受け入れる訳がない

兄の持ってた成年漫画じゃあるまいし

「・・・それでいいなら」

・・・!?

僕は驚いて言葉を話しそうになるがなんとかこらえる

これがセーラさんの覚悟だっていうの・・・

誰かが席から立ちあがる、シャルロットさんだ

「・・・まって!なら私が変わりに相手をするわ・・・!」

手を胸に当てリンドブルムの国王に訴えかける

「あん?将来は有望そうだが・・・まだガキだな、すっこんでな」

「シャル、これは私がやらなくちゃいけないの」

シャルロットさんの存在に気づいた彼は、シャルロットさんを一瞥すると

嘲笑うかのようにその主張を押しのけた

「そんな・・・」

自分じゃ何もできない無力感に、下を向き肩を落とすシャルロットさん

こんなとき、僕はただ立って見ているだけだ

まだ、合図は来ていない

いやシャルロットさんは頭がいっぱいで今考えることができないのかも

「私はあの人を信じてます」

「・・・これで一日稼げるわ・・・ユイちゃんもゆきむら君も罪を背負わなく・・・」

・・・セーラさん

そうか、セーラさんが奴らの提案を受けたのは

僕達が人殺しの罪を背負わなくてもいいように気を使ってくれたんだろう

だけど、そんな時だった

人の持つ悪意を煮詰めたような、邪悪で悪辣

悪魔がいた

「じゃあ、二人で僕らのお嫁さんってことで貰って~・・・いい?」

「君も君も美味しそう」

セーラさんの決意もこれまでも交渉も全て台無しになった感覚に襲われる

「きゃ!・・・え?」

デビと呼ばれたリンドブルムの指揮官の美形魔族は

シャルロットさんの手を引き

自身に引き寄せ、体を密着させる

後ろで控えていた、ウィステリア家のメイドの女の子達二人を尻尾と魔法で引き寄せる

ウィルバートさんの拳が血が出るくらい強く握らる

「いやっ・・・!」

「なんですかあなた!?」

「デビあなたね!」

見かねた、薄紫色の髪の女性が、席を立ち上がり彼を制止しようとするが

ダーク・ヴォルグヘルからはいつものことだからから放っておけっと言われていた

「離して!魔族なんかとなんて嫌!」

「彼女達をもよ!・・・指一本でも触れて見なさいあんたを八つ裂きにしてやるわ!」

身体を拘束されてもシャルロットさんは強きに彼に食ってかかる

「あはは、俺さ君みたいな気の強い子好きだな~自分が雌だってこと理解わからせたいな」

「でも~シャルちゃんさ・・・」

「大人しくしてないと、ここの子達全員〇っちゃうよ」

彼は、目を細め鋭い眼差しでシャルロットさんを刺すように見つめ

鋭利な尻尾の先端をメイドの一人の首元に突きつける、先端が少し触れた肌は赤い血液がにじみ出ていた

「あ・・・ああ」

シャルロットさんはもメイドの子も、彼の鋭い眼光に突き刺され

もはや一歩も動けない、自分達が肉食獣から食べられることを震えて待つしかない小動物でしかないことを理解してしまったかの様に

デビはシャルロットさんの唇を奪おうと、顔を近づける

シャルロットさんは屈してなるものか目を閉じ顔を背け少しでも距離を離して抵抗しようとしてる

「・・・・・・・・~っ!」

「君の初めて彼氏君より先に食べちゃって~ごめんねっ♪」

デビの唇がシャルロットさんの唇に触れそうな時、僕らの忍耐の限界

ていうか体が勝手に動いていた

「シャルから手を放せよ腐れ淫魔ぁ!」

ウィルバートさんが鞘から剣を抜き、デビに突撃

シャルロットさんを拘束してる腕ではない彼の右腕を切断する


「さっきからふっざけんなよ、・・・お前ら」

と同時にゆきむら君も走り出し、ダーク・ヴォルグヘルへめがけ正面から槍を突き刺そうとする

あえて正面からいったのは事前に決めていた作戦通りだ

ゆきむら君が得意の俊足で注意を引き背後を僕が襲う

(ごめんさない、シャルロットさん・・・もう無理です)

僕は心の中でセーラさんやシャルロットさんに謝りながら

音を殺し、歩き

ダーク・ヴォルグヘルの背後へと接近し、刀を横薙ぎに振る


「仕方ない・・・撃つか」

また別の場所、木の上で待機していたユウが弓矢の弦を引き薄紫色の髪の女の人へ矢を射る

射出された矢が開けられた窓から入り込み、彼女の頭部めがけ飛んで行く

しかし、ユウの放った矢は女性には届かなかった

彼女の頭にたどり着く前に、弓が止まって凍って落下していた

そして、薄紫色の髪女性とユウの視線が交差する

「・・・!」

不意打ちを仕掛けられても余裕の表情・・・

最初から分かっていたのか!?

だとしすれば・・・しまった!

ユウは息の飲んで自分の背後を見る

そこには鋭利な氷の破片が宙に浮いていた

恐らく彼女が使った氷を遠隔操作する魔法

仕掛けられていたのはこちら側だった

その氷の破片がこちらへ向かって突撃してくる

防御も回避もできない

氷の破片の刺突を背中に受けたユウは木から落下していく


シャルロットさんを拘束してる腕ではないデビの右腕を切断する

「あははっおもしろ」

「ぁああああ!」

「ウ・・・ウィル!」

しかし、それと同時にデビはウィルバートの左目を左手で抉り抜いていた

左目を抉られた痛みと出血で目頭を押さえながらのたうち回る

それでもウィルバートは剣を片手で振り続け攻撃を止めない

しかしデビは彼の攻撃を容易く避けていく

シャルロットは幼なじみの惨状に青ざめた顔で狼狽える

そしてデビは何事もなかったように

切断された腕を接着剤でくっつけるかのように元の体に接着して治していた

デビは抉りぬいた左目を美味しそうに舐めていた


ダーク・ヴォルグヘルの背後へと接近し、刀を横薙ぎに振る

大丈夫、気づかれてない

殺れる!

しかし、彼の首を切るはずの刃は首筋の寸前で止められていた

彼は、その大きな体躯に似つかわしくない小さなナイフで僕の刀を受け止めていた

正面から攻撃しかけたゆきむら君の槍は彼の持つ鎧に阻まれていた

防ぐまでもない攻撃だと言わんばかりに

「っ!?」

「なに!?」

この前の酒場の乱闘の時の様にいつも通り、足音も衣服の風切り音も殺して動いたはずだった

この人にとっては、僕が気配を消したと思って移動したことも攻撃の動作も全部見抜かれていたのだ

「気配が途中で消えた、あからさますぎてバレバレだ」

このままじゃ、攻撃される

急いで離脱しよとした僕とゆきむら君だったけど・・・

攻撃が防がれた一瞬の驚き、その感情の揺らぎが命取りだった


結達が反応するより前

ダークは持っていたナイフをゆきむら君に投げつけ

巨木のような放たれた回し蹴りが結を襲う

幸村はナイフが腹の中央に刺さりうずくまる

結は胸を蹴られた衝撃で体が宙を舞う

宙にまった結の結の腕をダークは掴み、腹に連続で拳を入れる

数発、拳を入れられた結の体は最後に地面へ叩きつけられ

刀を手放してしまう

「面白いガキだ・・・だが足りない、力がな」

腹部に何度締め付けられるような圧迫感が襲う

胃の中の物が逆流して嘔吐する、呼吸いきが出来ない

「うっ・・・おぇ!がほ!」

だめだ・・・この人、強すぎる

僕は手放した刀を取ろうと手を伸ばす

「人を殺すことに躊躇してたら死ぬのは手前てめぇだ」

伸ばした手は届かなかった、ダークに体ごとまた蹴られ

サッカーボールみたいに地面を転がる

実際はそうじゃないのに刀がはるか向こうの先に見える

「あぐっ・・・ぐえごほっ・・・!」

体が痛い・・・お腹が苦しい

怖い、死ぬ、逃げたい

それでも僕は・・・・立ち上がる

走り、低い姿勢でダークの足元にある刀を拾う

体を地面に擦り

刀を地面に突き刺し、息を切らしながら片膝でふらふらと立ち上がる

「ぐ・・・はぁー・・・はぁー・・・・・まだだ!」

「あん?・・・へぇ」

足裏に、水の球を形勢し破裂させる

その速でダーク・ヴォルグヘルの傍から離脱

向かう先は、薄紫色の髪の女性へと飛ぶ

僕は痛む体を気合で奮い立たせ、彼女の左腕を掴み後ろに回し

刀を女性の首筋へと囲うように当てる

要は人質をとったのだ

こんなことをしても、焼け石に水だろう

リンドブルムという国は力が支配する国だと聞く

仮にこの女性が彼の愛する人だとしても、彼は容赦なく自分と彼女ごと攻撃して殺す

そんな覚悟と狂気に満ちた人達だろうから

でも・・・諦めって選択肢は僕にはない

時間稼ぎでもなればいい

この稼いでる時間で少しでも活路を見いだせ

少しでも可能性があるなら、僕は足掻く!

「あなた・・・どうして?」

「どうしてそこまで・・・」

女性は、僕に対して質問する

その顔は、悲しそうで困惑してた

それに対して僕は・・・


「それでも・・・とまりとひまわりを見つけるまで・・・僕は生きる!」

「この世界で寂しい思いをしてる家族の為に・・・僕は!」

「こんな理不尽を押し付ける神さまなんか大嫌いだ・・・!」

「ユイ・・」「結・・・動けよっ俺の体」

この状況でも足掻くその理由

唯一生きてるかもれない家族

弟と妹の為だと叫ぶ

僕の言葉に反応したかのようだった

曇天の空に雷が鳴り響く

「・・・家族か」

「神が嫌いね・・・面白いガキだ、この状況でそんなことが言えるとはぁ」

女性は、それを聞いて目を閉じて考えるような仕草を見せる

ダーク・ヴォルグヘルは感嘆の台詞を吐いて笑った

「だが・・・」

「レティシア・・・もう終わらせてやれ、こいつ下手したら死ぬぞ」

それは、無情な死刑宣告

今までの努力も足掻きも無意味だと神があざ笑うように

抗うことの出来ない結末、この物語の終わりを意味する

「・・・」

「どうした?レティシア・スノー」

レティシア・スノーという名前で呼ばれた薄紫色の髪の女性は

数秒考えるような仕草をした後

「そうね」

決意したかのように右手の手の平を僕の刀にそっと触る、魔力の光が見える魔法を発動したんだ

彼女の発動させた氷の魔法が僕の体を凍らせていく、多分相手に触れたことで発動する魔法

気づいた時には遅かった

彼女の体から横に飛んで離れたけど魔法の効果は続いてる

凍る前に刀を引き切る・・・だめだ

刀を持ってる腕が凍り付いて関節から動かせない

「つめたい・・・」

僕は・・・このまま凍って死ぬの?

何もできないまま・・・

そんな時

「うあおおお!結!」

「溶かせばいい!」

獣のようなゆきむら君の咆哮と共に、彼が僕に向かって走る腹部から流血しながら

炎の魔法を全身に纏わせながら

炎がゆきむら君自身の肌を焦がしていくいくがお構いなしに

だが、そんなゆきむら君の炎もレティシアの氷には敵わず

足元から徐々に凍っていく、その足取りが段々と重たくなっていく

「くそ・・・動けっぇ」

僕はまだ唯一動かせる左手を伸ばす

「・・・とどか・・・ない」

あの時と同じだ、誰の手も握れないまま死んだあの時と

後数歩の所で二人は止まってしまう

シャルロットさんは拳を握り叫ぶ

「もうやめて!・・・もう嫌!あなたたちなんなの!?」

「もうこれ以上・・・私の友達を傷つけないで・・・」

涙で顔面をぐしゃぐしゃにしながら、リンドブルムの三人の悪魔

ダーク・ヴォルグヘル、デビ・ルーク、レティシア・スノーへと

言葉をぶつける

もうこれ以上幼なじを友達を気づけてほしくないと

「シャルロット・ウィステリアだっけか・・・無力ってもんを嘆くだけか?」

「その紙にサインと印を押せばいいんでしょ!・・・そうしたら!」

シャルロットさんは置かれていたペンを乱暴に取り

目の前にだされた降伏の調印書に名前を書こうとする

こぼれた涙が紙に落ちてインクをにじませていく

その瞬間だった

「その必要はないよ」

窓の外から声が聞こえた

その場の者が窓に注目する

雷鳴共に現す声の主は僕達が知る人物

「そこまでだ、双方オーブ王国国王の顔を立てて剣を納めたまえ」

「お父様・・・!」

「あなた・・・」

「待たせてすまない・・・少々手間取ってしまって」

オーブ王国の国王でシャルロットさんのお父さんでセーラさんの夫である

ガーランド・ウィステリアさんだった


彼はオーブ王国で数頭飼育している飛竜ワイバーンに乗って現れた

「始めまして、この国の国王ガーランド・ウィステリアです」

飛竜から飛び乗り窓から入ってきたガーランドは剣の先をダークに向けた後

剣を鞘に納め

手を前にする貴族式の答礼でリンドブルムの国王へと挨拶をする

「そちらはリンドブルムの国王とお見受けする、この国とリンドブルム対等な話し合いの続きをしようか」

「ほう・・・どういう訳か知らんが王様のご帰還ってことか」

対するダーク・ヴォルグヘルも国王たる彼に一応の敬意を払い、いったんテーブルと椅子へと腰を戻す

「正式なこの国の決定権を持ってる国王が同席とあるならばこちらも面倒事が一気に片付くというものだ」

「単刀直入に言うぜ、それにサインと印を押せ」

しかし、リンドブルムの国王たる彼の本質は変わっていない

あくまで、こちらの立場が上だと言わんばかりに

高圧的などす黒いオーラを纏わせながら命令口調で言う

「断る」

ガーランドは彼の威圧には押されず

余裕ある態度を崩さず、一言断りを言う

「ははっ言うと思ったぜ・・・だがどうするこの都は既に400近い大軍が待ち構えている」

「俺達の三倍以下の戦力、たかが100程度の軍勢で何ができる」

彼もガーランドの反応は予想だったらしく

次の揺さぶりをかける

それは既に都を囲んでいる大軍による実力行使

「王様一人戻ったとこでたかが知れてんだよ!」

彼は三度交渉の席で獣のように吠える

実際にはそうだ、彼一人戻ってきたところで戦力が少ないことに変わりない

「ふむ、ではその数が100ではなく150だと言ったらどうする?」

「なに?」

ガーランドは余裕の態度を崩さず

言葉を切り出す

「君たちの軍の傍ににトクの村に遠征に言ってた王都守備隊50人が待機してあると言ったら?」

「はっ馬鹿な、ありえねぇな・・・トクの村からは最低でも一日以上かかるはずだ」

ガーランドを除くこの場の誰もが知らないが

現にトクの村と一緒に行っていた50の王都守備隊はこの場に帰ってこれてない

今はまだ王都まで移動中である

彼はある仕掛け50の軍隊がいるように見せていた

「嘘だと言うなら、今部下と連絡を取っみれば良い」

示し合せたかのように、その言葉と同時にダークの前に通信用魔法である水鏡が出現する

「ダーク様、急ぎ報告が!」

そこには彼の部下の魔族が血相を変えて狼狽しながら報告していた

「どうした」

「我らの軍勢の西方にオーブ王国の軍勢が現れました!指示をお願いします」

その言葉を聞き終えたダーク

「ちっ・・・こりゃ万が一があるな」

「良いだろう、今日の所は引き上げてやる・・・お前ら引き上げの準備しておけからそこから動くな攻撃してきたら迎撃しろ」

一つ舌打ちをして、撤退を、決めた

「だがただでは帰らねぇぞ、ここからは国同士のビジネスの話といこう」

侵略が上手く行かないと見ると、経済での利益の享受と国の懐柔に切り替える

リンドブルムの強かさが見える

そのための交渉を商人とか貴族ではなく国王自ら行うって言うのだから周りからの驚きは隠せない

お金を払う代わりにリンドブルムの付きけてきた内容はこうだった

条約文


条約1、貴国は我々の国に貴国の所有する山及び河川から我々の国まで人工河川及び上下水道を設置する工事をする

その際の工事費は、完成後に支払いを行う


条約2、我々の国に貴国から医者を優先的にを派遣及び医薬品類を融通すること

医者は国賓扱いの待遇と給与とする、輸入される貴国の医薬品類には関税はかからない


条約3、我々の国の輸出品を受け入れること、同時に貴国の輸出品(特に水資源)を我々は背極的に受け入れる

その際、関税はかからないものとする

又我々の国の商品の仕入れに関する値引き交渉には応じない


条約4、戦争をせず対等な同盟国と貴国がなるために

我々の国はクロノ神聖国の第二王子と第三王子の暗殺を要求する

但し、4番目のこれらの文章及び条約は正式なものではなく書面も存在しない

あくまで努力義務であるが達成すれば我々の国と貴国の関税を回復並びに治水土木工事の負債を帳消しにするものとする


治水土木工事に払う金は今あるらしく、実際に金貨が沢山入った麻袋をテーブルに置かれた

「以上がリンドブルムの要求だ・・・対等な関係としてのな」

「分かった金を払う予定分はすぐに用意しよう・・・帰りは城門まで直々に送ろう」

「頼むぜ」

ややリンドブルム側が有利の不平等条約だったが、戦力を誤魔化してる今戦争しても勝てる可能性は低い

オーブ王国はリンドブルム国の条件をのむことにした


「やれやれ、クロノ神聖国の王子の暗殺とは無理難題を言うね」

「最後に言っておくぜ旦那の頭脳と力この目で確かめさせて貰った、戦力の数を間違ちまったらしい次はこの倍でいくからな」

そう最後にダークは言い残してオーブ王国を去っていた

「そういえば俺を殺そうとしたガキ・・・次合うときが楽しみだな」


その後、リンドブルム軍勢が撤退していくのを見届けたガーランドさんが

部屋に戻ってきた

「よく頑張ったなセーラ・・・それにシャルロット」

愛する妻と娘の姿を見たガーランドさんは先ほどの王として顔はなく表情が緩んで優しくほほ笑んでいた

「お父様・・・私・・・うわあああ!」

「最後まで信じてましたよ、あなた」

「怖い思いをさせてすまない」

「セーラもよくやってくれた、さすが私の愛する妻だ」

シャルロットさんもセーラさんもガーランドさんに抱き着いて離れない

しばらく家族での抱擁が終わった後

「でもお父様、トクの村から一日かかるはずどうやって50人の兵士を・・・飛竜は一体しか連れていてないし」

「ああ、それは・・・国民に兵士のフリをして貰った」

どうやってリンドブルムの軍勢の傍に50の軍勢が現れたのか

それは、彼が周辺の村や街に頼みこんで兵士の格好をしただけの一般人を集めたからだった

兵士の鎧は鉄や銀色の物を張り付けただけの張りぼて

武器はクワやつるはしの先端を取ってのこぎりや包丁やナイフをつけて槍っぽく見せていただけ

東方に集めたのは手製の鎧を太陽の光で光らせてごまかすため

要は実際には50の兵士はおらず見せかけだったのだ

それで相手はまんまと騙されて撤退していったのだから

まさに奇跡としか言いようのない戦術とも呼べない苦し紛れの策だった


「しかしこれからどうするか・・・この国から離れられなくなった以上トクの村はそのままだ」

討伐の途中でリンドブルムの襲撃の知らせを受けたので

トクの村の怪物「ヒュドラ」は倒せずそのままのままだった


そして、僕達は部屋で怪我の手当てをしていた

曇り空だった天気は雨に変わっていた

圧倒的な力を前にしたことで呆然と椅子に座っていた

拳を受けた腹がまだ痛む

医師の診断でも幸い腹部で内出血してるような症状は無いけど

吐いたせいでお腹が空いている

ゆきむら君は腹部に包帯を巻いてベットに横たわっている

ウィルバートさんは消毒とガーゼ、左目に眼帯を当てて処置している

「ウィル・・・目大丈夫、・・・ごめんさない」

「気にすんな」

「「・・・」」

「ユウさん・・・良かった生きてた」

「ああ、なんとかな・・・鎖帷子くさりかたびらのおかげで助かった」

扉から、木から落下したユウさんが入ってきていた

出血して傷だらけで背中押さえてはいるものの

大事には至らなかったらしい

椅子に座る

「それにしても・・・酷いやられ様だな」

「負けじゃなく死・・・だったな」

「うん・・・守れなかった」

僕らは、椅子とベットにに力なく座って呆然と部屋の天井を見る

数時間前の戦いで分かったこと

「僕らはまだ力不足・・・だね」

それは僕らにはまだこの世界で目的を成すだけの力がな無いってことだった

シャルロットさんを守れる力が無い

だから・・・

「ガーランドさん、お願いあります」

僕は近くにいたガーランドさんへ頼む

この世界で何かを成すにも大切な誰かを守れる力も無い

ならば

「聞こうか、ヤシロ君達」

「シャルロットが復学のまで一週間あります、その間」

「ガーランドさんの変わりに僕達がトクの村のヒュドラを倒します」

この世界でもっと力をつける為に、・・・もっと力をつけるため

僕達より強いであろう怪物を倒し力をつけていくしかない

「行こう二人とも、ヒュドラを殺しに」

雨の降る中、雷鳴の光が僕を照らしながら二人と頷き合う

シャルロットさんが復学するまでの一週間、それまでに新たな力をつけよう

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