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夢なんて叶わないんだよ。

「君さぁ、もう来なくていいから!」


もう何度目だろうか。

こうやって小説を読みもされずに返されるのは。


15年間、小説家を目指して活動していた石田雅人いしだまさとは、

結局ヒット作を生み出せないまま、小説家という夢を諦めようとしていた。

出版社を出ると、傍にあったベンチに座り、小説家を志したときのことを思い出していた。


そう言えば、たった一言だった。

かつて記者として働いていた俺は、小説界の重鎮”ヤン・武田”の取材をしたことで全てが変わってしまった。


これまでヤン・武田の出版した小説は全て読み、小説家として敬愛していたヤン・武田への取材が決まった瞬間から、興奮が収まらず、当日は夥しいほどの質問を投げつけていた。

そして取材が終わりに差し掛かった時、ヤン・武田は僕にこんな事を言ったのだ。


「きみさ、本当は小説書きたいんでしょ?取材記事じゃなくて君の作品が読みたいけどなぁ」


「え?」

この言葉は雅人の胸に突き刺さった。

もともと小説家を志していた雅人だったが、学生時代にいくら応募しても小説が評価されることはなく、半ば夢を諦める形で記者の道を志していたからだ。


約15年間、ヤン・武田は小説家として評価されることはなかった。

それでもアルバイトをしながら小説を書き続け、ようやく小説家として食えるようになった。

そんな彼の人生を目の前で取材してしまったことで、自分にも出来るのかも知れない。

そう思ってしまったのだ。


原稿を書き終えると、ヤン・武田さんに記者を辞めて小説家になることを連絡していた。


「いつかなにかの賞に入賞したらまた連絡してほしい。帯は俺が書いてあげるから」


そして、敬愛する小説家からそんな連絡をもらってから、15年が経過してしまった。

こんだけやってダメなら、俺に才能はなかったってことだよな。

雅人は、大した実績も作れなかったことで、きっぱりと夢を諦めることができた。


「今日くらい贅沢するか」

いつもは食費を切り詰めて半額になった弁当ばかりを食べていたが、今日ばかりは近くの宅配ピザ屋でLサイズのピザと500mlコーラを買って家に帰った。

小説ばかり書いていたから、家に帰ってもすることがな買ったのだが、

ピザのクーポンの裏に、ある情報を見つけた。


『エバー・シンシティ、9月7日17時から配信スタート!』


よく読んでみると、VRMMOゲームでフロンティアゲームズという会社が作ったものだった。

やることが無かった僕は、そのゲームの事前評価を調べたが、決して良いゲームとは言えず、ありきたりで特に特徴のない凡ゲームと評されていた。


しかし、雅人にとっては凡ゲームくらいがちょうど良かった。

人気ゲームよりゲーム人口も少なくて活躍できそうだし。なにせ最新ゲームは複雑でわかんないからな。



17時ちょうど、雅人はエバー・シンシティにログインしゲームを開始したのだった。



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