~女神に謁見する~
やわらかな光に包まれた後、シルトとアリサは大きな広間に出た。
大きな洞窟の天井には、やはり大きなシャンデリアがきらきらと光を放ち。壁は蔓に覆われて、白い花が咲き乱れ、ところ所に木が生えていて、木の実の代わりに光る実が生っていた。床も白い大理石。
その広間の奥、一段と高くなっている場所にいるのが、女神なのだろうか。
「女神様、金月花を欲する者達を連れて参りました」
トオルがかしこまって言う。
「よろしい。私の前へ連れておいで、トオル」
ろうろうとした美しい声で、女神がトオルに命ずる。
「かしこまりました、女神様」
トオルが一礼をする。
「女神様の元へどうぞ」
トオルがふたりを女神の元へ連れて行く。
シルトとアリサは緊張しながら、並んでトオルに付いて行く。
女神の正面には赤い絨毯が敷かれており、その絨毯が柔らかいのも気付かぬほど、ふたりは緊張してきた。
トオルが止まった。女神がのんびりと肘掛けに寄りかかって座るその階段の下に。
トオルが小さな声で、
「女神様にご挨拶をして」
と、言うとシルトとアリサから横に離れて行ってしまった。
シルトもアリサも緊張して、声が出ない。
アリサはテレビで視た、女王にプリンセスが挨拶をする姿を思い出して、片膝を折って挨拶をした。
「はじめまして、人間のアリサです」
これだけ言うので、精一杯だ。
シルトは、アリサの挨拶で我に返った。
「はじめまして、女神様。僕は月うさぎのシルトです。金月花を必要としています。」
シルトは頭を下げて、挨拶をした。
「ふたり共、ラトナ山に、よく来たの」
女神は白い椅子の肘掛けに身を預けたまま言った。
女神は、真っ白な肌に長い黒髪をしていた。長い黒髪は金粉をかけたようにきらきらとして、角度によっては緑色にも見えた。アーモンドアイでエメラルド色の瞳。さくらんぼうのような唇。美しいが、一体、何歳かわからない。
「子供がふたり、金月花を求めて来るとは。さぁ、どんな理由か、教えておくれ」
女神は、ふたりに話しを促した。