~女神の庭~
トオルの案内で、シルトとアリサは女神への道を下って行く。
だんだん、草のトンネルは暗くなっていく。
「ウソ・・・。」
アリサの目では前が見えなくなり、草のトンネルの壁に右手を付きながら歩いて行く。
夜目の利くシルトでも、見づらい。
「あれぇ、こんなに暗くなっちゃった。僕でも見づらいよ」
トオルが首をかしげて、言う。
「トオルでも見づらいのか・・・。」
シルトがトオルに聞く。
「なんか、僕達は、あまり歓迎されてない?」
「うーん、それを言ったら、金月花を求める者は、みんな女神様の邪魔になるもん。歓迎するはずがないよ」
トオルが前足を組む。
「これは、女神様が軽く試しているんだろうな・・・。」
「試練の1つになるの?」
アリサが、真っ暗になって赤く光るようになったトオルの眼を見る。
「いや、本当の試練は、もっと厳しいぞ」
トオルは、声の位置からアリサの顔があるらしき方向へ顔を向ける。
「あと少しがんばれば、女神様の庭かもしれない」
シルトが力強く言う。
「もっと、進んで行こう!」
「そうこなくっちゃ!」
元気よいトオルの声が聞こえた。
シルトとトオルの声に励まされ、アリサも前へと進み出した。
暗い暗いトンネルの中を通っているうちに、時間の感覚がなくなった頃。
前方に、ポツンとした白い光が。
「やったー!女神様の庭の光が見えた!」
まだ暗い草のトンネルの中で、トオルが飛び跳ねる。
「あの光に向かえば、いいんだね!」
シルトも後ろ脚で、ピョンッと跳ねた。
「よかった・・・!」
シルトやトオルよりも目の見えなかったアリサが、安堵の声をあげる。
みんな、足取り軽く出口へと歩いて行った。
その庭は、草1本なかった。大小の岩がゴロゴロと転がるだけの、寂しい庭だ。
草のトンネルから見えた光の正体は、天井にあるほのかな太陽のようだった。その太陽らしきものの光だけが、あたたかさを持っている。
「おかしいよ!いつもの花が咲き乱れている綺麗な庭じゃないよ!!」
トオルの言葉に、シルトとアリサは驚く。
「そうなの?」
アリサはトオルに、恐る恐る聞く。
「うん。天井まで花が咲いているよ。こんな何もない庭なんて、見たことがない・・・」
トオルの声が小さくなった。
シルトは女神の厳しさが身に染みた。
「行こう。女神様のところに」
辛い試練を与える女神のもとへ。