~女神への道~
三叉路のねずみのトオルの後ろに付いて、シルトとアリサは歩いて行った。歩いてきた道を戻って行く。
町の明かりが、ちらちらと見えてきたころ。
「ここの茂みの中に入って行って」
トオルが背の高い草がみっしり茂っている場所の前に立つ。
「僕は、月うさぎだから四つん這いで入りやすいけど、アリサは入れるの?」
シルトが心配する。
「ほんのちょっとの辛抱だから。大きな人間も通ってきている茂みだから、大丈夫」
トオルが答えた。
「アリサ、僕の後ろに付いてきて。少し、道を開きながら進むから」
シルトが優しく言った。
「うん。ありがとう、シルト」
アリサがシルトの後ろになる。
「さて、地下の道へ行こう!」
トオルが元気よく声をかけた。
トオルを先頭に、シルトとアリサが続いて行く。
「アリサ、上手く通れる?」
シルトがアリサに声をかける。シルトが体を揺らして、足元を広げていく。
「ええ、足元が見えるだけでも、楽だわ」
シルトが広げてくれた足元を見ながら、アリサは背の高い草を横歩きで搔き分けて行く。
背の高い草の茂みを、しばらく搔き分けて進んで行くと。
「あっ!」シルトが声をあげる。
「まぁ!」アリサが驚く。
大きな草のトンネルに出た。
「大きな人間でも通れるはずね!」
アリサは上を見上げた。アリサの身長の倍はある、大きな草のトンネルだ。
「このトンネルを進んで行くと、女神様の庭に出られるよ!」
トオルが前を指差して言う。
「なら、女神様と会えるのは、もうすぐ?」
ほっとした、シルト。
「ううん、どれくらいかかるか、わからないんだ。僕達、三叉路のねずみは直ぐに会えるけど、試練を受ける者によって、長さが違うらしい」
困り顔でトオルが言う。
「女神様の魔法なのね」
アリサはトンネルの奥を見る。なかなか、女神様に会うのは大変そうだ。
「進まなきゃ。シルト、がんばろうね!」
アリサがシルトを見ると、疲れているよう。
「シルト、どうしたの?」
「ちょっと、重力負けしてる。飛ぶのは気にならなかったけど、歩くのが苦手なんだ。」
アリサが焦る。
「もしかして、私を連れてきたせい?」
「ううん、違う。ラトナ山は空を飛べないから、歩いて行かなくてはならなかった。ごめんね、アリサ。心配をかけちゃった」
シルトが右足を上げて、奮起する。
「重力に負けずに、がんばるぞ!」