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金月花(きんげっか)  作者: リルシャ
3/9

~ラトナ山へ~

 

 アリサは星空の中を飛んでいた。シルトと手をつないで。

 「シルト、ラトナ山が見えてきたわ!」

 肩までの髪をなびかせて、アリサが叫んだ。

 「うん。アリサ、見えてきた!」

 シルトも興奮気味に叫んだ。

 アリサの住む街コーテから北、国の真ん中より少し東にある、高いラトナ山の黒いシルエットが見えてきた。

 飛んでいくにつれて、黒いシルエットが大きくなっていく。

 「ラトナ山の、どこに降りるの?」

 アリサがシルトにたずねる。

 「このまま真っ直ぐ、降りれる場所を探そう」

 シルトが赤い眼で、アリサの顔を見て答える。


 アリサは、シルトに付いて行くことに決めた。

 シルトに幼なじみのニーナへの優しさ、地上に降りてきた勇気をみた。

 そのシルトが怯える、「金月花を持つ女神」が与える「3つの試練」がどんなものか。シルトに聞いてみた。

 昔、「願いを叶える金月花」を求めて、何羽もの月うさぎがラトナ山へ向かった。月うさぎと仲の良かった人間も、己の願いを叶える金月花を求めてラトナ山へ登って行った。皆、故郷には帰れてるものの、失意に落ちていった者が多いと言う。

 そして、金月花を手に入れた者は、どんな試練を受けたかは話さない。どんな願いを叶えたのかすら、話さない者もいたという。ただ、「試練は人それぞれだから」と言うだけ。

 アリサは、シルトが心配になった。

 シルトは10歳。

 10歳のシルトが「3つの試練」に耐えられず脱落し、その先にずっと苦しむのは、想像しただけでも悲しい。

 ラトナ山の女神様は厳しいのかもしれない。

 「シルト、私も一緒に行っていい?」

 アリサはシルトに言う。

 「アリサまで、苦しんじゃう!厳しい試練が待ってるのに!」

 シルトは叫んだ。

 シルトには、アリサが優しい女の子なのが、よく分かった。だからこそ、傷つけたくない。苦しい思いをさせたくない。

 「僕が受ける試練なんだから、僕は1人でも行ける!さっき泣いていたのは、僕が弱かったから。もう、泣き虫にならないよ!」

 シルトは必死にアリサを止める。

 「もう、決めたの。試練の苦しみを半分こにしよう。シルトは10歳、私は11歳。これで、大人1人分にしてもらおう!」

 覚悟を決めた真剣な目のアリサを、シルトは止められなかった。

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