~出合い・後編~
「私はアリサ、よろしくね」
私は、泣いていた月からのうさぎを放っておけなくて、窓から入ってもらった。こっそりと、冷蔵庫からオレンジジュースを持ち出して、ストローを付けて差し出した。
「僕は、月うさぎのシルト。オレンジジュースをありがとうございます」
ジュースをもらって、僕もあいさつした。
「どうして、アリサは月うさぎのことを知ってたの?」
僕は不思議に思った。もう、ずうっと、月うさぎは地上に降りてない。忘れられてるはず。
「実は、月うさぎの物語の絵本が、おじいさんの家にあるの」
アリサはうれしそうに話し出した。
「きれいなうさぎの絵本で、宝物のように箱にしまわれているのよ。手書きの絵本が」
オレンジジュースを一口飲む、アリサ。
「おじいさんの家は月の浜辺の近くにある古い街、イレーラ。もしかしたら、私の先祖も月うさぎと仲良しだったかもね!」
イレーラ。昔からサンゴがきれいな街だった、と僕は本で調べてた。
「そう、イレーラはサンゴのきれいな場所で、月うさぎも遊びに行ってたんだ!」
「シルトがイレーラのことを知ってるなんて、うれしい」
アリサのきれいな琥珀色の瞳が輝く。
アリサは11歳で、真っ直ぐな肩までの薄い茶色の髪と琥珀色の瞳を持つ、すんなりとした鼻筋の色白の女の子だ。
アリサの方は、10歳の真っ白なフサフサの毛と赤い眼のシルトが、話しをして、器用にストローでオレンジジュースを飲む様子を見ている。
おじいさんの家で、こっそり見た絵本の月うさぎが側にいる。そのうさぎは普通の茶色の月うさぎだったけど、とても綺麗に描かれていた。
その、月うさぎが目の前にいる。
月うさぎがいたことの驚きと、シルトのかわいい姿が見れてうれしい気持ちで、いっぱいだ。
しかも、イレーラの街のことで話が合ったのも、楽しかった。
だけど。
「シルトは、どうして地上に降りてきたの?なぜ、泣いていたの?」
アリサは、シルトの事情を聞きたくてたまらなくなった。
「うん・・・。地上に降りて、どうしても欲しい花があるんだ」
シルトは「奇跡の金月花」と「女神の3つの試練」を話しはじめた。
アリサとシルトの自己紹介が終わりました。
これから、「金月花を持つ女神」の元へ行きます。
さて、どんな女神が現れるのか?
マイペースで書いていきますが、よろしくお願いします。