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金月花(きんげっか)  作者: リルシャ
1/9

~出合い・前編~

月が明るい。

カーテン越しでも、薄っすらと明るい。

今日はきれいな満月だ。

なかなか、眠れない夜。

私はベッドから起き上がり、膝を抱えて座り込む。

眠れないのは、満月のせいだけじゃない。


 私は水泳が好き。泳ぐのが好きだ。水泳が楽しくて好きという気持ちだけで、今までは泳いできた。

 だけど、最近はタイムが伸びずに、友達に追い越されるようになってきた。

 正直、焦ってる。

 友達がライバルになってきてる。

 勝ち負けがすべてではないし、友達も好き。

 友達も水泳も好きなのだけど、友達に水泳で負けるのは嫌で、それが友達を裏切っているようで私の胸をチクチクと刺す。

 私は、さらに膝を抱えて丸くなる。


 外から、シクシクと小さな泣き声が聞こえる。

 家族は眠ってしまっている。

 誰⁉

 怖いのだけど、ちょっとだけカーテンを開けてみる。

 窓の外には花壇があって、色とりどりのジニアの花が咲いている。その先の庭に、月の光に照らされて小さな影が見えた。

 私より小さな影は、丸まって泣いていた。

 大きな耳があって、毛がフサフサしているみたい。人間じゃない。

 うさぎ⁉

 うさぎが、人間のように泣いている。

 私はビックリして、動けなくなった。

 そのまま固まっていると。

 うさぎが顔を上げた。

 あ。

 顔を上げたうさぎと、目と目が、合っちゃた・・・。


 僕は月うさぎ。月の地下に住んでいる。

 幼なじみのニーナのために、僕は人間の世界に降りてきた。幼なじみのニーナは、心臓病だ。月うさぎの病院では、もう治せない。

 地上の「奇跡」に頼るしかない。

 満月の夜に、月の砂漠から地上の月の砂浜に降り、ラトナ山に行く。

 ラトナ山には女神がいて、「3つの試練」を与える。

 その試練を乗り越えれば、「奇跡の願いを叶える金月花」を持ち帰る事ができるのだ。

 僕は、地上に降りられた。ラトナ山の場所も分かっている。

 ただ。

 僕は、「3つの試練」が怖くてたまらない。「奇跡の金月花を持つ女神」は、どんな試練を僕に与えるのだろう。足がすくんで、動けなくなった。

 ここまで来たのに、僕自身が情けなくて涙が出てきた。小さく丸くなって、泣いた。

 ちょっと泣いて疲れて顔を上げようとしたら、人間の家から小さなスーッとした音がした。

 カーテンが少し開いていた。

 視線を感じる。

 人間の女の子が、ビックリした顔で僕を見ていて、目と目が合った。


 こうして、1人の人間の女の子と1羽の月うさぎが出会った。

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